1994年に始まった秋の恒例の大規模な大道芸フェスティバルも26回目。今年も11月2日(木)、3日(金) に観てきました。 二日とも天気にも恵まれ、昼は日差しもきつく暑いほど。日が暮れるとかなり冷えました。 もう少し曇った方が、昼もきつい日差しもなく過ごしやすく、日が暮れてからもさほど冷えずに、良いのですが。 日帰りでは狙いを絞ってひたすら観るだけになってしまいますが、平日入れて1泊2日にすると余裕持って見て回れます。 夜に志太泉 (静岡の地酒) で一杯やれるし、屋台以外でも昼食もとることができますし。 去年も今年に続いて夜の大規模ショーの類はなし。 特に突出して目に止まったものがあったり、今年ならでの傾向・特徴を感じたということもありませんでしたが、 今年は春の高円寺も秋の三茶も観れていなかったので、時に軽く流しつつも大道芸浸りの二日間を堪能することができました。
過去の大道芸ワールドカップ in 静岡の写真集: 1999年、 2000年、 2001年、 2002年、 2004年、 2005年、 2006年、 2007年、 2008年、 2012年、 2013年、 2015年、 2016年。
以下に観たカンパニー/パフォーマの中から主なものを個別にコメント付き写真で紹介。 パフォーマー名演目名については、自分で調べられる限り、 パフォーマーの公式サイトや、海外の大道芸関係のフェスティバルのプログラム などで一般的に用いられている表記に従っています。 調べがつけられなかったものについてのみ、 会場で配布されていたパンフレットに用いられていたものを用いています。
去年、光学望遠付きのコンパクトデジタルカメラを使わなかったのですが、今年も念のために持っていくも使わす。 パフォーマーの身体表現の面白さや息遣いを捕らえるような作品的な写真を撮りたいわけではなく、 少し引いて上演の様子がわかるような説明的な写真を撮るのであれば iPhone のカメラでも十分。 撮影だけでなく、撮影後の扱いも含め、スマートフォンの手軽さにはかないません。
沢入国際サーカス学校出身で、 最近はながめくらしつの公演にも参加している [鑑賞メモ]、 谷口 界 & ハチロウ の juggling 2人組 ホワイトアスパラガス。 大技見せるのでなく、キャラクター演じるのでなく、動きの面白さで見せるのは好み。 ですが、ふとした立ち姿や踊りの動きの際に隙が多く、全体としてだらっと緩い雰囲気になってしまうのが、惜しいところか。
チリ出身で Cyr wheel を得意技とするアクロバットパフォーマー Mr. Dyvinetz。 ダンス的に演出されたパフォーマンスを期待したのですが、そうではなく、軽う技を見せたり、観客に体験させたり。
スウェーデンの teeterboard & acrobat duo Sons Company (Anton Graaf & Elnar Kling Odencrants)。 2015年 [鑑賞メモ] に続いての登場なので 今度はひと工夫あるかと期待したのですが、さにあらず。 客弄りとして客の使ってその上を飛び越えるようなこともありましたが、 基本的に技を見せるだけで、ショーらしい演出は無しでした。
アルゼンチン出身の aerial cradle の男女 duo Josefina Castro & Daniel Ortiz。 開演の10分近く前からウォーミングアップで cradle に登り、客を煽って盛り上げつつの、ウォーミングアップがてら技見せ。 しかし、本番が始まってからは、すこしアブストラクトな弦楽四重奏に乗って、 ダイナミックながらロマンチックに躍るような演技を見せてくれました。
インドの伝統的なパフォーマンス Mallakhamb の演技を3人組で。 短い Chinese pole の上で行う yoga という感じでしょうか。 伝統的な音楽やフォーマットを使うという程ではなく、 サービスで観客の体験させたりもしつつ、 テンポ良い音楽に乗りながら、次々と技を見せるという演技でした。
アルゼンチン出身の Mariano Guz とイタリア出身の Egle Sciarappa の男女2人組 Bubble On Circus による soap bubble & magic のショー。 magic はさりげなく、巨大な soap bubble が見どころでしょうか。 比較的オーソドックスな演出でしたが、こういう微笑ましく可愛らしい雰囲気は好みです。
フランス出身の Odile Gheysens が2004年に設立したダンス・カンパニー in-SENSO の vertical dance 作品 Volibri。 今回来日していた女性ダンサーは Odile 自身、男性ダンサーは Éric Lecomte でしょうか。 Rami Khalifé, Francesco Tristano など InFiné Music の 少々アブストラクトなピアノソロにのってロマンチックなダンス。 本来は live painting の video projection などの演出を伴う作品のようですが、 それが無かったためか、少々単調に感じました。 元学校校舎の美しいと言い難い壁面が舞台でしたが、もっと良い場所を使っていたら、印象も違ったかもしれません。
ウクライナ出身の strap を使った aerial を得意とするサーカスアーティス ト Dmitriy Grygorov。Cirque du Soleil の Quidam、そして Corteo での “Duo Straps” から独立して、 2007年にカンパニー Flight Of Passion を設立したとのこと。当初は妻の姉 妹にあたる Olesya Shulga (ウクライナ出身で元体操選手) との2人組だった が、現在のパートナーはロシア出身の Anastasia Vashchenko。短かめの strap 2本で、時に口に加えた strap を使って、アクロバティックで力強く。 しかし、ロマンチックな演出でした。
