8月24日から30日にかけてフランス・パリへ行ってきました。 観光目的ではなく、そもそもパリはオフシーズン (hors-saison) で劇場では公演していませんし、美術館も半ば夏休み状態でしたが、 合間の時間や土曜のフライト待ちの時間を使って美術館を巡ってきました。 限られた時間の中で駆け足で巡ったため、作品にゆっくり向き合ったわけではありませんが、軽く鑑賞メモ。
MAM (Musée d'Art Moderne de Paris) は、
Palais de Tokyo 西翼に入った20世紀以降現代に至る美術を対象とした市立の美術館です。
企画展は休みで、コレクション展示も三分の一近く入れ替え中でクローズで、入場無料でした。
パーマネント作品としては Raoul Dufy や Henri Matisse の壁画が有名ですが、Robert Deraunay の方が好みでしょうか。
Christian Boltanski のパーマネント作品もあるのですが、クローズドで残念でした。
コレクション作品の中でも、Daniel Buren 20作品で壁を埋め尽くした展示や、Louise Bourgeois の蜘蛛の彫刻が目に止まりました。
コレクション作品の展示は時代順に構成されていましたが、
主にフランスの作家の展示ということで特に戦後美術についてはフランス国内での潮流に沿っており、特に1960年前後以降同時代以前の New Realist / On The Fringes / Narrative Figuration / Supports-Surfaces (フランス語での表記を覚えておらず、手に取った英語のパンフレットの表記を参照) とい日本では馴染みがないカテゴリで、
おそらく日本で観る機会がなさそうな作家も多く、新鮮で興味深く観ました。
Narrative Figuration はいわゆるポップ・アート的な作品でしたが、
ミニマル・アートや日本での「もの派」に相当しそうな Supports-Surfaces の作家 (Daniel Dezeuze) が目に止まりました。
Normes Corps
Palais de Tokyo 左翼は、建物の名前をそのまま採った国立の現代美術センター (コレクションを持たないので美術館ではない) です。
こちらでは Normes Corps と題した8組の作家によるグループ展、と言うより会場が隣接した8つの個展に近いものでしたが、そんな展覧会を展示していました。
いずれもいかにも現代美術らしいインスタレーションでしたが、
Joseph Grigely: This Is Where We Are がコンテンポラリーな舞台作品のセットを見るようで、ドラマが立ち上がりそうな雰囲気が気に入りました。
YBA直前頃のイギリスの作家 Cathy de Moncheauxのひと世代前のフェミニスティックな作風を懐かしく思ったり、扇風機並べた Jesse Darling や光を意識した Benoît Piéron なども、興味深く観ました。
パリ北西 Bois de Boulogne (ブローニュの森) に2014年にオープンした、ラグジュアリーブランド Louis Vuitton の財団による現代美術館です。
メインの企画展はなく実質休館に近い状態でしたが、8月30日までは小展示などもあり、割引料金で開館していました。
足を運んだ一番の理由でもあるパーマネント作品 Olafur Eliasson [鑑賞メモ] の Inside the horizon はいかにもそれらしい作品でしたが、建築の装飾のようにも感じられてしまいました。
建築自体が Frank Gehry による脱構築主義を体現したようなものでしたが、
現在位置や移動先への見通しが掴みづらく、また、階段を昇降せざるを得ないような移動もあり、歩き疲れた体には優しくないと体感してしまいました。
メトロ1号線 Les sablons 駅からのアプローチには美術館開館に合わせて LVMH がリニューアルした歴史ある (1860年オープン) 遊園地
La Jardin d'Acclimatation があり、治安の心配はありませんでした。
映画 Les Dames du Bois de Boulogne 『ブローニュの森の貴婦人たち』 (1944) [鑑賞メモ] の舞台となった森の雰囲気を味わうのも悪く無いかなと、
帰りはトラムT3b線に乗るべく Porto Dauphine 駅へと森を抜けたのですが、
比較的開けた人通りのある道を選んだものの、映画に出てくるようなものではありませんでしたが路上売春する人々 (と言って2名ですが) に遭遇してしまいました。
と言うことで、こちらはお勧めできません。
1807年竣工の元商品取引所 (Bourse de Commerce) の建物を 安藤 忠雄 がリフォームして2021年にオープンした、
ラグジュアリーコングロマリット Kering オーナー Francois Pinault のコレクションを展示する現代美術館です。
Clair-obscur 展は8月24日で終了していたものの、
その中の出展作品の1つ、La Rotanda に展示された
中谷 芙二子 [Fujiko Nakaya] [鑑賞メモ] の「霧の彫刻」
« Cloud #07156 » は延長で展示されていたので、それを観てきました。
19世紀末に作り直されたというガラスドームと大航海時代以降の国際貿易を題材とした天井画、
安藤 忠雄 らしい装飾を排したコンクリート打ちっぱなしの丸壁と、そして霧の組み合わせという、
今までの「霧の彫刻」には無かったコントラストを楽しみました。
2025年に Musée du Louvre に接した19世紀半ば Ousmane 様式の建物へ移転してきた ハイジュエリーブランド Cartier の財団による現代美術館です。 10月22日からの企画展まで休館でしたが、Bourse de Commerce - Pinault Collection から歩いて5分程度の近さなので、中の様子は伺えませんでしたが、前まで様子を見てきました。 Fondation Cartier 前、Palais Royal と Musée du Louvre に挟まれた広場でデモをやっていて、これもパリらしいでしょうか。
パリの近現代の美術館といえば、国立の Centre Pompidou (Centre national d’art et de culture Georges Pompidou) ですが、2025年から2030年まで改修休館。 2002年に行ったことがあるとはいえ、その時もゆっくりは観られず、四半世紀ぶりに行きたかったので、休館は残念でした。 こちらも Bourse de Commerce 近くではありますが、時間に余裕も無かったので、今回は前まで様子見に行くこともしませんでした。
Centre Pompidou 休館ということもあったと思いますが、 LVMH (Fondation Louis Vuitton), Richemont (Fondation Cartier), Kering (Pinault Collection) と、ラグジュアリーブランドの三大コングロマリットの私立美術館が話題を呼んで存在感を出している所に、21世紀現代アートへの主な金の出所を実感します。 ラグジュアリー三大コングロマリット私立美術館は新しいこともあり、さすがおしゃれスポットという感じでしたが、 自分にとっては MAM + Palais de Tokyo の方が観応えがあり、居心地も良かったでしょうか。 しかし、今回は時間も限られていましたし、リスクを避けてメジャーな美術館に留めましたが、オルタナティヴ・スペースへ行ってみた方が面白かったかもしれません。