ゴールデンウィーク後半6日土曜は10時過ぎには静岡入り。 去年も少し観ましたが [鑑賞メモ]、 実質、コロナ禍前の2019年 [鑑賞メモ] 以来4年ぶりに、ストリートシアターフェス 『ストレンジシード静岡2023』 を観てきました。
今年のコアプログラムの1つとして上演された、公募出演者を含む約60名を使って繰り広げられる群集劇です。 明確なストーリーは無く、開けた砂利引きのスペースを広く使い、 複数のスチールパイプのベッドを様々に配置して見立てつつ、短いスケッチ的な場面を連ねていきます。 場面によってスポットを当てられる役はありましたが、全体としては群集そのものを描くよう。 災害や戦争を想起させられるような場面が多く感じられたのは、そういう時代ということでしょうか。 雨は降らなかったものの、強い風も雰囲気を盛り上げていました。 人数をかけているだけ迫力はありましたが、 野外を使いつつも劇場のような抽象的なステージで借景の妙が感じられず、少々物足りなくもありました。
『ふじのくに⇄せかい演劇祭』の Pansori Azit 놀애박스 [NohlAe Box] / 박인혜 [Park In-Hye] <오버더떼창: 문전본풀이> [Over the Crowd-singing of Pansori: Munjeon Bonpuri |『パンソリ群唱 〜済州島 神の歌〜』] [鑑賞メモ] を観るため、 残りあと5分頃に中座して、舞台芸術公園へ移動することに。 終演を10分程早めるか、シャトルバス東静岡駅前発を10分遅らせてくれれば、中座することなくハシゴできるのに、と思いつつも、 そんな無理な移動してる人を他に見かけず、そもそもそんなハシゴをして観る人は無いのでしょう。 その後、再び駿府城公園へ。
オープンコールプログラム (公募によるプログラム) で参加した東京を拠点とするカンパニーです。 70個ほどの不揃いの段ボール箱を6人のパフォーマーで塔のように積み上げていくパフォーマンスです。 大きさが不揃いな上、重心を揃えて積むわけでなく、順に上に乗せていくのではなく二つの塔を合わせるような積み方もするので、度々崩れます。 屋外で風もあったので、なおさら。 崩れる度に人もくずおれますが、すぐに立ち上がり再び積み始めます。 5年前に鞍馬山で台風で多くの巨木が倒れる被害が発生した、という事に着想しているということで、 ラストに天狗の面を被って祈るような場面を置いていましたが、 劇場のようなニュートラルではない駿府城公園という空間には、少々唐突で浮いていたように感じました。
藤田 貴大 が作・演出を手がける劇団 マームとジプシー の新作『equal』に向けてのクリエーション第1弾とのこと。 2012年にSNACで『Cocoon』に向けてのクリエーション的な 『今日マチ子さん(漫画家)とジプシー』を観て以来と思うので、観るのも10余年ぶりでしょうか。 芝生の上に日除けテントを張った小洒落たピックニックのような舞台ですが、それを都会の部屋に見立てています。 朝食の中でのちょっとした喪失感を感じさせるセリフを少しずつ重ねて、 友人の死へと次第に焦点を合わせていく、もしくは、少しずつ波長を合わせて共鳴させていくようでした。
この後は『ストレンジシード静岡』ではなく、 『ふじのくに⇄せかい演劇祭』/『ふじのくに野外芸術フェスタ』の枠になりますが、この野外公演を観ました。
恒例のSPACの駿府城公園での野外公演、今年は、ク・ナウカ時代の1996年の作品『天守物語』です。 といっても、観るのは今回が初めて。 姫路城の天守閣に棲まう妖怪 富姫 が、城主に疎まれ気味の美男の鷹匠 図書之助 との恋に落ちるという、妖怪物とも言える非現実的というか幻想的な物語と、 語り手と動き手を分離したリアリズム的ではない様式的な演出は、相性が良いです。 脚本に加え、遠めの席だったせいか、人形浄瑠璃の類を観ているような気分でした。 そんなこともあって、ラスト近くに使われた20世紀風の日本のシンガーソングライター的な曲に、 一気に俗っぽい現実に引き戻される異化作用を感じてしまい、余韻に浸れませんでした。 歌詞は主題に合っていたのかもしれないですし、初演当時は新しさも合ったのかもしれませんが、 ポピュラーソングは時代の日常に強く紐づいていることが多いので、 その時代を感じさせる演出に使うのであれば良いのですが、使い方が難しいものです。
この後は、再び『ストレンジシード静岡』へ。
毛皮族 主宰 の 江本 純子 による、 静岡市丸子の櫻井養蜂と、駿府城公園の北の草深町にある創業100年余のおでん店『大やきいも』に取材して、 駿府城公園の『おでんやおばちゃん』の建物を借景して作られた、サイトスペシフィックな作品です。 といっても、一見、それとは関係なさそうな、女王バチになり損ねたものの働きバチにもなりきれていない雌バチという設定の2人によるガールストーク風コントのようなコミカルなやり取りが繰り広げられます。 映像投影の用のスクリーンが強風で倒れるという本物のハプニングもありましたが、 コント的ではあるもののどこまで演出なのか計りかねるような緩いながら自然なやり取りを脱力気味に笑いながら観ていると、 ふっと鋭いセリフにハッとされられたり、取材したエピソードに話がつながって行ったり。そんなギャップも面白く感じられました。 毛皮族は観たことが無く、『ストレンジシード静岡』ということで観たのですが、 普段あまり縁の無いスタイルということもあって、新鮮でした。 取材先にも興味が引かれたという点でもサイトスペシフィックならではの良さがありましたし、 『ストレンジシード静岡2023』で観た4本の中で最も印象に残った作品でした。
予報では夜には天気が崩れるということだったのですが、 『ロイヤル』の途中で雨粒を微かに感じる程度。 『ストレンジシード静岡2023』が終わるまで天気がもって良かったです。