ねんだつ2010
ノックアウトラウンド編


ねんだつ2002〜念力の朝、脱力の夜
ねんだつ2006〜念力と脱力のフーガ





【似てる人2010】まとめ

■メキシコのフアレスと、サイモンとガーファンクルのアート・ガーファンクル。
■メキシコのグアルダードと犬。(by愚妻)
■メキシコのブランコの首と国民新党の亀井静香の首。
■メキシコのアギレ監督と「ツイン・ピークス」のリーランド・パーマー(ローラの父親)。
■アルゼンチンのディエゴ・マラドーナ監督と俊敏なパンダ。
■アメリカのオニェウとロン・カーター。
■ドイツのレーブ監督と野口五郎。
■ドイツの8番エジルと映画「エイリアン」に出てくるアンドロイド。(by 愚妻)
■コートジボワールのカルーと仏像。
■北朝鮮のチョン・テセと泉谷しげる。
■ミスしたときのロビーニョとスベったときの出川哲朗。
■アルゼンチンのマラドーナ監督と映画「殺人遊戯」の佐藤蛾次郎
■チリのマティアス・フェルナンデスと水嶋ヒロ。(by 愚妻)
■チリのGKとタカ・アンド・トシのどっちか。(by 愚妻)
■ドイツのポドルスキー(のシュート)と伊良部(のストレート)。
■アメリカの監督と元オランダ代表のスタム。懐かしい。
■韓国のGKと、もう中学生。(by 愚妻)
■ジャブラニとケロロ軍曹。
■イングランドのキャラガーと原田泰造。(by セガレ)
■レフェリーの西村雄一さんとフルポン村上。音痴なリコーダー聴いてて思い出した。
■スカパーでオリベイラの通訳してる人と楳図かずお。
■ブラジルのジュリオ・セーザルと『トワイライトゾーン/超次元の体験』第四話 『NIGHTMARE AT 20,000 FEET』に出てくる飛行機恐怖症の人。(by 愚妻)
この写真のレーヴ監督と西城秀樹。
■スペインのフェルナンド・トーレスとオカメインコ(by 尾崎さんの奥さん)。





闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)







キャプテン翼勝利学
(深川峻太郎/集英社インターナショナル)




目次5月の日誌アジア選手権2009全仕事リスト江戸川時代homemail

 FIFA World Cup South Africa 2010 special in umiumegusa

念力のロスタイム 
もしくは 脱力のパスタイム 

◎7月14日以降の日誌はこちら
◎グループリーグ編(6/10〜6/26)はこちら

 2010年7月12日(月) 10:15
 スペインはスペインに勝った

■オランダ×スペイン(決勝)
 あれはいつの試合だったか……と思って自分のブログを繙くと、6年前の7月1日、EURO2004の準決勝ポルトガル×オランダ戦のことである。思えば、あの頃から私の気持ちはオランダから離れていたのかもしれない。ポルトガルのGKリカルドのアキレス腱を足の裏で削ったファン・ニステルローイの行為に、私は心の底から憤慨したのだった。デ・ヨンクがシャビ・アロンソに浴びせた16文キックをはじめとするオランダのラフプレイには、あのときと同じ感情を抱いてしまいましたね。端的に言って、不快。どうも彼らには、良い狂気と悪い狂気が裏腹な感じで備わっているように思えて仕方がない。そして、闘志と敵意を履き違えたときに、後者が前面に出る。そんな感じ。どちらも初優勝を目指してぶつかった決勝戦で、オランダはスペインをやっつけるために戦い、スペインは自分に勝つために戦っていた。そんなの本人たちに聞いたわけじゃないから本当のところはわかんないけど、私にはそんなふうに見えた。「果たし合い」みたいなノリで突っ込んできたオランダの挑発にスペインが乗っていたら、たぶん、4人の退場者を出した4年前(ドイツW杯R16)のポルトガル×オランダ戦みたいな泥仕合になっていたことだろう。しかしスペインはギリギリのところで自分自身を抑制し、決闘ではなくサッカーをし続けた。「そうは言ってもオレたちはスペインだし」をポジティブな意味で受け止められるだけの自信と経験を身につけていたからこそ、スペインはスペインに勝つことができたに違いない。スイスに負けたとき「そうは言っても決勝までは残れないだろうから」なんて書いちゃって、本当にすみませんでした。あの時間帯に、あの局面で、あの強いラストパスを完璧にコントロールしてゴールに叩き込んだイニエスタのクールな集中力が、スペイン優勝の根底にあるのだと思う。それがロッベンになかったことは、言うまでもない。

