東京都写真美術館と東京都庭園美術館をハシゴして、これらの展覧会を観てきました。
戦間期1930年代前半日本の新興写真 [関連する鑑賞メモ] の後、 1930年代後半から1940年代初頭にかけての個人的かつ芸術的な表現を志向した写真を集めた収蔵展です。 地域的な広がりとか、時代の前後の繋がりなど、気付かされることが多く、とても興味深く観ることができました。
この頃の動きとしては、瀧口 修造の「前衛写真協会」が有名ですが、 むしろ大阪 (「浪華写真倶楽部」「丹平写真倶楽部」「アヴァンギャルド造形集団」)、 名古屋 (「なごや・ふぉと・ぐるっぺ」「ナゴヤ・フォトアヴァンガルド」)、 福岡 (「ソシエテ・イルフ」) での動きを大きく取り上げていました。 中山 岩太 [鑑賞メモ], 平井 輝七 など度々観ていますが 地域のムーブメントを意識したことが無かったですし、全国的に広がって根付いていた様を見るようでした。
作風としては新興写真の延長のような新即物主義な作風のものも多いのですが、 やはりシュールレアリズムの影響が色濃くなってきて、 演出写真やフォトコラージュ、フォトグラム等の技法を使って 絵画とは異なる技法を用いて現実には無いイメージを作りだすものが印象に残りました。 オブジェを作っての撮影した作品の中には 大辻 清司 [鑑賞メモ] の戦後すぐの作風との共通点も感じられ、 新興写真から戦後の写真へのリンクはここにあったのかとも気付かされました。
19世紀〜20世紀初頭の視覚・映像装置の収蔵品展示に始まり、 映像装置の機構に着想した作品や Computer-Generated な作品を集めた、 メディアアートの展示をすることの多いB1F展示室らしい企画の収蔵展でした。 中でも興味を引かれたのは、走査型電子顕微鏡を原理を可視光レーザーで実現した藤幡正樹《ルスカの部屋》(2004/2022)。 3Dスキャナが一般的になった現在から見るとそれに近く感じますが、3Dカメラはもちろん、 レンズ付きのカメラも用いず、光度計のみ。 仕組みは言われれば納得なのですが、本当にできるんだという、そんな感慨のある展示でした。
2階展示室では、 『TOPコレクション メメント・モリと写真 ー 死は何を照らし出すのか』。 ここの収蔵展はいつも見応えのあるのですが、どうやら今回は自分の趣味興味とすれ違ってしまいました。こういう時もあるでしょうか。
1990年代末より活動する写真家・映画監督の個展です。 写真作品や映像作品の展示ではなく、東京都庭園美術館の建物であるアールデコ様式の洋館に施したインスタレーション作品という位置づけの展覧会でした。 焦点深度浅く、明るく彩度高く撮られた花々のソフトでレイヤー感のある写真が、そしてそれにネオン管でメッセージを添えたものが、建物のあちこちに配置されていました。 隣接した新館のホワイトキューブの展示室では、紗幕も使ってレイヤー感も増幅させたビデオインスタレーション。 元の建物もあって、実にゴージャスでフォトジェニック。 でしたが、コンセプトの読み解きに誘うようなフックが無く、観ていても上滑りしてしまうような、そんな物足りなさもある展覧会でした。