2020年に横浜・北仲エリアにオープンした DaBY (Dance Base Yokohama) と愛知県芸術劇場によるダンスプロジェクトの公演です。 DaBYでの成果発表会には足を運んだとこがある程度だったので [鑑賞メモ]、劇場公演を観る良い機会かと足を運びました。
20世紀前半イギリスの小説家 Somerset Maugham の短編 Rain『雨』 (1921) を原作とする作品とのことですが、 物語るような作品というより、雨 疫病で雨の南国の島に閉じ込められた人々の鬱屈、 その場を乱すかのような娼婦おぼしき Miss Thompson、 彼女を教化しようとした宣教師 Davidson の破滅、といったイメージを、少々暗めに抽象的かつ象徴的に描くような作品でした。 主要な登場人物2名、Miss Thompson 役が米沢、宣教師 (Davidson) 役が中川というところは固定されていましたが、それ以外は明確な役の割り当てはありません。 舞台装置は、Jesús Rafael Soto の Pénétrable [鑑賞メモ] のような 黒い紐を密に下げた立方体状のものが舞台中央に少し上手側が舞台奥側に引いた状態で下げられただけ。 人の動きを浮かび上がらせたり、紐の隙間から光を透かすようなライティングも使いつつ、 紐を時折上下させつつ、その周囲や中、下で動きを繰り広げ、イメージを作り出していました。
舞台を囲むようにストリングカーテン (紐スクリーン) を下げるというのはたまに見ますが [関連する鑑賞メモ]、 舞台中央のマッスな紐の塊は、それを反転したよう。 そんな紐の塊の前面だけでなく下面も活用したダンサーの出入りを巧みに使ってさまざまなイメージを作り出していきます。 米沢の動きの高度なバレエ的な特異さも目に止まるのですが、 リフトでの多様な空中姿勢を活用して、紐の塊の前面から突き出た手に預けて身を浮かべるかのような動きや、 紐の下面から頭を突き出しているかのような動きなど、現実離れして幻想的に感じられました。