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中東欧の音楽

中東欧の音楽に関する 嶋田 TFJ 丈裕 の発言です。 特に中東欧の音楽を集中的に聴いているわけでもないので、 その方面の事情に詳しいわけではないのですが、 中東欧の音楽に関する情報は少ないので、 自分に対する備忘録とブックマークを兼ねて、ここに集積しておきます。 ちなみに、特定の得意するジャンルがあるわけではありません。 ある特定の国やジャンルを網羅的に聴いているわけでもないので、 いろいろ面白い音楽を聴き逃しているように思います。 お薦めのミュージシャンやCD、来日ライヴの情報などがありましたら、 必ずしもCDを入手したりライヴに行ったりすることはできないとは思いますが、 談話室で教えて下さい。よろしくお願いします。

順番は新しいものほど上です。(談話室と同様です。) リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 古い発言ではリンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。

[1661] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Jun 8 23:30:17 2006

『転換期の作法』展 勝手に連動後追い企画、第3回。 って、2ヶ月以上間があいてしまいましたが……。 スロヴァキア (Slovakia) 編チェコ編 (Czechia) に続いて、 ポーランド (Poland) の音楽の話など。

ポーランドの alternative / underground な音楽の情報源といえば terra.pl、 と以前から言ってきました (関連発言 1, 2)。 しかし、いつのまにか (1〜2年前だったかしらん?) terra.pl のドメインへアクセスすると、 メジャーな rock/pop を扱う音楽サイト muzyka.pl へ振られるようになってしまっています。 といっても、昔ながら "underground music from Poland" なサイトが無くなったわけではなく、 旧 terra.pl のデザインのまま、serpent.pl として運用されています。 アイコンの中には terra.pl のままになっているのもあるし……。 punk (czad), avant-rock, jazz (yass), electronica から folk/roots まで、 というのも相変わらずです。 ショップ以外のコンテンツがポーランド語のみというのが難ですが、 ショップが充実して、大変にお世話になっています。 「ポーランドの Rough Trade Shops」と勝手に呼ばせて頂いてます。

さて、『転換期の作法』展を観ていて印象に残った作品に テルアヴィヴ (Tel Aviv, Israel) の養老院にポーランド系のユダヤ人 (Jewish) の人達を訪ね 幼い/若い頃に覚えたポーランドの歌を思い出してもらう様子を捉えたビデオ作品 Artur Zmijewski, Our Songbook (Nasz Spiewnik) (2003) がありました。これを観ていて思い出したのが、 東欧革命後にポーランド南部マウォポルスカ (Małopolska/Lesser Poland) 地方の 主邑クラクフ (Kraków/Crakow) を中心に盛りあがる ユダヤ (Jewish) 文化復興の動きです。(ちなみに、クラフクは アウシュヴィッツ (Auschwitz。現オシフィエンチム (Oswiecim)) に最も近い大都市です。) アニュアルで Jewish Culture Festival in Krakow (Festiwal Kultury Žydowskiej w Krakowie) というフェスティバルも開催されています。 もちろん、このフェスティバルは音楽だけでなく様々な芸術分野に亙るものです。 音楽に関しても、 The Cracow Klezmer BandKroké のような地元のリバイバルのグループはもちろん、 Tzadik といったレーベルからリリースしている アメリカ (US) のリバイバルのグループが多く参加しています。

The Cracow Klezmer Band は、その中でも気に入っているグループなのですが (関連発言)、 去年、彼らは Sanatrium Under The Sign Of The Hourglass (Tzadik, TZ7349, 2005, CD) をリリースしています。 前作 Bereshit (Tzadik, TZ8173, 2003, CD) 同様、 女性歌手 Grazyna Auguscik のスキャットをフィーチャーしてますし、 相変わらずといえばそうですが……。もうすぐ Balan: Book Of Angels Vol.5 (Tzadik, TZ7358, 2006, CD) をリリース予定ですが、これも John Zorn 曲集。うーむ。 John Zorn 物以外もリリースして欲しいものです。 というか、John Zorn 物ではない新作が良ければ まとめてレビューしたいなぁ、と思っているのですが……。

で、まだハンガリー (Hungary) が残っていますが、次はあるのでしょうか!?

[1600] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Apr 6 23:26:40 2006

『転換期の作法』展 勝手に連動後追い企画、第2回。 スロヴァキア (Slovakia) に続いて、チェコ (Czechia) の音楽の話など。 って、この企画の続きを期待している読者って、 どれだけいるのでしょう……。

東欧革命後のチェコの underground 〜 alternative な独立系レーベルというと、 ブルーノ (Brno) の Indies (1990年設立) や プラハ (Praha) の Globus (1989年設立) や Black Point (1990年設立) がレーベルがよく知られています。 これらのレーベルは東欧革命後第一世代の独立系レーベルで現在は大手の風格すらありますが、 最近はそれ以外の独立系レーベルも増え、リリース数もかなり多くなっています。 片っ端から入手して聴く余裕は (金銭的にも時間的にも) さすがにありません。

チェコの現在の独立系レーベル界隈の音楽の動向に関する情報は、 英語のものであれば、インターネット上にそれなりに増えてきているように思います。 (チェコ語が判れば、もっといろいろあるのでしょうが……。) そんな中、チェコ界隈の音楽を聴き進めるにあたって自分が最も参考にしているのが、 チェコ国営ラジオ局 Czech Radio の 国際ラジオ放送 Radio Praha の "Magic Carpet: world music in the heart of Europe" のサイトです。チャートを賑わすようなメインストリームのポップスではなく、 独立系レーベルを拠点に folk/roots 的な要素を持ちつつ 同時代的なアプローチの音楽をやっている人達を主に紹介しています。 club music/electronica 寄りのものには弱いですが、 alt rock 〜 experimental なものはカバーしているように思います。 また、チェコだけではなくスロバキア (Slovakia) のシーンもカバーしています (僕が Slnko レーベル界隈に注目するようになったきっかけもここです)。 どれもアタリという程ではないですが、ハズレは無いといった所でしょうか。 これで、もう少し更新頻度が高かったら……。

といっても、そんなにいろいろチェックできている訳ではないので、 Magic Carpet をチェックしているのであればここもチェックすべし、というか、 ここで挙げているようなチェコやスロヴァキアの音楽に興味あるのであればお薦め というサイトを御存知でしたら、是非教えて下さい。

これだけというのもなんなので、チェコのミュージシャンに関する小ネタをいくつか、 備忘録を兼ねて。あまり新しいネタはないのですが……。

1年程前に気付いていた話ですが、 1990年代半ばにブルーノの alternative シーンから登場した 男女2声の歌付きの contrabass / guitar / basoon という変則的なトリオ Sledě, Živé Sledě ですが、解散してしまったようです。 ドラムレスで低音に偏ったダウナーさと緊張感が同居するような音楽で、2枚のアルバム Milácek Vytváří Krajinu (Indies, MAM083-2, 1998, CD) と Rostliny! Rostliny! (Indies, MAM133-2, 2000, CD) は、どちらもとても気に入っていたのですが。残念です。 新譜が出たら併せてレビューで紹介しようと思っていたのに……。 いつまでもあると思うなレーベルとグループ、というか。

Sledě, Živé Sledě の解散を知ったのは、 Květy, Jablko Jejího Peří (Indies, MAM236-2, 2004, CD) の Indies レーベルによる紹介文の中に、 "After break-up of the bands Sledě, Živé Sledě, Dunaj or Z kopce it was the band Květy that took up the torch of alternative stage in Brno." というくだりがあったから。で、それに惹かれて、 Jablko Jejího Peří を聴いてみました。少々ギクシャクめの folk 的な感じは悪くはないのですが、 Sledě, Živé Sledě のような アンサンブルの妙が無くて決めてに欠けるような……。

そういえば、とても大好きだったブルーノの cello / voice の女性デュオ Tara Fuki (関連発言レビュー) も、いつのまにはオフィシャルサイトが無くなってしまっています。 うーむ、解散してしまったのかしらん……。

ブルーノの alternative シーンといえば、 1980年代から活動している女性歌手 / violin 奏者 Iva Bittová (レビュー 1, 2)。 相変わらず様々なスタイルのミュージシャンと共演を続けています。 Magic Carpet の 2005/9/18 で紹介されている Iva Bittová with Bang On The Can All Stars, Elida (Indies, MAM277-2, 2005, CD) も当然入手済です。ニューヨークの現代音楽のアンサンブルとの競演ということで、 抽象的な展開を期待していたのですが、 普通にメロディアスで B.G.M. には悪くないけれども……。続く Iva Bittová & Javas, Party (Indies, MAM299-2, 2005, CD) は、house のトラックに Bittová の scat というか抽象的な voicing が乗るという作品。 惜しむらくは house のトラックの音作りが……、 もっと deep で繊細なトラックの方がかっこいいと思うのですが……。 狙いは悪くはないと思うのですが……。うーむ。

と、ブルーノのシーンの話ばかりになってしまいました……。うーむ。

[1591] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Mon Mar 27 23:40:23 2006

スロヴァキア (Slovakia) で東欧革命前1980年代から 非公式のソングライターの組織 "Slnovrat" に参加し、 アンダーグラウンドで活動していたという女性シンガーソングライター Zuzana Homolová (英語のバイオグラフィ @ World Music Central) の 新作 Tvojej Duši Zahynúť Nedám: Ancient Slovakian Ballads (Slnko, SZ0017 2 332, 2005, CD) の最新作が気に入っていて、ここ一ヶ月程よく聴いています。 というわけで、関連盤と併せてレビューを書きました。

チェコ (Czechia) 東部モラヴィア (Moravia) の violin 奏者 Vlasta Redl の制作による前作 Slovenské Balady (Pavian, 1995 / BMG Ariola (CZ/SK), 1999, CD) は入手できたのですが、その前の2作、 東欧革命の年のデビュー作 Čas Odchádza Z Domu (Opus, 1989) と、 チェコの jazz/improv の flute 奏者 Jiří Stivín (関連発言) との Zuzana Homolová & Jiří Stivín (Opus, 1991 / Bonton, 1996) は未入手。これらも聴いてみたいものです。

Homolová の最新作の制作を手掛ける guitar 奏者 David Salontay が女性歌手 Sina と結成したユニット Dlhé Diely の最新作 (といっても2年前ですが) Sveta Diely (Slnko, SZ0012 2 332, 2004, CD) も併せて入手ました。これも悪くありませんでしたよ。今後が楽しみです。

Homolová の最新作をリリースしたレーベル Slnko は、 Dlhé Diely によって スロヴァキアの首都ブラチスラヴァ (Bratislava) で2001年に設立されたレーベルです。 このレーベルのミュージシャン Frogski Pop へのインタビュー記事 "Interview with Frogski Pop" (Tamizdat Dispatch, 2002/04/12) でも、このレーベルがこのように紹介されています。

現代音楽やコンピュータ音楽、テクノやアンビエント・トリップ・ホップからジャズやロック、キッチュでシアトリカルなポップにまでジャンルを亙る ブラチスラヴァに第一の拠点を置くミュージシャンたちのコミュニティを Slnko Records は結び付けている。
Slnko Records ties together a community of musicians based primarily in Bratislava, whose talents span the genres from modern composition and computer music, techno and ambiente trip hop to jazz and rock and kitchy theatrical pop.

初期のリリースは CD-R によるリリースですが、 2003年頃から CD によるリリースになっています。 試聴している限りでは、初期はまだ拙い感もありましたが、 最近は、音作りもかなりちゃんとしてきたように思います。 入手していませんが、Noise Cut, Deň Za Dňom (Slnko, 2005) も、なかなかよさげのような気もします。 共産政権時代の rock 音源の再発を積極的に行なっていることでも知られる プラハ (Praha/Prague, CZ) の alternative music のレーベル Black Point とも協力関係にあるなど、周囲の同様のシーンとも交流があるようです。 今後の活動に期待しています。

ここ数年 folk-influenced jazz/improv のようなアプローチのものを 追いかけがちだったわけですが、 一ヶ月前にレビューした Lola Lafon & Leva, ...Grandir À L'Envers De Rien (Bleu Electric / Label Bleu, LB4010, 2005, CD) といい、alt rock/pop 的なアプローチのもいいなぁ、と最近は思っていたり。 直接的な影響ではないようにも思うのですが、 昨今のUK/USでの free folk の流行と並行しているようにも感じられたり。 といっても、free folk は往時の indie pop の頃 (遠い目) と同じく カセットや7″シングルのリリースが多く、 Simon Reynolds"Free Shtick", (The Village Voice, 2005/10/03) で、 「このジャンルの適切な見取図を書こうとすると、金銭的な大量出血を引き起こす」 と書いている (笑) くらい大変なことになっているので、 追いかけるのは諦めてます (苦笑)。 The Wire 誌付録や Rough Trade Shops: Counter Culture な CDに収録されている関連音源を手懸りにほんの摘み食いしている程度、というか……。

と、一ヶ月ぶりの音盤雑記帖の更新になってしまいました。 最近、中東欧の音楽を取り上げるのをサボっていたので、展覧会 『転換期の作法: ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術』 (Positioning - In the New Reality of Europe: Art from Poland, the Czech Republic, Slovakia and Hungary; 東京都現代美術館, 2006) (レビュー) に合わせて、 ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの 現在の alternative な音楽の特集をやろうと考えていました。 しかし、結局、展覧会の会期中に間に合わなかったという……。 たわいのない昔の自分の体験をとりとめもなく書くのは楽なのですが、 そんな時間があるのであれば、ネタはあるんだし、ちゃんと今の音楽について書け、 というか……。

[1557] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Feb 28 0:09:57 2006

ブルカリア (Bulgaria) やルーマニア (Romania) で子供時代を過ごしたという フランス系のベラルーシ人 (French-Belarusian) だという女性歌手が率いる フランスを拠点に活動する多国籍グループ Lola Lafon & Leva のアルバム ...Grandir À L'Envers De Rien (Bleu Electric / Label Bleu, LB4010, 2005, CD) を、偶然入手したのですが、これが良かったです。 electronics 使いも US/UK indie の free folk っぽい女性 SSW 的な要素と、 chancon/musette 的な要素と、東欧 folk な要素のブレンド具合が絶妙です。 Maria Tanase 〜 The Rolling Stones, "Paint It, Black" というカヴァーのセンスもツボにはまりました。 Têtes Raides とも縁があるバンドで、Christian Olivier も参加してますが、類型的な Nouvelle Scène Française / Scène Néoréaliste Française (関連発言) な音じゃ無いのも良いです。 そんなわけで、音盤雑記帖へレビューを。 しかし、こういうグループがフランスからではなく 中東欧からもっと出てくればいいのになぁ、と思ったり。

ちなみに、リリースは、フランスの jazz / improv 系の独立系レーベル Label Bleu 傘下に新たに設立された Bleu Electric去年のベストに選んだ Dupain, Les Vivants (Bleu Electric / Label Bleu, LBL4012, 2005, CD) (レビュー) も、同レーベルのリリースです。 一応 "electronic music" のレーベルということですが、 jazz/improv の Label Bleu、world music のサブレーベル Indigo に対して、 それ以外全てという感も無きにしもあらず……。

[1348] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Wed Jul 20 0:36:03 2005

ハンガリー (Hungary) の jazz 及び classic のレーベル Budapest Music Center の最近 (といっても去年ですが……) のリリースの中から、なかなか良かったものをということで、 Mihály Dresch Quartet, Egyenes Zene (Straight Music) (Budapest Music Center, BMCCD093, 2004, CD) と Gábor Juhász with Palle Mikkelborg, ♥ 60/40 (Budapest Music Center, BMC098, 2004, CD) について、 音盤雑記帳レビューを書きました。 Mihály Dresch や Zoltan Lantos の界隈については今までも時々取り上げてきた (関連発言 1, 2) わけですが、そのフォローアップといったところでしょうか。

以前の Mihály Dresch Quartet / Archie Shepp, Hungarian Bebop (Budapest Music Center, BMCCD066, 2002, CD) のレビューで「未聴」と書いた Mihály Dresch, Quiet As It Is (Budapest Music Center, BMCCD055, 2002, CD) も、その後、入手済みです。 ダンス・カンパニー Central Europe Dance TheatreSzép Csendesen (Quiet As It Is) (1999) のために作られた曲を中心に演っているのでしょうか。その前のアルバム Dresch Quartet, Riding The Wind (November Music, NVR2003-2, 2000, CD) (レビュー) から2曲再演していますし、雰囲気も近いです。 その後、Hungarian Bepop で jazz に振れて、 その反動で Egyenes Zene (Straight Music) では folk/roots に振れた、 という感じでしょうか。

Budapest Music Center からのリリースといえば、他に、 David Yengibarjan with Frank London, Pandoukht (Budapest Music Center, BMCCD087, 2003, CD) を以前にレビューしてますが、その後、その前の Trio Yengibarjan, Tango Passion (Budapest Music Center, BMCCD051, 2001, CD) も入手済です。こちらは、アルメニア (Armenia) の folk が1曲あるものの、 その一方で Astor Piazzolla の曲も3曲やっていて tango 色濃いです。 trio の残り2人 Gábor Juhász (guitar) - József Horváth Barcza (bass) というバックの組合せは Zoltan Lantos' Mirrerworld と同じで悪くはないんですけど、 もう少し東欧〜バルカン色濃い展開を期待してしまうだけに、不完全燃焼です。うむ。

[1337] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Jul 3 0:14:59 2005

ブルガリア (Bulgaria) の roots-oriented jazz/improv. シーンというと、 Kuker Music 界隈を紹介してきた (関連発言 1, 2) わけですが、 その界隈のセッションに軒並参加している打楽器奏者 Stoyan Yankoulov の リーダー作 Drumboy (self-published, 2005, CD) が出ています。 女性歌手/打楽器奏者 Elitsa Todorova との共作です。 ゲストも、 Peter Ralchev (accordion)、 Theodosii Spassov (kaval)、 Ivo Papasov (clarinet) と豪華です。 なぜか Kuker Music からのリリースではなく自主製作ということで若干流通が悪いのですが、 早速ブルガリアのソフィア (Sofia) から取り寄せてみました。 自主製作といえちゃんとした録音/パッケージングで、期待を裏切らない良い出来です。 そんなわけで、音盤雑記帳レビューを書いておきました。

しかし、前回 (といっても半月以上前) に レビューしたのは Matt Darriau Paradox Trio feat. Theodosii Spassov, Gambit (ENJA, ENJ9474-2, 2005, CD) でしたし、 計らずしもブルガリア物というか Theodosii Spassov 物が続いてしまいました。 実際、この界隈はとても面白いことになっているんですけど。

レーベル Kuker Music のプロダクション/プロモータ部門に相当する Creative Music Of East Europe のサイトをよくチェックしているのですが、 CDリリースは無いけれども面白そうなバンド/プロジェクトが沢山あります。 Kalman Balogh & Peter Ralchev Balkan Project とか、 Karakum (Ashkhabad group feat Enver Izmailov) とか、 Chris Speed が参加した Dejan Terzic's Underground とか、聴いてみたいものです。く〜。 Bulgara というのも気になりますね。 ライブ音源でいいから、どんどんCDリリースに繋げて欲しいものですが……。

[1310] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Jun 14 0:33:56 2005

今年の頭に Simone Guiducci紹介したときに Matt Darriau Paradox Trio にも軽く触れたように、 最近、自分の中で再評価を進めていたのですが、そんな絶好なタイミングで、新作 Gambit (ENJA, ENJ9474-2, 2005, CD) が出ました。 それも、ブルガリア (Bulgaria) の kaval 奏者 Theodosii Spassov (関連発言) をフィーチャーしていて、今年の頭の Guiducci 関連の話の中で指摘した New York down town シーンと地中海〜バルカンの roots-oriented な jazz / improv. シーンの交流を 記録した内容でもあります。 さっそく入手して聴いているわけですが、 若干ダレる展開もありますが、それなりに楽しめる内容だと思います (この手の音がマイブームということもあるとは思いますが……)。 そんなわけで、週末に音盤雑記帳レビューを載せておきました。 レビューしそこねている Pachora も 早く新譜をリリースして欲しいものです。