■ウルグアイ×ドイツ(3位決定戦)
 これまでに見たW杯の3位決定戦の中で、もっとも印象に残る一戦だったのではなかろうか。双方とも、納得のいく立派な戦いを続けてきた自分たちにせめて3位の勲章を賜りたいと願い、やりたいことをやり尽くそうとした結果、今大会でも屈指のスリリングな試合になった。フォルランのFKがクロスバーを叩いたラストシーンは、じつにホロ苦〜いオトナの味わい。ビル・エヴァンスの「マイ・フーリッシュ・ハート」か何かかけながら、スローモーションで見たい感じ。なんつってな。フォルランのMVPはかなり感傷的なセレクションだけど、ブブゼラの喧騒が止まった静かな世界にシミジミと沁みていくような、良いエピローグであるなぁ。


 2010年7月10日(土) 11:00
 ブラインド・ラツィオ

 下に埋め込んだのは、ゆうべツイッターで筋金入り(?)のラツィアーレが教えてくれたブラインドサッカーの動画である。タイトルに「14_03_06」とあるから、たぶん2006年に撮られた映像だろう。ディカーニオ、リベラーニ、ロッキ、ザウリ、パロッタら、当時のラツィオにおける豪華レギュラー陣が、アイマスクをして視覚障害者チームと対戦している。ま、私はリベラーニの顔を見ても名前が出てこなかったし、ディカーニオにいたってはラツィオにいたことすら忘れていたわけだが、すげー楽しい。

 イタリア語はさっぱりわからんが(誰か翻訳してください)、どうせディカーニオあたりが「あぁ? 目隠ししてサッカーだ? ンなもん、オレに任せとけよ。シュートなんか目ぇつぶっても入るっつうの。それよりオマエら大丈夫なのか? 危ないから、ちゃんと避けてくれよな」とか何とか挑発しておいて、始まるやいなや「おいマジかよコレ。走るとか無理無理」的に動揺してみせる――と、そんな感じであるに違いない(わかんないけど)。深刻な顔の奴はひとりもおらず、みんな最初からヘラヘラ笑っている。障害者スポーツというより、「ビックリ仰天な面白スポーツ」として扱ってる感じ。日本のテレビで、こんなふうにブラインドサッカーを取り上げる番組は見たことがない。しかし実のところ、日本だって、現場はこれと同じくらい愉快な雰囲気だ。「闇翼」でも選手たちの飛ばすブラックジョークをちょこっとだけ暴露したが、まあ、あんな感じである。そうでなければ、私みたいな人間がこんなに足繁く通うことはなかっただろう。そのあたりを、もっとリアルに伝えたいよなぁ。ちなみにこのラツィオ戦、細かいことを言えば、ゴールがデカすぎることと、サイドフェンスがないことと、審判がオフサイドフラッグを持ってるのが残念。ブラインドサッカーにオフサイドルールはありません。

 2010年7月9日(金) 10:40
 シュワッチ!

 近々、新潮社からこういう本がリリースされるとのこと。題材がブラインドサッカーで、表紙が高橋陽一先生の描き下ろし。なのに私の本ではない――というのが、何とも不思議な感じではある。「闇翼」のタイトルが決まった後、当然こういう表紙案がふと脳裏を過ぎったものの、さすがに前著と似すぎるので提案しなかった(そもそも鈴木成一大先生に何かを提案する気など毛頭ありませんけども)。こっちが二番煎じで「翼」を使ったと思われなきゃいいけどなぁ……なんていうのはクダラナイ自意識だとわかってはいるのだが、まあ、なんともアレですな。相乗効果で、私の本もついでに売れてくれんもんかのう。

