ふじのくに⇄せかい演劇祭 2022 の後半プログラムで、これらの舞台を観ました。
コロンビア出身で現在はスイス・ジュネーブを拠点に活動する演出家・俳優による自伝的な一人芝居です。 2020年の際にCOVID-19で中止になっていた演目です。 Porras は度々来日していて、SPAC共同制作で演出した作品もありますが、自分が Porras の作品を観るのは初めてでした。
舞台上は、上手寄りに石のようなものが置かれ、後方に高さ数十センチ程度の枯れ枝様なものが立てられている程度。 最初のコロンビアでの少年時代の話は、フラットな照明下でコミカルな仕草と語りで、少々退屈し増田。 しかし、コロンビアを出て、パリに着いた頃から次第に引き込まれました。 それも、失恋の遍歴から劇場の世界に引き込まれるあたりから、急に語りが現実のユーモラスな描写というより寓意的なものとなります。 演出も、照明が落とされ赤や青の不自然な色のスポットライトが使われ、 天井から砂が舞降る様子を浮かび上がらせたりと、舞台のビジュアルも幻想的に。 怪物に飲み込まれる話としての演劇の世界にのめり込むことの寓意的な語りへの相変化と、 そんな舞台上のビジュアルの変化が合っていて、とても面白く感じられました。
静岡芸術劇場の後は、 『ストレンジシード静岡』 開催中の駿府城公園界隈へ移動。 開始時刻がちょうどよかった市役所脇の鏡池へ行ってみたら満席だったので、駿府城公園でのんびり過ごすことに。 モモンガ・コンプレックス 『穴あき谷の○○○。』。 地面に空いた大きな穴に興味を示す動物たちの様なパフォーマンスを緩く鑑賞。 その後、この野外公演を観ました。
古代オリエントの英雄物語『ギルガメシュ叙事詩』に基づく作品です。 古代に成立した口承の物語に基づく作品という点でも 『マハーバーラタ 〜ナラ王の冒険〜』 [鑑賞メモ] や 『イナバとナバホの白兎』 [鑑賞メモ] を連想させられる作品です。 既にお馴染みの手法と言えばそうですが、 語り手と動き手を分け、様式化された動きと、時に詠唱したりコーラスを掛け合うかのようなセリフの発声など、 神話的な世界の描写にハマっていました。 『イナバとナバホの白兎』では日本とナバホの神話をミックスしていましたし、 口承の物語に基づくものではないですが『マダム・ボルジア』 [鑑賞メモ] では ルネサンス期イタリアの話を戦国期の日本に翻案していたわけですが、 今回はそういった翻案の様なことはせずに、むしろオリジナルの石板を読み上げるかの様に話を進めていたのが良かった様に感じました。
空間使いという意味では、『マダム・ボルジア』でも使っていた衝立の移動を今回も使っていましたが、 奥行き方向の活用という点ではかなり改善されていました。 フンババの巨大な人形のために奥の空間を使わざるを得ないという縛りがよかったのかもしれません。 人形も、高さ2〜3メートルの3つの円錐からなる巨大なフンババだけでなく、 数十センチの人形のウルシャナビも使い、そのスケール感の振れ幅も面白く感じました。 COVID-19対策で語り手はマスクをしての公演で、声の通りが悪く、迫力に欠けたのが惜しかったでしょうか。 それでも、近年、駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場 で観た 宮城 聰 / 静岡県舞台芸術センター (SPAC) の公演の中では一番楽しめた作品でした。