ところで、Theodosii Spassov Trio が、 先月、愛知万博のブルガリアのナショナルデーでのコンサートのために Philip Kutev National Folklore Ensemble と一緒に来日していたそうです。 東京界隈でも小規模なライヴをやったそうなのですが、全く気付かず、 見逃してしまいました。痛恨。 4月の Laurie Anderson が愛知万博に来たときも、 全然客が集まらずにガラガラだったという噂を、IAMASにいる友人に聞きましたし。 というか、その話を聞くまで、Laurie Anderson が来ていたことすら知りませんでしたよ。 そんな感じで、愛知万博のナショナルデーなどのイベントのために 世界各地の大物アーティストが来日しているようなのですが、 プロモーターが絡まずに大使館が直接呼んでいるせいか、 ほとんどろくに告知されていないか、 普段のライヴ情報/来日コンサート情報とは違うチャンネルを通して 告知されているような気がします。 それに、愛知万博以外でコンサートをほとんどやらずに、 帰っていってしまうというパターンが多いようです。 なんとももったいない話です。

- 若林, 東京, Sun Dec 19 23:26:15 2004

半月ほど間が開きましたが、ロシア (Russia) のレーベルの Sketisのフォローアップです。軽く言及していましたが、 シベリア (Siberia)トゥヴァ (Tuva) の東、 モンゴル (Mongol) の北にあたる ブリヤート (Buryat) をルーツに持つバンド NamgarHatar (Dance) (Sketis, SKMR008, CD, 2003) のレビューを書いておきました。 シベリア物といっても、隣国トゥヴァの音楽 (例えば Huun-Huur-Tu) より中国風な感じで、新鮮に楽しめました。 この界隈からもっといろいろなタイプの音楽が出てこないかしらん、とも思います。

これで、入手した Sketis レーベルの5枚のアルバムのうち3枚をレビューしたわけですが、 残り2枚についてはとりあえず軽くこの談話室で紹介しておきます。

Reel, Strannie Ludi (Strange People) (Sketis, SKMR002, CD, 2002) はロシア (Russia) の folk をベースとしたバンドですが、 少々 rock 的なアレンジといい、男女の歌質といい、 Farlanders (レビュー 1, 2) からうねる fletless-bass を抜いて、よりアコースティックにした感じです。 悪くはない (というか、Farlanders の新作 Vymysly (GreenWave, GRCD-2004-02, 2004, CD) より良いかも……) のですが、 もう少し Farlanders と差別化する何かが欲しい気もします。 しかし、ロシアからこういうバンドが Farlanders 以外にも出てきているんですね。

Drobinskaモルドヴァ (Moldova) はキシナウ (Chishinau) を拠点とするバンドで、 そのアルバム Guie De Cirnat (Sketis, SKMR009, CD, 2003) では モルドヴァに限らず、ルーマニア (Romania)、ブルガリア (Bulgaria)、マケドニア (Macedonia)、セルビア (Serbia) といったバルカン各地の伝統的な曲を acoustic に演奏しています。 この地域の音楽というと Gypsy の音楽が流行しているわけですが、 泥臭さをあまり感じさせない演奏のせいかその色が薄く、 むしろ Slavic folk という感じなのは、ちょっと興味深いです。 しかし、ちょっと地味でしょうか。やはりもう一癖欲しいです。 しかし、モルドヴァって国の政治経済状況が良いとはいえないと思うのですが、 他にも、TrigonZdob Si Zdub もいますし、 それなりに音楽シーンが形成されているようです。 といっても、CDリリースを追っていると、 片足をロシアかルーマニアに置いているという感じのようです。 ちなみに、僕は、ルーマニア盤入手ルートが開拓できてないので、 ロシア盤でフォローしてます。

- 若林, 東京, Thu Dec 9 23:40:25 2004

昨晩の話の続きです。 Volga の活動をフォローするため インターネットを検索するきっかけになったのは、 Inna Zhelannaya & Farlanders (レビュー 1, 2) の新譜 Vymysly (GreenWave, GRCD-2004-02, 2004, CD) を入手したからでした。 Farlanders も今最も気になるロシア (Russia) のバンドの1つ。 ちなみに、昨晩紹介した Volga は Farlanders と Ilya Xmz とか介して繋がりありますし、 Starostin & Mario の Sergey Starostin も Farlanders のメンバーです。

しかし、Vymysly は、どうもピンとこないんですよね。 Zhelannaya の凛とした歌声も、Starostin の深い声も、 Kalachev の鋭角な fletless bass も相変わらずですし、 ゲストの Arkady Shilkloper の不思議な horn の響き (レビュー 1, 2) も良いのですが……。いまのところ全体としては漠した印象しか残っていません。 rock なアレンジの "Mar'yushka" や reggae なリズムの "Utki" も裏目に出ているし。 悪くは無いとは思うのですが、 このバンドにはもっと高いレベルを目指して欲しいです。

まず聴くなら、 Inozemets (Farlanders) (GreenWave, GRCD-99-1, 1999, CD) や Moments: Live In Germany (GreenWave, GRCD-2000-2, 2000, CD) に感じられた疾走感から是非堪能して欲しいです。ジャケットデザインも良いですし。 ロシア GreenWave 盤は入手困難ですが、この2枚は Jaro からも リリースされて いて、入手容易だというのもお薦めの理由です。

そういえば、Inna Zhelannaya と Sergey Kalachev が 1990年前後にやっていたバンド Al'yans (Alliance) の1991年のアルバム Sdelano V Belom (Made In White) の再発CD (1991; GreenWave, GRCD-2001-2, 2001, CD) も入手してます。1年近く前の話ではありますが……。 folk-oriented になる前の rock っぽい音かと思っていたのですが、 この時点で既に folk-oriented だったのですね。 Starostin や Sergey Klevensky のような後の Farlanders のメンバーも参加しているし、 "Tuva 1"、"Tuva 2"、"Tuva 3" のような khoomey 使った曲もあるし。 Farlanders のアルバムと雰囲気はほとんど変わりません。ほほう。

しかし、GreenWave レーベルの入手困難さはなんとかならないかと、つくづく思います。 時々直接コンタクトを試みてもいるんですが、返事が得られないですし……。 今までに入手できたCDに限っていえば、 VolkovTrioHuun-Huur-Tu も、レベル高い出来です。 もっと注目されてよいレーベルだと思っています。 配給の悪さが評価を下げている原因になっているようにも思います。 もしくは、Jaro が全タイトルを ライセンス・リリースしてくれれば……。

- 若林, 東京, Wed Dec 8 23:24:12 2004

ロシア (Russia) の気になるバンドに、 一年前にレビューしたことのある Volga がいます。 それ以降の活動がどうなっているのかフォローするためインターネットを検索していて Sketis というレーベルの存在に気付いたのは数ヵ月前でした。 その後、よく利用している通販ショップである CD RootsSketis レーベルの作品を扱う ようになったので、現在扱っている5タイトル全て買ってみました。

もちろん、一番の期待は Volga, Concert (Sketis, SKMR004, CD, 2003)。 前作 Vypei Do Dia (Bottoms Up!) (Exotica, EXO03130, 2003, CD) に 続いてディープなビートを期待したのですが、それについてはちょっと肩透かし。 けど、ビートが控えめなのも悪くありません。 というわけで、レビューを書いておきました。

もう一枚、Starostin and Mario, Proshche Prostogo (Sketis, SKMR012, CD, 2004) も、"live at DOM" 繋がりということで、 併せて レビューしてしまいました。 出来も悪くなかったですし。 ちなみに、Starostin については Farlanders や VolkovTrio からみでいろいろレビュー (1, 2, 3) してきましたし、Mario の参加しているバンド Trigon も来日ライブをレビューしたことあります。

ちなみに、この2枚、いずれも、モスクワ (Moscow) のオルタナティヴな音楽の拠点 DOM Cultural Center (関連発言 1, 2) でのライブ録音なのです。ここがらみのバンドというと、今までなら Long ArmsGreenWave からリリースするのが定番という感じだったわけです。 ここに、さらに Sketis が加わっているわけで、 ひょっとしてここ数年シーンは盛り上がっているのでしょうか。 半年前に DOM 創設者の Nikolai Dmitriev の 訃報もあったりしましたが、 それに負けずに盛り上がり続けて欲しいものです。

入手した5枚のうち今回取り上げなかった3枚も悪くなかったですよ。 ブリヤート (Buryat) 出身で ブリヤートとモンゴル (Mongol) の音楽をやっているという Namgar, Hatar (Sketis, SKMR008, CD, 2003) が特に興味深かったのですが、それについてはまた別の機会に。

- 若林, 東京, Wed Dec 1 23:59:46 2004

そういえば、以前にちょっと言及した (関連発言) 『2004 日本マケドニア現代アート交流展 [コラボレーション]』 のフライヤを拾いました。 当初、日本での展覧会は10月開催とされていたので、中止になってしまったのかなー、と思っていました。 結局、年末12/19〜29に BankART 1929馬車道 で開催されるようです。 しかし、マケドニア (Macedonia) のミュージシャンは全く来ないようです。 Oliver Josifovski や Foltin の来日を期待していたので、とても残念です……。 うーん。横浜まで観に行くべきか。

って、これだけではなんなので、マケドニアの音楽の話を。2年以上も前になりますが、 Third Ear レーベル界隈の をしたことがありましたが。 遅ればせながらのフォローアップ。 Vanja Lazarova, Ritmistica (Third Ear, 2000/02, 2000, CD) について書き出したらまとまった量になってしまったので、 音盤雑記帖のレビューにしておきました。 を書きました。9月末に 『未来はバルカンにあり』 という話をしたときに、マケドニアにおける folk/roots 〜 jazz/improv. 〜 electronica 併置混淆の象徴的な作品として触れたのですが、 やはり、ここでもちゃんと紹介しておかないといけないなぁ、と思っていたのでした。

Ritmistica において rock 〜 electronica (with goth) 的な要素を担っている Arhangel, Anastasia, Kiril, Kismet やその界隈のバンドが成すシーンについては、 2年余前にも紹介した Macedonian Underground Music Archive というサイトが詳しいです。僕もこのサイトをてがかりに細々と音源を探して聴いてきています。 マケドニアのCDの入手ルートの開拓も進まず、とうてい網羅的というわけにはいかないですが。

聴いた中で最もとっつき易かったのは KirilHomebound (Tone Casualties, TCCD0049, 2000, CD) はレーベルカラーもあってかビートも重めで地声コーラス等も goth 入ってますが、 Religion & Sex: Works '94-'97 (Third Ear, 01/2001, 2001, CD) は、B92 (Belgrade, Serbia) の Belgrade Coffee Shop シリーズと共通するような軽い lounge なノリも良い作品です。

Kismet は Ian Curtis 風男声 vocal をフィーチャーして、最も重く感じられました。 North Atlantic Balkan Express (Tone Casualities, TCCD9947, 1999, CD) での Joy Division, "Love Will Tear Us Apart" のカヴァーは、 kaval や zurla といった伝統的な楽器をフィーチャーしその音色を巧く生かした 秀逸な出来です。ネタとしても使えるでしょう。

AnastasiaNocturnal (Third Ear, 098-2, 1998, CD) と、 メンバー Zlatko OrigjanskiIkona / Mansarda (Third Ear, 099-2, 1999, CD) を持っていますが、弱干印象薄いかしらん。といっても、 Ikona (1990) と Mansarda (1992) の 2 in 1 リイシューは 伝統的な楽器をかなりフィーチャーしていて、この頃から既に、と感慨深いです。

Arhangel 関連音源は、残念ながら入手できていません……。

- 若林, 東京, Wed Oct 6 23:48:02 2004

先日の福岡での音楽トークイベント 『未来はバルカンにあり ― 南東欧を中心としたインディペンデント音楽事情』 の中では軽く触れたのですが、今までの 中東欧の音楽の話ではしてなかった インデペンデント・レーベルのネットワークに関する話を少し。

中東欧のインデペンデントな音楽シーンを語るにあたって無視できない存在の一つが、 チェコのプラハ (Praha, Czech rep.) にある インデペンデントな音楽シーンをネットワークする非営利組織 Tamizdat です。 1999年から通販も行なっており、 中東欧のインデペンデント・レーベルを専門に扱う貴重な通販ショップになっています。 僕も、ここのショップには大変お世話になっています。

役員の顔ぶれを見ると、 jazz / improv. を中心にそれに限らないオルタナティヴな音楽の拠点として知られた New York のライブハウス/レーベル Knitting Factory と、 Tamizdat は強いコネクションを持っていることがわかります。 理事長 (president) と会計 (treasurer) は Knitting Factory Europe のスタッフが兼任しており、 顧問 (advisory board) の中に Knitting Factory の CEO もいます。 Tamizdat のもう一つの拠点が New York にある理由、 対USプロモーション色が濃い理由には、 Knitting Factory と関係深いということがあると思います。

音楽ファンからは中東欧のインデペンデントな音楽の小売/配給/プロモーションをしている 組織のようにに見える Tamizdat ですが、サイトに書いてある 事業内容を見ていると、 中東欧のインデペンデントなレーベルやアーティストを支援する活動 をしていることがわかります。 例えば、Tamizdat Visa Services は以下のような内容になっています (引用者訳)。

Tamizdat の Visa Services プログラムは、USでの活動を希望するアーティストへの就労ビザの手配について、6年間の実績があります。 商業的な代理店よりも遥かに安く、非常に幅広いアーティストを世界中からUSへ招聘する際に Tamizdat は重要な役割を演じてきました。 私たちの顧客には例えば以下の会社/組織があります: Mute Records, Beggar's Banquet Records, Domino Records, Ninja Tunes Records, The British Council, the CMJ Music Marathon, the South By Southwest Music Festival.

また、Tamizdat Services & Resources は以下のような内容になっています (引用者訳)。

中東欧のインデペンデントなアーティスト、文化的プロジェクトの成功を直接的に助けるために設けられた幅広いプログラムを Tamizdat は提供しています。 Tamizdat の Business Consulting プログラムを通して、中東欧のアーティストと音楽業界に対して米国、カナダそして西欧でのツアーブッキングと制作の支援はもちろん計画、広報、プロモーションの支援を、私たちの経験豊かなスタッフが提供します。 また、私たちの Resource Center では、世界の文化産業の多くの側面にかかわる決定的な商業的リソースを豊富に提供します。 さらに、Tamizdat の Back-line プログラムでは、ツアーを行なう中東欧のアーティストのために音楽機材の提供することにより、USツアーを可能にすることを支援します。 Tamizdat はこれらの全てのプログラムを無償、応能原則に基づく価格、もしくは、商業的な価格より遥かに安い価格で提供します。

これらの活動は、 1980年代までに確立した英米西欧のインデペンデントな音楽シーンのネットワークに 中東欧のインデペンデントな音楽シーンを結びつけ、 英米西欧のインデペンデントな音楽シーンで培われ蓄積された経営ノウハウを 中東欧のインデペンデントな音楽シーンに伝授する活動といえると思います。 Visa Service で挙げられている Tamizdat の顧客リストは、 インデペンデント・レーベルのネットワークの英米西欧側の繋がり先をうかがわせ、 興味深いです。 しかし、 「USでの活動を希望するアーティストへの就労ビザの手配」の話なのに、 挙がっているレーベルが全てUK拠点のレーベルで British Council も含まれているあたり、話が整合していないように感じます。 US招聘だけでなくUK招聘でも仕事しているとか?

僕がこの活動を興味深く思っているのは、 「インデペンデントであること」という アーティスティックな理念だけを頼りとしたネットワーク作りではなく、 経営というものを意識したネットワーク作りだということです。 とても地に足がついた活動だと思います。 日本では、インデペンデント・レーベルというと、 商業主義からの自律という理念が極端に走った 経営感覚の無さ (採算度外視、プロモーション軽視) も善しとする所が多いように思います。 しかし、この Tamizdat のプログラムを見ていると、 欧米のインデペンデントな音楽シーンには経営感覚がしっかり根づいているように感じられます。

僕はレコードレーベルを経営している。バンドの皆に給料を支払い、バンドのメンバーは皆、家も買った。僕らも音楽で生計を立てている

これは、インデペンデントな Discord レーベルも主宰する US hard core バンド Fugazi の Ian MacKaye の言葉ですが (「レーベル対P2P業界、舌戦の勝者はパンクロッカー」, ITmedioニュース, 2004/04/15)、 Tamizdat の中東欧のインデペンデント音楽シーン支援プログラムにも、 そういう意識がしっかりと裏打ちされているように思います。

しかし、Tamizdat のこれらの活動が、 どのくらいの予算規模を持ち、どのような実施体制を持ち、 支援アーティスト数等どの程度の実績があったのか、 そういうことをちゃんと取材した雑誌記事や本は無いかしらん。 というのも、こういう活動では、運営者の考え方といった理念だけではなく、 実際の財政、実施方法、成果といったものも重要だと思うからです。 非営利組織なので情報公開してくれそうにも思いますし。 かなり面白いテーマだと思いますが、 残念ながら自分で取材するほどの余裕は今の僕にはありません……。

- 若林, 東京, Tue Sep 28 22:33:27 2004

さて、25日の音楽ト−クイベント 『未来はバルカンにあり ― 南東欧を中心としたインディペンデント音楽事情』 @ IAF SHOP*, 福岡 (シラバス) ですが、予想以上に集りが良かったです。10名以上集まったのではないでしょうか。 特に20歳代くらいと思われるお客さんがそれなりにいたのが嬉しかったです。 5年以上前に四谷い−ぐるで日曜にやっていた もそこまで集まらなかったように思います。 しかし、客層も若く、まだまだこういう音楽に興味を持つ人が沢山いると感じることができて、心強かったです。 もちろん、福岡のア−トスポット巡りの際にあちこちでフライヤをみかけたほどで、 IAF SHOP* の皆さんのプロモ−ションのおかげも大きいかと思います。

ワ−ルドミュ−ジック業界方面から 若いリスナ−が育ってないという話をよく聞くのですが、 今回の集客を見ると、単にちゃんと情報が届いていないだけというか、 『ミュ−ジックマガジン』誌的な「ワ−ルドミュ−ジック」観に基づく プロモ−ションが機能していないだけではないか、なんて思ってしまいます。

以前はうまくやっていたということもないのですが、 久し振りの音楽ト−クイベントということで、 進行の点で反省するところも少なくありませんでした。 特に、最後の「リスエストに応じてざっくばらんに」にというのは無謀でした。 やはり、ちゃんと選曲していってかけた方が、 ポイントを押えて聴かせることができたように思います。 し−んと聞かれてしまうのも避けたくてこういうやり方をしようと思ったのですが、 良いツッコミがそれなりに入りましたし。

最も良いツッコミは Turbo Folk (関連発言) に関するものだったと思います。 こういう話をするのであれば、 Turbo Folk の音源もちゃんと押えて紹介した方が面白いし、 説得力があるだろうなぁと。 確か『映像の世紀』 (NHKスペシャル) の中でそれ関連のミュ−ジックビデオが 一部紹介されていたりしたので、その DVD を持っていけば良かったかしらん。 ま、こういう話をするのであれば、 自分の好みだけ揃えていてもダメということですね。これは今後の課題です。 ま、Yu4you で EUR9 くらいの値段で売られてるものですし、 Ceca とか Turbo Folk の代表的な歌手のCDくらい持っておいた方がいいかも。

- 若林, 東京, Fri Sep 24 0:45:09 2004

で、25日の音楽トークイベント 『未来はバルカンにあり ― 南東欧を中心としたインディペンデント音楽事情』シラバスを作りました。 当日に印刷して配布するつもりで作ったのですが、 XHTML で書いてそのままウェブサイトに貼れるようにしてしまいました。 内容は具体的な選曲を除いて一ヶ月程前に企画用に書いたメモほぼそのままで、 文章にはなっていません。ま、文章として読むのであれば、 中東欧の音楽 の関連個所をどうぞ。

- 若林, 東京, Wed Sep 22 0:01:36 2004

せっかく福岡まで行くことだし、枯れ木も山の賑わいってことで、 単に観に行くのではなくて賑やかしに行くことにしました。 というわけで、『Po-poMO』と緩く繋がったイベントとして、 9月25日(土)の14:00〜17:00に福岡のアートスペース IAF SHOP*『未来はバルカンにあり ― 南東欧を中心としたインディペンデント音楽事情』 という音楽トークイベントをやります。普段、談話室に書いている 中東欧の音楽の話から 特にバルカンのセルビア、マケドニア、ブルガリア、ギリシャ、トルコに 焦点を絞って話する予定です。 聴くことはもちろん店頭でCDが売られているのを見る機会も多くないものだけに、 CDで実際に音楽を聞いてもらうだけでなく、 実際にリリースされているCDのジャケットも見てもらいたいと思っています。 というわけで、コレクションを沢山持って行く予定です。 会費としてドリンク代相当の500円を取らせて頂きますが、 福岡近辺でこの談話室を読んで下さっている方がいたら、 是非オフライン・ミーティング気分で遊びに来て下さい。