■オランダ×ウルグアイ(準決勝)
 ファン・ブロンクホルストとフォルランの長打で前半は1-1、後半はファン・ペルシーだか誰だかがオフサイド・ポジションで守備妨害したのに2-1となり、さらにはロッベンのくせに頭で3-1、9回裏の猛反撃も一歩及ばず3-2でオランダ決勝進出。応援しているときには負け、毛嫌いしているときには勝つ奴らだよな。オランダが天の邪鬼なのか、私が天の邪鬼なのか、どっちなのかよくわからんけど。2点差の時点でアウトしたロッベンが試合終了後のようにニコニコ笑っていたあたり、オランダにはまだ勝者のメンタリティってやつが根づいていないと見た。ずっと負けずに来たことも、メンタル面ではマイナス要因だ。チョーシこいてる奴は必ず躓く。決勝でオランダが負ける要因ばかり探す、天の邪鬼な私。それにしてもウルグアイは愛すべきよかチームじゃった。3位決定戦は、オモローなことをやりたいだけやり倒しましょう。ただしスアレス君は、得点王を狙うフォルラン先輩の邪魔をしないように。それだけが心配。クローゼのシュートだけは手で止めてよし。

■ドイツ×スペイン(準決勝)
 やけに弱気で鈍重なゴジラを、筋書きどおりにあっちこっちからパンチやキックで攻め立てたウルトラマンだったが、とどめのスペシウム光線は意外な人。プジョルのシュワーッチ!な強烈ヘッドが決勝点となって0-1。そういえばそんな武器もあったよね。ドイツは最初から最後まで「スペインとの試合」を戦ったが、スペインは最初から最後までサッカーをした。そんな感じ。ドイツも準々決勝まではサッカーをしていたと思うのだが。ところで日本代表の選手たちは、今大会で「サッカーをした」という手応えがあっただろうか、どうだろうか。とはいえ私はべつに、それがなきゃいけないとは言いません。薄っぺらな二元論を超越したところに、スポーツの醍醐味はある。いちばん大事なのは「W杯を戦った」という手応えだよね。ドイツ乙。キミたち、過去10年でいちばん面白かったよ。


 2010年7月5日(月) 11:35
 ゴジラとウルトラマン

■ドイツ×アルゼンチン(準々決勝)
 アルゼンチンが「怯えて逃げ惑う群衆」のように見えたのは初めての経験である。ドイツは強いというより怖い。自然災害の恐ろしさ。GLであの暴風雨をしのいで勝ったセルビアにさえ「災難だったね」と声をかけたくなる。試合終了後にツイッターで「ゴジラ対自衛隊は4-0」と書いたが、ヒールとヒーローの両面を兼ね備えているあたりも、ドイツはゴジラっぽい。監督のほうは野口五郎と西城秀樹を兼ね備えていますけども。ヒデキ、カンゲキ! アルゼンチンは、せめて百戦錬磨のモスラ(ヴェロン)とキングギドラ(パレルモ)でも起用しないと、若武者ドイツの狼藉を諫めることはできなかったのではないかと悔やまれる。

■パラグアイ×スペイン(準々決勝)
 ガーナのギャンといい、この試合といい、ワールドカップのKOラウンドでPKを決めるのって本当に難しいんだなぁとあらためて思う。たぶん、オリンピックでジャンプや体操の着地を決めるより難しいに違いない。キッカーとしてあそこに出て行く勇気だけで尊敬しないといけませんね。ひとりで会社を代表して謝罪会見に出て行くより勇気がいると思う。日本戦で不慣れなボールポゼッションを強いられて難儀な思いをしたパラグアイは実に生き生きと堅守速攻をくり広げていたが、結局は0-1でスペイン。ピコンピコンとカラータイマーが鳴り始めてからようやく決勝点を奪ったウルトラマンは、果たして準決勝でゴジラを倒すことができるだろうか。ところで、ゴジラにスペシウム光線が効くかどうかを日本映画界は検証したんだっけ?「ルパン対ホームズ」「フレデイ対ジェイソン」的なアレは作られたことがあったのだろうか。


