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旧ソ連のネットレーベルについて

[2810] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Sep 16 0:37:58 2011

先週末の土曜 (9/10) に開催された 日本ポピュラー音楽学会 2011年第2回関東地区例会のタイトルは 「ポスト・パッケージ時代の音楽活動 —— ネットレーベル現象から考える」。 その様子が Ustream で配信されている のですが 観る時間が未だに取れず。とりあえず、 twitter の記録 を今更ながら目を通したのですが、 話題は日本のネットレーベルにほぼ限定されていたようですね。 ま、そんなものでしょうか……。 ネットレーベルについて特に詳しいわけではないですが (むしろ、日本の状況には疎いです)、 音楽趣味生活において不可避になりつつあるので、 ネットレーベルについて思うところなどを。

Far From Moscow で紹介されているような旧ソ連のスラブ・バルト諸国の音楽シーンは、 ネットレーベル抜きでは考えられない状況になっています。 これは旧ソ連に特有なことなのか、他にも同じような状況が見られるところがあるのか、と、 世界的にみるとどうなっているのだろうかとは気になっているのですが、調べる余裕もありません。 そんな状況を概説するような話もあるなら、是非聞いてみたいとは思っていたのですが……。

ちなみに、旧ソ連の場合、 共産主義政府下で音楽産業育たず→ ソ連崩壊後の経済混乱や海賊盤 (海賊MP3) の横行でレコード流通システムが育たず→ その状態のままインターネットが普及したのでネットレーベル活動、 のような流れがあるようです。 “Prof’s website lets music flow across former Soviet Union” (UCLA Today, 2010-11-10) で、 Far From Moscow を運営する UCLA の David MacFadyen がそんな話をちょっとしていました。

で、無料のネットレーベルが軌道に乗ってきたので有料配信へ、という流れもあります。 2010年以降の FUSELabElectronica がそうです (この話は以前にも このレビュー で触れましたが)。 有料配信サービスとしては、 techno / electronica の文脈では BeatportJuno Download がメジャーですが、 indie pop/rock の文脈では BandcampKroogi が使われているのが、よく目につくように思います。 ポーランドはクラクフのレーベル AudioTong (The Wire 誌への付録CDシリーズ Exploratory Music From Poland で知られる) も、 最初はフリーのダウンロードだけという典型的なネットレーベルでしたが、 最近は有料のCDリリースへ軸足を移しています。 旧ソ連・東欧の話ではありませんが、 このレビューで紹介したイスタンブールのレーベル re:konstruKt も、 その後、今年 (2011年) に入ってCDもリリースするようになっています (CD Baby 等で販売しています)。

このように、自分の観測範囲では、最近、 脱ネットレーベル (もしくは反動と) 言いたくなるような動きも見えます。 少なくとも、旧ソ連諸国のような正規盤レコード流通システムが未発達な状態でインターネットが普及した国では 「物理的パッケージ販売から(無料)デジタル配信へ」みたいな単純な図式は描き辛いということなのだろう、とは思います。

自分の観測範囲に偏りもあるかと思いますが、旧ソ連・東欧とトルコでは、 ネットレーベルやるようなインデペンデントな音楽シーンはヨーロッパのシーンと強く結び付いていて、 ネットレーベル界隈の状況にも共通点を感じます。 しかし、他の地域では、ネットレーベルをとりまく状況もまた違う様相を示していそうです。 東南アジアとかインドでは、どういうネットレーベルのシーンが生まれているのでしょう。 もしくは、アラブ諸国とかラテンアメリカ諸国では。 これらの地域でもそれなりにインターネットが普及していると思われるので、 当然ネットレーベル活動もあるだろうと想像してはいるのですが……。

というわけで、世界各地のネットレーベルやその界隈の動きで、 これはお勧め、これは要注目というものがありましたら、教えて頂ければと思います。