- 若林, 東京, Sun Aug 29 2:43:29 2004

会場が classical 用のホールだし、ダブル・ビルだし、 いまいち気乗りしなくて前売りを買ってなかったのですが。 最近は平日の晩は厳しく31日の立席の追加公演に行かれなさそうだったので、 思い立って行ってきました、 Fanfare Ciocărlia with Kila @ すみだトリフォニーホール。 期待以上に楽しめたので、レビューを書いておきました。 ホールでの演奏も悪くなかったのですが、 その後のホワイエでの30分 (フォトログ) がとても楽しかったです。

- 若林, 東京, Sat Aug 21 2:23:00 2004

昨晩は、ユーロスペースでレイトショー。 『炎のジプシー・ブラス』 (Ralf Marschalleck (dir.), Brass On Fire, 2002) を観てきました。ルーマニア (Romania) のジブシー (Gypsy) の ブラスバンド Fanfare Ciocărlia のドキュメンタリです。 Fanfare Ciocărlia のCDは3枚とも持っているので、 音楽についてはそれなりに知っていました。 映画の中で "Kalashnikov" や "Mesecina" といった 映画 Underground (Emir Kusturica (dir.), 1995) の曲を ライブで演奏している様子がよく出て来たました。 やはりこれらの曲はポピュラーだし、ライブでのウケはいいのだろうなぁ、と思いました。

最も興味深く観られたのは、むしろ、world music の制作の実態という点でした。 Fanfare Ciocărlia もマネージメントしている ジプシー音楽専門のプロダクション/レーベル Asphalt Tango を主宰する Henry Ernst と Helmut Neumann が出てくるわけですが、 欧州ツアーの移動のバスのハンドルを彼等が自ら握っているんですね。 それで、欧州各地のフェスティバルとかをハシゴすれば、 確かに安上がりにツアーできるよなぁ、と思いました。ふむ。

そういえば、映画の主な舞台は Fanfare Ciocărlia の出身地であるジプシーの村 Zece Prajini ですが、 Taraf De Haidouks で知られるルーマニアのジプシー村 Clejani も Helmut Neumann の妻の出身の村として出きます。 しかし、さすがに、Taraf De Heidouks は出てきませんでしたね。

- 若林, 東京, Thu Aug 19 2:29:46 2004

音盤雑記帖を更新しました。 David Yengibarjan with Frank London, Pandoukht (Budapest Music Center, BMCCD087, 2003, CD) のレビューです。 ハンガリー (Hungary) 発の folk-oriented jazz 物です。 Budapest Music Center については、 一年ほど前にも紹介したことがありますが、 なかなか良いレーベルです。

ハンガリー (Hungary) 物といえば、 Mitsoura, Mitsoura (Mitsoura, no cat.no., 2003, CD)。 Ando Drom の女性歌手 Mitsou をフィーチャーした electronica meets Gypsy music です。 cimbalom の Kálmán Balogh とか、 Pandoukht の percussion 奏者 András Dés とか、 Besh O Drom 界隈のミュージシャンとか 参加していてるのですが、面子の割りには……。 というか、Various Artists, Etchno: dub.bass.neptanc.hu (Gypsyhouse, GHCD001, 2002, CD+) を紹介した 1年前に聴いていたら、もっといい印象を持ったかもしれませんが。 どうも、最近、club music の要素を取り入れた音に飽きてしまっているような気がします。うむ。

- 若林, 東京, Sat Jul 31 23:58:05 2004

先月届いた The Wire, Issue 245 (July, 2004) の "Global Ear" は編集長 Rob Young によるトルコのイスタンブール (Istanbul, Turkey) のレポート。 といっても、トルコのミュージシャンの紹介ではなく、 今年2004/5/8-14にイスタンブールで開催された Phonem Festival のレポートです。 ちなみに、Beyoğlu beat の中心的なレーベル/プロモータの1つ Kod Muzik の主催で、 Beyoğlu beat の拠点 Babylon も会場になってますね (関連発言)。 記事でレポートされているのは、Burnt Friedmann & Jaki Liebezeit だったり Lali Puna だったり Four Tet だったりで、 トルコのミュージシャンで記事で触れられてるのは Liz Fando だけですが、 13日の Dulcinea はトルコのミュージシャンだけだったようですし、 Doublemoon レーベル界隈だけでなく、 次の世代というかよりオルタナティブなミュージシャンが育ってきてるのかしらん、 と期待したくなるところがあります。

で、今出ている The Wire, Issue 246 (August, 2004) の Global Ear は、マケドニア (Macedonia) からのレポートです。今年、 『2004 日本マケドニア現代アート交流展』 という現代アートのプロジェクトが行なわれていて、 その一環で6月にマケドニアのビトラ (Bitola) で展覧会が開催されました。 ちなみに、10月4〜14日には東京でも展覧会が予定されています。 The Wire の記事は、 ビトラで開催された音楽関連のイベントのレポートです。 報告者は、日本からの参加アーティスト 町田 良夫 です。 日本からは、他に、伊東 篤宏 (レビュー) と minamo が取り上げられています。 日本からのミュージシャンがエレクトロニクス方面ばかりだったせいか、 マケドニアのミュージシャンとは Oliver Josifovski (bass,electronics) としか共演しなかったようです。 The Wire の記事でも、もう一つのバンド Foltin の扱いは軽いですね……。

実は Foltin のCDを2枚持っているので、ここでフォローアップしてしまいます。 1st アルバム Out Re-Mer (Skopje Jazz Festival, SFJ108, 1997, CD) で、 このときは Oliver Josefovski もメンバーです。ちなみに、ラインナップは、 Branislav Nikolov (voice,acoustic guitar), Oliver Josifovski (contrabass), Pece Nikolovski (clarinet), Aleksandar Popovski (percussion), Blagoj Petrovski (kaval) の 5tet です。アコースティックな folk/roots-oriented jazz という感じです。 抽象的なハイトーンで歌いながらの guitar は Brazil っぽくもあり、 guitar と clarinet がかけあうときは Jim Hall / Jimmy Giuffre っぽくもあり、 kaval の音色が南バルカンを想起させるところもあり、 時々アウトにもなるという感じです。 続く 2nd アルバムは、Archimed (MAG, MAG102, 2000, CD) では、 Popovski (percussion) と Petrovski (kaval) が抜けて Goran Dimitrovski (el. bass,el. guitar,accordion) と Aleksandar Sekulovski (drums) が入ってのエレクトリックな 5tet。 新たな2人の el. bass + drums で jazz rock 色がアップして、 Nikolovski の吹く clarinet のフレーズがそこはかとなくバルカン (Balkan) 風味に なっているように思います。 Archimed の方がテンション高めでかっこいいですが、 Out Re-Mer の長閑さも悪くありません。 この後、Josifovski (contrabass) が抜けた後の 3rd アルバム Donkey Hot (Kukuzel, 2003) は未入手です。というか、この記事でリリースを知りました。 今はこのアルバムでの 6tet で活動しているようです。 10月の日本での展覧会に合わせて Foltin と Oliver Josifovski は来日するのであれば、 是非ライブを観たいものです。 そして、このプロジェクトの枠に留まらずに folk-oriented jazz に 対応できそうなミュージシャンと共演していって欲しいようにも思います。

ちなみに、マケドニアの現代美術といえば、以前に 『Radiation ― マケドニア現代美術展』 (国際交流フォーラム, 2000) という展覧会を観たことがあります。 そのときはレビューとか書かずに談話室で軽く言及して流してしまいましたが、 コンセプチャルだったりメディアアートっぽかったりして、 あまりバルカンとかマケドニアとかいう地域性を想起させない、 普通にヨーロッパ的な現代美術作品だったという印象が残っています。 もちろん、今度の10月の展覧会も観たいと思っています。

マケドニアの音楽については、2年余り前にここで、 Skopje Jazz Festival (Foltin の1stをリリースしている) や Third Ear の界隈に軽く触れたことがあります。 そのときは、まだほとんど音は聴けていなかったわけですが。 その後、マケドニアからの個人輸入ルートは開拓できていないのですが、 いろいろ手を尽くして、それなりにCDを入手います。 数年前のリリースというものばかりということもあって、特に紹介してませんが。 面白いものもあるので、いずれざっと紹介したいものです。

- 若林, 東京, Thu Jun 10 0:41:07 2004

いろいろ談話室に振りたい話題があったりとかして、週も半ば過ぎてしまいましたが、 先週末も音盤雑記帖の更新してます。 トルコはイスタンブール (Istanbul, Turkey) のレーベル Kalan の特集ってほどではないですが、 De Amsterdam Klezmer Band & The Galata Gypsy Band, Katalofti (Kalan, 2003, 285, CD) と Balkan Messengers, Balkan Messengers (Kalan, 2001, 222. CD) を併せて レビューしました。 実は、Katalofti は今年の頭くらいに入手してとても気に入ってたのです。 で、他の Kalan の作品を入手してみて、良いのがあったら一緒に紹介しようと思って、 今までずるずると……。 まさか、Kalan に直接注文して、届くまでに3ヶ月もかかるとは思っていませんでしたよ。 しかし、一番期待していた Balkan Messengers は、期待を裏切らない内容でした。 Nedim Nalbantoglu の violin はいいですねー。 DuOuD, Wild Serenade (Label Bleu, LBLC2588, 2002, CD; レビュー) にも参加してましたが。 他の参加CDもちゃんと探そうかしらん。 Enver Izmailov (レビュー 1, 2) とのデュオってCDにならないかしらん。

リリース時期が古いこともあってレビューで取り上げなかったのですが、 それなりに楽しんだものについて、ここで軽くコメント。

トルコのジプシー系の clarinet 奏者 Barbaros ErkoseCazname Atlantik (Kalan, 68, 1997, CD) は、piano と darbuka と cello のミニマルな伴奏で、 特に、cello が弓弾きではなくてピチカートでベースラインを取るあたり jazz っぽいです。録音も良く隙間の生かした音作りは ECM ぽかったりすらします。 といっても、それなりにノリもいいし、 klezmer とも共通するような瓢々とした演奏がとても気にいってしまいました。 惜しいところは、どうやらオーバーダビングをしている所があるところかしらん。 いずれ、何か他の作品と一緒に取り上げたいですね。 泥臭いジブシー音楽を期待するとハズレでしょうけど、 ECM の Anouar Brahem Trio での Erkose が好きな人にはお薦めです。

Asiaminor は Okay Temiz のバンド Oriental Wind のメンバーだったこともあるという bass 奏者 Kamil Erdem のバンドですが。 Asiaminor, Kedi Ruyasi (Cat's Dream) (Kalan, 71, 1997, CD) は、fletless bass が醸しだす jazz rock 臭がちょっとキツいかしらん。 contrabass を弾いているアコースティックな曲とかいいんですけどね。 隣国ギリシャ (Greece) の Lyra や Libra Music といったレーベルが 同時期1990年代後半にリリースしていた jazz rock テイストの "folk roots jazz" と同じような感じの音作りというのも面白いです。

- 若林, 東京, Tue Jun 1 23:37:57 2004

この談話室で以前にちょっと触れたことがある Various Artists, Novaya Scena: Underground From Ukraine (What So Funny Anout, WSFASF133, 1993, CD) を入手しました(って、実は去年末に入手してた (フォトログ) んですが、紹介するきっかけを逸して今に至るという……)。 メンバーの中には1960年代末まで活動が遡れる人もいるようですが、 ウクライナ (Ukraine) のキエフ (Kiev) をハリコフ (Kharkov) を拠点として 1980年代後半のゴルバチョフ (Gorvachov) 政権下で "Novaya Scena" (新しいシーン) と呼ばれた 14のアンダーグラウンドなバンドの音源を集めたアンソロジーです。 参考までに、集録されているバンドの名前を挙げておくと、 Ivanov Down、Sahar Belaya Smert、Tshitshka Dritshka、Tovarish、Tsherepahi、Kazma Kazma、Rabbota Ho、Gnida、Elza、Igra、Collyegsky Assessor、Shake Hi Fi、Foa Hoka、Tshujoy です。 録音は最も古いもので1986年、ほとんどは1990年から1992年に録音されたものです。 ロシア (Russia) のレニングラード (Leningrad。現サンクトペテルブルグ (St. Petersburg)) のシーンように jazz / improv. な要素があったわけではなさそうで、rock 的です。 時代的まだ早く、club music の影響はほとんど聞かれません。 もともとレコードやCDではなくカセットテープでリリースされたような音源が中心で音質はかなり悪いです。 資料的な価値はあると思いますが、音楽として面白いものかというと……。

"Novaya Scena" シーンの背景についてインターネットで読めるテキストとしては、 John Rust, "Russia Outward" (in Adventures in Sound, 2000.5.14) というものがあります。 シーンのキーマン Sergay Myasoeov のことを "the Maclaren of Novaya Scena-union" と言っているのが面白いです。 あと、東欧革命後、rock が普通に聞かれるようになる中、"Novaya Scena" の生き残りたちが どんどん rock から離れていく様子が伺えるようで興味深いです。 しかし、この筆者もウクライナを離れてドイツに移住しているわけで、 東欧のオルタナティブなシーンを支えてた若者が豊かな西欧に移住しがち という状況も考えさせられます。

アンソロジー Novaya Scena に参加していたバンドの一部は、 その後、ポーランドはワルシャワ (Warszawa, Poland) を拠点に ウクライナの音楽をリリースしているレーベル Koka からリリースを続けています。 このレーベルも "Independent stage, underground, folk etc" というわけで、 在イギリスのウクライナ系の Peter Solowka (ex-Wedding Present) のバンド The Ukrainians のライセンス盤から ウクライナのフォーク音源までリリースしているレーベルです。 カセットでのリリースが中心でしたが、最近はCDも増えてきています。 で、このレーベルのCDも何枚か入手しています。

Sahar Bilaya Smert (Cukor Bila Smert) のメンバーだった Svitlana Nianio (Svitlana Okhrimenko) の Kytytsi (Koka, 025-4, 1999, CD) は、 キーボードのメインとしたローファイで簡素なバックにか細く歌うというもの。 フォーキーなメロディや声質とか良いのですが、なんせ音作りが拙いです。 しかし、厚紙手作りのジャケットも凝っていますし、いい感じの手作り感もあります。 DIY 色濃い indie pop とか好きな人なら、けっこう気にいるかもしれません。 どうやら、Blemish というバンドの 特別ゲスト的なメンバーとしても活動しているようですね。

Foa HokaNie-Wiadomosc (Koka, 026-2, 1998, CD) は、Goth 色濃い作品です。 もうちょっと音作りが良ければ、 Tone Casualities からリリースされてた中東欧の post-industial / Goth 物くらいにはなると思うのですが。 惜しいですね。というか、中東欧ってこの手の音に根強い人気があるように思われます。

- 若林, 東京, Thu May 20 23:12:29 2004

セルビアはベオグラード (Belgrade, Serbia) のオルタナティブな音楽フェスティバル Ring Ring が始まりますね。 "musical styles from avant rock, free jazz, improvised music, electro-acoustic and contemporary music to world music" あたりをカバーする音楽フェスティバルですが、今年のラインナップは去年のより ちょっとフォーク色が薄めになった気もしないではないですが、どんなもんでしょうか? オランダ-セルビア混成の TilNo BeAm や Boris Kovac の新バンド La Campanella が気になります。

2ヵ月ほど前ですが、中東欧の独立系レーベルのネットワーク Tamizdat に、 Ring Ring のオーガナイザ Bojan Djordjevic への インタビュー記事 (2004.3.7) が掲載されていました。 1990年から独立系ラジオ局 B92 に "experimental/avantgarde/alternative music" な番組を持ち、 2000年からは Disco 3000 という world music 番組を持っているんですね。 「この手のインデペンデントで最新のものでありながらフォーク指向のある音楽をどう説明しますか? (How do you explain the existence of this kind of independent and current but folk-oriented music?)」 という、この方面の音楽に興味がある人なら訊いてみたい質問がされてます。 これについては「これはセルビアのねじれ現象だ」と回答してますが、必ずしもセルビアだけの状況ではないように思います。 「国営もしくはメジャーのレコード会社からの関心の欠如が、彼等をCD自主制作や B92ラジオのようなロック/アーバン指向を持つオルタナティブな経路に向かわせた」 と言っています。

Tamizdat にもう一つ、 ハンガリーはブダペスト (Budapest, Hungary) のオルタナティブスペース Fono の PR and Marketing Officer の Kornel Magyar へのインタビューへの インタビュー記事 (2004.4.30) も掲載されてます。 "Fono is the center of gravity for several music scenes in Hungary: Traditional folk, new "ethnic" music, and Jazz and experimental explorations all find a home within its welcoming walls. " と書かれているように、ここも Ring Ring と同じような場になっているわけですが。 このインタビューでは、このような状況は、共産政権時代の "Tanchaz" 運動からの流れで位置付けられているような感じです。

自分のいる東京のシーンを見ている (ってそんなに丁寧にフォローしてませんが) と、 メジャーからあまり注目されないオルタナティブなシーンってタコツボ化して繋がらないままという (例えば、jazz / improv. と world music の間ではかなり住み分けてしまっているような) 印象があったりします。 その一方で、中東欧のシーンを追ってるとRing Ring にしても Fono にしても同じような傾向があるので、 共通する文脈があるのかなー、と思ったりしてるのですが。 こういうインタビューを読んでいると、そんな単純な話ではなくてそれぞれに別々の文脈があるのだなぁ、と思います。 むしろ、タコツボ化するほうが特殊なのかもしれないですね……。

- 若林, 東京, Thu May 20 0:52:23 2004

一ヶ月ほど前の話になりますが、つい最近気付いたのですが。 ロシアはモスクワ (Moscow, Russia) のオルタナティヴスペース DOM と 独立系レーベル Long Arms の創設者で、モスクワのオルタナティヴな音楽シーンの仕掛人だった Nikolai Dmitriev 4月10日に脳溢血で亡くなったそうです (訃報)。 5/19から DOMで Nikolai Dmitriev 追悼のフェスティバルが開催されているようです。 Nikolai Dmitriev の DOM / Long Arms の活動については、談話室で何回か言及してきた (ここここ) だけに、ちょっと感慨深いです。

- 若林, 東京, Mon May 17 1:12:44 2004

最近、これといってグッとくるような新譜に出合えてない気がするこの頃。 音盤雑記帖の更新も滞りがちなわけですが。 というわけで、落ち穂拾い的に数年前のリリースとかにも目を向けたいと思います。

今週末は、以前から、中東欧の音楽の話の中で何回か言及したことのある ロシア (Russia) 出身2人、セネガル (Senegal) 出身1人を核として アムステルダムを拠点に活動する多文化混成バンド Vershki De Koreshki特集レビューです。 以前に特集レビューした Vladimir Volkov 率いる Volkov Trio とも関係深いバンドです。このバンド名義では、 Vershki Da Koreshki (Al Sur, ALCD204, 1996, CD)、 _Real Life Of Plants (Long Arms, CDLA96020, 1996, CD)、 Gombi Zor (VEDAKI, VEDCD-99-111, 1999, CD) の3枚のリリースがあります。最もお薦めなのは、自身のレーベルからの Gombi Zor でしょうか。 しかし、流通が悪いんですよね……。Al Sur は倒産したという噂も聞くし。 最も入手しやすいのは、Real Life Of Plants でしょうか。

関連音源として、 Mola Sylla & Vladimir Volkov, Seetu (Long Arms, CDLA02035, 2002, CD) と Ernst Reijseger, Janna (Winter & Winter, 910 094-2, 2003, CD) もレビューしています。 これらも談話室で軽く触れてから 一年近くたってしまってるわけですが……。うむー。

やはりレビューようと思った理由の一つは、いろいろあるんですが、その一つは、 Vershki Da Koreshki のメンバー Sandip Bhattacharya と、 準メンバー的存在でもある Ernst Reijseger が参加した Boi Akih, Uwa I (ENJA, ENJ-9472, 2004, CD) がリリースされたということ。未聴だし、そもそもまだ未注文でもあるんですが、 インドネシアのモルッカ (Moluccas, Indonesia) をルーツに持つ女性歌手 Monica Akihary をフィーチャーしていて、 これも編成がちょっと Vershki Da Koreshki 的だなぁと、とても気になります。

