闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)







キャプテン翼勝利学
(深川峻太郎/集英社インターナショナル)




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 10月28日 木曜日  (平成22年/2010年)
 アップルの人
 BGM : Circus / Argent

 ツイッターとの重複を避けようと心がけるとブログ更新が滞るので気にせず書くことにするが、きのうAirMac Expressを買った。宮沢章夫さん(面識はないがツイッターで何かの拍子に言葉をやりとりしたら「さん付け」にしたくなるのは当然といえば当然だが不思議といえば不思議だ)のエッセイ集『アップルの人』(新潮文庫)を、それはもうゲラゲラゲラゲラ笑いながら読んだ際、その存在を知ったのである。iTunesの音楽をワイヤレスで飛ばして部屋のオーディオを鳴らせるというのだから魅力的だ。

 ところが、AirMac Expressを電源に差してAirMacユーティリティをインストールして起動しても、機器を検出してくれない。つまり、AirMac Expressがそこにあるにもかかわらず、iMacは「ない」と判断したということだ。いや、あるだろうそこにと言ってはみたものの、iMacには耳がないので意味がない。リセットボタンを押して何度やり直してもダメだった。

 なので、「また高価な燃えないゴミを買ってしまったのかおれは」と激しく後悔しつつ、今日、いちおうダメモトでアップルのサポートセンターに電話で問い合わせてみたのである。『アップルの人』に、近頃のアップルの人はとても親切だといったようなことが書いてあったので、それがどの程度のものなのかたしかめてみようという気持ちもなかったわけではない。

 ものすごく親切だった。担当の男性Hさんが最初に教えてくれたのは、「完全なリセットの方法」だ。マニュアルには「リセットボタンを10秒間押す」という方法が書いてあり、それは私もやったのだが、これでは完全に工場出荷時の状態にリセットできないらしい。AirMac Expressを電源から外し、リセットボタンを押したまま再び電源に差し込むと、高速でオレンジ色のランプが点滅するので、その点滅を確認したらリセットボタンを押すのをやめる。それが「完全なリセットの方法」だ。大事なのは点滅が「高速」であることで、それがどれくらい高速なのかわからず不安だったが、やってみたら明らかに高速だったので安心し、私はHさんに「高速で点滅したので手を離しました!」と報告したのだった。この時点で、気分はもう先生の前の生徒である。

 完全なリセットをした結果、AirMacユーティリティがAirMac Expressを検出してくれたので、「では改めて設定作業をしてください」と電話を切られるかと思ったが、そうではなかった。Hさんはそれ以降の設定作業もすべて指導してくれたのである。で、パスワードを入力したりチェックボックスを入れたり外したりいろいろ作業した後、「ではその状態でiTunesで音楽をかけてみてください」と言われ、プレイボタンを押した瞬間にオーディオ装置のスピーカーからフランク・ザッパの「Over-Nite Sensation」が流れてきたわけだ。

「で、出ました!」と興奮する私に、「良かったですねぇ」としみじみ言ってくれたHさんは、とても良い人だ。久しぶりにコンピュータに感動した。ありがとう、アップルの人。でも、どうしてアップルの人たちは「完全なリセットの方法」をマニュアルに書いておかないのだろう。

(17:00)






 10月25日 月曜日  (平成22年/2010年)
 お忙しいところ恐縮ですが
 BGM : Jamming With Edward / Nicky Hopkins, Ry Cooder, Mick Jagger etc.

 ひまである。今日は愚妻と2人でアメ横へ行ってくだらない買い物をし、さらに銀座まで足を伸ばして和光のカフェでマロンパフェを食って帰ってきたというぐらいひまだ。なんか知らんが、愚妻は秋になるとマロンパフェを食わないと気が済まないのだった。毎年、理想のマロンパフェを求めていろいろ調べている。今日のは「理想に近い」とのことで、満足そうではあったが、まだ理想どおりではないようだ。私にとってはどれもマロンパフェ以上でも以下でもないので、意味はよくわかりません。マロンパフェで1890円ってどうなんだそれはと思わないでもないが、まあ、松茸で理想を追求する妻よりは安上がりだ。あと、子供の受験で理想を追求する妻よりも圧倒的に平和。

