深川峻太郎の江戸川春太郎日誌 05-06 season #15
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1.Hard Time Killin' Floor Blues
2.Got Messed Up
3.Miss Maybelle
4.Wish I Was in Heaven Sitting Down
5.Too Many Ups
6.Nothin' Man
7.See What My Buddy Done
8.My Eyes (Keep Me in Trouble)
9.Bad Luck City
10.Chain of Fools
11.R.L.'s Story
12.Black Mattie
13.Pucker Up Buttercup
14.Laugh To Keep From Cryin'


2006.01.31.Tue. 20 : 55 p.m.
BGM : Wish I Was in Heaven Sitting Down / R.L. Burnside


 風呂場での会話。

子「サッカーしりとりしない?」
父「いいよ」
子「父さんから」
父「じゃあ、ワールドカップ」
子「プレミアリーグ」
父「グリエルミンピエトロ」
子「……グリレルピン?」
父「グリエルミンピエトロ」
子「グリエルミン、ピエトロ」
父「グリエルミン・ピエトロじゃなくて、グリエルミンピエトロ」
子「ナニ人?」
父「アルゼンチン人」
子「ふうん」
父「ろ」
子「ロッシ」
父「古いので来たな。シメオネ」
子「ネスタ」
父「タッキナルディ」
子「インザーギ」
父「ギグス」
子「スタンコビッチ」
父「よく知ってんなー。そいつ元ラツィオなんだぜ」
子「今は?」
父「インテル。なんでそれ知らないのに名前知ってんだ」
子「ち」
父「チェルシー」
子「やっぱりね。シシーニョ」
父「ヨハン・クライフ」
子「フランク・ランパード」
父「ドログバ」
子「バルセロナ」
父「ナポリ」
子「リーベル・プレート」
父「トッ……」
子「え?」
父「……テナム」
子「あー、びっくりした。やっぱりあれは言わないよねぇ」
父「言わない」
子「ム……ムはいないなぁ」
父「おまえ仙台で会ったことあるぞ」
子「ムのつく人に?」
父「そう。ホテルのエレベーターで。教えてやろうか」
子「うん」
父「ムッツィ」
子「ムッツィか。じゃ、ムッツィ」
父「イブラヒモビッチ」
子「チリ」
父「リカルド・カルバーリョ」
子「ヨ?……う〜ん。ヨルゲンセンじゃ負けちゃうしなぁ」
父「トヨタカップに出てたじゃん」
子「どのチーム?」
父「シドニーだったかな」
子「なんだっけ……」
父「ドワイト……」
子「ヨークだ!」
父「そうそう」

 私が「クライファート」と言う前にタイムアップ。







1.Dolemite
2.Tore Down House
3.Meter Maid
4.I Hate You
5.Gittar School
6.Xanax
7.Continuum
8.You Get off on Me
9.Mocha
10.Harpoon
11.Same as You


2006.01.27.Fri. 11 : 25 a.m.
BGM : Tore Down House / Scott Henderson & Thelma Houston


 まだ犯人の捕まらない栃木の事件がすっかり報道されなくなったおかげで世間の関心も失せているような気がするが(なんだか楽しそうに見える一夫多妻ファミリーのことなんかどうでもいいから、そっちの続報をちゃんとやってくれ)、セガレの学校ではいまも集団下校が続いている。ところが、これがまたロクでもないことになっておりましてですね、きのうセガレのクラスは授業が延びたために集合時刻に間に合わず置いてけぼりを食い、同じ方向に帰るクラスメイトもいないので、一人で下校したそうだ。ななな何をやっておるんですか学校は。集団下校と言いながら点呼も何も行わず、担任から下校担当者へ「遅れます」と伝える程度の連携もできずに、「そのとき集まった生徒だけ連れて一緒に帰る」なのだから呆れて物が言えない。ちょっと前にも別の件で同じことを言ったような気がするが、やるならちゃんとやりましょうよ。「物が言えない」というわりにいろいろ言っているのはともかくとして、そういう大雑把な「集団下校」でも生徒が危険な目に遭う確率は下がるかもしれないが、これはパーセンテージの問題ではないんである。万が一(=0.01%)のことに備えているのだから、まさか校長先生だって、何かあったときに「でも生徒の99.99%は無事でした」と胸を張ったりはしないだろう。こんなことで「歩留まり」をよくしてどうする。100%守れなければ、何もしなかったのと同じなのだ。完璧にやれないならやれないで、それならこっちは自分たちで迎えに行くから、そう言ってくれないと困る。学校の無責任なアリバイ作りと、「集団下校だから安心」という保護者の油断。その隙間から、新たな犠牲者が生まれないことを祈らずにはいられない。