 2010年7月3日(土) 13:45
 盗球ハンズ

■オランダ×ブラジル(準々決勝)
 終盤までノーヒットノーランを続けていた投手が1本の不運なテキサス安打でガタガタになって逆転を許すことがあるが、オウンゴールで同点になって以降のブラジルもそんな感じだったのだろうか。戦術がどうこうという以前に、「えーと、オレたちはブラジルだよな? こーゆーときブラジルはどーすればいいんだっけ?」と、メンタルをどうやって建て直せばいいのかをグズグズ考えているうちに試合が終わってしまったように見えた。セットプレイからの2つの失点は、どちらも置き引きに遭ったような気分かもしれない。なんかヘンな試合だったっすね。オランダ、なんとなくベスト4進出。98年は爆撃機みたいな快進撃だったが、今回は落ちてくる爆弾をうまいことかいくぐりながら到達したような印象がある。

■ウルグアイ×ガーナ(準々決勝)
 延長後半ロスタイムに起きた大事件だけで、今大会最高の娯楽作品に。スアレスのやらかしたことをどう受け入れればいいのか考えているうちにギャンがPKをしくじったので、なんかもうゲラゲラ笑うしかありませんでした。いや、まあ、ムスレラ君を応援してたから笑えたんだけどね。ガーナ人は3日ぐらい眠れないわなぁ。スアレスのハンズ(両手なので複数形が正解だと思う)は、「ワールドカップ史上最大の結果オーライ」として永遠に記憶されることであろう。ああいう場面でヘディングのクリアに失敗した選手を見て、「どうせ入るなら手ぇ使ってPKにすりゃいいじゃん!」と思ってしまうことはよくあるけど、実際にやる奴がいるとは思わなんだ。やけにハンドが目立つ大会に花を添えるようなプレイ。人間て、いろんなことをしでかすよな。と思わせてくれるのが、ワールドカップの醍醐味。PK2本止めたムスレラ君は立派だったが、逆を突かれたときの体勢の立て直しや、倒れてから立ち上がるまでの反応が遅いのが気になる。オランダ戦までに、全身の筋トレやっとくように。


 2010年7月2日(金) 12:40
 思い出は美しすぎて

 きのうは試合がなかったので、ふと気が向いて、98年のオランダ×ユーゴスラビア戦を見た。ビデオテープの巻き戻しという作業をしたのは、何年ぶりだろうか。うちには、98年以降のワールドカップと欧州選手権がほぼ全試合ある。02年に『キャプテン翼勝利学』を書いたときに資料として役立ったので、その後もいざというときのために残しているものの、あれ以降とくに役に立ったことはない。いちおう今大会もDVDに落としておくつもりだが、10年後にまた見たいと思うような試合はまだないような気がする。今夜のオランダ×ブラジルはどうだろうか。98年のオランダは、後半ロスタイムのダビッツの一発でユーゴを下した後、準々決勝でファン・デルサールがオルテガに倒されながらもアルゼンチンを倒し、準決勝でブラジルと対戦した。思えば、オランダの凄味を引き出すにはうってつけの相手ばかりだ。オランダ守備陣をぶっちぎってゴール前に突進するロナウドをダビッツが猛然と追いかけて絶妙のタックルで止めた場面は、ビデオを見なくとも脳裏に焼きついている。今回のオランダがあのオランダよりも良い成績をおさめたとしたら、ちょっと納得がいかない。が、そんな昔話をなぜか偉そうに語るサッカーファンを、『キャプテン翼勝利学』を書いた頃の私がたいへん嫌っていたことを忘れてはいけませんね。98年当時も、ダビッツやオフェルマルスやクライファートに興奮する私に向かって、「ファン・バステンとライカールトの時代はなぁ……」的なことを言う人はいた。うるせえ、と思った。

 あまりにも可笑しかったので、きのうTwittreでリンクを張った動画を、ここにも埋め込んでおく。演奏者に対して「どうか上手にならないで」とお願いしたくなる音楽は、とても珍しい。(※追記:Matt Mulhollandの別作品を発見。口三味線多重録音。たぶんそうだろうとは思っていたが、相当な才人である)



