新興写真勃興期の1920年代に活動を始め、Laica によるスナップショットの作風で知られる 木村 伊兵衛 の回顧展です。 名を知るはもちろん、企画展やコレクション展示などで何度も観たことはありましたが、こうして回顧展としてまとめて観るのは初めてです。 出展された写真のうち戦前のものは沖縄を撮ったものと肖像写真など1割程度で、ほとんど戦後のもので。 そんな展示構成もあってか、 戦間期の『光画』などの新興写真 [鑑賞メモ] ではなく、 戦後20世紀半ば (1950-60年代) の Robert Doisneau [鑑賞メモ] などに近い作風に気づかされた展覧会でした。
写真や映像もメディアとして使った現代アートの展覧会です。 小田原 まどか によるコレクションを使ったリサーチに基づくコンセプチャルな展示や、 村山 悟郎 によるAI生成と相互作用するドローイングなど、コンセプチャルな作風の作品に興味を引かれました。 しかし、作風が多様で、展覧会全体としては焦点が定まらない感もありました。 そんな中では、米田 知子 [鑑賞メモ] の コンセプトを秘めつつ端正な風景写真の並ぶ展示室が、オーソドックスながら落ち着きを感じました。
アメリカの LIFE 誌 (1936年創刊)、 日本の『アサヒグラフ』 (1923年創刊) など戦間期から戦後間もなくにかけて多く創刊された写真メインの雑誌「グラフ雑誌」や、 そのような雑誌に使われるようなスタイルの写真、関連する同時代の風俗を感じさるポスターを使い、 しかし「グラフ雑誌の歴史」のような観点ではなく、グラフ雑誌的なセンスで20世紀以降を「時間旅行」するような企画でした。 ありそうで無かった視角だなんて思いつつ、展示を見終わった後に『Nyeyes』vol.00000158を読んだら、そんな印象とは関係ない、企画者の思いを含む企画に至る紆余曲折が描かれていて、苦笑しました。