2016年にふじのくに⇄せかい演劇祭関連イベントとして始まった野外演劇祭 ストレンジシード静岡。 5月3日にふじのくに⇄せかい演劇祭を観に行ったので、 一泊して4日一日を使って観てきました。
2016年に観た時は、行われているパフォーマンスも運営も緩いイベントと感じていました。 大道芸によく出演しているパフォーマーも出演していて、まだ方向性が定まっていなかったのかもしれません。 3年ぶりに観て、出演者のラインナップも普段は劇場公演をメインとしている演劇・ダンスのカンパニーによる作家性の高い作品の上演と方向性が明確となり (対照的に、大道芸フェスティバルでは作・演出、出演などのクレジットがパンフレットに明記されることはありません。)、 そんな演劇・ダンスに合わせたステージ設定をするなど、大道芸フェスティバルとの方向性との違いはっきりしたように思います。 出演するカンパニーの野外という空間の使い方や観客との接し方に慣れ、 大道芸ほどじゃないけど観客も多くなり、 大道芸ワールドカップ in 静岡での運営ノウハウも生きて、 だいぶ成熟したストリートシアターフェスティバルになったように感じました。 大道芸ワールドカップ in 静岡 での「投げ銭方式」の採用は、少々やり過ぎではないかとも思いましたが。
夕立に降られたりもしましたが、昼前から一日野外でパフォーマンスを観て回るのは楽しいものです。 これからは、ふじのくに⇄せかい演劇祭に合わせて静岡で一泊して、 ストレンジシードも楽しみたいものです。
2009年に結成された 劇作家・演出家 三浦 直之 主宰の東京を拠点に活動する劇団です。
このカンパニーは、高校演劇の活性化のための作品シリーズ 「いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校」 (通称「いつ高」) を制作してきて、
今回上演された作品は vol.6 (初演 2018/3/23, 早稲田小劇場どらま館) にあたります。
皆が登校する前の早朝の高校の駐輪場を舞台に、
不登校ながら夜に密かに学校に来ている“(逆)おとめ” と、早朝に登校してきた“白子”の2人の
ぎこちないやりとりをユーモラスに描いた1時間弱。
終演後に『グッド・モーニングの脚注』というリーフレットを配布していて、
ある程度の文化的コンテテキストを前提とした作品作りをしているよう。
そのコンテキストを共有している人にとっては、いわゆる「あるあるネタ」なのかもしれませんが、
自分にとってはむしろ今まで接点の無かった異文化世界を覗くようで、
それはそれで興味深く観ることができました。
2009年に結成された 劇作家・演出家 柴 幸男 主宰の東京を拠点に活動する劇団 ままごと と、
京都を拠点に活動するダンサー・振付家 康本 雅子 のコラボレーションで、
出演した2人は ままごと に新加入したという俳優の2人です。
無題、もしくは『無題』というタイトルの作品のようです。
クレジットに脚本とありますが、ほとんどセリフらしい台詞はありませんでした。
暗黒舞踏的な土俗的でグロテスクな動きと、むしろ、それとは対照的な都会的なポップさが同居したよう。
Mt.Fuji は2016年に静岡にて 秋山 実優 と 吉田 燦 によって設立されたダンスカンパニー。
今回上演した作品は2017年のストレンジシード静岡で出会った大阪、東京、静岡のダンサーによるコラボレーションとのことです。
噴水池をブールとしてはしゃぐ様をそのままダンスとしたような微笑ましい作品でしたが、
1934年竣工の市庁舎本館という趣のある建築の庭というロケーションの良さに、そんなパフォーマンスが似合う青空という、
地の利時の利を得て、楽しめました。
フランスでマイムを学び、1998年から関西拠点で自身のカンパニーを率いて活動するいいむろなおき
[過去の鑑賞メモ]。
今回は上演したのは、ストレンジシードのために静岡で出演者を公募し制作した作品とのこと。
実際のところは、出演者は日本全国から集まっていたようです。
前半は、黒帽子に革ハード鞄というお約束のストレンジャーの いいむろなおき と
マイムパフォーマーが操る 段ボール製のロボット が遭遇し、
驚いたりしながら移動していくというもの。
移動の多さもあってか、マイムというより、段ボールロボットの寸劇付きパレードのよう。
芝生ステージに移ってからは、段ボールロボットは休ませて、
群衆とその中で匿名的で記号的な出で立ちなのに浮いてしまうストレンジャー、という状況を演じてみてていました。
公募で集めた出演者による野外での作品ということで、
個々のマイム的な動きの精度というより、大人数の配置とおおまかなポーズで物語っていくよう。
そんな演出が巧みで、面白く感じました。
東京拠点で自身のカンパニーを率いて活動する振付家・ダンサーによるソロ。
途中から観ましたが、おそらく即興で、
伴奏というよりドラムの生演奏と互いに組み合うようなエネルギッシュなダンスでした。
Alice Wood と Romain Ozenne によって2005年に結成された
フランス・ノルマンディのルーアン (Rouen) を拠点に活動するカンパニー。
マイム、クラウン (道化) 芸、音楽などの身体芸をベースとしているようです。
ユニット名から手品技を交えるのだろうかと予想してたのですが、
木製のゴミ箱住まいのホームレス風の二人の、客弄りもオーソドックスなクラウン芸でした。
深井 順子 が2004年に結成した、作・音楽家の糸井 幸之介による「妙〜ジカル」を上演する東京を拠点み活動する劇団です。
観るのは4年前のストレンジシードに続いて。
3年前の2曲とは違う、入浴の気持ちよさをテーマにした『浴槽船』でした。
が、夕立の中での鑑賞になってしまい、雨よけに配布された大判ビニール袋が抑えることで集中が削がれてしまいました。
3年前に聞いた『サロメvsヨカナーン』がその後かなり尾を引いて頭に残って、その「妙」がわかったような気もしていましたし、
『浴槽船』の狭い世界からの話の広げ方も面白そうだっただけに、少々残念。
東京拠点でカンパニー BATIK を率いて活動する振付家・ダンサー 黒田 育世。
踊ったのはBATIKの 大熊 聡美 でした。
松本 じろ のパーカッシヴなギターを伴奏に、長い髪だけでなく、腕で左右を払うような動きから構成されたようなダンスをエネルギッシュに踊りました。
2015年に活動を始めたジャグリングを主な技とするサーカスカンパニー、頭と口
[過去の鑑賞メモ]。
活動当初は京都を拠点に、山村 佑理 との2人のユニットとして活動していましたが、
2016年の渡仏後、いろいろあったようで、現在は、渡邉 尚 とアシスタント 儀保 桜子 のユニットということのようです。
ジャグリング用のビーンバッグを使っていますが、
ジャグリングというより軟体 (コントーション) のテクニックを中心に組み立てたのようなパフォーマンスでした。
タイトルにある「逆さの樹」というより、グニャっと動く異形の動物のよう。
そんな動きの面白さもあるのですが、写真撮っていて、
ビーンバッグの配置、配置されたビーンバックとパフォーマーの間合いなど、
空間使いの巧さに気付かされました。