『陰影礼讃』 (2010)、 『No Museum, No Life? — これからの美術館辞典』 (2015) [鑑賞メモ] と5年おきに開催されてきた国立美術館合同展の第3弾です。 国立美術館6館 (東京国立近代美術館, 京都国立近代美術館, 国立西洋美術館, 国立国際美術館, 国立新美術館, 国立映画アーカイブ) のコレクションに基づいた企画ですが、 実際は、コレクションを持たないアートセンターである国立新美術館、 映画関連のコレクションしか無い国立映画アーカイブを除く4館のコレクションから構成されていました。
テーマは「眠り」で、Francis Goya の版画連作 Los caprichos (1797-98) からの版画をガイドとした7章構成。 19世紀以前の絵画や版画の場合は、眠る人が描かれているという比較的正統的な解釈でしたが、 20世紀初頭のシュールレアリズム以降、特に20世紀後半のコンセプチャルな現代美術では テーマもかなり広く捉えられられていました。 正直に言えば若干無理を感じるものもありましたが、テーマを広めにとった展示の方が興味深く、 その中でも写真やビデオの作品の方が面白く感じました。
饒 加恩 (Chia-En Jao) の REM Sleep (2011) は、 台湾で介護職につく外国人女性労働者たちとうたた寝するような姿とその語りを3面のスクリーンに映すインスタレーションですが、 疲労の中でのうたた寝の中でみる夢/悪夢を見るよう。
楢橋 朝子 の半分水没しかけた波打った水面ギリギリのアングルで撮られた写真シリーズは 何回か観たことのある好きな作品ですが [鑑賞メモ]、 Half Awake And Half Asleep In The Water という眠りに関するタイトルを持っていたことに、今更ながら気づかされました。
大辻 清司 が1970年代に撮った机の上の物をユーモラスなタイトルで撮った写真など、 『プロヴォーグ』への大辻からの回答とでもいう感じに捉えていたのだけど [鑑賞メモ]、 シュールレアリズム経由で眠りと関連付けられていて、そういう見方もあったか、と。
驚きとか新鮮さとかそういうものがあったわけでは無いですが、 ちょっとした視点のずらしによる気づきが楽しめた展覧会でした。
所蔵作品展 に Sol LeWitt の Wall Drawing #769 が展示されていました。 作家のインストラクションに作成されるインスタレーション的なドローイングですが、 作曲ベースの音楽を視覚化したようです。