1.Bandages & Scars
2.Afterglow 61
3.Jet Pilot
4.Atmosphere
5.Ipecac
6.Who
7.Endless War
8.Medication
9.6 String Belief
10.Gramophone
11.Chaos Streams
12.World Waits for You
13.World Waits for You (Reprise)


2006.01.25.Wed. 9 : 40 a.m.
BGM : Okemah And The Melody Of Riot / Son Volt


 首相が記者団の質問に答えて曰く、「あのメディアの持ち上げ方、何ですか。自分の持ち上げ方を棚にあげて、改革まで私の責任と批判している」「メディアが広告塔みたいにしたんじゃないですか。時代の寵児みたいに取り上げたのはどうなのか」−−。辞任前の捨て台詞かと思ったら、なーんだ、自分のこと言ってるんじゃないのか。

 元東大生の被疑者を元東大生(たぶん)の検事が取り調べる。これぞ「大学の自治」というやつであろう。ビラ配布に警察導入した早稲田大学関係者は、すべからく東大に学ぶべし。次回からはOBの警官を呼ぼうね。

 正直、「すべからく」の使い方にはあまり自信がない。正しく使ったとしても、読み手の誤読(「すべて」の意味で読まれてしまう)が怖い。だから仕事の原稿では使わない。そうやって格調の高い言葉が消えてゆく。こともある。

 被疑者となった元東大生を可愛らしい愛称で呼んでいたメディア関係者は、国民的ヒーローの尊厳を貶めた責任を感じて、すべからくドラえもんに謝罪すべし。

 セガレの書き初めが2年3組の代表に選ばれ、どこだかに展示されるらしい。嬉しさも中くらいなり。







1.炎熱の月明かり
2.SINGING ROCKET
3.英雄
4.最新伝説
5.アンチヒロイン
6.ラヴレターの気分で
7.ロングインタビュー
8.TEENAGER
9.エンジの雨
10.ビルの最上階
11.長い坂の絵のフレーム


2006.01.19.Thu. 10 : 10 a.m.
BGM : 九段 / 井上陽水さん


 おそるべき表紙で私に写真掲載を躊躇させた『ワールドサッカーキング』は、いまやすっかりセガレの愛読誌になっている。どうやらトヨタカップが日本国内の少年少女に与えた影響は私の想像をはるかに超えていたようで、あれ以来、セガレは猛烈な勢いで世界のサッカーシーンってやつに関心を寄せ始めたのだった。たぶん、「世界一」を決めるサッカー界の仕組み、みたいなものが把握できたんだろうと思う。ワールドカップの情報にも触れ、クラブチームと代表チームの関係性も理解できたようだ。

 そんな次第で、かつてポケモンや恐竜に向けられていたのと同じ種類の情熱がサッカーに向けられるようになったらしく、このところ毎日のように、WSKのワールドカップ特集記事を見て出場国のフォーメーション図をノートに書き写したり、付録のロナウジーニョのポスターを部屋に貼ったり、付録の選手カードをワクワクしながら開封して「なんだよ柳沢かよ〜」と呻いたり、サッカーショップで買ったカルチョカードでネスタとセーザルとザウリを引き当てて父親に褒められたり、各国リーグの選手名鑑を作ったり、ビッグクラブのエンブレムを色鉛筆で模写したり、過去のワールドカップを綴ったビデオを見て「ドイツつえー」と言ったり、98年のオランダ×アルゼンチンのビデオを家族で観ながら「えっ、この人もあの人もラツィオにいたの?」と大変意義深い(しかし物悲しい)歴史を学んだり、一緒にプレミアリーグの試合を見ながら「チェルシー、モタモタしててつまんないからサンダーランド応援する」と至極まっとうなご意見を吐いたり、ドイツ大会のトーナメント表とにらめっこしながら「父さん、スイス対スペインはどっちが勝つと思う?」と訊いたりして遊んでいる。初めて自分の意思で見ることになる今年のワールドカップは、彼の人生の中で何らかの意味を持つものになるに違いない。印象に残る試合の多い、すばらしい大会になってくれるといいのだが。ちなみに父さんは、スペインの相手がスイスじゃなくてフランスになるような予感がしてるけどね……などと一家三人でさんざん話し合った挙げ句、どういうわけか「決勝はイタリア×イングランド、3位決定戦はドイツ×ブラジル」という結論に。話し合いで決めちゃいけません。