 さて、こうしてポカッとひまになったときに必ず考えるのは「俺はこれからいったい何をして生きていけばよいのでしょうか」ということである。忙しくなると途端にそんなことは忘れてしまうので、たぶん考える必要はないんだろうと思うのだが、まあ、考えるわけだよ人はそういうことを。情けない話だが、もうキャリア20年の46歳だというのに、「やれ」と言われた仕事をやるばかりで、いまだに自分が何をしたいのかよくわからない。いい加減ゴーストとかやってる場合じゃないような気がしたりもするが、しかし一方で、ジツゲンできそうなジコはとっくにジツゲンしているという手応えもあり、オマエそんなこと言ってちゃダメだろうとも思うものの、そういうときにかぎって、本気で腕をふるったゴースト仕事が高く評価されたりして、そうすると、この稼業もまんざら捨てたモンじゃないと思えるのだった。自分の本であれ他人の本であれ、良い本を作るのは気分がよろしい。だが、今そんなことより気になるのは「まんざら」だ。何だ「まんざら」って。

 ともあれ、勉強だな。まんざらでもないライター人生にするには、勉強しないとダメだ。

(17:25)






 10月19日 火曜日  (平成22年/2010年)
 悪魔と神様の順番
 BGM : Slow Train Coming / Bob Dylan

 このブログでは告知していなかったような気がするが、ネットラジオに出演した。インターネットラジオ Kizzna「言葉で出逢う人と人」というコーナーで、2回にわたって『闇の中の翼たち』を取り上げていただき、ブラインドサッカーについて喋っている。なんでそんなことになったかというと、この番組のパーソナリティである原きよさんがセガレの幼馴染みのお母さんの妹さんなので、私に声をかけてくださったのである。もう一度いうが、原さんは私のセガレの幼馴染みのお母さんの妹さんなので、私とは何の血縁関係もありません。わかるか。わかるよな。そもそも私の声はボソボソして聞きにくいが、収録時は原稿でヘバっていたのでますます声にチカラがなかった。もしかしたら面倒臭そうに受け答えしているように聞こえるかもしれない(私自身そう聞こえなくもなかった)が、決してそんなことはない。あれでも懸命に喋っているのである。勘弁してくれ。

 この1週間は何をしていたかというと、わりとブラブラしていた。仕事は口述取材が1本、対談取材が1本、原稿はさっき書いたブラザーのレーザープリンターの紹介記事1本だけ。それ以外は、笛の練習をしたり、知り合いのライブに行ったり、笛の練習をしたり、料理をしたり、笛の練習をしたりしていた。その前は1ヶ月で2ヶ月分の仕事をしたので、まあ、バチは当たるまい。いよいよ地方税の追加納税も請求され、やがて国民健康保険料の追加分も求められるであろうから、ブラブラしている場合ではないのだが、実は驚くべき風力の神風が吹き、制作に携わったある本がヒットしてくれたので、税務調査によるマイナス分をほぼ回収できる見込みになったのだった。出入りが激しすぎて、熱が出そうだよまったく。まあ、人間、悪いこともあれば良いこともある、ということである。しかしコレ、順番が逆(ヒットで手にした印税を追加納税で持ってかれる)だったら、税務署に火ぃつけたくなるくらい腹が立ったかもしれんよなぁ。結果は同じでも、神様への感謝で終わるのと、悪魔への憎悪で終わるのとでは、ずいぶん心持ちが違うであろう。人生、順番が大事ですわ。どうせ「勝ち組」も「負け組」も最後はみんな引き分け(死って勝ち点1ってことだろ?)で終わるなら、追いつかれて終わるより、追いついて終わったほうがいいよね。

(12:55)






 10月12日 火曜日  (平成22年/2010年)
 AサッカーとBサッカー
 BGM : Black Market / Weather Report

 南アフリカW杯終了後から続いていた過密日程が、ようやく一段落。ふと気がつけば1ヶ月もブログを書いていなかった。で、ツイッターにかまけているうちに何かの拍子で知り合ったのが、アンプティサッカー日本代表チームである。片脚のない人がフィールドプレーヤーをやり、片腕のない人がGKをやる7人制サッカーだ。そういうものがあることは数年前から知っていたが、日本で始まっていたことは知らなかった。どうやら今年の春にFCガサルスというチームがひとつだけ誕生し、それを母体とする代表チームが結成され、いきなり今月16日からアルゼンチンのロザリオで開催される「ワールドカップ」に出場するという。出発は明日。ブラインドサッカーの取材をアルゼンチンの世界選手権から始めた私としては、かなり大声で呼ばれたような気がしなくもないわけだが、さすがに時間も金もないので渡航は5秒で諦め、10日にフットサルポイント朝霞台で行われた大会前最後の練習を見学してきたのだった。

