2011年に新国立劇場ダンスの公演として初演された William Shakespeare の詩集 The Sonnets 『ソネット集』 (1609) に着想したダンス作品の再演です。 それ以来、何回か再演されていますが、観るのは初めて。 初演時は構成・演出の中村と首藤が出演しましたが、今回の再演では新国立劇場バレエ団のダンサーが踊りました。 (日曜の公演では男性ダンサーは首藤が踊りましたが。) 『ソネット集』はおよその内容を知る程度と疎いこともあり、 原作の解釈などはピンと来なかったのですが、 ダンサーの動きと色彩を抑えた衣装と照明を駆使したスタイリッシュな演出を堪能できました。
道具は舞台奥の三面鏡台と一人がけソファ、舞台下手の詩人の机、途中で使用される洋裁用トルソー程度。 照明は舞台全体をフラットに照らすというより、ダンサーの周囲の空間を区画するかのようで、 その区画の変化によって場面を切り替えていく演出が良かった。 闇の中にその区画が浮かび上がるので、二箇所の区画のフェードイン/フェードアウトが、 水平方向の移動ではなく、まるでオーバーラップしてクロスフェードするように感じられたりも。 一場ではリフトなども用いた男女ペアでの踊りはさすがバレエで鍛えられているだけある安定感とスムースさ。 しかし、二場での女性ダンサーが男装してのダンスも良かった。 キャスタ付きの一人がけソファに女性ダンサーを座らせ手を取って踊るように移動させたり、 洋裁用トルソを使ったパペットダンスのような踊りなど、物を使ったダンスを交えていたのも気に入りました。 全体としてモノトーンで暗めの舞台ということもあってか、 恋愛感情の明るい面というより暗い面を描いているようにも感じられました。
新国立劇場中劇場の客席は傾きが大きく、奥行き方向を使った舞台作品でも観やすいことも、良かったでしょうか。 去年夏に『Camille –カミーユ・クローデル–』 [鑑賞メモ] も、 スパイラルホールではなくこの新国立劇場中劇場で観たら、 この『Shakespeare THE SONNETS』のようなスタイリッシュな舞台として楽しめたのかもしれません。
今年は、1月の『ニューイヤー・バレエ』 [鑑賞メモ] に始まり、 7月の『竜宮』 [鑑賞メモ]、 11月の『ドン・キホーテ』、そして、この『Shakespeare THE SONNETS』と、4回も新国立劇場へ足を運ぶことに。 例年であれば海外カンパニーの来日公演へ行くのに精一杯で、新国立劇場から足が遠のきがちなのですが。 コロナ禍で来日公演が止まってみると、新国立劇場のような公共劇場やそのレジデンスのバレエ団のようなカンパニーが 国内にちゃんとあるとののありがたさを実感する1年でありました。