"HIZAKURIGE(膝栗毛)"・・・歩いて旅をするの意

きしむ扉を開け見ると、空をつらぬく高速道路。
袋をしばった枝肩のせて、ススキを掻き分け旅に出る。


出くわしたのは虹の陰。
ユラユラと、ピトピトと、綺麗に見える虹の陰。

道らしきものたどって歩く。

足下で、乾いた土が粉をあげる。
大きく振る手が草たたく。
小さなやつらが跳ね回る。
蹴ちらし歩くと目が回る。
いっそのことと飛び込むと、小さなやつらは消え去った。

グシャ

足をくじいて川ポチャリン。
川に流され大の字に。
空がよく見え大の字に。
雲がよく見え身をまかす。

気づけば雲の狭間に浮いていた。

吹くと風、泣くと雨。
開くと真っさかさま1メートル。

雲のホームで子供に誘われ乗る車。

機関車だ。

凄い勢い。
凄い速い。

凄い凄い。

窓から飛び込む小さいやつら。
壁にイスに車掌にぶつかる。
頭をやられて踊る車掌。
ヘッド!ヘッド!ヘッドバンキング!

耳を持たれて立たされる。
踊れ踊れとドヤされる。
踊る踊る。
アンコール、アンコール。
アンコール、アンコール。
アンコール、アンコール。

目が回った、次の駅。

窓から見るとホームは広い。
窓にもたれて見ていると、最後の雲から発車する。

回す機関車、回る歯車、夢の世界。
夢を見るうち無くなった。

ゆらめく音に貫かれ、回るうちに泣くなった。



小さな星

泳ぐ泣く

丸く泣く



ひとつになった世界。
生まれ始める営み。

海ができ、草がはえ、世界ができた。


思い出す。

頭をなでられてた小さな自分。

もいちど立って歩き出す。

透明な世界。

リズムをとって、歩き出す。

したたる涙、下を向く。
手を振るリズムで降る涙。
縦に縦に振る涙。

涙に煙った向こうから。
雲がくる
水平に水平に、雲がくる。

歩いてく。
歩いてる。

歩いていると、晴れていく。
まだ晴れないけれど歩いてく。

歩いてく。
歩いてく。
晴れていく。
てくてく歩くと晴れていく。

袋しばった枝肩にのせ。
てくてく歩くと晴れていく。

しっかり歩くと晴れていく。

小さな物が跳ねてくる。
雲が戻って、草が戻って、世界が戻る。

戻ったところで降るものは。
小さな小さな世界。
小さいけれど、大きな世界。

てくてく歩く。
てくてく歩く。

てくてくてくてく。
てくてくてくてく。

高速道路は続くけど。

草むら掻き分けてくてく歩く。

川に日が差して、山に日が差して。

気持ちが良くて。

てくてく。てくてく。
てくてく。てくてく。



てくてく。てくてく。


文/絵:指田克行
wann recordings 第三弾オムニバスアルバム「HIZAKURIGE」発売中
→ wann recordings 公式ホームページ

wann tongue backnumber #1 | #2 | #3 | #4 | #5 | #6