中央アジア・ウズベキスタン (Uzbekistan) 出身の女性歌手 Sevara Nazarkhan が、 Hector Zazou プロデュースの Yol Bolsin (Real World, CDRW109, 2003, CD) (レビュー) から4年ぶりに新作をリリースした。 迎えたプロデューサの一人 Victor Sologub (Виктор Сологуб) は、 1980年代旧ソ連時代に レニングラード (Ленингад, СССР (Leningrad, USSR)) アンダーグラウンドの rock グループ Странные Игры (Strannie Igri, Strange Games) (関連する談話室の発言 1, 2) のメンバーとして活動を始め、 現在は electronica/breakbeats のグループ Deadушки (Deadushki) (レビュー) のメンバーとしてサンクトペテルブルグ (Санкт-Петербург (St. Petersburg), RU; 元レニングラード) を拠点に活動を続けている。 もう一人のプロデューサ Bruno Ellingham は1990年代から イギリス (UK) の club music のコレクティヴ Perfecto (Paul Oakenfold & Steve Osborne) 界隈で活動し、 New Order, Get Ready (London, 2001) でもエンジニアを勤めていた。 録音は主にタシケント (Tashkent, UZ) の彼女自身のスタジオで行われており、 sato (撥弦楽器) の Toir Kuziev、percussion の Shuhrat Mirusmanov など 伝統的な楽器を演奏するミュージシャンの顔ぶれは前作と大きく変わっていない。
聴いて最初に思い浮かべたのは、 1990年代半ばの Björk や (特に1曲目の "Korgim Kelar" や2曲目の "Bu Sevgi")、 Everything But The Girl, Walking Wounded (Virgin, 1996) の中のダウンテンポな曲だ (特にタイトル曲の "Sen")。 確かにアコースティックな楽器音はフィーチャーされているが、 その響を生かすような Zazou による前作のプロダクションとは異り、 リズムトラックを中心に明らかに electronic なサウンドになっている。 Nazarkhan の歌唱も、前作のように軽めにコブシを効かせ漂い流れるように歌う時もあるが、 むしろ、強く唸ったり、少々喉にかけるような歌い方をすることが多い。 そのせいか、歌の節回しから中央アジアっぽさが後退し、 むしろ、エキセントリックという程ではないが Björk などに近い印象を受ける。
Nazarkhan の声の質も好きだし、tanbur や nai の響きもそれなりに生かされている。 特に nai の響きと伝統的な歌い回しを生かした "Kuigai" のような曲は気に入っている。 Björk や Everything But The Girl を思わせる音作りも嫌いではない。 悪いという程ではないが、Yol Bolsin に比べると、 folk/roots 色が後退して、普通の pop になってしまった。 そこが聴いていて少々物足りなく感じてしまう所だ。