- 若林, 東京, Sun Apr 4 23:51:35 2004

新譜レビューする気分になれないので、最近入手した中古盤から。

Jiri Stivin / Rudolf Dasek, System Tandem (Japo, 60008, 1975, LP) は、1970s からチェコスロバキア (Czechslovakia) で活躍してきた 2人の jazz ミュージシャン Stivin (alto saxophone,soprano saxophone,flute,alto flute,recorder) と Dasek (guitar) のデュオです。 東欧革命以前はほとんどチェコスロバキアからのリリースだけだったので、 この ECM 傍系レーベル Japo からのリリースは数少ない西欧盤になります。 偶然、比較的廉価 ($15) でみつけたので、買ってしまいました。

1990s末から中東欧モノをそれなりに力を入れて追いかけてることもあって、 チェコの代表的な jazz ミュージシャンの一人である Stivin もさすがに名前くらいは知っていました。 しかし、最近出て来た人でないこともあって逆に今まで音は聴いたことはありませんでした。 Stivin の "Puddle On The Muddle" での alto sax は Ornette みたいとか、 "Shepherd Song" での soprano sax は Coltrane みたいとか思うときも無いではないですし、 Dasek の guitar の音色も若干古臭いとは思います。 しかし、それでも、Dasek の細かいフレーズやカッティングに乗って吹きまくるところとかカッコいいです。 "Moravian Folk Song - Forman Going Down The Valley" のような曲もやっていて、 flute や recorder を吹いている曲など特に、 今の中東欧の roots-oriented な European jazz のルーツを思わせるところもあって、 それも自分にとってはツボです。 そんなにアウトな展開になったりとかしないのですが、いい感じのテンションを保っています。 ジャケット・デザイン (フォトログ) も ECM / Japo ならではでとっても良いですし。これは大当たりでした。

Stivin の作品を主にリリースしてきているチェコの Supraphon レーベル音源はCD化も進んでますし。 特に、Iva Bittova が参加した Jiri Stivin, Status Quo Vadis (Supraphone, SU5373-2, 1987/2002, CD) とか、とても気になります。うーむ。

しかし、Japo のCD化はほとんど全く進みませんね。 Dollar Brand, African Piano (Japo, 60002, 1969) と、 AMM III, It Had Been An Ordinary Enough Day In Pueblo, Colorado (Japo, 60032, 1979) くらいでしょうか。 あと、Edward Vesala, Nan Madol (Japo, 60007 / ECM, ECM1077, 1974) が ECM 名義でリリースされ直されていて、それがCD化されていますね。 先日談話室で触れた OM とか Japo のリリースにも良いものが多いので、 CD化を進めて欲しいものですが。 Manfred Eicher はここらの音源のCD化はほとんど考えてなさそうだしなー。 かといって、Universal とか他のリイシューレーベルにCD化を許可するとかそういうこともしなさそうだし。

今日紹介した System Tandem にしてもそうですが、Lennart Aberg とか Japo のリリースは現在の欧州発の roots-oriented jazz の原点としてもっと再評価されていいものが多いと思うのですけどね。 ま、以前にも言ったように、 Japo だけでなく、ECM、ENJA、MPS あたりのリリースにも言えることですが。 1980s末からの world music の文脈では無視/過小評価されていた感もありますし、 1990sくらいから world music とか興味持った人だと知る機会もほとんど無いように思うだけに、 なんとももったいないように思います。

- 若林, 東京, Fri Apr 2 0:16:21 2004

中東欧の jazz / improv をフォローするものとしては押さえておかなくちゃいけなかったよな〜、と思っていたのが オーストリアのウィーン (Vienna, Austria) を拠点に1980s末から活躍する trombone 奏者 Christian Muthspiel (ちなみに、guitar 奏者 Wolfgang Muthspiel とは兄弟で、共演作品も多いです) が 1990s前半の旧東欧のミュージシャンとの2枚のアルバム Octet Ost (Amadeo, 513 329-2, 1992, CD) と Octet Ost II (Amadeo, 521 823-2, 1994, CD)。 最近、Octet Ost の方はデジパックでジャケットを変えて再発されていた気がするのですが、 どうせ中古落ちするだろうと思っていたら、案の定オリジナルを中古廉価でゲット。 というわけで、簡単に紹介。

Octet Ost (Amadeo, 513 329-2, 1992, CD) は、Christian Muthspiel に加え、 Anca Parghel (voice; ルーマニア (romania))、 ECM からのリリースでお馴染 Tomasz Stanko (trumpet; ポーランド (poland))、 The Fairly Tale Trio の Anatoly Vapirov (saxophones; ブルガリア (Bulgaria); 関連発言 1, 2, レビュー)、 Nicolas Simion (saxophones; ルーマニア)、 Klaus Koch (bass; ドイツ (Germany))、 The Ganelin Trio の Vladimir Tarasov (drums; リトアニア (Lithuania); レビュー 1, 2, 関連発言)、 Sainkho Namtchylak (voice; トゥヴァ (Tuva); レビュー 1, 2) という編成です。 いかにもオールスター物ということで内容はさほど期待してなかったのですが、意外と良いじゃないですか〜。 ギクシャクした post-free っぽい物という意味では大きく予想は外れないですし 凄いってほどじゃないけど、それなりのソロも聴かれますし。 当時の JMT レーベルとか好んでリリースしそうな音です。 2人の女性歌手がいいアクセントになっているかも。 Namtchylak の throat singing と Muthspiel の trombone とのかけあいもいいけど、 ジャミっとした folk 的な歌唱がカットインするように編集されているのが面白かったです。 Parghel は初めて聴きましたが、Urszula Dudziak (ポーランド) や Yildiz Ibrahimova (ブルガリア) を思わせるスキャットというか modern voicing。 東欧の人たちがこの手の女性歌手を好むルーツって何なんなのでしょうね。

Octet Ost II (Amadeo, 521 823-2, 1994, CD) は、Muthspiel、Stanko、Vapirov、Tarasov の4人は変らず、 Moscow Art Trio や Pago Libre で知られる Arkady Shilkloper (frenchhorn; ロシア (Russia); 関連レビュー 1, 2, 3)、 Petras Vysniauskas (saxophones; リトアニア; 関連発言)、 Bela Szaloky (trombone,bass trumpet; ハンガリー (Hungary))、 Mikulas Skuta (piano; スロヴァキア (Slovakia)) の併せて8人という編成です。 歌手2人が抜けて piano が入って管が入ったので、音が厚めになってとても big band っぽくなったかも。うーむ。 big band といっても swing じゃなくて、むしろ、オーストリアでいえば Vienna Art Orchestra とかの post-free 路線のだけど。 ちょっと普通になってしまったかしらん。これで Parghel を残しておいたらもっと面白くなったんじゃないかなぁ。

- 若林, 東京, Mon Mar 29 23:04:29 2004

一週間前に、Om, Rautionaha (Japo, 60016, 1976, LP) の話をしたわけですが。 それだけ買うのもアレなので、他にもとその店をチェックしていて見つけたのが、Various Artists, Red Wave: 4 Underground Bands From The USSR (Big Time, 10020-1, 1986, 2LP)。 1980年前後にレニングラード (Leningrad。現サンクトペテルブルグ (St. Petersburg)) から出てきた4つのロックバンド Aquarium, Kino, Alisa, Strange Games (Strannie Igri) を、それぞれLPの片面に収録したUS制作のアンソロジーです (いくらソ連のアンダーグラウンド音楽の中心都市だったとはいえレニングラードのバンドだけという点では "From The USSR" は言い過ぎですね)。 このアンソロジーの存在自体は1980s末くらいから知っていましたが、 中東欧の音楽を本格的にフォローしはじめた1999年頃から手に入れておきたいと思っていたのでした。 ちなみに、ロシア盤でCD化もされているのですが、 音そのもの聴きたいというよりも資料として持っておきたかったので、 やっぱりオリジナルのアナログのカラービニールで欲しかったりしたのでした。

これらのバンドが出てきた (このアンソロジーが作られた) 背景は、 アルテミー・トロイツキー 『ゴルバチョフはロックが好き?: ロシアのロック』 (菅野 彰子=訳, 晶文社, ISBN4-7949-5080-2, 1991, book; Artemy Troitsky, Back In The USSR, 1987) に詳しいので (関連発言)、ぜひそちらを読んで欲しいのですが。 これらのバンドが活動を始めたのは、ソビエト政権下でロックが公式に認められなかった時代です。 しかし、このアンソロジーが編まれたのは1985年のゴフバチョフ (M. Gorbachev) 政権の成立後で、 「ペレストロイカ」「グラスノスチ」最初期ならではのリリースと言えるかもしれません。 トロイツキーの本が手元に無いので正確な前後関係は確認出来ないのですが、 ソ連の国営レコード会社 Melodiya がこれらの rock のレコードをリリースし始めたのも、 Red Wave がリリースされた前後になります。

Aquarium は名盤と言われる Radio Africa (1983) をリイシューCDで持っていますし、 Kino とかカルト的な人気もあって非公式サイトも多くMP3がよく落ちている (例えばここ) ので、どういう音楽を演奏していたかは知っていました。 そういう意味で、音はある程度予想の範囲。 この編集盤からも1970s末頃から英米で流行った new wave の影響を聴いてとれます。 Aquarium は Magazine や XTC を思わせるし、 Strange Games (Strannie Igri) は 2-Tone を思わせるところがあるわけですが、 それらよりもずっとチープな感じの仕上がりになってます。 Kino となるともう一世代前の folk rock 的な雰囲気も漂っていますが。 歌詞の内容が判ればまた印象も変るのかもしれないですが、 時代背景込みで興味深く聴かれるものの、それ抜きではちょっと厳しいと思います。 1980s new wave リバイバルが言われている昨今ですが、 それらの作品から受ける印象に比べて録音・演奏の拙さやスタイルの古さが気になるのはどうしてでしょう……。うーむ。 ちなみに、この Red Wave をリリースしたUSの独立系レーベル Big Time は、 今はもう倒産してしまいましたが、 Love Tractor、Dream Syndicate やベテラン Alex Chilton、それから The Jazz Butcher / Max Eider や The Pastels のUS盤とかをリリースしていたレーベルです。 こうして同じレーベルの他のバンドの名を挙げると当時の英米のインディーズの美意識との間に大きな違いが……。

それに、ジャケットデザイン (フォトログ) も1980sのものとは思えないセンスです……。うーむ。 ちなみに、表はモスクワの聖ヴァシリー寺院 (St. Basil Cathedral) の写真に、 このアンソロジーに収録された4バンドのフロントマン Vitia Sologub (Strannie Igri)、Boris Grebenshikov (Aquarium)、Victor Tsoi (Kino)、Kostya Kinchev (Alisa) の写真をコラージュしたもの。 裏ににはプロデューサの Joanna Stingray を中心に 4バンドのメンバー15人 (全員ではない) が一列に並んだ写真が使われています。

ちなみに、Aquarium は Boris Grebenshikov も大物という感じで今でも活動してます (この4月に来日公演すらする) が、 もはやシーンの最前線にいるという感じでもないですし。 Strange Games (Strannie Igri) の元メンバーがやっている Deadushki の方が同時代的な動きの中で活躍しているという感じがします (関連レビュー)。 Viktor Tsoi が1990年に交通事故死していなければ、Kino はどうなっていたでしょうね……。 Alisa は今何をしているのでしょう……。

- 若林, 東京, Mon Mar 29 0:55:08 2004

この週末の音盤雑記帖の更新として、 ベラルーシ (Beralus) のバンド KriwiPast & Present (Orange World, OWCD007, 2004, CD) の レビューを書きました。 バンドの出て来た背景とかほとんど掴めなかったのでどうしようかとも思いましたが、 音がけっこう気に入ってしまったし、ベラルーシ物というのもなかなか無いので、 ちょっと評価甘いかもしれないけれどレビューすることにしてしまいました。

ま、ベラルーシといっても Kriwi のプロダクション Belpunkt はドイツのベルリン (Berlin) にあるんですけどね……。 ここの音楽の所から辿れば、 背景とか少しは判るのかもしれないのですが……。ドイツ語だし。うーむ。

ちなみに、リリースしているのはポーランドのレーベル Orange World から。このレーベルについては、去年、既に紹介済み (関連発言, レビュー) なわけですが。あいかわらずいいリリースが続きますね。注目のレーベルです。

それにしても、ベラルーシでもなく Belpunkt のあるドイツでもなく、 その中間のポーランドのレーベルからのリリースだというのが興味深いです。 というか、Orange World がリリースしているようなポーランドのシーンと繋がっているのかなぁ、と思ったり。 そういった国境を越えた動きも気になります。

- 若林, 東京, Thu Mar 4 23:40:59 2004

レビューするほどでもないけど軽く紹介しとこうかなぁ、 というネタがいろいろあるので、少しずつ棚卸。

以前からここで紹介してきた (関連発言 1, 2) ロシアのサンクトペテルブルグ (St. Petersburg, Russia) の electronica のレーベル Cheburec ですが、東欧の独立系レーベルのショップ Tamizdat で扱いはじめましたね。 カタログでわかるように 長らくカセットでのリリースがメインだったのですが、 やっとCDでのリリースが軌道にのりだからかしらん。 Jon Tye, "Global Ear: St. Petersbrug" (The Wire, Issue 228, February 2003) のような記事で話題だけ先行していて、 Various Artists, Ru.electronic (Lo Recordings, LCD22, 2001, CD) のような編集盤 (レビュー) くらいでしか音が実際に聴かれなかったですからねー。 やっぱり音が聴かれないとねー。というわけで、さっそくいくつか買ってみました。

Various Artists, Bykhod V Gorod 3 (Out To City 3) (Cheburec, CH020CD, 2003, CD) は、 このレーベルの最新コンピレーションで、 サブタイトルは "15 tracks of contemporary russian electronica" です。 Elochnye Igrushki (EU) や PCP (Parforated Cerebral Party) とかいつものメンツで、 やはり淡々とした IDM (Intelligent Dance Music) な音がメイン。 というか、ダウンテンポなので drum'n'bass 以前の 1990年代前半の Artificial Intelligence 路線に近くなっているかも。 これといって突出して耳を捉えた曲が無かったのが、ちょっと残念。 しかし、Funkstoerung というか Designers Republic のパクりのようなジャケットデザインは、いかがなものかと……。

Cheburec を主宰する Klutch8 bit Free Hand Beat (Cheburec, CH014CD, 2002, CD) だと、アップテンポな曲もあって1999年代後半っぽい雰囲気もあったりしますが。 やはり、もろ IDM って感じの音。うーむ。 いや、こういう音は嫌いじゃないですけど……。

1996年に活動開始したこのシーンの中では古株 PCPPsychedelic Power Pop (Cheburec, CH013CD, 2003, CD) というのも買ってみました。 こちらは、生の drums や guitar も軽めにフィーチャーしていて、 残響深めで緩めのリズムもちょっと lounge っぽい仕上がり。 今回入手した3枚の中では一番面白かったかも。

安っぽい制作じゃなくてそれなりに完成度はあるので、 あとはどう独自色を出していくか、って感じでしょうか。 同じロシアといっても (それだけで比較するほうが間違ってる気がしますが)、 roots 的な要素とか雑食的な部分もあって house 風でダンサブルなものが多いモスクワ (Moscow) の Exotica レーベルと対称的な感じもあって、 そのカラーの違いも興味深いです。 Bykhod V Gorod 3 (Out To City 3) 参加ミュージシャンみても Exotica と重なりが無いので、住み分けているように思われるのですが。 どういう住み分けなのかなー、とか気になります。

Exotica レーベルについても、 今まで紹介してきた (関連発言 1, 2) わけですが。 最近また Tamizdat に関連記事が載ってますね。 Heinrich Deisl, Rupert Weinzierl (trans.), F.R.U.I.T.S./Benzo: Electronic Textures です。

- 若林, 東京, Sun Feb 15 2:17:25 2004

今週末の音盤雑記帖の更新として、 Theodosii Spassov - Kostas Theodorou & Friends, Echotopia (FM, FM1578, 2003, CD) のレビューを載せました。 併せて、Spassov と Theodorou の参加した Balkan Horses Band, Contact Part One (UBP International, UBP044, 2003, CD) も軽く紹介しています。

Theodosii Spassov については、2年前に The Fairy Tale Trio feat. Enver Izmailov, Ultramarin (Kuker Music / Creative, KM C05, 2001, CD) を紹介 (レビュー, 関連発言) していますが。 こちらより Echotopia の方がずっと良いです。 Echotopiaは、実は、一ヶ月ほど前からヘビーローテーション状態です。く〜。

一方、Kostas Theodorou の方は Nostos (Lyra, CD0667, 1998, CD) というリーダー作があります。 これは持ってないのですが、 Various Artists, Folk Roots Jazz (Lyra, CD0690, 2000, CD) という Lyra レーベルの roots-oriented な jazz のサンプラー盤に "Kuklikos Horos (Circular Dance)" という曲が収録されています。 ジプシー (Gypsy) 風の曲で悪くはないもものこの一曲では決め手に欠けていたのですが、 Echotopia を聴いて買おうという気になりましたよ。 注文済みではあるのですが、在庫はあるのでしょうか……。うーむ。 Follk Roots Jazz はギリシャ (Greece) 1990s後半の roots-oriented jazz の動きを捉えた好盤です。 収録されているミュージシャンは、Avaton, Florina Brass Band, Human Touch, Iasis, Kostas Theodorou, Mode Plagal, Takis Barberis, The Black Sea Orchestra, Yorgos Kondrafouris です。

Balkan Horses Band については、以前からマケドニア (Macedonia) のレーベル Third Ear"News" 欄とかで 活動には気付いていて、とても気になっていました。 そんなわけでCDがリリースされて聴くことができて嬉しいかったです。 ま、オールスターバンドではあるんですが実際の音は凄いことにはなってないのは惜しいですね。 メンツ的にも音的にも、以前に紹介 (レビュー, 関連発言) した The Black Sea Orchestra, The Black Sea Project (Lyra, ML0660, 1998, CD) に近いものを感じます。ふむ。 ちなみに、Balkan Horses Band 唯一の女性メンバー Tamara Obrovac は、 BBC Radio 3 Award 2003 にノミネートされたりと、 注目度が上がっていてとても気になっているんですが。リーダー作がクロアチア盤しかなくて……。うーむ。

と、図らずしも先週 (レビュー, 関連発言) に続いてブルガリア (Bulgaria) がらみの物のレビューとなってしまいましたが、深い意味はありません。 Echotopia は一ヶ月ほど前に入手しいたのですが。 これがとても気に入って、やはり Balkan Horses Band も聴きたくなってしまい、 ブルガリアのCDショップ Music Bulgaria にオーダーしたりしていたのでした (フォトログ)。 レビューは Balkan Horses Band を聴いてからと考えていたら、タイミングが重なってしまったという……。 ちなみに、ブルガリアのショップということで不安なところもあったのですが、 けっこう対応は良かったです。ほっ。

- 若林, 東京, Sun Feb 8 1:38:35 2004

今週末の音盤雑記帖の更新として、 ブルガリア (Bulgaria) のジプシー (Gypsy) ミュージシャン Ivo Papasov の久々の新作 Panair (Fairground) (Kuker, KM/R07, 2003, CD) の レビューです。 併せて、少し前のリリースですが、同じく Kuker からリリースされたブリガリアのジブシーブラスバンド The Karandila Brass Orchestra のアルバム Tsigansko Lyto - Razkazi Za Otselyvane (Gypsy Summer - Tales Of Surviving) (Kuker, KP/R01, 1999, CD) も軽く紹介しています。