 2010年6月30日(水) 12:45
 成長と成熟のあいだ

■パラグアイ×日本(Round of 16)
 瀬古俊彦のごとき実直なランニングフォームで黙々と右サイドを上がったり下がったりしていた、あの勤勉を絵に描いたような青年がペナルティキックをしくじって終わるのだから、スポーツはときどき残酷だ。慎重と臆病、細心と小心の境界線上を綱渡りするかのような危うい神経戦は、120分で0-0。PK戦は5-3。93年の悲劇的な予選敗退、98年の初出場、02年の自国開催とGL突破、06年の虚無感――と、これまで私たち日本人は短期間のうちにワールドカップの持つさまざまな要素を濃密に経験してきたが、PK戦は初めてだった。これで、ひとかどのW杯常連国が経験することはひと通りやり尽くした気がする。たとえばスコットランドのような伝統国でさえ、たしかKOラウンドには進出したことがなく、したがってPK戦は未経験のはず。そう考えると、これはある意味で「成熟」と言えるのではなかろうか。たぶん、この南アフリカ大会で、「右肩上がりの成長」(もしくはその幻想)は終わったのだと思う。たとえばパラグアイは今回初めてベスト8に進出したが、それをあの国のサッカーの「成長」と見る人はあまりいないだろう。「南ア大会の代表チームは強かった」という語られ方になるはずである。無論、日本サッカー協会をはじめとする現場の当事者たちは「成長」を目指して努力すべきだろうが、私たちファンは、そのときどきに勝ったり負けたりする代表チームの出来不出来を、あたかもワインの出来不出来を語るように語る時代になるに違いない。「W杯で勝ったり負けたりする代表チーム」を持った私たちは、じつに幸いな国民である。

■スペイン×ポルトガル(Round of 16)
 日本戦を終えて床についたのは2時すぎだっただろうか。3時間後、左足ふくらはぎに激痛を感じて目が覚めた。久しぶりに攣りました。そんなにムキになって見てたつもりはないんだけど、やっぱチカラ入ってたんだろうなぁ。そういえば中澤が右サイドで抜かれそうになったとき、一瞬、相手のフェイントに合わせてピクッと体が動いたりしてたもんなぁ。だからって、おまえが攣ってどうする。というわけで、這うようにテレビ前へ行き、いつまた激痛が走るかわからない恐怖と戦いながら録画観戦。日本×パラグアイ戦と同じステージのゲームとは思えないスピード&パワー&テクニックであった。そのギャップもまたサッカーのダイナミズムではあるが、コレ見ちゃうと、あの程度で足を攣らせてる自分はまだまだだな、と思わざるを得ない。これが日本の試合だったら、前半途中で攣ってると思う。私の足のことなんかどうでもよろしい。ビジャの一発で1-0。クロスバーを叩いて落ちたボールがネットのほうへ跳ねたので、審判団はホッと胸を撫で下ろしたことだろう。ポルトガルは結局「北朝鮮いじめ」の印象しか残さずに帰ることになった。なんか存在感薄かったっすね。監督をもっと暑苦しい感じの人にしたほうがいいかもしれない。これでベスト8は、ウルグアイ、ガーナ、ドイツ、アルゼンチン、オランダ、ブラジル、パラグアイ、スペイン。英語圏と漢字文化圏が消えた……と思ったが、ガーナは英語が公用語なんですね。まあ、サッカー自体が共通語なんだから、言語なんかどうでもいいけども。そして私は、まだ左足が痛い。攣った後も立ち上がってプレイする選手のことが信じられない。


 2010年6月29日(火) 10:40
 どれもこれも含めて人間なのだ

 Twitterの興味深い特徴のひとつは、自分のツイートが、RT(リツイート)によってフォロワー(いわば固定読者)以外の人の目にも触れることである。やってない人のために説明すると、たとえば私のフォロワーであるAさんが私のツイートをRTすると、私のことはフォローしていないがAさんのことはフォローしているBさんも、私のツイートを読むことになるわけですね。わかりますか。わかってください。で、AさんのRTだけ見たBさんは、私の日頃の言動や前後の脈絡を知らない。なので、そのAさんのRTにBさんがコメントを付けてRTした場合は、往々にして私の想定していない角度からのツッコミや質問やアドバイスになりがちだ。早い話、それは書き手にとって「トンチンカンな反応」なのだが、それはそれで、自分の書いた短い文章が「それ一点だけ取り出すとどう読まれる可能性があるのか」がわかって面白い。なるほど、俺のことを知らない人にはそう読まれるのか〜。と、いかに自分が「書いた言葉以外の何か」に依存して物事を伝えているかがわかるのであった。

