世田谷パブリックシアターで2019年に Cie l'Oublié(e) で初来日公演した [鑑賞メモ] フランスの現代サーカス・アーティスト Raphaëlle Boitel の2015年作を、 Boitel が選出した日本のサーカスアーティストによるキャストで再制作したものです。 ながめくらしつ [鑑賞メモ] を主宰するジャグラーの 目黒 陽介、 ながめくらしつ や 目黒とのデュオ うつしおみ [鑑賞メモ] としても活動するエアリアル・パフォーマーの 長谷川 愛実、 ブレイクダンスをテクニックのベースとするパフォーマンスチーム Kinetic Art [鑑賞メモ] などで活動する 杉山 峻 など、 今まで観る機会のあった日本のサーカス・アーティストが Raphaëlle Boitel の演出の中でどう活かされるのかという興味もあり、楽しみにしていました。
5人のサーカス・パフォーマー役と2人の裏方役の7人がトレーニングやリハーサルする様子を作品化するという、いわゆるバックステージ物の作品です。 裏方役の1人 (山本) は狂言回しのクラウンで、 残る6人のそれぞれ大技での見せ場をトレーニングやリハーサルの体で作り、マイムなどの場面で繋いで行きます。 そして、パフォーマー役の5人が本番用の衣装に着替えていざ本番という場面で終わるという構成でした。 エアリアルなどの器具を付ける正方形のフレームが、客席からも見えるように、対角線が左右方向になるように天井に設置され、 フロアにはほぼ何も無く、椅子や可動式の照明、タイトワイヤー用の足場などを動かしながら、場面を展開して行きます。 むき出し感のある空間はトレーニングやリハーサルのためのスタジオっぽく感じられますし、 特に照明は動かすことで光と影の様相が変わる所が効果的でした。
技の見せ場は、吉川のタイトワイヤーをはじめに、長谷川のエアリアル・フープ、皆川のベビーパウダー上のダンス (フロアワーク)、目黒のジャグリング、杉本のエアリアル・スパイダー、そして、最後は安本の「スパイダー」。 特に、5人のパフォーマーがそれぞれのワイヤーを引いてのエアリアル「スパイダー」は、 エアリアル・パフォーマンスする安本だけで無くワイヤーを引く5人の様子も含めてダイナミックでしたし、ワイヤーを組み合わせての蜘蛛の巣状の造形も面白く、見応えありました。 杉本のエアリアル・ストラップも、Tangle では静的だっただけに、 ここまでダイナミックな演技ができたのかという意外さも感じました。 光で浮かび上がるパウダーの煙の中での皆川のフロアワークのダンスも幻想的で印象に残りました。
良いなと思う場面が多かっただけに、技の見せ場の間ともいえる場面でのマイム的な動きなどを使った場面が、 世田谷パブリックシアターの大きな舞台に対して動きが速く細かく、少々せせこましく、子供っぽく感じられてしまったのは、残念だったでしょうか。