ブリガリアのソフィア (Sofia, Bulgaria) のレーベル Kuker は以前にも紹介しましたが (過去の発言, レビュー)。 1999年の活動開始から5年で7タイトルとリリースのペースはゆっくりしていますがとても良いレーベルです。応援したいものです。 実は、今のところ全タイトルを買ってきていたりります。 レビューで取り上げていない3枚についても、ここで軽く紹介しておきます。 Korova, Neshoe Eknalo (A Distant Echo) (Kuker, KP/R2, 1999, CD) は、ブルガリアの伝統楽器 tamboura (ギリシャの bouzouki に似た8弦の弦楽器) を 弾きながらの男声4人の合唱というもので、 tarambouka (トルコの darbuka に似た打楽器) 1人がリズムを取っています。 地声というにはちょっとサラッとした合唱です。 雰囲気はあるのですが、録音レベルが低めなこともあって、ちょっと掴み所に欠ける気もします。 ブルガリアの合唱といえば「ブルガリアン・ボイス」として1990年前後に流行った地声の女声合唱がありますが。 その合唱団の一つ Le Mystere des Voix Bulgares の出身という4人の女性歌手による合唱団 Eva Quartet のアルバム Harmonies (Kuker, KP/R06, 2003, CD) というのも出ています。大編成での迫力は無いですが、最小限の声数でゆったりと聴かせる作品です。 去年リリースされた Eva Quartet や Ivo Papasov を聴いていると、 このレーベルも録音が格段に良くなったなぁ、と感慨深いものがありますね……。 Korova や Eva Quartet のような folk/roots 物とは違う傾向のものですが、 Antoni Donchev, Dom No.14 (Kuker, KM/C03, 2000, CD) は、ちょっと室内楽っぽかったり、folk な楽器をフィーチャーしたりするあたりも ECM っぽいというか、いかにも European jazz という感じでしょうか。 こういうのもけっこう好きだったりしますが。 ちなみに、Kuker はブルガリアのレーベルのわりには配給がとても良く、 CD Roots のような専門ショップだけでなく、 大手の Amazon.de でも扱っていて、比較的入手が容易になっています。 今日紹介した2枚もブルガリアから直接買ったわけではありません。

思えば、僕がバルカン (Balkan) の変拍子の音楽に始めて接したのは1990年前後。 3 Mustaphas 3 のようなバンドも聴いていましたが、 Papasov の2タイトルのリリース Ivo Papasov And His Bulgarian Wedding Band, Orpheus Ascending (Hannibal, HNCD1346, 1989, CD) と Ivo Papasov And His Orchestra, Balkanology (Hannibal, HNCD1363, 1991, CD) も、バルカン変拍子を知るきっかけの一つだったように思います。 しかし、それ以降、英米独仏でのリリースも無く、この2枚も既に廃盤になっているようです。 で、この地元のレーベルからの新作と、時代の流れを感じますね。

Hannibal の親会社 Rykodisc のサイトを見ていると、 Hannibal のバックカタログも着実に廃盤になっていっているようで、 ハンガリー (Hungary) の Marta Sebestyen や Muzsikas の作品も、もはや Kismet (Hannibal, HNCD1392, 1996, CD) (レビュー) しか残っていないようです……。 今でこそ中東欧物をいろいろ聴くようになりましたが、 1990年代前半は、こういった Hannibal のリリースも僕にとっての数少ない手掛りの一つだっただけに、感慨深いです。 ま、当時 world music のバブルだったからリリースできたということもあったでしょうし、 商売にならないとフォローしなくなると言って英米のレーベルを批判することもできるでしょう。 しかし、Marta Sebestyen や Muzsikas のバックカタログも、自身のレーベルによるハンガリー盤が流通しています。 Papasov の新作もブルガリアの独立系レーベルからです。 アフリカのシーンなど現地制作と欧米制作の落差はまだまだ大きそうですが、 旧共産圏を含むヨーロッパのシーンに関していえば、もはや、 「英米 (あと独仏あたり) のレーベルがリリースすることによって世界に紹介」 という時代は終りつつあるなぁ、とつくづく感じます。 CramWorld や Piranha のようなハブ的な役割を担っているレーベルはありますが、 「世界に紹介する」という役割から、むしろ、 国・地域を越えてシーンを繋ぎ合わせる役割に変わりつつあるように思います。 (しかし、新作 Cuckooland (Hannibal, HNCD1468, 2003, CD) をリリースしているにもかかわらず Robert Wyatt のバックカタログが全て廃盤なのは、いかがなものかと……。)

そういえば、Hannibal レーベルの設立者で、 1990年前後の Ivo Papasov や Marta Sebestyen / Muszikas の仕掛人でもあった Joe Boyd に関する記事が The Wire の最新号 (Issue 240, Feburuary 2004) に出ていますね。 内容はむしろ創設期の1970年前後の話で、Papasov や Sebestyen の話は全然出てきませんが……。 つーか、Joe Boyd といえばやっぱり Fairport Convension や Nick Drake を世に出した人なわけで、 1970年前後を中心に取り上げるのはもっともだと思いますが。 The Wire が Joe Boyd を取り上げるなんてちょっと意外ではありましたが、 The Incredible String Band や AMM、The Blue Note あたりを搦めてくるあたりは さすが The Wire って感じでしょうか。

- 若林, 東京, Sun Jan 18 22:04:24 2004

黒海北東岸にあるグルジア (Georgia) といえば、去年11月に政変があったばかり。 無血クーデターとも革命とも呼ばれるこの政変は、 Transitions Online を読んでいても 改革を進めるものとして歓迎基調、 改革の進まない周囲の国々も学ぶところがあるって感すらあったりしますが。

以前に The Black Sea Orchestra, The Black Sea Project (Lyra, ML0660, 1998, CD) を紹介 (レビュー関連発言) したとき、 グルジアの Zurab Gagnidze がいたバンド Adio に言及したわけですが、 その後も未聴のままCDとかを入手することができないでいました。 しかし、Adio 名義ではないですが、ついに関連盤を入手してしまいました。 というわけで、 David Malazonia, First Swallow (Intuition, INT3352-2, 2003, CD) のレビューを書きました。 Zurab Gagnidze のバンド The Shin も、聴いてみたいんですけどねー。 Intuition くらいの大手独立系レーベルからリリースされないかしらん。

ちょっとスムースな jazz / fusion っぽい所も含めて、アルバニア (Albania) の Eda Zari, Statement (Intuition, INT3347-2, 2002, CD) (レビュー, 関連発言) と共通するところも大きいように思います。 Intuition は、 以前からけっこう好きなレーベルではあるのですが、 今後、この路線に力をいれていくのでしょうか。ふむふむ。

- 若林, 東京, Tue Dec 23 23:34:15 2003

Marc Almond と Boris Grebenshikov がデュエットする "Nuit De Noel" で クリスマスを迎えることになるとわ……。 って、クリスマス向けってわけではないですが、 Marc Almond, Heart On Snow (XIII Bis, 570872, 2003, CD) のレビュー音盤雑記帖へ載せました。 中東欧モノというかロシアモノということもありますし。 ネタモノぽくて、ちょっと評価甘めになってる気がしますが、興味深かったので。 しかし、元 Soft Cell の Marc Almond が、 Boris Grebenshikov / Aquarium (関連発言, レビュー) や Loyko (関連発言) と共演するようになるとわ。

1980年前後に British new wave 界隈から出て来た歌手のものといえば、 Terry Hall & Mushtaq, The Hour Of Two Lights (Honest Jons / Astralworks, ASW90990, 2003, CD) というのも、紹介しそこねてますが、けっこう面白いです。 ex-The Specials / Fun Boy Three の Terry Hall が、ex-Fun-Da-Mental の Mushtaq と組んで、 Asian / Arabian / Hebrew / Turkish / Gypsy なゲスト・ミュージシャンを集めて作ったアルバムです。 いろいろ交ぜ過ぎて、逆に決め手に欠けるような気もしますが……。 Marc Almond, Heart On Snow と一緒にレビューしようと思ってたのですが、 Heart On Snow だけで充分に長くなってしまったので、 こちらは、談話室で軽く紹介するに留めておきます。 しかし、Marc Almond といい、Terry Hall といい……。

- 若林, 東京, Sun Dec 14 21:54:39 2003

今週末の音盤雑記帖の更新は、 Serbia の Gypsy brass band Boban Markovic Orkestar のスタジオ盤2枚、 Bistra Reka (X-Produkcio, XP015 / B92, CD203, 2002, CD) と、 Boban I Marko (Piranha, CD-PIR1790, 2003, CD) のレビューです。 Various Artists, Srbija: Sound Global (Free B92, CD008, 2000, CD) に収録された Lajko Felix & Boban Markovic Orkestar "Felix Koro" が気にいってた (レビュー) ので、 Boban Markovic Orkestra feat. Lajko Felix, Srce Cigansko (X-Produkcio, XP005, 2000, CD) も買ってみたんですが、 Felix をフィーチャーしてるのって、1曲目の "Crni Voz" だけでした……。ちょっと残念。 しかし、ここに収録されている演奏と、 Bistra RekaBoban I Marko を聞き比べると、 スタイルがかなり変わってしてきるんだなぁ、と、つくづく思いますね。 ま、昔のもけっこう好きなのですが、 最近の積極的にいろいろな要素を取り入れるところが面白いと思ってます。 Crammed Discs がお抱えの Taraf De Haidouks, Kocani Orkestar, Mahala Banda Rai を使ってリミックス盤 Various Artists, Electric Gypsyland (CramWorld, CRAW32, 2003, CD) を作ったように、 Piranha も、Boban Markovic Orkestar, Frank London's Klazmer Brass Allstars, Fanfare Ciocarlia といったお抱えのバンドを使ってリミックス盤を作ってもいいような気がしますが。 参加の Asphalt Tango レーベルの音源まで使うと、 面白いことができそうな気がします。

Balkan 物といえば、最近、アウトレットで Slavic Soul Party!, In Makedonija (Knitting Factory, KFW310, 2003, CD) っていうのを買ってみました。New York Downtown なミュージシャンによるブラスバンド風のバンドですが、Macedonia 録音。 フィールド録音ぽい録音も交えてます。 Kocani では Kocani Orkestar の Ismail Saliev のお宅にお世話になったようですが、 一緒に録音してはいないようです。うーむ。 ま、これは、こんなものかしらん。

この Slavic Soul Party! の clarinet 奏者は Chris Speed ですが。 Speed も参加している Pachora が良いです。 メンバーが4人中3人重なる AlasNoAxis がイマイチに感じられたこともあり、 最近までノーチェックだったのですが。 行きつけのジャズ喫茶Astereotypical (Winter & Winter, 910 082-2, 2003, CD) を聴いて、実は凄くいいじゃないか、と。バルカン〜トルコ〜地中海な感覚を良く消化してて。 特に、Brad Shepik の electric saz さいこう。く〜。 ま、Knitting Factory リリースの 過去の3枚はまだ聴いてないので、それを聴いてから紹介したいと思ってますが。

Pachora も良いのに見落していたバンドの一つですが。 最近、実は良いじゃないか、と思っているのが、 David Krakauer's Klezmer Madness!。 やはりアウトレットで The Twelve Tribes (Label Bleu, LBLC6637, 2002, CD) を買ってみて、実はいいなぁ、ファンキーで、と。 Frank London の Hasidic New Wave より好みかも。けど、新作 Krakauer Live In Krakow (Label Bleu, LBLC6657, 2003, CD) がイマイチに感じられて、どうしたものかと思ってたり……。

そういえば、David Krakauer がライヴをした Poland の Cracow (Auschwitz の最寄の都市。 ちなみに、Krakauer というのは、ドイツ語で「Cracow の人」という意味) は klezmer リバイバルの拠点になりつつあるようで、 The Cracow Klezmer Band なんてバンドも出て来ています。実はこれもアウトレットで買ったのですが、最新作、 Bereshit (Tzadik, TZ7183, 2003, CD) は、klezmer というより tango って感じではありますが、 一曲、Grazyna Augustik の 抽象的なヴォイス (Urszula Dudziak 風) がフィーチャーされています。をを。 もうちょっとふっ切れると、とてもいい感じになりそうなんですけどねー。

一年前に、「Knitting Factory Works の JAM (Jewish Alternative Music) シリーズや、Tzadik の Radical Jewish Culture シリーズにしても、1990年代後半にはこういうアプローチもルーチン化したように感じて興味が失せていたのも確かだ」なんて 言ってしまったわけですが、 最近、単に自分のチェックが甘かったのではないか、と反省しているところもあったりします。 特に、Knitting Factory の JAM シリーズは、Pachora もそうですが、Jewish に拘らずに東欧〜バルカンの音楽にアプローチしている感もありますし。 中東欧〜トルコ方面の音楽に興味がある人は要チェック、って感じがします。 しかし、今から後追するには、リリースの数もけっこうありますし。 どうしたものか、って感じではあります……。

- 若林, 東京, Sun Nov 30 22:41:23 2003

今週末の音盤雑記帖の更新は、 Brno, Czech rep の cello / vocals の女性デュオ Tara Fukiレビューです。 デビュー作 Piosenki Du Snu (Indies, MAM153-2, 2001, CD) は、 1年程前に聴いて気にいってたのですが。 リリースから暫く経っていたこともあり、次の作品が出たらと思っていたのでした。 今年秋にリリースされた2作目 Kapka (Indies, MAM214-2, 2003, CD) も 良かったので、併せて紹介しました。

Tara Fuki が出て来ている Brno のシーンについては、 以前にも軽く紹介しましたが。 その中でも、Iva Bittova は別格として、 Tara Fuki と Slede, Zive Slede が気にいってます。 Slede, Zive Slede も、早く新作をリリースしないかなぁ。 公式サイトも2001年で止まってしまっているし、ひょっとして活動停止してしまったのかしらん。うーむ。

Iva Bittova や Tara Fuki、Slede, Zive Slede をリリースしているのは、 Brno の独立系レーベル Indies ですが、 今や、Czech で最も活動的な独立系レーベルになっているように思います。 Praha よりも元気なような気がする……。 Brno からは Iva Bittova や Tara Fuki のような "alternative" な音だけでなく、 もう少し folk 寄りでいい音楽も出て来てるんですけど。 以前に紹介した Teagrass も Brno 拠点のバンドですね。以前に紹介したときは未入手だった、2nd Moravian Love Songs (Gnosis, G-MUSIC009, 1999, CD) を遂に入手。 ライヴ盤 Vecirek (Indies, MAM176-2, 2002, CD) の元ネタという面もあって、やっぱりいいなぁ。 Eastbound (Gnosis, G-MUSIC005, 1995, CD) も、やっぱり欲しいなぁ。どうしようかなぁ。

- 若林, 東京, Sun Nov 16 19:53:19 2003

さて、今週末の音盤雑記帖の更新は、南イタリア物、といっても、 アルバニア (Albania)、ボスニア=ヘルツェゴビナ (Bosnia-Herzegovina) 混成 ということで、限りなく Balkan brass band 物に近いんですが。 Opa Cupa, Live In Contrada Tangano (Sottosuono, SOTTA106, 2002, CD)のレビューです。

これをリリースしているレーベル Sottosuono の出世頭といえば、 Shantel, Bucovina Club (Essay Recordsings, AYCD1, 2003, CD) (レビュー) にも参加していた、 RosaPaeda だと思いますが。 RosaPaeda より Opa Cupa の方が Bucovina Club 向けのような気がします。 Bucovica Club には、やはりイタリアの Banda リバイバルのバンド Banda Ionica が参加していたし。バルカンの音楽と南イタリアの音楽の文脈の接近具合がとても興味深いです。 ま、このような状況については、一年前にも "The Italian 'Banda' phenomenon" というテキストとかに触れつつ、紹介しましたが。

一年前にバルカンの Gypsy brass band とイタリアの banda の話をしたときに メインでレビューした Harmonia Ensemble & Kocani Orkestar, Ulixes (Materiali Sonori, 2002, enhanced CD) に参加していた La Banda Improvissa が、 Pratomagno Social Club (Materiali Sonori, MASOCD90133, 2003, CD) をリリースしています。 ゲストに、Tuxedomoon の Blaine L. Reininger や、 Kocani Orkestar の Ismail Saliev など、Crammed 人脈も参加しているし、 付録のライブ映像のものには Daniele Sepe が参加しているものがあるし。 けど、悪くはないけど、メンツから期待されるほど弾けてないんですよね。ちなみに、 Cinquanta Angeli Musicanti Sospesi Su Un Cielo Di Note (Materiali Sonori, no cat. no., 2003, CDR) というライブCDRも、ほぼ同時に廉価でリリースされています。 演目に重なりが多く演奏もそんなに大きく変わっていなかったので、ちょっと残念。

- 若林, 東京, Sun Nov 2 13:48:17 2003

Various Artists, Golden Years of the Soviet New Jazz, Volume IV (Golden Years / Leo, GY413/416, 2001, 4CD) がしばらく前に出てます。やっと、一回しか通して聴いた程度なんですが、軽く紹介。 今回は、The Ganelin Trio 特集、というか、 Vyacheslav GanelinVladimir ChekasinVladimir Tarasov の3人の関係した録音を集めたものになっています。 The Ganelin Trio は "Soviet New Jazz" のミュージシャンたちの中でも jazz のイデオムを最もよく消化している感じで、ノリもいいし、ユーモアもあるし。 僕は Sergey Kuryokhin より The Ganelin Trio の方がずっと好きだったりします。 1990s半ばに彼等の地元リトアニア (Lithuania) のレーベル Sonore がリイシューしていたとき、 直接コンタクトを試みたくらいです (関連するレビュー 1, 2)。 全4巻の中で一番すんなり聴けたように思います。 けど、4枚目の The Ganelin Trio の演奏は、他のCD化されている音源の方が楽しめるかしらん……。

しかし、全4巻ということで、Golden Years of the Soviet New Jazz シリーズ (関連する過去の発言: Vol. I についてVol. II についてVol. III について) もこれで完結です。ああ、やっぱり、全巻揃えてしまいました。 ま、750組限定だし、資料的にも持っている価値は大きいとは思いますが……。

- 若林, 東京, Wed Oct 29 23:18:50 2003

音盤雑記帖を更新しました。 中東欧ネタです。 Moscow, Russia の electronica ユニット Volga の 新作 Vypei Do Dia (Bottoms Up!) (Exotica, EXO03130, 2003, CD) のレビューです。 1st アルバム Volga (Exotica, EXO99110, 1999, CD) は 2年近く前に入手してたんですが、正直に言ってあまり良いとは思っていませんでした。 しかし、良くなりましたねー。deep house 版 Farlandes、と呼びたくなるくらいです (Farlanders 関連のレビュー 1, 2)。

これをリリースしている Exotica レーベルの 編集盤シリーズ Tell Tschaikowsky The News は、 Crammed Discs / SSR の Freezone シリーズを思わせる仕上がりで、 かなりお薦めだったりしますが (関連発言)、 編集盤はコンセプトに特長がないと紹介しづらいし。 かといって、個々のミュージシャンのアルバムはどうも決め手に欠けたりして、 レビューしそびれてきました。 やっと、レビューしようというアルバムが登場した、って感じでしょうか。

以前に、Volga の1stの音作りをしている Alexei Borisov や 2nd の音作りをしている Ramon Lebedev が参加している Novaya Russiaya Alternativa, Uverennosti v Nevidimom (Pentagramma, 009, 1999?, CD-R) を入手して、 「folk/roots 的な歌唱や楽器音と、Letov の sax と、その加工を含む Borisov の電子音、という感じなので、 ちゃんと制作すれば楽しめる音になるんじゃないなかぁ、と思うところもあったり」 ってコメントで軽く紹介したわけですが。 是非、Vypei Do Dia (Bottoms Up!) のレベルの制作でCDをリリースして欲しいものです。

- 若林, 東京, Sun Oct 19 1:11:06 2003

待望の Various Artists, Electric Gypsyland (CramWorld, CRAW32, 2003, CD) が、 出回りはじめました!! というわけで、さっそくレビュー。 ま、このリミックス盤の背景については、 9月28日の発言と、 Shantel, Bucovina Club (Essay Recordings, AYCD01, 2003, CD) の レビューを参考にして下さい。 ちなみに、元ネタとなった、 Taraf De HaidouksKocani Orkestar の関連レビュー 1, 2, 3, 4, 5

しかし、Kocani Orkestar, L'Orient Est Rouge (CramWorld, CRAW19, 1997, CD) のレビューで 「リミックスを出して欲しい」と書いているくらいで、 もっと早い時期にこのような企画が行なわれてもいいじゃないか、と思うところもあります。 しかし、音楽の受容層を考えると、Gypsy music って、 Celtic music とかの欧州各地の folk の受容層から受けいれられていったところがあるように感じられます。 そして、その界隈では、fRoots のような雑誌を読んでいても思うのですが、 アコースティックな指向が強いし、電気的な音処理もせいぜい rock 的なものまで、というか。 やっと、club music と受容層が重なり始めたのかなぁ、と思ったりしています。

