闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)







キャプテン翼勝利学
(深川峻太郎/集英社インターナショナル)




目次5月の日誌南アW杯GL編 / KO編ASIA 2009全仕事江戸川時代homemail



 7月29日 木曜日  (平成22年/2010年)
 おじさんはね
 BGM : Blue Valentine / Tom Waits

 ゆうべ渋谷のポルトガル料理屋でワインをガブガブ飲みながら24歳の女の子(という言い方は立派な社会人に対して失礼かもしれないが「女性」と書くとヘンなニュアンスが出てしまうし実感としてもやはり女の子)の身の上話を聞いていて思ったのは、私はもう、20代の悩みに対処するには歳を取りすぎたような気がする、ということだった。自分の娘なら違うのかもしれないけれど、二十以上も離れていると相手の傷になかなかリアリティを感じにくい(その深さを忘れている)し、5年後や10年後にはその傷が信じられないほどすっかり完治していることを知っているからといって「まあ時間が解決するから」などと言ったところで何か意味があるのかそんなもん。だいたい、自分が24歳ぐらいのときに団塊の世代と呑むのがスッゲェ鬱陶しかったことを思うと、何を言っても余計なこととしか思えない。放っておけば誰でも経験することを先回りして偉そうに教えるのは、なんとなくフェアじゃないような気もする。

 まあ、それでもウーとかアーとか唸りながら自信なさげに話をしていたのだったが、ただ一点、「あのとき別れなければよかった……と後悔する相手はいませんか?」という質問にだけは、「そんなのは一人もいない! 別れてよかったと心の底から思う!」と、堂々と胸を張ってお答えした。何を威張っていたのか自分でもよくわからないが、まあ、本当のことである。人はしばしば「出会い」に感謝するけれど、人生は「別れ」の積み重ねでもある。誰かが去っていかなければ、いろいろスッキリしないことも多い。だから去った人たちにも感謝したほうがいいと思うんだよ、おじさんは。うんうん、思う思う。出会うばかりの人生なんて、ややこしくていけない。どうせ最後は全員と別れることになるんだし。

(11:40)





 7月22日 木曜日  (平成22年/2010年)
 焦りと苦味の夏
 BGM : Santana 3 / Santana

 3連休はべったりとブラインドサッカー代表合宿にくっついて回り、火曜日はSAPIOのコラム執筆、きのうの水曜日は取材で和光市くんだりまで足を運んでいた。ぜんぜんサボっていないどころか、このクソ暑いのにかなり精力的に行動している。しかし結果的に、本線のゴースト仕事がまるで進展していないのが問題だ。問題だ問題だ。ブラサカ関係者のツイートによれば世界選手権のキックオフが24日後に迫っているとのことで、焦りは募るばかり。とにかくたくさん書かねば。土曜日は東京カナデルバッハ(リコーダー合奏団)の練習もあるから、笛も吹かねばならん。ねばねばな夏。

 そんなわけでツイートもブログも控え目な昨今だが、これは忙しいだけが理由ではない。おのれの来し方を振り返りつつ深く自省したきことがあるゆえ、外向きに書くことにいささか消極的になっている。ブログやツイッターは「良き自分」と対面するには好都合な場所だが、「悪しき自分」と対峙するには沈黙こそ金、という気がしてならない。饒舌はしばしば自分自身を欺く。できることなら座禅でも組んでみたいとすら思う今日この頃。座禅を組みたい人間が果たしてサンタナなんか聴くもんですかねぇ、という問題はあるが、まあ、それはそれとして。

(11:40)





 7月15日 木曜日  (平成22年/2010年)
 要するに遊びに行っただけのこと
 BGM : Tropical Dandy / 細野晴臣

 きのうは夕刻に「サポーターがいないと練習ができない」という落合さん(ブラインドサッカー日本代表)のツイートを見るやいなや体がムズムズし始め、ただちに仕事を放棄して乃木坂の都立青山公園に向かったのだった。何だったんだろうか、あの衝動は。これは本当のホンネで言うけど、そこに「人助けをしたい」などという恩着せがましい気持ちはなかったし、「人助けをしてるオレ」への陶酔感もなかった。むしろ「ああ助かった」と思ったような気がする。いろいろムシャクシャしていて仕事も捗らず、ウツウツとしていたので、どっかに行って誰かに会いたかったんだろうな、きっと。つまりオッチーのあのツイートは、私にとって、「これから乃木坂で飲むけど来ない?」というお誘いと何ら変わらなかったのである。

