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Review: Noism0 / Noism1 『境界』 @ 東京芸術劇場 プレイハウス (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2021/12/26
東京芸術劇場 プレイハウス
2021/12/25, 17:00-18:30.
『Endless Opening』
演出振付: 山田うん.
音楽: Alexander Borodin: String Quartet No. 2 in D major.
衣装: 飯嶋 久美子;
出演: Noism1: Geoffroy Poplawski, 井本 星那, 三好 彩音, 中尾 洸太, 庄島 さくら, 庄島 すみれ, 坪田 光, 中村 友美, 樋浦 瞳.
初演: 2021.
『Near Far Here』
演出振付: 金森 穣.
音楽: Antonio Vivaldi, Henry Eccles, Alessandro Marcello, Johann Sebastian Bach, Arcangelo Corelli, Christoph Willibald Gluck, Henry Purcell, George Frideric Handel.
衣裳: 堂本 教子; 映像: 遠藤 龍.
出演: Noism0: 金森 穣, 井関 佐和子, 山田 勇気.
初演: 2021.

COVID-19下でも活発に新作公演を続ける Noism Company Niigata のゲスト振付家を迎えての冬公演です。 2019/20年 [鑑賞メモ]、2020/21年 [鑑賞メモ] と 森 優貴 を迎えていましたが、今回は 山田 うん [鑑賞メモ] でした。

前半は、山田 うん 振付で Noism1 の9名が踊る『Endless Opening』。 中盤で手押しのシングルベッド様のものを人数分使った程度で大きな舞台装置は使わず、 照明演出を中心としたミニマリスティックな演出です。 スキルの高いダンサーが揃っているだけあって、弦楽四重奏のように流麗で衣装もカラフルな群舞を楽しみました。 しかし、リフトも一度くらいしか用いず、手押しベッドも高さがあるわけでなく水平方向へスライドするだけなので、 縦方向の動きに乏しく感じられてしまいました。

休憩を挟んで後半は、金森 穣 振付で、自身と 井関 佐和子、山田 勇気 の3人でバロック音楽に合わせて踊る『Near Far Here』。 映像を使ったトリッキーな演出は2019/20年の『シネマトダンス––3つの小品』 [鑑賞メモ] との共通点を多く感じさせるもの。 ダンスと食い違うシルエットの映像を投影したり、そこにライブで実際のシルエットを重ねたりたり、 スクリーン裏から出入りすることでシルエットと実際の姿を繋げたり、 カメラをスクリーンへ向けて合わせ鏡のような (実際は180度回転が加わっていますが) 映像を作り出したり。

しかし、そんな映像使いの妙よりも、舞台空間を縦方向も含め広く、かつ絵的にも美しい空間演出が素晴らしかったです。 シルエットを作るときも天井ラインに届くような大きさにしたり、 スクリーンや抽象的な枠構造物などを縦方向に出入りさせたり、 高い位置にオプジェを配することで、特にダンサーが上下動するわけでは無いものの、 視覚的に縦方向の変化が加わり、視線が上方へも誘導されます。 東京芸術劇場は座席の傾きが浅く前方から舞台足下が観づらいので後方の席にしたのですが、 3人で踊っていると感じさせない広い空間使い、 高さ方向も含めのダンスだけでなく光やオブジェも舞台の構成の巧みさを実感することができました。 舞台左手にスクリーンを置き、右手の高い位置に「天使の梯子」 (薄明光線) を作り、 その下で 井関 佐和子 が踊る場面など、神々しさも感じました。 そして、真紅の造花の花弁を床に敷き詰めさらに客席も含めて天井からも散らしたエンディングも貫禄でした。

海外カンパニーの来日公演がCOVID-19で途絶えてしまっていることもありますが、 今年観た Noism の公演は、今年は2月、7月、10月に続いて4回になってしまいました。 山田 うん 振付作品を観たのも、5月の国立劇場、7月の新国立劇場に続いて3回目と。 意識的にフォローしているという程でも無いのですが、続くときは続くものです。