リミックス側の参加バンドについては、いちいち言及しませんが。 今年の前半に重点的に紹介した トルコ (Turkey) の "beyogle beat" 界隈の中から、 Mercan Dede (関連発言) が参加しているのが興味深いです。ちゃんとCDをレビューしてませんが……。 しかし、Mercan Dede をリリースしている Doublemoon レーベルを見れば、 先日レビューした、 Burhan Ocal & The Trakya All Stars featuring Smadj, Kirklareli Siniri (Doublemoon, DM020, 2003, CD) など、リミックス企画ではなく通常のバンドとして Electric Gypsyland と同じようなことをやっているわけですし。 Electric Gypsyland の Gypsy music を Turkish music に置き換えれば、 Doublemoon レーベルのやっていることを重なりも大きいように思います。

あと、Novi Sad, Serbia の Modern Quartet の参加も興味深いです。 Free B92 の club music コンピレーション・シリーズ Belgrade Coffee Shop (関連発言) の定連ユニットでもあるわけですが。 Stereo Freeze というサブレーベルを作って、Free B92 は club music のリリースに積極的だったりします。 その一方、Free B92 は、roots なコンピレーション・シリーズ Srbija Sound Global (関連発言) もあって、その手のリリースも多いわけです。Gypsy music の割合も大きいですし。 Electric Gypsyland を受けて、ってわけでもないですが、 Belgrade Coffee Shop vs Srbija Sound Global のようなリミックス企画が出てくるのも時間の問題じゃないかなぁ、と思うところもあります。

Hungary の Gypsyhouse レーベルの活動 (関連発言) といい、 中東欧のシーンにはそれなりの下地があるだけに、 影響力のあるレーベル Crammed からの Electric Gypsyland のリリースによって シーンの展開がどっと進みそうな予感もします。

- 若林, 東京, Sun Sep 28 23:26:53 2003

先週末にレビューした Various Artists, Crammed Global Soundclash 1980-89: The Connoisseur Edition (Crammed, CRAM100, 3CD+booklet box, 2003) ですが、このリリースに合わせて、 Crammed Global Soundclash というフェスティバルが今日から開催中です。 ラインナップはどれも面白そうなのですが、特に興味を惹かれているのは、 Electric Gypsyland feat. Shantel。 Electric Gypsyland というのは、10月リリース予定の CramWorld の Gypsy 音楽の音源のリミックス集で、 DJ陣も豪華で楽しみにしているものです。 では、Shantel とは何物? という感じで調べていて Bucovina Club (Essay Recordings, AYCD01, 2003, CD) に突き当たってしまいました。く〜。 Electric Gypsyland が出たらそれと併せてレビューとも思ったんですが、 先行して書いていたら充分な長さになってしまったので、 単独でレビューしてしまいます。 美味しいバンドは一通り押えてあるし、 Gypsy 音楽みたいな泥くさいのはちょっと……という人にもオシャレに楽しめそうな仕様になっているので、 入門盤としてお薦めです。

しかし、Crammed がトップダウンに Gypsy 音楽リミックスを仕掛けた、というより、 既に Gypsy 音楽なクラブイベント Bucovina Club などの試みがあって、 そこからボトムアップに Electric Gypsyland のようなリリースに繋がった という感じなのが、いい感じですね。 Frankfurt の Bucovina Club の様子を伝える 地元放送局 のニュース記事とか見つけてしまったりして。 これとか読んでいると、Balkan に対する Orientalism 的なところもあるのかなぁ、とも思いますが。 しかし、盛りあがっているようで楽しそうだなぁ、と思ったり。 6月にレビューした Hungary の Various Artists, Etchno: dub.bass.neptanc.hu や Various Artists / Romano Drom. Romano Trip: Gypsy Grooves From Eastern Europe にしてもそうなのですが、 大手のレーベルがトップダウンに仕掛けてくるというより、 クラブなどでの試みがボトムアップにリリースに繋がってきているって感じなんですよね。 ここらは、Gypsy / Balkan な音楽の根付き方が日本とヨーロッパとではかなり違いそうだと感じさせます。

Shantel, Bucovina Club のライナーノーツとか読んでいると、 彼らにとっては、Gypsy 音楽というのは祖父母の思い出として身近にあったものなのかもしれないなぁ、と思います。 日本では所詮趣味人が愛でる「舶来物」に過ぎないわけですが。 そういう点では、 Shantel にとっての Gypsy 音楽は、僕にとっての里山に近いのかなぁ、と。 越後妻有トリエンナーレを通して、 自分の祖父母の住んでいた里山の集落での夏休みの思い出を思いだして、 たまには里山に行きたい、と思うようになっているのに近い、というか。 ひょっとして、Harald Szeeman が Balkan のアートに対して見出している "roots" という (関連発言) のは、 そういう感覚とも関係あるのかなぁ、と思ったり。

- 若林, 東京, Tue Sep 23 23:55:59 2003

ここでもたびたび紹介してきているている Transitions Online (TOL) の文化欄 Central Europe Review (CER) からのネタですが。 Serbia の最近の roots 寄りの音楽を演るミュ−ジシャンたちを紹介する Goran Tarlac, "Sounds of the Last Starry Night" (2003/9/12) という記事が掲載されてます。 以前に紹介した (関連発言 1, 2) Various Artists, Srbija: Sounds Global (Free B92, CD008, 2000, CD) で取りあげられているようなミュ−ジシャンを紹介してます。 この記事でも言及されていますが、続編 Various Artists, Srbija: Sounds Global 2 (Free B92, CD202, 2002, CD) というもの出ています。 第一集とあまり面子や音に変わり映えはないこともあって、 実は入手済なのにレビュ−するのサボってますが……。 どちらもお薦めです。

TOL/CERの記事で取りあげられている中でも Lajko Felix, Ognjen I Prijatelji, Boris Kovac & Ladaaba Orchest, Boban Markovic Orkestar, Saban Bajramovic といったところは、 B92の編集盤でも 取りあげられていてチェック済なわけですが。ノ−チェックだった Teofilovic TwinsBiljana Krstic が ちょっと気になりますが、どんなものですかね……。なんかちょっと毛色が違うような気がしないではないです……。

B92からの folk/roots 物といえば、Serbia 物じゃなくて Gypsy/Roma 物ですが、 Various Artists, Rromano Suno: Gypsy Music From The Balkans (Free B92, CD205, 2002, CD) っていうのが出てます。 このラインナップでなぜ Kocani Orkestar が抜けているんだ−、とは思いますが。 Turkey から Hungary まで有名どころを押さえた好編集盤だと思います。これもお薦めです。

- 若林, 東京, Mon Sep 8 23:01:52 2003

Hungary 関係の小ネタをいくつか。

Amb feat. Kiss Erzsi が聴きたい〜、と、 以前に言っていたわけですが。 彼らのトラックを含むコンピレーション Various Artists, Chi Glassic Vol.1 - Dub Local (Chi Recordings, CHICD002, 2001, CD) を入手しました。 "Moxa" という曲が収録されているんですが、 Kiss Erzsi (レビュー) らしき歌声が聴こえなくてちょっとがっくり……。 音としては、そんなに凄いことになってるわけじゃないですが、 ここらへんどが一連の Gypsyhouse のリリース (レビュー) のルーツなのかしらん、 と、興味深かったり。なんせ、サブタイトルも "Dub Local" ですからね。 他にも、Korai Orom とかも収録されてます。

Hungary の音源といえば、 Grencso Kollektiva Plusz, 7 Enek Az Utolso Mohikanoknak (7 Songs to the Last Mohicans) (Bahia, BAH65, 2001, CD) を、入手しました。 Mihaly Dresch (レビュー 1, 2) の4tetのオリジナルメンバーとして (今はもう脱退) 1980sから jazz 文脈で活躍する Istvan Grencso がリーダーで、 やはり1980sから活躍する avant-rock バンド Kampec Dolores の Gabi Kenderesi と Csaba Hajnocsy が参加していて、 Keyser & Shuriken として活躍中の Tilos 界隈の代表的なDJ Shuriken が参加しているなど、 Hungary の alternative な jazz/improv / avant-rock / club music 人脈が集結した感もある興味深い顔ぶれなんですが。 顔ぶれから期待されるほど凄いことになっていない、というのが……。

そういえば、Mihaly Dresch Dudas Quartet, Zenk A Lelek (Adyton / Fono, 006, 1992, CD) を最近入手しました。やっぱり Lajko Felix (レビュー) の violin はかっこいいなぁ。 cimbalom も多めにフィーチャーされていて、violin とのかけあいもいいです。 今まで聴いた Dresch の4tetの録音の中で、最も folk/roots 寄りで、かっこいいように感じます。

- 若林, 東京, Tue Jul 22 0:18:11 2003

今週末の音盤雑記帖の更新は、 旧ソ連・中央アジアの トルクメニスタン (Turkmenistan) のバンド Ashkhabadレビューです。 10 (Dom / Long Arms, CDDOMA02010, 2002, CD) がとても良かったので、10年前の City Of Love (RealWorld, CDRW34, 1993, CD) を遡って聴いてみたのですが、こちらはまあまあでしょうか。 しかし、City Of Love の、 XTC や Magazine の制作で知られる John Leckie の制作で、 Buzzcocks を手掛けた Malcolm Garrett のジャケットデザインって、いったい……。 ちなみに、Ashkhabad の Gussan Mamedov が参加してたこともあるトルクメニスタンの jazz rock バンド Rishad Shafi & Gunesh はアンソロジー2枚目の 45 Degrees In A Shadow (Boheme, BMR004131, 2000, CD) しか持ってないのですが、こっちには参加してないんですよね……。 ま、roots 的な要素も感じさせますが基本 jazz rock ですね。アンソロジー一枚目 Rishad Shafi, presents Gunesh (Boheme, BMR911107, 1999, CD) の方に参加しているようなのですが、こちらは未聴です。うむ。

しかし、Ashkhabad の音楽って、ほとんどバルカンの音楽と区別できないですよ。 いや、それと同じノリだというのが、僕にとってはツボだったりしたんですが。 Ashkhabad の演っているのはウェディング・ミュージックなわけですが。 ウェディング・ミュージックといえば、 Ivo Papasov And His Bulgarian Wedding Band, Orpheus Ascending (Hannibal, HNCD1346, 1989, CD) とか、まず思い出したりするし (これはブルガリア)。 Kocani Orkestar, Alone At My Wedding (CramWorld, CRAW25, 2002, CD) (関連発言) もそう (これはマケドニア (Macedonia))。 そういう点でもバルカンを連想させられるんですよね。 そうそう、ウェディング・ミュージックといえば、 以前から探していた Trigon, The Moldovan Wedding In Jazz (Silex, Y225046, 1994, CD) をつい先日入手しましたよ (これはモルドヴァ (Moldova))。うれしー。

ウェディング・ミュージックから離れて。 Ashkhabad, 10 をリリースした Long Arms からは、 Mola Sylla & Vladimir Volkov, Seetu (Long Arms, CDLA02035, 2002, CD) というのもリリースされてます。 Vladimir Volkov (関連発言 1, 2) がらみということでさっそく手に入れました。 Mola Sylla は Amsterdam, Holland 在住 Senegal 出身の Wolof 人で、Volkov とは Vershki Da Koreshki というバンドでも一緒に活動してます。Sylla といえば、 Ernst Reijseger with Mola Sylla and Serigne C. M. Gueye, Janna (Winter & Winter, 910 094-2, 2003, CD) というのも出ていますね。大好きな Reijseger (レビュー 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7) ということで、こっちもさっそく手に入れました。 しかし、2枚のいずれも、ちょっと取りとめない improv かしらん……。うーむ。どうしたものか……。

- 若林, 東京, Mon Jul 14 23:41:28 2003

「下手にメジャー移籍されると、逆にCDが入手し辛くなって……」なんていうのは、言訳といわれればそうなわけで。 話の勢いのあるうちに、ということで、入手しました、 Anima Sound System, Gipsy Sound Clash (Hungaroton, HCD71029, 2000, CD)。 パラエティはありますが、予想以上に dub の影響が強い音ですねー。 もろそれっぽい音もあるし、trip hop 〜 jungle 的な音が耳につきます。 個性的という感じじゃないですが、普通に洗練されているという感じです。ほほう。 女性歌手の歌唱は軽く漂うという感じでそれなりの雰囲気はありますが、もっと癖があって存在感ある方が好みかなぁ。 聴いているだけでは folk / roots 的な要素は強く意識させられないのですが。 サンプリングがクレジットされている2曲は、いずれも、folk 〜 world music のレーベル Fono の音源です。 Korai Orom のようにゲスト・ミュージシャンとして迎えているわけじゃないですが。 Etchno: dub.bass.neptanc.hu (Gypsyhouse, GHCD001, 2002, CD+) や Romano Trip: Gypsy Grooves From Eastern Europe (Gypsyhouse, GHCD003, 2003, CD) の音は、普段からのこういう活動の延長なんでしょうね。なるほど。 しかし、話題になったハンガリー国歌のリミックス "Himnusz" が収録されてないのは、ちょっと残念。

Anima Sound System のバイオグラフィーを読んでいると、 ハンガリー国歌のリミックスが「国の象徴を攻撃した」と極右政党に訴えられた、という話が出てきます。 その一方で、Anima Sound System は、民族主義的政策/同性愛差別/戦争に反対する市民運動に先導的に関っているようで、極右ラジオ局のオンエア―拒否運動とか始めたりもしているとか。 こういうエピソードは turbo folk 対 B92 の話題にもつながるものがあるように思います。 先日言及した Poland の Music Against Racism というのも、 人種差別というより排他的な民族主義への反対運動ではないかと思うのですが。 Poland でも似たようなことが起きているのでしょうか。 というか、東欧のあちこちで、極右とインデペンデントとが、folk/roots 的な表象の意味を巡って闘争しているような気がします。 そこらへんどを広めの視野で取りあげた本とかないかしらん。

- 若林, 東京, Sun Jul 13 23:12:14 2003

12日の川仁さんのコメントにちょっと遅れてレスポンス。

turbo folk は聴いたことはありません。 わざわざ買ってまで聴きたいか、というと、そういうわけでもないですし。 turbo folk 対 rock'n'roll っていえば、読んだわけじゃないですが、 Matthew Collin, This Is Serbia Calling: Rock 'n' Roll Radio and Belgrade's Underground Resistance (Serpent's Tail, 2001) って本があります (書評 on Central Europe Review)。 ま、反 turbo folk 陣営の代表 B92 側だって、 folk/roots-oriented な音楽を短絡的に排他的民族主義的なものとして斥けたわけではありません。 例えば、Various Artists, Srbija: Sounds Global (Free B92, CD008, 2000, CD) (レヴュー) は、 「turbo folk に代わる音楽」をプレゼンテーションする目的で編纂されています (関連する発言 1, 2)。 こういう folk/roots 的な要素を巡る意味闘争を見ていると、

国家のアイデンティティや国家の象徴というのもはいつも両義的であり、熱く競われているものである。ブリットポップは極右からユニオン・ジャックを奪い返すことに成功した。しかし、英国を表徴するために奪い返す最中で、遥かに半端なものになってしまった。つまり、オーシャン・カラー・シーンのような伝統的な白人のロックグループのための乗り物になってしまった。

と論じたエッセー、Jon Savage, "State Of The Union" (Artforum Vol.35 No.9, pp.37-38,125, May 1997) (引用者訳) を思い出します。

- 若林, 東京, Fri Jul 11 0:12:14 2003

どうも、川仁さん、久し振りです。コメントありがとうございます。

「実験的・前衛的な指向」と「folk / roots 的な指向」の併置・混交 の話ですが、そういう枠組み自体があまりに外部 (それも「中央」) からの視点だったかもしれない、 というのが、最近の自分の反省点の一つだったりします。 そういうこともあるので、その視点での話と、 渡辺 裕『宝塚歌劇の変容と日本近代』 (新書館, ISBN4-403-12009-1, 1999) や 『日本文化モダン・ラプソディ』 (春秋社, ISBN4-393-93161-0, 2002) の話に、 自分の中でも整合的な連続性があるわけではないです。 話をどう繋げて行くか、というか、どうしたら、以前の話を修正発展させられるか、 方針が見えているわけでもありません。 と、エクスキューズはこのくらいにしておいて。

今まで僕が好んで取りあげてきたような 「インデペンデント」「オルタナティヴ」と形容されるような 中東欧の音楽に関して言えば、 至近に紹介したものから例を挙げれば、 Poland の Orange World レーベル界隈の動き (関連発言) などは 「フォークがアヴァンギャルドに触変されている」ものと言えるかもしれません。 ただ、僕が「触変」ということで想定していたのはそういうものではありません。 「アヴァンギャルドがルーツを参照している」とか「ルーツがアヴァンギャルドに触変されている」と言うには、 それ以前のシーンは西欧的な文脈でいうアバンギャルド/フォークという形では分化しておらず、 むしろ、共産主義政権下において「非公式芸術」とされていた音楽が東欧革命から欧州統合の流れの中で西欧から流れ込む文化によって触変している、と見ることができるのではないか、と、感じつつあります。 そして、従来の英米発のポピュラー音楽を見てきた視点からすると、 そこで行なわれている様々な試みの結果が、 実験的・前衛的な指向を持った様々な形式の音楽とフォーク・ルーツ的な音楽が 様々なレベルで混交され併置されているように見えるのかもしれない、と。 そういう見方もあると強く感じるようになったのは、 Susanna Niedermayr and Christian Scheib, Im Osten - Neue Musik Territorien in Europe: Reportagen aus Laendern im Umbruch (In The East - New Music Territories in Europe: Reports from Changing Countries) (PFAU Verlag, ISBN3-89727-209-1, 2002, book) を読んだことも大きいのですが。 この本は「フォーク」的なジャンルの音楽にはほとんど触れておらず、 この文脈にはあてはまらないので、類推に過ぎないといえばそうなのですが。 この本は、序章の中で contemporary classical music とか jazz とか techno とか hip hop とかの「よく機能しているジャンル」というのは、この本の興味の対象ではない、としているのですが。 その代わりに、この本で取り上げている音楽について、こう述べています。

We were looking for `independent' music and musicians, and right there one might discern a subtle and manipulative strategy of ours, since a very `Western' category hides within this concept. For decades Social Realism -- even though it has varied from country to country -- has made more or less everything nonofficial and nonacademic pretty `independent' anyway, to say at least.

ナショナリスティックな傾向について言えば、今は軽く言及するに留めますが。 実験的指向云々抜きであれば、 明らかに排他的な民族主義と結びついた悪名高き turbo folk なんてものもありましたね (Goran Tarlac, "Turbo Folk Politics", Transitions Online, 2003)。 「インデペンデント」な音楽の流れの中でも、 必ずしも国とか民族とかに直接的に結びついているわけでもないですし、 むしろ排他的なものには反対な立場と取るとはいえ、 ある種の地域アイデンティティの問題と結び付いているように思います。 Im Osten に出てくるキーワードを用いれば "genius loci"。 やはり、序文から引用しますが。

And actually prior to all of this is what some Slovakian musicans very intently and proudly call the "genius loci", the ingenuity of the vernacular, the driving force of each region's own traditions.

