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Review: 『Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展』 @ 東京都現代美術館 企画展示室 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/06/12
東京都現代美術館 企画展示室3階
2022/03/19-2022/06/19 (月休;3/21開;3/22休), 10:00-18:00.
藤井 光, 山城 知佳子.

東京都と Tokyo Arts and Space (TOKAS) が始めた現代美術の賞 Tokyo Contemporary Art Award (TCAA) の第2回受賞者の展覧会です。 去年の第1回はピンと来なかったのですが [鑑賞メモ]、 今回は歴史的な出来事や現在の社会の問題に対するリサーチに基づくインスタレーションという方向性も感じられるものになっていました。

藤井 光 の2作品は、 1946年に東京都美術館で占領軍関係者向けに開催された戦争画の展覧会に取材したインスタレーションで、 2作品合わせて1つのインスタレーションとも取れる展示でした。 《日本の戦争画》 (2022) はこの展覧会に出展された絵画の作家、タイトルとそのサイズのみを復元して、 ミニマリズムの絵画やサイズを示すだけの板や布などの掲げたミニマリズム以降のコンセプチャルな絵画の展覧会として再現したかのよう。 その一方で、《日本の戦争美術》 (2022) は展覧会当時の関係者のやりとりを読み上げた音声と、 作品が白黒で記録されたマイクロフィルムから作ったビデオからなるインスタレーション。 《日本の戦争美術》に、「美術的な価値があるのか、単なるプロパガンダなのか、見てみないとわからない」のようなやりとりが出てくるのですが、 《日本の戦争画》のサイズ感だけで具体的イメージがない展示や、 《日本の戦争美術》の顕微鏡で一部だけ覗き見ていくかのようでどんな絵画なのかなんとも掴み難いビデオを観ていると、 実際に観ることなしに判断することのむずかしさを実感させるよう。 そんな興味深さを感じた作品でした。

もう一人の 山城 知佳子 は、去年に東京都写真美術館で個展を観たばかり [鑑賞メモ]。 インスタレーションとしてではなく劇場版でですが、 《肉屋の女》 (2012), 《チンビン・ウェスタン 家族の肖像》 (2019) は観ていたので、 むしろ、インターリュード的に置かれた ナラティヴではなく抽象度が高い液晶絵画的な映像作品の新作《彼方》 (2022) に、 こういう作風もあったのかと、興味を引かれました。

企画展示室1Fでは 『吉阪隆正展ひげから地球へ、パノラみる』。 戦後から1980年代にかけて活動した建築家の回顧展です。 回顧展とはいえ、こんなに人物像に焦点を当てた建築展は、あまり観た覚えがありません。 Le Corbusier に師事しただけあるモダニズム的な作風と、 冒険家としての活動なども含めた全体としての緩さ –– 多分に戦後高度成長期だから成立したように思いますが –– を感じる展示に、分裂を感じました。

企画展示室地下2Fでは 『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』。 特撮監督 円谷 英二 を支えた特撮美術監督としてキャリアを始めた 井上 泰幸 の回顧展です。 去年、国立映画アーカイブ展示室で観た『生誕120年 円谷英二展』 [鑑賞メモ] くらいの規模であれば、 特撮映画に疎い自分でも鍵となる仕事など掴みやすかったのでしょうが、 その数倍はあろう大規模な展示は、逆に取り付く島もありませんでした。 しかし、そんな中では、円谷や井上の特撮の進め方の解説はとても興味深く、 絵コンテを元にその撮影に必要となる美術を作るのではなく、 台本から絵コンテと美術を並行して作っていたというエピソードに、 この製作陣の一体感というか、強みを見るようでした。

コレクション展示室では 『MOTコレクション 光みつる庭/途切れないささやき』。 3階の最初の展示室が「刻むことから」と題が付けられ、 駒井 哲郎、浜田 知明 等の戦後版画を集めた展示室になっていました。 それも、集められていたのが、エッチングやメゾチントで細かく描かれ白黒で剃られた銅版画が主。 こうして集められて観ると、見応えがありました。