TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Nederlands Dans Theater / Yoann Bourgeois (choreo.): I wonder where the dreams I don't remember go @ Lucent Danstheater (ダンス / streaming)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2020/12/11
Lucent Danstheater, Den Haag
4 December 2020.
Choreographer: Yoann Bourgeois.
Assistant to the choreographer: Marie Bourgeois. NDT Assistants: Lucas Crandall, Tamako Akiyama, Ralitza Malehounova.
Music: Max Richter: Written on the sky, The end of all our exploring, The Departure, Path 19 (yet frailest), November Sequence, This bitter earth / On the nature of daylight.
Light: Yoann Bourgeois, realization by Barry van Oosten; Decor: Yoann Bourgeois; Costume: Yoann Bourgeois, realization by Yolanda Klompstra.
Duration: approx. 40 min.
World Premiere: 3 December 2020, Lucent Danstheater, Den Hague.
Streaming date: 2020/12/05 20:00-20:40 JST.
URL: expired.

コンテンポラリー・サーカスを背景にダンスの文脈でも活動する振付家 Yoann Bourgeois [関連する鑑賞メモ] が オランダのダンスカンパニー NDT (Naderlands Dans Theater) [関連する鑑賞メモ] のメインのカンパニー NDT 1 に振付た新作の有観客公演が、有料ストリーミングされました。 ちなみに、Bourgeois が NDT に振付るのは、若手のためのカンパニー NDT 2 に振付た Little song (2019) に続いてです。 (残念ながらこちらはトレイラーしか観ていませんが。)

舞台装置は、素の木で作った立方体の一つの頂点で接する3面。 一面は床として固定されていますが、もう2面は可動で、1面は上向に傾けて傾いた床のように、 もう1面は下向きに傾け引き上げて天井のように使うことができます。 さらに、2脚の椅子と1台のテーブルが道具として使われます。 最初に登場するのだ男女1組、親密というより、テーブルを挟んでそこから関係が少々冷めてしまったかのような微妙な距離感です。 そのうち女性がテーブルに伏せて眠ってしまうのですが、その中の夢かのように舞台上のイメージが変容させる動きが始まり、ラストに元の状況に戻って終わります。 その間、ダンスを通して男女のすれ違い諍いのような情景が時々浮かび上がります。 少々メロドラマチックな Max Richter の音楽もそんな情景に合っていました。

Les Grands Fantômes [鑑賞メモ] など典型ですが、物理的な動きの制約を逆に心情の表現に使うことが Bourgeois の作品の特徴の一つなのですが、 ここでは、垂直に立った、もしくは、大きく傾いた壁(床)、上下反転しての天井が、人の動きを物理的に制約する条件として使われます。 そこに椅子やテーブルを固定し、その周りでパフォーマンスすることで、水平な床ではありえない動きを作り出していきます。 また、最初の2人だけではなく、2人と同じ服を着た (上下を組み替えたパターンを含む) ダンサーを使い、動きを組み合わせていきます。 さらに、それを映像として撮り、まるで床が水平であるかのようにして壁面に投影し、実際の人と重ね合わせていきます。

壁際に立つ人に傾いた床を滑り落ちていく人の映像を重ねた所など、まるで幽体離脱。 傾いた床に固定したテーブルに着いた男女の周囲を人が転げ落ちて行き時折人が入れ替わることで、 静かに向かい合っているようで心中は崩れ落ち込んでいく様子を描くようでした。 そして、ラスト近くの上下反転した天井でのパフォーマンスは、 多くの人に支えられてなんとかテーブルに着いていられる一方で、 反転して投影された画面で観るとテープルから浮き上がってしまうかのように見えます。 それも、テーブルを挟んでいるものの心ここにあらず、しかし周囲の人もあってなんとかここに止まっているかのような、二人の置かれた状況を象徴するようでした。 また、傾いた床の上や上下反転した天井での動きに合わせ、速い動きは使わず、全体としてゆっくりとした動きでしたが、それも夢の中の出来事のようでした。

垂直に立てられた壁を床に見立てたダンスは vertical theater/dance として一分野となっていますが、 流石に、上下反転というのは滅多になく、この舞台のスチル写真を観たときは舞台の展開の中での状況が想像できませんでした。 それに、こういうセッティングではワイヤーも使い aerial acrobat 的な見せ方をすることが多くなるため、 動きを抑えてむしろ心象を表現するかのような表現は新鮮でした。 斜めの床を使って映像とも重ね合わせるというと、2000年に観た Studio Azzurro + Compagnia di Roberto Castello: Il Fuoco L'Acqua L'Ombra [鑑賞メモ] なども思い出しましたが、 この作品では、映像の中に身体が埋もれることなく、むしろ生身の身体の方を主に扱っているように感じられました。 このような映像使いはプロジェクタの技術進歩のおかげもあって、特に、 2000年前後はまだ輝度が低く暗くする必要があったけれども今は照明をさほど落とさずとも見れること、 超短焦点プロジェクタの登場により壁前の人と被らない壁際からの投影が可能になったこと、の2点が大きいのではないかと想像されます。