- 若林, 東京, Thu Jul 10 0:24:37 2003

去年くらいから、中東欧トルコ (Turkey)のある種の音楽シーンについて、 「実験的・前衛的な指向」と「folk / roots 的な指向」の併置・混交 という傾向が見られる、って言ってきているわけですが。 安易というかイイカゲンな所もある言い方かなぁと、自分でも思いつつあったたのも、確かだったり。 そんなわけで、こういうことを考えるときに、どういうことを注意しなくちゃいけないのか、どういう視点が取り得るのか、とか そういう興味もあって手に取った本なのですが、とっても面白かったので、簡単な読書メモ。

渡辺 裕 『宝塚歌劇の変容と日本近代』 (新書館, ISBN4-403-12009-1, 1999) と 渡辺 裕 『日本文化モダン・ラプソディ』 (春秋社, ISBN4-393-93161-0, 2002) は、これらの本で描かれている「歌舞伎改良」「邦楽改良」や「芸妓改良」が、 現在の旧共産圏に見られる folk/roots の要素を持つ音楽に見られる動きに重なって見えるところが大きくて、とても興味深く感じられました。 これらの本では、大きな枠組みとして、東京 (中央) ― 大阪 (周縁) の力関係というものをもってきてきるわけですが。 このような動きが顕著に見られるのが欧州の周縁部だというのも、重なって見えるところが大きいというか。 示唆を受けるところが他にもたくさんありました。 『日本文化モダン・ラプソディ』の中で、この本で取り上げられている問題は、 「文化触変 (acculturation) というきわめて一般的な問題の一事例」(p.15) であると述べられているわけですが、 こういう一般化を指向する観点から書かれているところも、 他の事例 (中東欧やトルコの音楽シーンに見られる傾向) を考える助けになったような気がします。 といっても、充分に消化しきれてなくて、すぐには中東欧への音楽の考察へ適用できそうもないですが。 話の進め方のナイーヴな部分を減らす手がかりにはなりそうです。

- 若林, 東京, Sun Jun 29 23:35:02 2003

さて、今週末の音盤雑記帖は、 またしても中東欧物、 Hungary の folk/roots vs club music な逸品、 Various Artists, Etchno: dub.bass.neptanc.hu (Gypsyhouse, GHCD001, 2002, CD+) と Various Artists / Romano Drom, Romano Trip: Gypsy Grooves From Eastern Europe (Gypsyhouse, GHCD003, 2003, CD) の レビューです。

Susanna Niedermayr and Christian Scheib, Im Osten - Neue Musik Territorien in Europe: Reportagen aus Laendern im Umbruch (In The East - New Music Territories in Europe: Reports from Changing Countries) (PFAU Verlag, ISBN3-89727-209-1, 2002, book) を読んだときに、 Tamizdat とかに掬い上げられない音楽が まだまだあると痛感したわけですが。 その一つに、Budapest, Hungary のクラブ Tilos az A と そのラジオ局 Tilos Radio 界隈のシーンがありました。 そういうわけで、Tilos がらみのCDが入手できた、というだけでも嬉しかったり。 しかし、クラブやラジオ局だけでなく、 TAP (Tilos az A Performance) なんて劇場 (パフォーマンススペース?) まであるんですね。ううむ。

あと、これらのCDで目を引いたのは、 Korai OromEmil Biljarszki の参加。 ミュージシャンとしてだけでなく、Romano Trip ではミュージカル・マネージャまでやって仕切っています。 Biljarszki は Fono レーベルのスタッフでもあり、 その縁もあるのか、この2枚のCDをリリースしているレーベル Gypsyhouse の配給は Fono だったりします。 2年前に Tamizdat に載った インタビューも興味深いです。 "Emil works daily for the excellent Hungarian world music label Fono and nightly to spread contacts and information about music from Eastern and Central European regions to hungry ears everywhere." って紹介されていて、どうやら Hungary だけでなく中東欧のシーンのキーマンの一人のようです。

Korai Orom はもともとサイケデリックな音をしていたようで、 英米では Ozric Tentacle とかを好む人たちあたりに受容されたりもしていたようですが。 最近の音は breakbeat rock というかそういう感じですね。 って、一番新しいアルバム 2001 Sound & Vision (Korai Orom, KORA0006, 2001, CD+) しか聴いてませんが。このアルバムは、 Besh O Drom (関連発言) や Szilvasi Gypsy Folk Band (いずれも Fono からリリースあり) もゲスト参加していて、なかなか良いです。 新譜が出たら一緒にレビューしたいなぁ、と思っていたりします。 そういえば、Besh O Drom も Romano Drom もプロダクションは Asphalt Tango だなぁ。

Biljarszki のインタビューで "Korai Orom, Trottel, Masfel, Kampec Dolores and Kiss Erzsi Music are the bands, all of them flagbearing DIY second-into-third-wave-underground artists." って紹介されているわけですが。 ちなみに、ここらへんどのバンドを一手に手掛けるプロダクションが、 Wizart で、そのレーベルが Kampec Dolores とか Kiss Erzsi Music とかをリリースしている Bahia です。 Korai Orom ももちろん Wizart のプロダクションなのですが、リリースは Bahia でも Biljarszki が働いている Fono でもなく、自身のレーベルからだったりします。 この界隈の出世頭は、Anima Sound System のようで、メジャー移籍して、 X-Bloc にも参加してましたね (関連発言)。 って、実はインターネットで試聴したことしかないんですよね。 下手にメジャー移籍されると、逆にCDが入手し辛くなって……。 ちなみに、この中で、僕のイチオシは、 Kiss Erzsi Music (a.k.a. Egy Kiss Erzsi Zene)。早く新譜が出ないかなぁ〜。

しかし、レコードやCDがちゃんと出回っていないだけで、他にも面白い試みがいろいろなされているのではないかと……。 Etchno などに参加しているDJたちの音源をリリースしている club 系レーベルの一つに Chi Recordings があるのですが (Im Osten でも紹介されてます)。 そのニュースレターのバックナンバー #5 を読んでると、Amb feat. Kiss Erzsi, "Raster's Rewire" とかあるし (Amb は EtchnoRomano Trip に参加していますね)。 聴きたい〜。けど、一年前なので既にMP3は削除されてしまっている〜。

今まで Hungary の音楽もそれなりに取り上げてきた (関連発言 1, 2, 3, 4) わけですが。 Bahia / Wizart 界隈の alt rock シーンや、 Fono 界隈の folk-oriented なシーンとか、いまいち繋がりが見えなくて、 実は見落としている部分が大きいのかなぁ、と思っていたのですが。 Im Osten を読んで Tilos とか知って、Etchno のようなCDを聴いて、 今まで見落としていたクロスワードパズルのピースが見つかってぴたっとハマッた感じがしました。 視野がぐっと開けた、というか。

- 若林, 東京, Mon Jun 16 23:30:38 2003

週末に紹介 (関連発言 1, 2) した 旧共産圏出身のミュージシャンを紹介するフェスティバル X-Bloc (X-Bloc Reunion が正しい名称なのかしらん?) の話のフォローアップ。 Guardian 紙 (こういうネタを一番好んで取りあげるUKの高級一般紙は、やっぱりここでしょうか) で、関係する記事をいろいろあたってみました。

フェスティバルが始まる前の紹介記事、 "Rock around the bloc" では、Boban Markovic OrkestarMostar Sevdah ReunionEsma Redzepova といった ex-YU Gypsy なミュージシャンに焦点が当ってますね。 やっぱり、欧米では、東欧圏の音楽では Gypsy の音楽が最もポピュラーなんでしょうね。 ところで、この記事の見出は、Timothy Ryback の本 (関連発言) の題名から取られてますね。 あれから10年経ってるんだし、"Rock around the x-bloc" 程度は捻って欲しかった気もします。 ひょっとして、Ryback の本を知らずに、独立に、"Rock around the clock" からこの見出しを再発明していたりして……。

最初のレビュー記事 "X-Bloc Reunion" では、やはり、Armenia の Djivan Gasparyan と Azerbaijan の Alim Qasimov の話が。 やっぱり、国際政治的に話題性があるということでしょう。 しかし、結局、別々のセットということで、一緒に演奏はしなかったようです。 ま、Moscow でも一緒のフェスティバルに参加しても、一緒に演奏してないですもんね。 一緒に演奏したら故郷にいる家族が危ない、って、やっぱり、まだそういう状況なんでしょうか……。

続く、"X-Bloc: Eastern Divas" では、 Sainkho NamchylakEsma RedzepovaSevara Nazarkhan の3人のステージを紹介してます。 やはり、一般紙では、こういう華のありそうなのとか取りあげますね (笑)。 しかし、どうも、いまいちだったようですね。うーむ。

最後のレビューは、"Goran Bregovic"Tolerant Heart って、Saint-Denis のフェスティバルで委嘱された作品だったんですね。 映画音楽で有名ってことで、という感じでしょうか。 ま、誉めるでも貶すでもない感じの書き方で、ま、お約束の出来だったのでしょうか? 客の入も良かったようですね。

と、こんな感じでしょーか。

- 若林, 東京, Sat Jun 14 12:51:50 2003

さて、昨晩の X-Bloc (Barbican Center, London, 2003/5/23-31) のの続き。

25日の ClubStage の Ecstasy Of St. Theresa は、Czech rep. の electronica 入った indie pop/rock バンドです。 このバンドも Mute CZ / EMI に移籍しましたが、 それでも、Tamizdat が プッシュしている、という。 インタビューも興味深いです。 しかし、EoST はメジャーでも Tamizdat が扱ってくれているけど、 中東欧だと下手にメジャー移籍されると、独立系のショップが扱わなくなって、 逆に音盤入手が困難になるような気がするんですけど……。 Anima Sound System とか……。

26日の Barbican Hall は、女性歌手3人。 Sainkho Namchylak (レビュー 1, 2) て、日本だと improv. な面強調され過ぎですが、Hector Zazou が制作に参加した Out Of Tuva (Cramworld, CRAW6, 1993, CD) もありますからね。 Sevara Nazarkhan (レビュー) との共演というのも、わかります。 もう一人、Esma Redzepova は、 『ジプシーサマー2001』みたいに、 Kocani OrkestarTaraf De Haidouks (レビュー 1, 2, 3, 4, 5) と共演してることが多いように思うし。 Namchylak、Redzepova、Nazarkhan と並べるセンスは、Cramworld っぽいですね。

一方、同26日の Barbican Theater では、 Yat-Kha が。 ex-Huun-Huur-Tu の Albert Kuvezin が結成したバンドです。 Lu Edmonds (Mekons, 3 Mustaphas 3) がらみだったり。 Dalai Beldiri (Wicklow, 0926-63351-2, 1998, CD) を持ってますが。これで聴く限り Huun-Huur-Tu より素直に rock 的です。 日本では Huun-Huur-Tu の方が知られているように思いますが、 UK では Yat-Kha の方が評価されている感じですね。 Huun-Huur-Tu も、もっとCDの配給が良かったら、と思いますが。

29日の Barbican Theater は、 Koutev Ensemble & Theodosii Spassov。 元祖 Bulgarian choir に、の kaval 奏者がどう絡むんでしょうか。 で、明くる30日の St. Lukes では、 Anatoly Vapirov Quintet feat. Tomasz Stanko。 Spassov らとの Fairy Tale Trio じゃなくて、 Anthoni DonchevVladimir Volkov (レビュー 1, 2)、 Vladimir Tarasov (レビュー 1, 2, 3) との4tet編成、ということで、ちょっと 80s Soviet っぽい編成でしょうか。 さらに、31日の FreeStage では、 Theodosii Spassov Quartet & Emver Izmailov (レヴュー 1, 2) というのも。 共演する、Jony Iliev も、 最近、Piranha 傘下の Asphalt Tango からリリースしていたりと、 気になってたりするんですが。

31日の Barbican Hall の Goran Bregovic: Tolerant Heart って、 旧共産圏というより、汎地中海的なプロジェクトみたいなんですけど……。 ま、それはそれで面白そうです。

で、最後の ClubStage は、 Cosmic Sounds: Coxless Pair with DJ Zajko Kerieta (関連発言)。

alt. rock/pop なバンドの選択がちょっとメジャー寄りかな、って思いますが、 jazz / improv. にしても club music にしても、良いところを選んでいるように思います。 こういうラインナップでできるのが、うらやましいです。く〜。 事前に知っていたら London まで行ったのに (嘘)。 しかし、4分の1程度の規模でいいから、こういう感じのラインナップで日本で出来ないものか、って思ってしまいます。

ところで、この企画は、 YaD Arts という Jewish arts の組織が協力しているのですが。 fRoots 誌の No.240 (June 2003) の カバーストーリーの UK Jewish roots 特集で、 バンド Oi-Va-Voi と、 この YaD Arts が取上げられてました。 もちろん、この記事で、X-Bloc についても触れられてました。 X-Bloc の内容でもわかるように、YaD Arts の活動は Jewish に限定したものではなくて、むしろ、 「紛争地域出身のミュージシャンの間での多様な異文化の出会いを促すこと」を志向しているそう。 X-Bloc 初日のアルメニア (Armenia) 出身の Djivan Gasparyan と アゼルバイジャン (Azerbaijan) 出身の Alim Qasimov の顔合わせなんか、 まさにそういう感じです。 Goran Bregovic のプロジェクトにしても、そうですが。 といっても、YaD Arts に限らず、最近の alternative な world music 界隈って、そういう傾向強いんですけど。

- 若林, 東京, Sat Jun 14 1:54:56 2003

Barbican, London で、5月23〜31日に X-Bloc という、旧「東側ブロック」出身のミュージシャンたちの音楽を紹介する フェスティバルがあった、ということに気付きました。 メインストリームのポップではなくオルタナティヴ寄りのを集めていて、 ラインナップがとても豪華です。 こういうのが東京であったら、全日程通ってしまいそうです。く〜。うらやましい。 どのくらい豪華かってことで、主要な出演ミュージシャンについて、コメント。

23日の Barbican Hall は、Djivan Gasparyan (関連発言 1, 2) と Alim Qasimov、 それに、Sergey Starostin (Moscow Art Trio, Farlanders) (関連発言 1, 2)。 Gasparyan と Qasimov の顔合わせといったら Orion Cup Capital 2000 (DOM / Long Arms, CDDOMA0102, 2001, CD) (関連発言) とかあるし、Starostin も含めて、 いかにも DOM Cultural Center, Moscow でやりそうな顔合わせですね。

24日の Barbican Hall は、 Boban Markovic Orckestra & Frank London / Lajko FelixBrotherhood Of Brassの Markovic & Felix が合体してしまいましたよ。ひ〜。

24日の Clubstage では、 Anima Sound SystemKampec Dolores とか Egy Kiss Erzsi Zene とか (関連発言) Bahia レーベル界隈 の alt. rock/pop バンドで、 メジャー Hangaroton-EMI 移籍した出世頭ですね。 Asian Dub Foundation と共演したりしてます。

25日の Barbican Theater では、 LeningradLeonid Fedorov / Auktyon (レヴュー) と交流がある St. Petersburg の alt. rock バンドです。 Virgin/EMI 系の Gala へメジャー移籍を果たして、現在、USツアー中だったりしますね。

25日の LSO St. Lukes では、Iva Bittova が (レヴュー 1, 2)。 共演した Sui VesanBBCのレビューとかで気になっているんですが、 CDとか全然入手できませんね。うむ。 同25日の Freestage の方では、 Pavel Fajt & Stepanida Borisova が。 Borisova といえば、 Hulu Project feat. Stepanida Borisova, TransSiberia (CCn'C, 01212, 2001, CD) を持ってますが、 electronica なトラックにシャーマニックな歌唱が乗る感じは、けっこう面白いですよ。

と、説明しはじめてみると、長くなって大変です……。続きはまた後日に、ということで。

- 若林, 東京, Tue Jun 10 23:54:32 2003

チェコ (Czech rep.) のラジオ局 Radio Prahaウェブサイト英語版"Internet business success story" という約半年前の記事に、中欧〜東欧の独立系レーベルをネットワークする組織 Tamizdat が取りあげられていることに、今さらながら気付きました。 しかし、Tamizdat は成功事例になるんですね。 インターネット・バブルに乗らずにベンチャー資金を断って 手持の$40という資金でサイトを始めたことや、 ビジネスと文化的なミッションの両立の話をしてます。 後者について、もっと深く掘り下げて聞いて欲しかったですが、 ま、一般ニュース記事ですし、仕方ないでしょうか。 Radio Praha の英語版は、以前にも、 "Small company helping to find international audience for music from Central and Eastern Europe" という記事で、Tamizdat を取りあげてましたしね (以前に言及したことありますが)。

一応、1999年末 (関連発言) から お世話になり続けているだけに、成功事例として取りあげられていることに、感慨深いものはあります。 1980年代末に旧共産圏の音楽が普通の rock / pop や world music の文脈で紹介されるようになった頃から、 ピンスポット的に中東欧の音楽は摘み食いはしていました。 しかし、Tamizdat は、今のような幅と深さを持って中東欧のインデペンデント/オルタナティヴな音楽を追うことになるきっかけでしたね。 1980年代に英米のインデペンデント・レーベルがネットワークを作ったやり方に似ていると思いますが、 それを中東欧地域でやってみせたのは、やはり画期的だったように思います。 今や、CDを入手する際も Tamizdat 以外の選択肢を利用することも多くなってきてはいますけれど。

しかし、Tamizdat 経由で中東欧の音楽のCDを入手しはじめて一年くらいは、 「やっぱりイマイチかなぁ」と思うことが多かったような気がするんですが……。 1990年代半ばによく聴いていた英米の post-rock とか techno 〜 electronica とかその界隈の音楽が それ以上にイマイチに感じられるようになっていたことが、 中東欧の音楽をフォローすることに関しては、追い風になったような気もします。

- 若林, 東京, Tue Jun 3 23:46:40 2003

先日、ちょっと話題にした Susanna Niedermayr and Christian Scheib, Im Osten - Neue Musik Territorien in Europe: Reportagen aus Laendern im Umbruch (In The East - New Music Territories in Europe: Reports from Changing Countries) (PFAU Verlag, ISBN3-89727-209-1, 2002, book) 入手してみました。 テキストがドイツ語のみだったらどうしよう、と、思っていたのですが、 全てのテキストがドイツ語/英語の両方で書かれています (ドイツ語の方をちょっと読んだ限りでは、同じ内容のようです)。よかった〜。 英語の方をざっと目を通しました。ということで、内容を軽く紹介。

ハンガリー (Hungary)、スロベニア (Slovenia)、スロバキア (Slovakia)、ポーランド (Poland)、ブルガリア (Bulgaria)、クロアチア (Croatia) の6カ国について、 国別に、東欧革命後のオルタナティヴな音楽シーンの立ち上がりの様子を、 鍵となった人へのインタビューなどを通して描いています。 150ページ程度の薄い本で、一カ国あたり10頁余と記述も限られていますが、とても興味深かったです。 tamizdat とかに掬い上げられない音楽が まだまだあるのだなぁ、と、痛感しましたよ。奥が深いです。 ただ、内容は、classical なものと club music を含む electronica なものにいささか偏っています。 ま、著者の好きなジャンルもあるだろうし、一度に網羅的というのも困難だろうし、仕方ないでしょうか。 むしろ、他の著者によるこのような本も読んでみたいように思います。 あと、予想以上に女性ミュージシャンが少ない、と、著者が嘆いてますね。 確かに、僕が買っているCDでも、 女性ミュージシャンがいても紅一点のヴォーカリスト、 って感じのものがほとんどだもんなぁ。うーむ。

この本のハンガリーの章で大きく取上げられている Abstract Monachy Trio は、 昨日紹介した Blood & Honey --- Future's In The Balkans 展の 音楽コンサートにも出演していたりして。 やはり、同じような所に目を向けているのかしらん、と思うところもあります。 この本の著者たちの仕事ではありますが、 テクノロジー・アートの雑誌 Leonardo 第12号From Gdansk till Dawn: Contemporary Experimental Music from Eastern Europe なんていう付録CDが付いたり、 メディア・アートのフェスティバルに関連したクラブ・イベント Club Transmediale 2003"Go East" と題した東欧のDJを集めた特別プログラムができたり。 現代美術の世界でも東欧物がブームになってきているような気がします。ふむふむ。

- 若林, 東京, Mon Jun 2 23:53:51 2003

音楽の話題じゃないですが、ちょっと関連する中東欧ネタ。

昨晩の発言のネタにもした The Warsaw Voice にしてもそうなのですが、 中東欧〜旧ソ連諸国の音楽に限らない社会状況一般をフォローするために、 現地で発行されている英語のオンライン・マガジンをときどき覗いていたりします。 そんなチェックしてるもの一つ、チェコ (Czech rep.) で発行されている Transitions Online の文化欄 (もともと独立したオンライン・マガジンだった) Central Europe Review に、現代美術で有名なキュレータ Harald Szeemann へのインタビュー記事 "An Avant-Gardist in Search of Roots" が掲載されてます。 この5月にオーストリア (Austria) の現代美術館 Essl Collection で、 Blood & Honey --- Future's In The Balkans というバルカン (Balkan) 諸国のアーティストの展覧会が開催されていたのですが、 その準備のために訪れたモルドヴァ (Moldova) で行なわれたインタビューです。 Szeeman がこの地域のアートに興味を持つ理由として挙げているキーワードの一つは、 "subversiveness" (「破壊的なもの」)。 西側のアートでは今や失われてしまっているが、まだこの地域のアートには残っている、 ということのようです。 そして、もう一つのキーワードが "folk""roots"。 この言葉が指すものが、インタビューだけではよくわらないのが読んでいて不完全燃焼なのですが。 民族意識とかそういうものではなく、昔ながらのコミュニティとかそういうものなのでしょうか? しかし、このインタビュー記事の題名は、まるで、最近のある種の中東欧の音楽傾向を言い表しているようです。 実際、平行して語り得るようなものなのか、"folk""roots" といっても全然別の話なのか、かなり気になります。 展覧会に併せて音楽コンサートも行なわれていますが、 顔ぶれを見ると、中東欧の音楽界隈をフォローしていて 名に覚えのあるミュージシャンもいますが、 音楽的に folk / roots 的な要素を持った人はとりあげられてませんね。 展覧会カタログをちゃんとチェックしたいなぁ。けど、€34.90 もするもんなぁ……。 この展覧会、日本に巡回してきたりしないかなぁ……。