 そんなわけだから、オッチーを取材に来ていたNHKの人にカメラを向けられ、「なぜこうしてサポートしているのですか?」と質問されたときは、虚を突かれて頭の中マッシロになった。めざましテレビの取材で藪から棒に「岡田さんにとってブラインドサッカーの魅力って何ですか?」と質問されたときもマッシロになったので、そもそもこういうのは苦手なわけだが、今回は取材者としてではなく一サポーターとして訊かれたのだからなおさらだ。「なぜ」って訊かれても、「楽しいから」「面白いから」「好きだから」「元気になれるから」といった子供みたいな言葉しか咄嗟には出てこない。ブラインドサッカーに関する具体的な質問なら何だって(訊かれてないことまで)答える自信があるけど、こういうのはダメだ。いろんなことをアーとかウーとかウワゴトのようにゴチャゴチャ口にした挙げ句、最終的にはたぶん「むしろ選手たちが僕らをサポートしてくれてるんです」みたいなことを言ったんじゃないかと思うが、まあ、使われないわな。ともあれ、「闇翼」を書いたことを話したら「そ、そうなんですか……読みます」とのことだったので、(amazonが在庫切れしてるのが気になるが)1冊は売れそう。乃木坂まで行った甲斐があるというものである。人はあんがい、取材前に参考文献を探さないんですね。

(11:15)





 7月14日 水曜日  (平成22年/2010年)
 そろそろW杯後の対応を考えねば
 BGM : 11:11 / Rodrigo Y Gabriela

 思いがけず本気で観戦してしまったワールドカップが終わり、ふと気づけば仕事が猛烈に追い込まれているのだった。この1ヶ月、私は何をしていたんだろう。茫然としている。テレビとツイッターのせいで、目にもかなりのダメージを受けた。大変だ。いろいろ大変だ。延長後半、PK戦突入の数分前に帳尻が合うように頑張るしかない。ハナから延長戦を睨んだ戦い。でも交代要員はいない。

(12:10)


※W杯期間中の日誌は、GL編(6/10〜6/26)KO編(6/28〜7/12)でどうぞ。


 6月8日 火曜日  (平成22年/2010年)
 そろそろW杯への対応を考えねば
 BGM : Havana Central / Sunlightsquare Latin Combo

 というわけで、こちらを放置してTwitterにかまけているうちに、首相が与党幹事長と共に辞め、次の首相と与党幹事長などが決まり、民主党の支持率は見る者を茫然とさせるほどのV字回復を見せ、吉田某はブログで「ライターの権利保護には主婦ライターの一掃が必要」と叫んだかと思ったらその記事がたちまち何者かによって削除され、なんだよこれは要するに「暴論→炎上→話題になって知名度アップ」というある種の焦土作戦(意味は違うが)だったのか?と思いつつ、釣られた自分を大いに恥じている今日この頃である。いやぁ、こうしてダラダラ書けるのはいいなぁ。これは字数の問題ではなく、ホームに戻ってきた安心感であろう。Twitterには、どういうわけかアウェイ感がある。

 で、もうじきワールドカップなのだった。過去2回はこのブログをワールドカップ仕様にして感想など書いた(20022006)が、今回はどうしよう。自分がどの程度の情熱を傾けて観戦するのか予測がつかない。さほど忙しくはないから見る時間はありそうだが、いまのところどの国がどのグループにいるのかも把握していない不熱心さ。でも、おっぱじまれば一生懸命見るんだろうなあ。問題は、家庭における観戦スタイルである。中1でサッカー部員のセガレにとっては「いろんな意味を理解した上で本気で見る最初のワールドカップ」なので、たくさん見たいだろうし見せたいと思うのだが、時差やら塾やら何やらの関係で、なかなか一緒に見られそうにない。HDDにどんどん試合が溜まっていきそうな予感。家族の「時間割」を真剣に考えなければいけない。あと、セガレにとっては、「いかに学校で友達から試合結果を聞かずに帰宅するか」も大問題。

(16:10)