1.Hole Diggin'
2.Fence Climbin' Blues
3.Dog Party
4.Same as You
5.Milk Bone
6.Hell Bent Pup
7.Hound Dog
8.Dog Walk
9.Smelly Ol' Dog Blues
10.Too Many Gittars


2006.01.18.Wed. 10 : 10 a.m.
BGM : Dog Party / Scott Henderson


 それにしても開いた口をふさぐのに苦労したのは、セガレが冬休みの宿題として書かされた「書き初め」だった。毛筆になるのは3年生からだそうで、2年生が原稿用紙に硬筆で書くよう命じられたのはこんな文面である。

■書初手本二年用(杉っ子より)

 うさぎの心ぞうの音がバクバク聞こえた。
「楽しかったよ。たくさんどうぶつがいたよ。」
 わたしの心が、いつもよりやさしくなった。

 杉並区立小学校教育研究会国語部(平成17年度書初手本)
 なんだこりゃ……というのはセガレの感想だが、私も同感である。そして、こんな書き初めを「なんだこりゃ」と思うセガレのことを、とても健全な人だと思う。端から端まで気に入らないのでどこから文句をつけていいかわからないほどだが、まず、全体的に、まるで意味がわからない。「うさぎ」と「わたし」を取り巻く状況や両者の関係性もわからないし、たぶん「うさぎ」は恐怖感や緊張感のせいで脈拍が上がっている(だって「バクバク」だもの)と思われるのに、それがどうして「楽しかった」や「やさしくなった」といった心情に結びつくのかもわからない。

 カギカッコで括られた言葉を誰が誰に向かって語っているのかも謎だ。これが「わたし」の感想であるなら、カギカッコに入れず地の文で書けば済む話だろう。したがって素直に文脈をたどれば、このカギカッコは「うさぎ」の発言ということになる。もしかして、この「うさぎ」は動物ではなく、「うさぎ」という渾名で呼ばれる少女もしくは少年が動物園かどこかから帰ってきて、その様子を興奮気味に「わたし」に報告しているのだろうか。いずれにしろ、読む者を茫然とさせる文章である。正月から人を茫然とさせてどうするというのだ。

 また、大量の想像力(および善意)を動員すれば何とか文意は把握できるとしても、意味がどうこうという以前に、この作文は言葉遣いがまるでこなれていない。少なくとも、新年を清々しく迎えたときに読んだり書いたりしたい日本語ではなかろう。杉並区立小学校教育研究会国語部がどこからこの悪文を引っ張ってきたのか知らないが(「杉っ子」って何だ?)、こんなにギクシャクした読みにくい文章がどうして書き初めにふさわしいと考えたのか、その理由を訊いてみたいところだ。これはむしろ「次の文章を読みやすくなるように書き直しなさい」という課題の例文にこそふさわしいと私は思う。「兎」といえば志賀直哉だが05年10月3日の日誌後半参照、彼だったら、<兎の心臓が活き活きと音を立てているのが愉快だった。動物たちの命に触れたことで、日頃より優しい心持ちになれた。>ぐらいにまとめるかもしれない。

