wann tongue

Bitches Blew

傷付くことを恐れた隣人が
顔色を伺い
どこかで話した種を蒔く

瞼と躯に架せた１/2の諍い
ため息、失望、嘲笑、諦め
嫉妬、排他、快楽、理想

名刺が落ちていた午前２時
２匹の犬のささやかな儀式
底に滴った雫の足跡
その滴りをうまく避けて歩く
その男は跛

酔っぱらったブコウスキーと、明日の約束をする
無神経に盲目的にYESという大人に
綺麗事と言う意味を
意識の中の無意識を無意識の中の意識を
見たこともないものを説明するのに
パラダイムなくして認識させるにはどうしたら良いかを

ジャムバンドのレクイエム
リメンバーマイルス、エレクトリックマイルス

ジャズバーでは滅多に流れない
主、こんな夜にはPharao's Dance
隣に座った雄弁を見事にかき消すBitches Brew

実体とは経験の延長であり
世界とは
その中で実体を見ている側が作ったしきたりで
世界では
世界があるように見える経験が行われているに過ぎず
ものという実体さえも
ものがあるように感じられる経験があるだけ

渾沌に落ちながら
畝る、曲がる、微笑み、囁くSpanish Key
リアル、リアル！リアルイェー！
具体、雄弁、小細工、面子

虚構？虚栄？自己防衛？
そんなこと、誰にも問題じゃ無いさ
知りたいのは
このグラスに浮かぶ氷の沈んだ先にあるもの
塵の果てにあるもの
First thoughtを超えられるもの
シンパシイとは同情ではない
自意識過剰の
お誂えな場所へお帰り

騒ぎの中　　地下のトイレで
見慣れた曇りガラスに
途中で切り上げた憂鬱な夢の朝

多くの声が反響しても
耳に残るのは一つだけ
そう、　
大丈夫、きっとあの芽は育ちはしないよ
だって、もう踏まれてしまってるんだ、そこは

扉の外は街
何も支配しない街
犬が餌を探す街

風よ、吹け
Bitches Blew

そこには色がある、だけ

●石川麻由●

石垣島ではあちこちで牛が放牧され柵も牛舎も人家すら見当たらないところもあります。進んで行くと、のんびりと草を食べている牛の奥には終戦後まもなく廃虚になった病院、そして閉ざされた叢には苔に土に帰って行く人骨がそこにいました。

今年も旅しま～す。

● wann tongue backnumber　＃1