ブラサカ世界選手権 従軍レポート
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闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)







キャプテン翼勝利学
(深川峻太郎/集英社インターナショナル)




目次7月の日誌南アW杯GL編 / KO編ASIA 2009全仕事江戸川時代homemail



 8月27日 金曜日  (平成22年/2010年)
 さらば上席国税管理官
 BGM : Argilla / Ornella Vanoni

 帰国してから、身も心も安まるヒマがない。一昨日も昨日もブラインドサッカー世界選手権の原稿で、午前4時就寝。今朝は10時から2時間、上席国税調査官と経費の解釈をめぐる攻防戦を展開して、くたびれ果てた。まあ、そんなに激しいアレがあったわけではないが、息詰まりましたよまったく。自宅家賃の経費算入率を13%から25%まで広げさせ、家族旅行の代金を「仕事でネタにした」と主張して3分の1(妻子を除いて私1人分)は経費として認めさせたのが、数少ない戦果。修正申告なんて面倒臭いなぁと思っていたのだが、3年分の修正申告書はその場で向こうが作成するのだった。追加納税の納付書も、その場ですぐ渡される。ゴーストして重版した本の印税が、1冊分丸ごと吹っ飛ぶ金額。それに加えて、いずれ地方税と保険料も追加納付することになる。なので、私は本気で金がない。火の車の家計を立て直すため、しばらくはギャラ交渉で容易に妥協しない面倒なライターになるかもしれない。すまん。ともあれ、もう上席国税管理官の顔を見なくて済むかと思うとホッとする。べつにイヤな人ではなかったが、好きになれというのは無理な相談。帰り際に呼び止め、「このお仕事で人からありがとうと言われるのはどんなときですか?」と質問しようかと思ったが、やめておいた。

 スポルティーバ公式サイト(web Sportiva)に、ゆうべ書いた世界選手権の原稿が早速アップされた。スポルティーバは、4年前の世界選手権記事も書かせてくれた雑誌。いつの間にか、ウェブ主体のメディアになっていた。紙と違って、見えない選手に音声読み上げで読んでもらえるのは大変ありがたいこと。【ブラインドサッカー世界選手権】日本代表、守備面での収穫という記事で、DFの田中章仁選手をクローズアップしてみた。ちなみに遠征中に書いた従軍レポートも、このページの左側にリンクを張ってあります。なんだかアクセスしづらいので読めなかった人もいると思うが、あらためて読んでみてくださいませ。

 遠征前に片付かなかったゴースト仕事は、向こうでもまったく進まず、持って行った資料がただ荷物になっただけだった。現地入り直後、担当者から「慌てなくていいです」とのメールを受け取ったら、デスクもないB&Bのベッドの上で必死で原稿を書く気にはならない。まあ、従軍レポートは必死で書いたし、それだけで手一杯だったわけだが。しかも次の仕事の担当者からは、9/15の締切が9/30に延びたとの連絡もあり、ますます気が楽になったのだった。とはいえ、できる仕事はどんどん片付けて日程のスペースを作り、追加納税の穴を埋めるべく仕事を詰め込まねばならない。今日はヘバったので、明日からがんばる。ほんとうに、がんばる。

(16:10)





 8月12日 木曜日  (平成22年/2010年)
 お知らせふたつ
 BGM : Asylum Choir ll / Leon Russell Marc Benno

 ものすごく久しぶりに、ブラインドではないほうのサッカーに関する文章を仕事で書いた。ごく短いものだが、本日発売の『CALCiO 2002』9月号に、イタリアサッカーに関する雑文が載っているはず。フロムワンの雑誌に書いたのは、たぶん、前回のブラインドサッカー世界選手権アルゼンチン大会の記事を『サッカーズ』に載せてもらって以来のこと。かつてのお茶ズボ担当者から唐突に依頼を受けたときはQBKな動揺があったものの、いざ書いてみると、なんだかホームに戻ったような感じで楽しめた。立ち読まないで、買ってちょ2002。

 13日から24日まで、イングランドのヘレフォードで、第5回ブラインドサッカー世界選手権大会を取材して参ります。その期間中はここではなく、日本ブラインドサッカー協会(旧称・日本視覚障害者サッカー協会)のサイトに間借りするような形で「B1日本代表従軍記者ブログ」的なものを書く予定。観戦記風のコラムを試合ごとに書いてくれと言われたのだが、ブログと両方だと読むほうもややこしいし私も大変なので、そんなことにしたのだった。最初の1本は遅くとも現地時間14日の午前中までに送るつもりだが、どうなりますことやら。ちなみに時差は8時間。ともあれ、Ustream配信なども含めて、皆様もどうぞ大会をお楽しみください。日韓戦(19日)のトークセッション&PVイベント@池袋には、私も現地から乱入する予定。本当にそんなことが可能なのでありましょうか。すごい世の中だよまったく。

(9:30)





 8月6日 金曜日  (平成22年/2010年)
 タックスマンがやって来た
 BGM : The Heart of Saturday Nights / Tom Waits

 朝10時から税務調査を受けてグッタリしている。まったくもってツイてない。やって来たのは、ベンガル似の上席国税調査官(50代前半ぐらいかなぁ)と、子供みたいにあどけない顔をした女性事務官。ひとりで来るものと思っていたので意外だった。女の子のほうは、どこの田舎から連れてきたんだと思うような垢抜けないメガネちゃんだったので、気持ちが和んだけど。

 最初は、仕事の内容とか、ギャラはどうやって決まるのかとか、そんな質問。原稿料がどう決まるのかは「こっちが知りたいです」と答えておいた。だって知らないもん、ページ単価がどう決まるかなんて。調査の本丸は、予想していたとおり、「生活の本拠はどこか(事業所はどこか)」ということ。私には所有しているマンションと賃貸しているマンションがあり、後者を事業所として申告書に書き、その家賃や光熱費を経費に計上してきた。そこには妻子が寝起きしているが、私自身は「生活の本拠兼事業所」がたまたま二ヵ所に分かれているという建前でやっているので、ローンの支払いが生活部分、家賃が事業所部分という理屈なのであるけれど、まあ、税務署の理屈とは違いますわな。賃貸のほうは16%程度しか経費参入が認められないとのこと。まあ、しょうがない。「私の実感とは合いませんが社会通念に従うのはやぶさかではありません」とお答えした。

 3年分の領収書をお持ち帰りになり、やがて修正申告という段取り。追加納税は不可避。家計は大打撃を受けることになるが、交通事故でも起こしたと思って耐えるしかない。「私は父さんとR太郎が元気ならそれでいいから」という愚妻の言葉が泣かせやがる。腹の据わった女と結婚してヨカッタ。ちくしょう、これからガンガン金稼いでやるぜベイビー。

 そんなわけで家計逼迫が明白なため、一時はイングランド出張を中止しようかとも思った。先週、代表の自主練習に顔を出すまでは、8割方そのつもりだった。いろんなことがイヤになっていた。でも、会う人会う人に「イングランド行くんですよね!」と声をかけられてしまった。「迷ってる」とさえ言えなかった。そこで宇都宮徹壱さん(私が最終選考で落ちた賞を獲った立派な方だ)と初めてお目にかかり、「選手たちは4年前とは比較にならないくらい上手くなったんですよ」などと説明した。4年前からどれだけ選手たちが進歩したか、オレが見届けないで誰が見届けるんだよ、と思った。カネなんか、どうにだってなる。

(13:45)