 さらに、これが何よりも大きな問題なのだが、今年は卯年ではない。戌年である。戌年の正月にあえてうさぎの話を選んで小学生に書かせる杉並区立小学校教育研究会国語部は、いったい正月を何だと思っているのだろう。干支という伝統文化を破壊したいということなのだろうか。これもまた構造改革なのか。そう考えれば、およそ書き初めにはふさわしくない「バクバク」などという新奇で品のない非伝統的なオノマトペが含まれているのも頷ける。でも、そんなに伝統文化を否定したいなら、そもそも書き初めなんかやらせるなっちゅう話だよね。首相の靖国参拝もそうだが、やるならちゃんとやりましょうよ、と言いたい。







1.Words From The Wise
2.Thank You
3.Giant For A Day
4.Spooky Boogie
5.Take Me
6.Little Brown Bag
7.Friends
8.No Stranger
9.It's Only Goodbye
10.Rock Climber


2006.01.17.Tue. 11 : 10 a.m.
BGM : Giant For A Day / Gentle Giant


 ダイヤモンドに目がくれて
 乗ってはならぬ玉の輿
 人は身持が第一よ
 お金はこの世のまわり物

 きょう1月17日は阪神淡路大震災が起きた日だが、前にも何度か書いたことがあるとおり、寛一さんがお宮さんを熱海の海岸で蹴飛ばした日でもあるのだった。ちなみに山口(三浦)百恵さんの誕生日でもある。そんな国民的になんとなく気忙しい日に、強制捜査だの証人喚問だの最高裁判決だのといろいろあるのはどういうわけだなどと考えなくもないものの、私はといえばやはり日誌に気が向かず、仕事もわりかし忙しいので簡単なメモだけにしておいた。行かなくちゃ。神保町まで打ち合わせに行かなくちゃ。







1. Nimuoro Neina 
2. Hip Cruiser 
3. Coral Eyes 
4. Once I Loved 
5. The Way 
6. V-1 Funk 
7. Manipura 


2006.01.16.Mon. 9 : 45 a.m.
BGM : Hip Cruiser / 向井滋春


 どういうわけか、このところ気持ちがあまり日誌のほうに向かない。しかし常識に照らせばむしろそのほうが自然で、仕事に支障を来すほど気持ちが日誌に向いているときのほうがどうかしているのである。したがって「書く」には動機が不可欠であるのに対して「書かない」に動機は不要なのだが、それにしたって私の場合はすでに「書く」がいちいち特別の動機を自覚することのない日常になっているのだから「書かない理由」を考えざるを得ないのであり、それは「書くことがない」でも「面倒臭い」でも「ふと我に帰ってバカバカしくなった」でもないし、「忙しい」はこれまでのことを考えれば書かない理由にはならないのであって、今はなんというか、日誌を書くことに「得るもの」と「失うもの」が同じぐらいあるとすれば、前者を増やすより後者を減らしたい気分になっているというようなことだな、たぶん。よくわかりませんね。私もよくわからない。いや、本当はわかっているが、そんなことは書かない。胸のうちにしまっておく。私にだって胸のうちにしまっていることぐらいある、ということが言いたいのかもしれないが、べつに機嫌が悪いわけではない。むしろメンタル面は好調な今日この頃。メンタル面が好調な人間に日誌は要らないってこと? だとすると、じゃあ今まではどんなメンタルコンディションだったのかという話にもなりかねないのだが、そうこう言ってるあいだにずいぶん日誌を書き進めているという現実に直面して唖然としているので、「しばらくは更新が停滞するかも」と書こうとした手がすくんでいるのだった。今後どうなるかは神のみぞ知る。聴いているのは、向井滋春の78年作。いつの間にかCD化されていたのを吉祥寺のタワーレコード店頭で知り、喜々として購入。アナログ盤を聴いたことがなく、向井ファンとしてはずっと大きな忘れ物をしてきたような思いを抱いていたのだ。スタジオ録音の『ニムオロ・ネイナ』を初めて聴きながら、ニマニマしている。6曲目『V-1 Funk』の「V-1」は何を意味しているかというと、ヤクルト初優勝のことだそうだ。なぜそれがファンクになるのかは謎。







1.Beastie
2.Clasp
3.Fallen On Hard Times
4.Flying Colours
5.Slow Marching Band
6.Broadsword
7.Pussy Willow
8.Watching Me Watching You
9.Seal Driver
10.Cheerio


