19世紀末から1930年代頃まで活動したスウェーデンの女性の美術作家 Hilma af Klint のアジア初の回顧展です。
2018年の Guggenheim Museum での展覧会
Hilma af Klint: Paintings for the Future や
ドキュメンタリー映画 Beyond the Visible - Hilma af Klint (2019;『見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界』, 2022) で
抽象画の先駆者としての再評価が進んでいるという興味で、足を運びました (映画は未見ですが)。
キューレーションで強調されていたのかもしれませんが、予想していたより神智学・人智学からの影響を強く受けた表現でした。
19世紀末の王立芸術アカデミー在学中や挿絵作家としての作品もありましたが、
クリエイティヴ・ピークは1900s-01sの絵画やドローイングで、
1920s半ば以降は主に過去のノートの編集・改訂の作業となっていました。
神智学的な認識を図式として表現したダイアグラムとしての抽象表現ということで、
この時代のポスト印象派からキュビスムのような表現を経て抽象へ至るモダニズム的な色彩と形態の抽象化の流れとはかなり異なった系譜の抽象画でした。
同時代で似たものとしては初期 Bauhaus で描かれた教育の理念や体系を図式的に示したものなどを連想しましたが、
神智学的な認識が着想源という点では、むしろ、シュールレアリズム的な表現に近しいものを感じました。
コレクションによる小企画は、フェミニズム的な主題のヴィデオアート作品です。 女性の役割とされる料理を俎上に上げた Martha Rosler: «Semiotics of the Kitchen» (1975) を観ながら、 この頃のニューヨークから出てきたポストモダンな作風の女性作家の切れ味の良さを再確認しました [関連する鑑賞メモ]。 日本の作家では出光 真子 が大きく取り上げられていました。 以前もコレクションによる小企画で『女性と抽象』という企画をしていましたが [鑑賞メモ]、 やはり同じ学芸員の仕事なのでしょうか。
所蔵作品展の10室の手前のコーナーが「アルプのアトリエ」で、
アーティゾン美術館で開催中の展覧会
『ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ』
Sophie Taeuber-Arp & Jean Arp [鑑賞メモ]
との連動しているのかと思いきや偶然同じタイミングになっただけのようで、アルプ財団から寄贈された新収蔵作品の展示でした。