現代美術の文脈で2000年前後から活動する 大巻 伸嗣 の個展です。 大規模なインスタレーション [鑑賞メモ] が映える国際美術展などのアートフェスで観る機会はそれなりにありましたが、 個展で観るのは実に18年ぶりでした [鑑賞メモ]。 2010年代以降のビデオや写真 (フォトグラム)、ドローイングなども展示されていましたが、 やはり圧倒的な存在感があるのが大規模なインスタレーション2作品でした。
照明を落とした奥行きのあるギャラリーに高さ7 m、径4 mある花鳥の紋様を透かし彫りした白い壺を置いたインスタレーション《Gravity and Grace》 (2023) は、 原子力の光と影というテーマはさておき、中でゆっくり上下する白い光と壁を移ろう影もあって、吸い込まれるよう。
一方、《Liminal Air Space-Time 真空のゆらぎ》 (2023) は、 照明のわずかに付けた暗いギャラリーの中で、脈動する送風機の気流で幅方向40 m弱、奥行き方向15 mの半透明の薄い布を揺らめかせたインスタレーション。 腰掛けて静かに眺めていると、夜の砂浜で波が打ち寄せる様-横長く淡く揺れ煌めく布の光の波頭、ファンや布擦れの潮騒-を静かに眺めているかのようでした。
観に行った11月26日には、展示空間でのパフォーマンスも開催されました。 まずは、11時から約20分、 ダンス作品『Rain』 [鑑賞メモ] でコラボレーションした 鈴木竜 (DaBY) による《Liminal Air Space-Time 真空のゆらぎ》展示空間でのパフォーマンスを観ました。 布を被っているときなど夜の砂浜で波と戯れるかのようだと思いつつ観ているうちに、 布が示す重力場のような空間と人がインタラクションしているかのように見えてきて、 その見え方の様相の変化も面白く感じられました。
続いて12時から約20分、鈴木 竜のディレクションで 子どもたち (シンフォニーバレエスタジオ) による《Gravity and Grace》展示空間での パフォーマンス。 ダンス無しにインスタレーションを観た時に感じた吸い込まれるような感覚をダンスで可視化したようでした。