 一方、なんだか困るよなぁと思うのは、そのBさんのRTによって、自分のツイートのニュアンスが歪曲される恐れがあることだ。Bさんのフォロワー(私の非フォロワー)は、最初からBさんのコメントが付いた状態で私のツイートを読むことになる。たとえば、こんな感じ。これは私のフォロワーのRTからではなく、たぶん検索で見つけてRTしたものだが、まあ、同じようなことである。


〈B〉まずは自宅マンションから変えませんか?やる気あれば自分達でできます。RT 〈私〉 マンション管理組合総会終了。33戸のうち、出席者は私を含む役員4人の他は1名のみ。嗚呼、この国の自治意識よ。地域主権とか新しい公共とかよく聞くが、それ以前にやることが山ほどあるように
〈私〉以下の文章が私のツイートである。そもそも「山ほどあるように」の後ろに書いた「思えて暗澹たる気分になる。」がカットされていることも問題なのだが、まあ、字数の関係もあるのでそれは仕方ないとしよう。私のことをそれなりに知る読者なら、私がこんなアドバイスを求めていない(もっと大きな話をしている)ことはたちどころにわかると思うが、Bさんは自称「悩めるマンション理事長さんの励まし屋」なので、こういう読み方をする。それもまあ仕方ないといえば仕方ないことだが、問題はBさんのフォロワーが〈私〉をどういう人間だと思うか、ということだ。私はこのBさんのRTに対して「検索で顧客をお探しなのですか?」という精一杯の皮肉と不快感を込めたRTを返したが、それはBさんのフォロワーの目に入らない。「悩める管理組合役員」のイメージが修正されることはないのである。

 昨夜も、私が「わかっていること」を「コイツはわかってない」という前提でコメントしたRTがいくつかあり、わざとオトナゲないRTを返して遊んでいたわけだが、しかしまあ、それも含めてTwitterである。ストレスも含めて楽しめるのは、サッカーと同じかも。そしてそれは、どちらも人間の営みだからなのだと思う。

■オランダ×スロバキア(Round of 16)
 2-1というスコアが何かのまやかしだとしか思えない怠惰な一戦。ハイテンションでブッ飛ばしてきたKOラウンドに冷水をぶっかけた感じ。私には、オランダがグループリーグ同様の驚き欠乏サッカーを続けてファンの期待を裏切ったゲームにしか見えなかった。しかし、朝日新聞のエース忠鉢信一記者にとっては「美しいオランダサッカー」だったようだ。ネット上では見つからないのでリンクを張れないが、今日の朝刊に「美しいという形容詞がサッカーに使われる言葉だということを思い出させてくれた」というような意味の記事をお書きになっていた(手元に現物がないので引用は不正確)。そうかあ? あのロッベンのゴールそんなに凄いかあ? スロバキアがロッベンの凄さをナメてただけじゃないの? ……と思うが、昨夜のオランダに「美」を見出せるだけの審美眼を持つ書き手でなければ、ミズノスポーツライター賞は獲れないということなんでしょうね。あはは。だったら要らねえよそんな賞!……なーんて啖呵を切れたら、どんなに爽快だろうか。ちぇっ。

■ブラジル×チリ(Round of 16)
 あのオランダが「美しい」のだとしたら、このブラジルは一体どんな言葉で形容すればいいのでありましょうか。えーと……そうだなぁ……「チョー美しい」しか思いつかないや。あーあ。やっぱり、賞は獲れそうもないぜベイビー。だけど、このブラジルを見た後でも、忠鉢記者はあのオランダを「美しい」と形容できたかしらね。サッカーの美には、これぐらいのスピード感が不可欠だと思うのだが。とにかく速い巧いカッチョイイとしか言いようのない3-0。しかしそれも相手の積極性あってのもの。ここで消えるのは残念だが、いろいろ楽しませてくれたチリの人たちには「ありがとうございました」と申し上げたい。