カナダはケベック州出身の acrobat の男女ペア Karen Goudreault & Dominic Lacasse。 フロアではなく ring や Chinese pole を使った演技を見せます。 特に、男性が Chinese pole で横向きになった状態で脇腹に女性を乗せるという大技は凄い (写真に撮りそこねましたが)。 しかし、The Human Flags とタイトルを付けていたので、 もっとダンス作品的な演出かと期待したものの、 冒頭こそ、ウェディングから痴話喧嘩というコミカルな演技もあったものの、技を見せることがメイン。 特に後半は、凄いことを演じますというMCも入った録音を流しながらの演技で、そこはちょっと残念。
カナダ École nationale de cirque, Montréal 出身の Morgane Tisserand & Pierre Antoine Chastang の男女ペアによる acrobat & trapeze dance。 路上ですれ違う男女の淡い恋—気になる女性とそっけない男性—をテーマに、 難しい技も交えつつ、動きも流麗にロマンチックに躍るような演技でした。
ロシア出身の Антон Мелешин и Вадим Мелешин [Anton Meleshin & Vadim Meleshin] の2人組 (aka Meleshin Brothers) による rola-bola balance。 1人で rola-bola しながら juggling とかはよるありますが、 2人で一度に板の上に乗ってのバランスは見事。 演出はオーソドックスでしたが、ビートに乗って高度な技を次々と繰り出していきます。 特に板を3〜4段重ねてのバランスは1人でも難しいだろうに2人で登って、片方だけ逆立ちしたり。 果ては、一方の頭に rola-bola を乗せて、その上で balance するなんてことも。 それだけでも見応えありました。
スイス出身の Anita Bertolami による一人 puppetry (人形劇)。 といっても、伝統的な意味で人形は使わず、 体の一部を顔に見立てての mime、そして magic 的なトリックを少し交えてのパフォーマンス。 録音伴奏に使っていた baroque cello もしくviola da gamba の少しユーモラスな solo の雰囲気も良く、 可愛らしいくも微笑ましいパフォーマンスでした。
ベルギー出身のマジシャン Laurent Piron。 Magie Nouvelle [関連鑑賞メモ] を謳っているので、 もっと演劇的に演出された演技を期待したのですが、 オーソドックスに技を披露するマジックショーでした。残念。
イタリア・トレント自治県の劇団 Teatre per Caso による白鳥に乗った人という姿の stilt パフォーマンス。 特に stilt に特化した劇団というわけではなく、この作品も本来は accordion 伴奏が付いたりもするようですが、 自分が観たときは伴奏もなくグリーティングして歩くだけでした。
ウルグアイ出身でフランスを拠点に活動する Esteban Adrian Giovinatti の主宰する人形劇団 La Malette。 Blues harmonica 奏者 Sonny Boy Williamson II に着想したという Little Boy, The King Of Harmonica は、 どう着想するとそうなるのかと思うような、カエルや魚が出てくる一人大道人形劇。 水を使って近づいて見ている子供を水鉄砲で驚かしたりもします。 人垣に隠れてしまうくらいのこぢんまりしたパフォーマンスなので、人手が多い大道芸フェスでは厳しいでしょうか。
真面目なリーダー格の Георгий Кириченко [Georgy Kirichenko]、 少しボケ役の Юрий Павличко [Yury Pavlichko]、 お調子者の Дмитрий Николенко [Dmitry Nikolenko] の ウクライナ出身のクラウン3人組 Экивоки [Equivokee]。 メイクや衣装もオーソドックスに、juggling や acrobat を交えつつ、客弄りしつつ、 きっちり客の盛り上げと笑いのツボを押さえた演技。 変に奇を衒わず、こういうのも楽しいものです。
ロシア出身の “swinging aerial rope” パフォーマー Анна Володько [Anna Volodko]。 ロマンチックな演出のようなものは感じさせず、シンプルに技を見せるような演出でしたが、 時にはロープを大きく揺らし、回転しながら、ダイナミックに。
神戸を拠点に活動しているサーカス・カンパニーのテントが 去年 [鑑賞メモ] に続いて今年も沈床園のキッズガーデン隣に登場。 相変わらずの緩い雰囲気のサーカスです。 去年は空いている程ではないもののふらりと入れるくらいの人の入り。 今晩はテントから人が溢れて頭越しになんとか観れるほどの大人気でした。
関西を拠点に活動する大道芸人 KANA∞ によるショー。 観るのは10年前ぶり [鑑賞メモ]。 10年前は「ギャルの大道芸人」という評判を耳にしたりしていましたが、 さすがに大人びた雰囲気になって、感慨深いものがありました。 ジャグリングのような大道芸らしい技は封じて、得意技のフープとダンスによるショーでした。
沢入国際サーカス学校 出身のクラウン サクノキ。 観るのは2014年の高円寺ぶりでしょうか [鑑賞メモ]。 前半ジャグリングを交えつつのウラウン芸、後半、立方体フレームのトワリング。 初めて観たときはギャップも面白く感じたのですが、 二度目となると、繋ぎがもう少し連続的だったらと感じました。
静岡県の中高生による舞台作品を作る Merlin Nyakam と 静岡県舞台芸術センター SPACによる 国際共同製作プロジェクト SPAC-ENFANTS が今年も登場。 前回観たときは [鑑賞メモ]、 メインのカンパニーと1ステージを分け合っていましたが、今回は単独で。 演目は同じ『ANGELS』でしたが、踊りのヴァリエーションが増えて、動きも良くなったよう。 女性のみで溌剌と華やかに踊りましたが、男性ダンサーがいなかったのは少々寂しいな、と。
この公演はワーク・イン・ブログレス作品の中間発表の場というだけではなく、 オーディション募集のPRも兼ていたのでしょうか。 出演している中高生のお友達らしき客が少なからずいたというのも、微笑ましいものです。