 まだ詳しいことはよくわからないが、このサッカーならではの特殊なルールとしては、まずクラッチ(杖)で故意にボールに触れると「ハンド」だそうです。クラッチは脚の代わりではなく、手の延長だと解釈するわけですね。まあ、クラッチでボールをコントロールし始めたらサッカーではなくホッケーみたいになってしまうので、それはそういうものであろう。あと、使っていいのは「健脚」のほうだけで、中には失ったほうの脚が膝上や膝下あたりまで残っている選手もいるが、そちらでボールに触ってはいけません(なんというファウルになるのかは不明)。クラッチで手がふさがっていてスローインはできないので、キックイン。ヘディングはもちろんオーケー。ピッチサイズはおおむね60m×30mで、ゴールも通常よりやや小さいそうだ(写真はフットサル用なので、これよりは大きい)。

 そんなルールで、サッカーをやるのである。上中進太郎選手(一番上の写真の5番のビブス)にクラッチを借りてちょっと走ってみたが、走るというより「棒幅跳び」みたいな感じで移動するのであり、言うまでもなく、私には無理。まあ、ふつうのサッカーもどちらかというと無理なので私がやっても何の参考にもならないわけだが、たぶん、こんなに腕力が必要なサッカーはほかにないであろう。選手のみなさんは、ガシガシと走っていた。それはそれはとても楽しそうに。楽しいことはいいことだなぁ、と思いながら帰ってきました。

 

 なにしろ国内に1チームしかなく、したがって日本代表チームは今回のワールドカップで初めてまともに試合をするそうだ。しかも初戦は地元アルゼンチンとの開幕戦。よその国の試合を見て心の準備をすることもできないという気の毒な状況ではある。しかしGK前田選手は俊敏な動きを見せていたし、キャプテンの新井選手も守備の出足がすばらしくて頼もしい。それより何より、日本チームには、ブラジルからやって来たジアス・松茂良・エンヒッキ選手(上の写真。通称ヒッキ)がいる。いや、すごいっすよ、この人。キープ力、シュート力、パスのセンスなど、そこらの素人フットサル野郎じゃ勝てないと思うね。べつに私が自慢することではないが、首の後ろにボールを乗せたりなんかしながらのリフティングも楽勝だ。なんかもう、ほんとサッカー好きなんだろうなぁ、としか言いようがない。ちなみに新井選手はみんなに「ロッベン」と呼ばれていた。下の集合写真を見れば、どれが新井さんかはわかるかもしれない。アルゼンチンは遠くて大変(ブエノスアイレスからさらにバスで5時間も移動するらしい)ですが、いい試合をして、たくさんの財産を持ち帰ってほしいですね。大会の組み合わせ等は、日本アンプティサッカー協会のサイトでどうぞ。

 

 ブラインドサッカー日本代表のほうも、きのう八王子クーバーフットボールパークでの練習にお邪魔してきた。さすが、すでに世界を知っているだけに、こちらのほうが練習に緊迫感があるように感じた。12月のアジアパラゲームスに向けて、選手たちは肉体改造をはじめとするシュート力強化に励んでいる。敵の分厚い守備をどうこじ開けるかも、ヘレフォードから持ち帰った大きなテーマ。久しぶりに顔を出したせいか、こっちが訊く前に、いま何を考えてどんな練習をしてるのかを、みんないろいろ話してくれた。詳しくは書かないが、要は「あえて接近戦を挑む」という感じでしょうか。個人的には、図体のでかいイランとの試合で、練習の成果が試されるのではないかと思っている。紅白戦では黒田トモさんが相変わらずビシバシとゴールを決めて好調な様子。広州のほうもお金ないので行けそうにないが、AもBもがんばれ〜!

(17:20)