2006.01.11.Wed. 11 : 35 a.m.
BGM : Broadsword And The Beast / Jethro Tull


 いつまでも正月ボケの余韻に浸っている愚鈍な世間はまだ気づいていないが、並外れた観察力の持ち主である私は、2006年の地球が未曾有の大異変に見舞われていることをいち早く察知している。しかし、この有益かつ恐るべき重大情報を、気象庁とNASAと『ムー』編集部のいずれに報告すべきか判断が難しい。なので、とりあえずここで発表する。諸君をパニックに陥れるのは私の本意ではないので、どうか気を確かに持って落ち着いて聞いてほしい。……いいかい? 心の準備はできた? じゃあ、書くよ。

 今年の地球は、自転速度が通常の3倍近く速いのである。これはまず間違いのない事実だ。その証拠に、連休中には私が機械のように正確なペースで1日分の作業をこなすあいだに夜が3回訪れ、昨日は朝から書き始めた8時間分の原稿が仕上がったときに再び朝を迎えていた。私が2日分の日誌を書くあいだに1週間が経過していたのも、たぶんそのせいだと思う。まさに悪魔の所業というほかはない。地球の自転と同調してすべての時計が3倍の速度で稼働しているのは不思議だが、なにしろ悪魔のやることだからそれぐらいは朝飯前なのだろう。1日に3度あるので、どの「朝飯前」なのかは不明だが。私の観察力が上に並外れているのか下に並外れているのかも不明。悪魔め。

 ちなみに表題にある「フォード式」のフォードは自動車メーカーではなく、『あなたの年齢当てます』の作者コーリイ・フォードのことです念のため。







1.Hi Heel Sneakers
2.Alabama Train
3.Looking Back
4.Tell Me How You Like It
5.Walking Blues
6.Home Cookin'
7.Back Doors Friend
8.This Is the End
9.61 Highway
10.Hot and Heavy
11.Cummins Prison Farm
12.Why You Want to Hurt Me
13.Lightin' Monday
14.Stormy Monday
15.Tell Me Who's Wrong
16.That Ain't It
17.Major Daley's Blues
18.I Gotta New Car/Framed


2006.01.05.Thu. 16 : 45 p.m.
BGM : Nothin' But The Blues (Disc 1) / Various Artists


 新年あけましておめでとうございます。
 非常識なミスのない、堅実な1年でありますように。

 JRの脱線やら空港の停電やら東証の混乱やら検査機関の強度偽装見逃しやら何やらと、やたらプロにあるまじきミスが目立った1年の締めくくりに、日本の芸能界でもっとも「完璧」が要求されるステージの上で2本のマイクスタンドが無惨に倒れるのを目の当たりにすれば、誰だってそんなことを祈りたくなるというものである。「前川」と「山川」の言い間違いが番組内の「ネタ」になることで許され、倒れたマイクを直すスタッフが半笑いを浮かべていられるというところに、私たち日本人の職業意識が構造的に強度不足に陥っている(要するにユルい)現状を垣間見た思いのする平成17年のNHK紅白歌合戦ではあった。せめて泣きながら直せマイクスタンド。

 自分と愚妻の実家を行き来し、うまいモンをたらふく食い、甥や姪にしぶしぶながらお年玉を配り、皆が健康であることを喜び、テレビばっか見て「ああコイツらが今どきの人気者なのか」と若い歌手やお笑い芸人の存在を認知するという、例年どおりの正月。チェルシーは勝ち続け、私はセガレに将棋で負け続けている。めでたしめでたし。

 本日が仕事始め。『SAPIO』のインタビュー記事。来週は師匠と歌声のよく似た大物シンガーソングライターのインタビュー、再来週からは久々に単行本の口述取材がスタートと、忙しくなりそうな1月。ありがたやありがたや。他人のことはともかく、自分はおかしなミスをしないように気をつけよう。ちゃんとしたプロの物書きになるのが、今年の目標。初心忘るべからず。それが、さまざまな課題を克服し前進させる根本であるような気がしている。おそらくは家計再建も。

 そんなわけで、今年もよろしくお願い申し上げまする。




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