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Review: Tomm Moore & Nora Twomey (dir.): The Secret of Kells 『ブレンダンとケルズの秘密』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/08/25

アイルランドのアニメーション・スタジオ Cartoon Saloon の25周年に合わせ 『カートゥーン・サルーン25周年特集上映』が開催されたので、 見逃していた長編第1作を観てきました。

The Secret of Kells
『ブレンダンとケルズの秘密』
2009 / Les Armateur (FR), Vivi Film (BE), Cartoon Saloon (IE), France 2 Cinéma (FR) / 75 min.
A film by Tomm Moore.
Co-Director: Nora Twomey; Script: Fabrice Ziolkowski; Art Director: Ross Stewart; Editor: Fabienne Alvarez-Giro.
Music: Bruno Coulais; Featuring original music from: Kila.
Cast: Evan McGuire (Brendan), Michael McGrath (Adult Brendan), Brendan Glesson (Abbot Cellach), Christen Mooney (Aisling), Mick Lally (Brother Aidan), et al.

Song of the Sea (2014) [鑑賞メモ]、 WolfWalkers (2020) [鑑賞メモ] に先立つ Tomm Moore による “Irish Folklore Trilogy” 「ケルト三部作」の第1作です。 また、The Breadwinner (2017) [鑑賞メモ] の Nora Twimoy が Co-Director を務め、 また、Tout en haut du monde (2015) [鑑賞メモ] や Calamity, une enfance de Martha Jane Cannary (2020) [鑑賞メモ] の Rémi Chayé が storyboard としてクレジットされており、 2010年代以降のヨーロッパの長編アニメーションの源流の1つとも言える作品でもあります。

8世紀に制作されたとされるアイルランドに伝わる聖書の装飾写本 Codex Cenannensis [The Book of Kells] 「ケルズの書」に着想し、 修道院へのバイキング襲撃が頻発していた当時の状況を背景にしつつ、アイルランドの修道院での「ケルズの書」成立を、 主人公である少年僧 Brendan が「ケルズの書」を完成させるまでの英雄冒険譚 (映画オリジナルのフィクション) として描きます。 修道院長である叔父の Cellach 院長との確執、メンターとなる修道士 Aidan とその写本との出会い、白狼と少女の姿を行き来する森の妖精 Aisling と交流しつつ、 バイキング襲撃やクロム・クルアハ (Crom Cruach) との戦いを通しての Brendan の成長を描くという、 特に第3作 WolfWalkers と比べかなりベタな英雄譚です。 しかし、特に妖精 Aisling の造形など WolfWalkers の原点を観るようでしたし、 Cartoon Saloon の動く絵本のような美しいアニメーションの原点に装飾写本があったということを実感することができ、 とても興味深くかつ、その美しいアニメーションを十分に楽しむことができました。