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Review: Noism Company Niigata × 小林 十市 『A JOURNEY〜記憶の中の記憶へ』 @ KAAT神奈川芸術劇場 ホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2021/10/24
KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2021/10/17, 16:00-17:20.
第一部:『Opening I』, 『追憶のギリシャ』, 『BOLERO 2020』; 第二部:『The 80's Ghosts』, 『Opening II』
演出振付: 金森 穣.
出演: 小林 十市, 金森 穣、井関 佐和子、山田 勇気, 浅海 侑加, Geoffroy Poplawski, 井本 星那, 三好 綾音, 中尾 洸太, 庄島 さくら, 庄島 すみれ, 坪田 光, 中村 友美, 樋浦 瞳.
音楽: Lera Auerbach (『Opening I』, 『Opening II』), Μάνος Χατζιδάκις [Manos Hadjidakis] (『追憶のギリシャ』), Maurice Ravel (『BOLERO 2020』), Hugues Le Bars (『The 80's Ghosts』).
衣裳: 堂本 教子.

トリエンナルで開催されている横浜のダンス・フェスティバル Dance Dance Dance @ YOKOHAMA の 今年のディレクターは元 Béjar Ballet Lausanne の 小林 十市、 そして、フェスティバルの最後を飾ったはこの 小林 十市 をフィーチャーした Noism の公演でした。 小林 十市 は1989年に Béjart Ballet Lausanne に参加した一方で、 Noism 芸術監督 金森 穣 は 1992年設立の Ecole-Atelier Rudra Béjart Lausanne に一期生として渡欧した経歴があります。 2人の接点となった Maurice Béjart へのオマージュも交えつつ、 私的な記憶に始まり、現在を経由して、時代の記憶に至る1時間余の舞台でした。

金森 と 小林 の出会いを象徴的に描くような『Opening I』に続き、 Béjar がよく使ったという Hadjidakis の音楽で踊られる『追憶のギリシャ』は親密さを伴う私的な人間関係を描くよう。 そして、Béjar の作品 [鑑賞メモ] でも有名な Ravel の曲を使いCOVID-19パンデミックによる外出制限を描いた映像舞踊を舞台化した『BOLERO 2020』が続きます。 休憩を挟んで後半は、小林が Béjart Ballet Lausanne に参加した1989年にフランス革命2000年を受けて作られた Béjar 作品 1789... et nous を参照した『The 80's Ghosts』で、 その時代の雰囲気も含めこの Béjar の作品に込められたメッセージに立ち返るよう。 そして、再会、再出発の『Opening II』に戻るという構成でした。

自分にも身近な状況を扱っているということもあると思いますが、中で最も印象に残ったのは『BOLERO 2020』。 映像舞踊 [鑑賞メモ] では 自宅風に見せた空間の中で踊り、その映像をマルチウインドウ画面で組み合わせていました。 舞台上ではそれぞれのダンサーに1脚ずつの椅子のみでその他の家具は途中で天井から下げられる2台の姿見のみ。 マルチウインドウのそれぞれの画面に相当する枠を装置を使って作らずに、 それぞれのダンサーごとにライティングでフロアを長方形に区画し、 ライトのオンオフで画面切り替えのような効果を作り出していきます。 方形の光の中で踊るダンサー、暗がりの中で床に伏せているダンサー、 椅子に座って姿のみが浮かび上がってダンサーが、 舞台の上で併存し、様々なタイミングで切り替わっていきます。 舞台の上でほとんど干渉し合わないため、 多くの人々がそれぞれ孤立した状態に置かれて苦闘している様が浮かび上がるようにも感じられました。 そして、フィナーレの集合の場面への転換もライティングを変えるだけなので、スムーズ。 中央に 小林 がセンターにフィーチャーされて、Béjar 作品に近づいたようにも感じられました。 映像舞踊ではユーモラスにすら感じられましたが、 ダンス (身体の動き) はそのままに、ライティングも巧みなミニマリスティックな演出で、 ここまでスタイリッシュな舞台に仕上がるのか、と、驚きました。 素晴らしかった『春の祭典』 [鑑賞メモ] と併せ、 COVID-19パンデミックを記憶する作品として再演を続けて欲しいものです。