TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: 『[近美コレクション]描かれた女性たち −エコール・ド・パリの時代を中心に』 @ 北海道立近代美術館 (美術展); ウポポイ 民族共生象徴空間 (博物館)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2026/06/21

5月の21日から26日かけて北海道の札幌と函館へ行ったのですが、 移動の合間の時間や週末のオフの時間を使って観た美術館や博物館について。

札幌では小一時間空き時間ができたので近美へ。コレクション展示で École de Paris の特集をしていました。 個別の作品というより、École de Paris、特に Jules Pascinだけでこれだけ作品を持っているのか、という点に興味引かれました。 後で検索して気づいたのですが、公式サイトに経緯が書かれていました。 「この「国際性」の実現に向けて開館前後から力を入れてきたのが、海外のガラス、ヨーロッパ版画、そしてエコール・ド・パリの収集である。」とのこと。 1920年代で国際的な美術運動など他にもっと色々あるだろうにと思う一方、 開館準備中の1973 (昭和48) 年時点では Avant-Garde の再評価もまだあまり進んでおらず、今とはまた違った見え方だったのだろうか、とも。 企画としては、1920s - Les Années Folles 当時の女性像に焦点を当てフェミニズム等へ言及するなど今の時代ならではの切り口で見せようという努力を感じましたが、 同時代の Avant-Garde な作風のものを思い浮かべつつ、École de Paris でこれをやるのは辛いものがあったのでは、と思ってしまいました。

––

週末は函館への移動の途中に、白老で降りて、この施設に立ち寄りました。

月休, 2026年度:12/28-01/04;02/27-03/08休, 4-10月 09:00-18:00; 11-3月 09:00-17:00.

2020年に苫小牧の西隣にあたる白老にオープンしたアイヌ文化の復興・創造等を目的としたナショナルセンターです。 上演鑑賞だけでなく体験型のイベント・ワークショップを各所で開催している国立民族共生公園と、 資料収蔵・展示のための国立アイヌ民族博物館、 過去に発掘収集され大学などに保管されていたアイヌ民族・副葬品のうち直ちに返還できないものを管理する慰霊施設からなります。 ウポポイに先立ち、白老では1965年に「ポロトコタン」として営業開始、1984年にはアイヌ民族博物館が開館していましたが、 ウポポイの整備に伴い2017年に閉館し、改めてナショナルセンターとしてオープンしたという形になります。 今回初めて足を運びました。

伝統芸能の上演などのイベントの演出や展示の構成は、観客への分かりやすさ、親しみやすさに寄っていて、アイヌ文化のテーマパークのよう。 といっても、芸能の上演を観るだけでなく、 伝統的な歌 ウポポ を一緒に歌う「ウポポ アキ ロ」や、 弦楽器 トンコリ の持ち方や音の出し方を体験する「はじめてのトンコリ」など、 様々な体験プログラムやを巡っていたら、あっという間に半日経ってしまいました。 プログラムには無い、年2回実施しているという若手への伝承のための芸能の練習的な上演の様子をみることが出来たのも、幸運でした。

ウポポイ内にある 国立アイヌ民族博物館 は、特別展示室は休みで残念。 あまり時間が取れず、基本展示室を1時間弱で流し見に近くなりましたが、 先史時代から近代に至る北海道とアイヌの歴史の展示はもちろん、 現代の「ネプキ/私たちの仕事」のコーナーでは、過去の、ではなく、今を生きるアイヌの人々の肖像のような作りもあって、それは良かったでしょうか。 『国際芸術祭「あいち2025」―灰と薔薇のあいまに』での マユンキキ の作品 [鑑賞メモ] の主題となっていた 川村 カ子ト も、 このコーナーで取り上げられていました。

体験交流ホールで、伝統的な歌や踊りなどの芸能の上演「ウポポ ネワ リㇺセ」や、アイヌのユカㇻをアニメーションにした映像「カムイ ユカラ」の上映も観ました。 芸能の上演は、伝統的家屋の内部の様子を示すような背景いっぱいの映像プロジェクション・マッピングの中で行われました。 上映されたアニメーションは「カムイを射止めた男の子」と「キツネに捕まった日の神」の 15分程度の短編2作品で、 アニメーションもスクリーンへの上映というより、舞台の床や側面への投影を含むプロジェクション・マッピング的なものでした。 子どもでも楽しめるようにと思うと仕方ないのでしょうがセリフなどは日本語で、アイヌ語日本語字幕で見たかったものです。

しかし、せっかくナショナル・センターなのですし、 現代的な演出を加えて伝統芸能を上演したり伝承をアニメーション映画化するのであれば、 むしろ、国際的な芸術祭への出品も狙えるような、もしくは国内の公共劇場・美術館等を巡回できるような、 アイヌの芸能や伝承に着想した現代的な舞台芸術作品、アニメーション映画などの創作を目指すのも良いのでは。 そして、こういう試みの中から、例えば、 台湾原住民族の伝統に着想したコンテンポラリー・作品である 布拉瑞揚舞團 『路吶』 [鑑賞メモ] のアイヌ文化版や、 Cartoon Saloon の Irish Folklore Trilogy [鑑賞メモ] のアイヌ文化版のようなものが出てきたら面白いのではないか、とも思ってしまいました。 展示にしても『国際芸術祭「あいち2025」―灰と薔薇のあいまに』での マユンキキ の作品のようなものもあって良いと思うし、 Oki Ainu Dub Band や Marewrew のようなグループを展示したり売店でCD販売するだけでなくライブに呼ぶのというのもありかと思います。

広く観客に親しんでもらおうという配慮を随所に感じましたが、 民間の商業的なテーマパークではなくナショナル・センターなのですし、観客を少々置いてきぼりにするくらいの本格的な上演や展示をするのも、公共の一つの役割なのではないかとも思います。 といっても、広々とした公園で人混みもなく、ゆっくり半日近く楽しめましたし、 こういう核になりうる博物館があれば可能になることもあると思うので、今後に期待したいものです。