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Review: David Torn, Prezens
2007/06/11
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(ECM, ECM1877, 2007, CD)
1)Ak 2)Rest & Unrest 3)Structural Functions Of Prezens 4)Bulbs 5)Them Buried Standing 6)Sink 7)Neck-deep In The Harrow... 8)Ever More Other 9)Ring For Endless Travel 10)Miss Place, The Mist... 11)Transmit Regardless
Produced by David Torn. Recorded: 2005/3.
David Torn (guitars, live-sampling and manipulation), Tim Berne (alto saxophone), Craig Taborn (fender rhodes, hammond b3, mellotron, bent circuits), Tom Rainey (drums); Matt Chamberlain (drums) on 10.

David Torn はUS出身で fusion 〜 jazz/improv guitar の文脈で活動する奏者。 1980年代に ECM、CMP、Windam Hill といったレーベルに録音を残している。 1992年の聴覚神経腫瘍手術後は、 プロデューサや映画音楽作曲家としての活動が主になっていた。 そんな Torn が久々にリーダー作をリリースした。 それも、レーベルは ECM だ。 期待が大きかったので、聴いていて少々不完全燃焼気味なのだが、 それでも充分に楽しめる佳作だろう。

2000年代に入ってからプロデュースで縁のある Tim Berne 界隈のミュージシャンとの録音で、 ECM レーベルというより Thirsty Ear の The Blue Series のような顔触れだ。 Time Berne の trio Hard Cell (Berne / Taborn / Rainey) に Torn が加わった編成、 もしくは、4tet Science Friction (Berne / Ducret / Taborn / Rainey) の Marc Ducret (guitar) の代わりに Torn が入った編成とも言える (Hard Cell, Science Friction 関連のレビュー 1, 2, 3)。 10曲目には jam band の文脈で知られる Critters Buggin の drums Matt Chamberlain がゲスト参加している。

編成から Tim Berne 色濃いのだろうかと少々期待したが、 やはり Torn のリーダー作らしく、 浮遊するような electronics な音弄り多めの guitar でテクスチャを作るような 音作りだった。 もちろん、それも悪くない。 "Miss Place, The Mist..." の (1980s 的な) ethnic っぽさも Torn らしいかもしれない。

サイドメンの中で最も印象に残ったのは、drums の Tom Rainey。 時折、"Structural Functions Of Prezens" の後半の炸裂するように叩きまくる展開や、 "Neck-deep In The Harrow..." や "Ring For Endless Travel"、 "Transmit Regardless" などでの中で聴かれる パルス的にぎくしゃくした IDM 的なビートなどが良い。 Rainey の drums が、ambient 的になりがちな Torn の音作りに、緊張感をもたらしている。 そこがこのアルバムの最も気にいった所だ。

一方、Berne は alto の弱目の音を多用し 辛気臭いとき (Bill Frisell との duo や Miniature) の Berne 節だし、 Taborn の organ 類も他の effect と混然一体にテクスチャを作り出している時が多い。 それも悪くないのだdが、 Berne の bariton saxophone や Taborn の piano の強い音で Torn の電子的なテクスチャに切り込んで欲しかったようにも思った。

[sources]