 2010年6月28日(月) 16:20
 それも含めてサッカーではあるが

 家族全員、1時就寝、5時半起床。セガレが学校で居眠りしてるんじゃないかと心配だ。W杯期間中は大目に見るぐらいの世の中であってほしいと思う。そういう「ゆとり教育」なら賛成したい。親父のほうは、セガレが学校に行ってから二度寝。ツイートしたとおり、ブラインドサッカー日本代表が準決勝でアルゼンチンと接戦を演じるという幸福な夢を見た。ゆとりフリーランス。ただし家計を除く。

 それにしても、KOラウンドに入って4試合で15ゴールである。活発というべきか、大雑把というべきかは、微妙なところ。ちなみにグループリーグは(ざっと数えただけなので間違ってるかもしれんが)48試合で計101ゴール。1試合平均およそ2.1点。1-0は13試合、スコアレスドローは6試合。過去の大会とくらべてどうなのかは、面倒臭いので誰か調べてください。(※最初、グループリーグを32試合で計算しておかしなことを書いてました。すいません。)

■ウルグアイ×韓国(Round of 16)
 GKのムスレラ君は、自ら残留を望んでラツィオとの契約を延長した立派な青年である。なので(それだけが理由だとは言わないが)家族一丸となってウルグアイを熱烈応援。日本戦以外では、今大会最高の盛り上がりとなった。なにしろわれわれは、GK中心に応援することに日頃から慣れている。雨のせいでムスレラが後逸したボールが、雨のおかげでゴールライン手前で止まったときは、セガレの小学生時代のさまざまな記憶が走馬燈のように脳裏を駆け巡ったよまったく。白熱の好勝負は2-1でウルグアイ。ところで、まったく関係ない話だが、部活でGKをやっているセガレが、コーチに「トレセン(のセレクション)を受けてみないか?」と言われたとのこと。合格すれば年代別の「杉並代表」への道が開けたりするわけだが、ヘボGKなので意味がよくわからない。どうやら「タッパがある」というだけで期待されているらしい。まあ、そういう場で凄い奴らと比較されるのも得難い経験。がんばってみなさい。

■アメリカ×ガーナ(Round of 16)
 ギャンのシュートがギャン!と決まって、1-2でガーナ。グループリーグに引き続き、PKで同点に追いつくところまでは高校球児のごとき粘り腰を見せたアメリカだが、スポーツ大国の「飛び出せ!青春」も延長戦でジ・エンド。アメリカって、どうして欧州・南米以外の辺境開催大会だと頑張るんだろうか。

■ドイツ×イングランド(Round of 16)
 この好カードで審判が主役になってしまったのは、とても残念なこと。あそこでランパードのゴールが認められて2-2になっていたら、どんな激闘が見られたかと思うと本当に悔やまれる。まあ、結局はイングランドがボコボコにされたかもしれんけども。守備ひどすぎ。それにしても、ドイツのカウンターは、馬に乗って攻め込んでいるかのようなド迫力だった。「さあ、最後の直線に入りました!」という実況が聞こえてきそうな感じ。「結局ドイツ」が現実味を帯びてきたと思わせる4-1。

■アルゼンチン×メキシコ(Round of 16)
 また誤審。要するに、あれだけのスピードで動くプレイを肉眼で判定するのは限界がある、という当たり前の結論になるんでしょうね。わからないのは、ビデオ判定を導入していないのに、スタジアムの巨大ビジョンでリプレイを見せていること。誰が見ても明らかなゴールやオフサイドが否定されたのでは、不利な判定を受けた選手たちが気持ちを切り替えるのが難しかろう。サポーターだって暴れたくなる。あくまでも肉眼による判定を続けるなら、とりあえず現場ではウヤムヤにしておくのも一つの知恵ではあるまいか。眠かったので試合展開をあまり覚えていないが、3-1でアルゼンチン。こうなったら、メッシがノーゴールのままアルゼンチンが優勝するのを見てみたいとも思う。それにつけても、あれだけ改革に及び腰な日本相撲協会がとっくの昔にビデオ判定を導入しているのは面白い。


South Africa 2010 special
Text:深川峻太郎 / BGM : 「遠い世界に」矢野真紀