第二のキーワードは "folk" ではなくて "roots" ですね。 この二語を併置して使っていたことが多かったので、間違えてしまいました。 というわけで、修正しますた。 (by 嶋田 TFJ 丈裕 at Sat Jun 7 10:10:51 JST 2003)

ところで、 Blood & Honey --- Future's In The Balkans 展の対象としている国々には、「旧共産圏」ではないギリシャ (Greece) やトルコ (Turkey) も含まれています。 音楽を追いかけていてもそう思うんですが、やっぱり、 もはや「旧共産圏」のアートとかそういうものではないんだよなぁ、と、感慨深いです。 ちなみに、Slovenia が含まれていることを除いて、 南東欧協力プロセス (SEECP, South East European Cooperation Process) 諸国と一致します。 むしろ、こういう SEECP に集約されるようなマクロな地域の社会状況、地域固有性を反映しているのかなぁ、と思ったりもします。 ところで、いつも更新を楽しみにしているウェブサイト 『旧ユーゴ便り』に、 この4月頭にあった SEECP 主脳会議の レポート があったのですが、そこで最もクローズアップされていた国が モルドヴァ (Moldova)。 一方、Szeeman のインタビューもモルドヴァで行なわれてたりするし。 この一致が、ちょっとおかしかったです。 実際のところ、モルドヴァは SEECP 諸国の中でも最も「出遅れて」いる国なわけで、 インタビュー記事には、そんな国に Szeeman が、という意味合いもあるように思いますし。 『旧ユーゴ便り』も、 以前にモルドヴァをレポートした縁もあってのこととはいえ、判官びいきと言ってますしね。 全くの偶然というのとはちょっと違う、欧州最貧国ゆえの焦点の当たり方のようにも思います。

- 若林, 東京, Mon Jun 2 0:03:06 2003

さて、二日続けて音盤雑記帖の更新は、 久々の中東欧ネタ。 1990年代後半に活動をはじめた Poland の folk/roots 系のレーベル Orange World特集レヴューです。 Warsaw, Poland で発行されている英語雑誌 The Warsaw Voice で 偶然目にした記事で気になって、 試聴してこれはというものを取り寄せてみたのですが、けっこう面白かったので。

Berklejdy, Muzyka Nasluchana (Overhead Music) (Orange World, OWCD001, 1998, CD) が、一番ツボにハマりましたね。 Polish hammered dulcimer と reggae の取り合わせがいい感じです。 Edward The Second And The Red Hot Polkas, Two Steps To Heaven (Cooking Vinyl, COOKCD019, 1989, CD) (関連レヴュー) とかも連想させられますが。polka と reggae って相性いいんだなぁ、と。 Orange World のバンドは若いのが多いようなのですが、その中ではベテランの Kwartet Jorgi, Muzyka Na Trabke, Gitare I Flet (Music For Trumpet, Guitar & Flute) (Orange World, OWCD005, 1999/2002, CD) は、ま folk jazz trio なんですが、変則的な編成に救われてるかな。 Kapela Ze Wsi Warszawa (Warsaw Village Band), Wiosna Ludu (Poeple's Spring) (Orange World, OWCD006, 2001, CD) が一番素直な rock / pop 的なアプローチで、一番ウケそうな気がします。 個人的には一捻り欲しく感じますが。 しかし、ビデオ・クリップもあるんですねえ。

さて、他にも Poland の音楽で紹介しそびれているものを、フォローアップて軽く紹介。

jazz / improv. 文脈というか yass 界隈 (関連発言) も一応フォローしてるんですが、 どうもいまいち決め手を欠くんですよね。 最近 (といっても1年ほど前) のリリースで、そこそこ良かったのは Jacek Kochan, Double Life Of A Chair (Gowi, CDG55, 2002, CD)。 Palle Mikkelborg (trumpet)、 David Tronzo (guitar)、 Briggan Krauss (alto sax) といった顔ぶれも、をを、って感じだし、演奏も悪くないんですが。 breakbeat jazz 的な仕上りが Nils Petter Molvaer かという感じで……。うーむ。 あと、もう少し古くなりますが、 Ecstasy Project, Ecstasy Project (Not Two, MW724-2, 2001, CD) が、violin の響きもテンション高めでちょっと folk 入った jazz って感じで、ちょっと気にいってます。 Zoltan Lantos Mirror World (レヴュー) なんかにも近い雰囲気、というか。 Bydgoszcz での録音で、yass の根城 Mozg を拠点としてるバンドのようなのですが、 どういうバンドなのか、いまいちよくわかってません……。

avant rock 方面といえば、 Something Like Elvis。 前から気にはなっていたので、 新譜 3rd アルバム Cigarette Smoke Phantom (Post_Post, 5, 2003, CD) もリリースされたことだし、さっそく入手してみました。 実は、CDを入手して聴くのは初めて。 FugaziThe Ex の対バンをするようなバンドなので テンション高めという偏見もあったりしましたが。 この作品は、keyboard や脱力気味の歌声といい、歌詞無しで走るような展開がけっこうあったり、 けっこう、1990s半ば (というか post rock) っぽいかも。 良く出来ていて、accordion を使う曲とか耳を惹くし、疾走感のある曲とかカッコイイんですけどね。 やはり、東欧界隈でいうと Estonia の Leonid Soybelman (Ne Zhdali) や Russia の Leonid Fedorov (Auktyon) が持っているような強い癖が、やっぱり欲しいなぁ。うむ。

ところで、バイオグラフィによると、 Something Like Elvis の地元以外での初めてのコンサートは、 1997年の Music Against Racism というイヴェントへの参加だったようなのですが。 Orange World レーベルを紹介している The Warsaw Voice の記事でも、 この Music Against Racism が、こんな形で出てきたり。

According to Kornak, the society of folk musicians is sensitive to social and political problems. They take part in concerts of the Music Against Racism series, in cooperation with Amnesty International. That is also because a lot of musicians related to the folk scene come from punk circles which have always been involved in politics and social issues.

Orange World のバンドは folk scene だし、Something Like Elvis は punk circle だけど、 この記事からすると、その距離はかなり近そうですね。 KZWW の remix をしている Mario Dziurex の作品をリリースしているのは、 Something Like Elvis と同じレーベルだし。 その一方で、Something Like Elvis は yass の拠点クラブである Mozg のフェスティバルに 参加したり。 やはり、この界隈も狭いよなー、と思ったりします。 しかし、Music Against Racism ってどういうイベントだったんでしょう? この界隈のミュージシャンの多くが関わっていたようで、 よく目にするので、ちょっと気になってます。 西欧諸国ほど非ヨーロッパ系移民が多そうに思えないので、 Poland で誰が誰を差別していたのかピンとこないところもありますし。 しかし、Mozg での Something Like Elvis の 紹介文

SLE is still a political band. They are one of the bands involved in "Music Against Racism" campaign coordinated by Never Again association.

とあるのですが、バンド自身の バイオグラフィでは、

Also that year we gave the first concert out of our home town Szubin. That event took place within the confines of the campaign MUSIC AGAINST RACISM initiated by the association NIGDY WIECEJ. Even though we were never politically involved and we didn't conformed our music to any ideology, it was obvious for us to take part in that event. We were always open-minded and if it was possible we supported every manifestations of creative actions.

とあって、この食い違いが面白いです。 Something Like Elvis も「政治的なバンド」と見なされるのがイヤになってるんだろーなー、とか想像したり。

- 若林, 東京, Wed May 7 23:26:14 2003

某所での話題から、 OECD:国内総生産(GDP)の実質年間成長率[2002年] によると、 上位十ヶ国中に東欧の国が三つ (Slovakia (2位)、Hungary (9位), Czech Rep.(10位)) も入ってることを知りました。 で、ランキングを見ると、Turkey が4位、Greece が5位じゃないですか。 Turkey の "Beyoglu beat" (関連発言)とか、 Greece の "tzaz" 界隈 (関連発言 1, 2, 3) とか、主流のポップではないインデペンデント/オルタナティヴな音楽シーンも最近は活力ありそうだなあ、と感じているわけですが。 そういう音楽シーンに活力がある背景には、経済的に好調なことがあるのかなぁ、と漠然に思ったりしました。 中東欧にしても、Czech Rep. や Hungary が特に元気という印象もありますしね。 北欧の中では Norway が一番 (12位) だしなぁ。 ということは、今後、Slovakia も面白くなりそう!? 誰かここらへんどを分析したレポート書いている人いないかしらん。 ま、実際のところは、単純に経済的な要因だけじゃないんでしょうけど。 例えば、スポーツ文化がらみになりますが、 シドニー五輪(2000年)のオリンピックメダル数ソルトレーク五輪(2002年)のオリンピックメダル数との関係を見ても、 明らかな相関は無さそうですもんね…。

そういえば、今年の Moers Festival (1970sから続く "new jazz" のフェスティヴァル) には、 Greece の Savina Yannatou & Primavera En Salonico (レヴュー) や、 Turkey は Doublemoon レーベルの Mercan Dede が出演しますね。ほほう。 他に中東欧関連で気になるのは、Sanda Weigl & Gipsy Killer。 Weigl は Romania 出身で、East Berlin から New York へと拠点を移してきている女性歌手で、 Pina Bauschコラボレーションしたりもしてますね。 Gypsy Killer (Knitting Factory Works, 2002) というリリースもありますが、インターネットで試聴くらいしかしてません…。うむ、やっぱり、ちゃんと聴こうかなぁ…。

フェスティバルといえば、St. Petersburg, Russia の建都300年を記念して、 St. Petersburg のオルタナティヴな音楽、映画、舞台芸術を紹介するフェスティバル Alternativa St. Petersburg が、Humburg, Germany で開かれているようなのですが。 そのラインナップの中に、 Auktyon & VolkovTrio (関連発言) の ライヴが。 こういう組み合わせで来日しないかなぁ。 alt. rock な Tequilajazzz出演しますね。 もう一組出演する Horonko Orchestra って、どんなバンドなんでしょうね。 いわゆる、alt. cabaret とかそういう感じなのかしらん?

St. Petersburg のオルタナティブなフェスティバルといえば、先日まで、 SKIF (Sergey Kuryokhin International Festival) やってましたね。 今年は St. Petersburg 以外でやるような噂もあったように思いますが、結局、St. Petersburg 開催になったようで。 あ、Inna Zhelannaya / Sergey Kalachev (レヴュー) 名義ではなく Farlanders (レヴュー) 名義で出演しているー。 やっぱり、解散したわけじゃなかったんですね。よかった、よかった。 Evelin Petrova (レヴュー 12) は、ソロ名義での参加だなぁ。 最近はどういう活動しているんでしょう。

- 弦巻, 東京, Sun Apr 20 23:25:30 2003

今日の音盤雑記帖の更新は、 Savina Yannatou & Primavera En Salonico Terra Nostra (ECM, ECM1856, 2003, CD) のレヴューです。 実は、ここ2か月近く、かなりのヘビーローテーションだったんですけど。 ハマっている割りにレヴューする言葉が浮かばなかったんですよんね。うむ。 Greece 界隈の jazz / improv. をざっと紹介する発言を一年余り前にしたわけですが。 このときに紹介した Andreas Georgiou, Vananda (Libra Music, LM016, 1998, CD) にも Yannatou は参加してましたね。 以前から、この界隈も ECM の影響が強いと感じていましたが、 まさか ECM からリリースされるとは思いませんでしたよ。 原盤をリリースしている Lyra はいまいち配給が悪く、 特に jazz 関連盤はなかなか入手できないので、今後も ECM からのリリースが続くことを期待したいものです。 ECM 盤のレヴューに合わせて、過去の3枚のアルバム Spring In Salonika (Lyra, ML4765, 1995, CD)、 Songs Of The Mediterranean (Lyra, ML4900, 1998, CD)、 Virgin Mary Of The World (Lyra, ML4937, 1999, CD) も軽く紹介しています。 ちなみに、e-zine RootWorld に Yannatou のインタヴュー記事が載っているのですが、これもかなり興味深いです。 あくまで歌の基本的な要素を尊重して即興的な部分を付け加えている、とか、 影響を受けた歌手の話とか。

Greece の女性歌手といえば、 Elli Paspala / David Lynch / Stavros Lantsias, Trio (Live) (WEA (Greece), 2001, CD) を、入手してみました。 Lyra からリリースもあり Libra Music 界隈でも名をよくみかける Greece のバンド Human Touch の3人中2人がバックで演っている、というのが、ちょっと気になったので。 Paspala の歌声ってちょっと低く抑えた感じなのですが、高音の伸びがちょっと不安定に聴こえます…。 ライヴだからかなぁ。ううむ。そんなお薦めじゃないかな。 あ、Paspala と Lynch って夫婦なのか。

- 弦巻, 東京, Sun Apr 13 22:33:42 2003

さて、この週末の音盤雑記帖の更新は、 一年前に した Hungary (ハンガリー) の jazz / improv. 関連のフォローアップ。 Zoltan Lantos' Mirrorworld, Tiptoe Ceremony (Budapest Music Center, BMCCD078, 2002, CD) と Mihaly Dresch Quartet / Archie Shepp, Hungarian Bebop (Budapest Music Center, BMCCD066, 2002, CD) のレヴューです。 しかし、Shepp 共演盤は少しは期待したんだけどなぁ…。 やはり、Shepp は1960sの方がいいよなぁ…。 Blase (BYG, 529.318, 1969, LP) さいこう。

この界隈のCDは、もともと、Hungary の folk/roots 系のレーベル Fono がリリースしていたわけですが、 その後、UK のレーベル November Music からのリリースになったわけです。 しかし、最近は November Music も実質活動停止状態。 リリース予定のところに書かれていたタイトルもいつのまにか消えてしまったり…。 北欧や中東欧のミュージシャンの秀逸なリリースが多いだけに、心配です。 廃盤になる前に、ちゃんと買い揃えておくべきか…。

ちなみに、Mirrorworld や Mihaly Dresch の新作をリリースしたレーベルは Budapest Music Center という Hungary の音楽データベースを提供する目的で1996年にオープンした施設のレーベル。 ま、音楽といっても、ポップなものではなく「芸術的」なものだけのようで、 contemporary classical と jazz を扱っているようです。 をを、看板が もろ 1920s というか Hungarian Constructivism してるぅ〜。くぅ〜。 New Series Festival ECM-BMC とか開催したりしているようで、 ECM とも縁があるんだなぁ、と思ったり。 というか、欧州のこの手のレーベルへの ECM の影響力って強烈だよな…。

Hungary 物といえば、やはり一年以上前に Besh O Drom, Macso Himzes (Fono , FA-082-2, 2000, CD) をした わけですが。このバンドの新作 Can't Make Me! (Asphalt Tango, CDATR0203, 2003, CD) が出ています。実は、2ヶ月ほど前には入手していたんですが、 初めて聴いたときほどインパクトは無くなってしまったかも…。うむ。 DJ だけでなく、brass band 風の曲だけでなく、 flamenco 風というか Manouche な guitar もフィーチャーした曲もやったり、 面白いことやっているんですが。 ま、いずれ、他の関連盤と合わせてレヴューするでしょう。 これをリリースしているレーベル Asphalt Tango は、Germany の world music の大手レーベル Piranha が、 Gypsy & Balkan 専門 ということで設立したサブレーベル。 このレーベルの今後の展開に期待したいものです。

- 弦巻, 東京, Sun Apr 6 0:40:28 2003

さて、先週末にちょっと言及した 中央アジアは Uzbekistan (ウズベキスタン) 出身の女性歌手 Sevara NazarkhanYol Bolsin (Real World, CDRW109, 2003, CD) のレヴューを書きました。 Hector Zazou (関連レヴュー) 制作ということもあって、手に取ったところもあるのですが。 Zazou ぽさがというより、Nazarkhan の歌声が良かったですよ。くぅ〜(萌)。

しかし、Uzbekistan での彼女の立ち位置って、いったいどういう感じなんでしょうね。 Uzbekistan Online Forum という掲示板サイトに "Uzbekskaya Madonna" というスレッドが立っているんですが、 どういう話しているのか、全然わかりません…。 このスレッドでも、 "Uzbek Madonna" と呼ばれている、って書かれてますね。 他の スレッドを 読んでいたら、この4月から日本の大学に通う予定、ってあるんですけど…。

- 弦巻, 東京, Sun Mar 30 22:33:46 2003

去年、紹介した Moscow, Russia の女性歌手 Inna Zhelannaya の新譜 Tantsy Yeney (GreenWave, GRCD-2002-2, 2002, CD) が出てます。 Farlanders 名義ではなく、 Sergey Kalachev とのデュオ名義です。 というわけで、レヴュー。 しかし、サウンドにバンドならではの勢いが無くなりましたが、 Zhelannaya の歌声は相変わらず素敵です。くぅ〜(萌)。 誰か日本に呼んでくれないかなぁ〜。 Farlanders で来日してくれるととても嬉しいけど、 Zhelannaya - Kalachev duo でもいいです。

VolkovTrio も、 Sergey Starostin / Slava Kurashov / Vladimir Volkov 名義の Pod Svetlym Mesyatsem ('Neath The Moon So Bright) (GreenWave GRCD-2002-1, 2002, CD) が出ています。 こちらは、ちょっと取りとめないかなぁ。 ま、一緒に紹介しておきます。

どちらのCDもリリースを知ったのは、去年末、 DOM Cultural Center, Moscow, Russia のウェブサイトをチェックしていて、 スケジュールで新譜お披露目ライヴらしきものをやっているのに 気付いたのがきっかけだったり。 いろいろアプローチしてみていたのですが、なかなか入手できずに、 今に至ったのでした。ふむ。 Farlanders や VolkovTrio をリリースしてきた GreenWave は とてもいいレーベルだと思うのですが、あまり流通していないどころか、 ウェブサイトも無くて情報もなかなか入手できないんですよね。 ちょっと困ったものです。

ところで、DOM Cultural Center での ライヴのCDを先日紹介したわけですが。 実際、サイトに載ったライヴのスケジュールを見ていても、興味深いものが多いです。 サイトは、英語版を作る予定はあるようですが、今はまだロシア語版のみ。 僕は、キリル文字の音価が判る程度でロシア語はほとんど知らないので、 サイトを読んでいても固有名詞や西欧からの外来語、簡単な単語くらいしか わからないのですが。それでも、参考になります。 キリル文字は読めない、っていう人のために、今観られる2003年 3月4月 の中から、CDやライヴで聴いたことあるミュージシャンが出演する 面白そうなものをピックアップすると、こんな感じです。

Alexei Aigi & Ensemble 4.33, etc (3/07, 3/14, 4/04, 4/09)
Ensemble 4.33 率いる Alexei Aigi は頻繁にライヴをやっていますね。 以前に、Ensemble 4:33 & NeTe & DJ Kubikov, Falls (LongArms, CDLA9706, 1997, CD) を紹介したことがありますが。 そういえば、最近、Alexei Aigi / Pierre Bastien, Musique Cyrillique (Solyd, SLR0308, 2001, CD) というのを入手したんですが。 これはジャケットも音も可愛らしいミニアルバムでした。
NeTe & Видеодом (Videodom ?) / Dhufer Youssef with Arkady Shilkloper & Vladimir Volkov (3/08)
Ensemble 4.33 と共に Falls を作った NeTe も出演してます。 Видеодом (Videodom ?) というのは、バンドなのか VJ みたいなものなのか、わかりません。
Austria を拠点に活動する Tunesia の oud 奏者 Dhafer Yousef を迎え撃つのは、 Arkady ShilkloperVladimir Volkov です。 こういうの、聴いてみたいよなぁ…。
Sevara Nazarkhan (3/19)
Uzbekistan 出身の女性歌手です。Hector Zazou 制作の新作 Yol Bolsin (RealWorld, CDRW109, 2003, CD)、 素敵です。くぅ〜(萌)。このアルバム、いずれレヴュー書くつもりです。 ちょうど友人が Uzbekistan に行ったので現地で人気を聞いてみてもらったところ、 彼が現地で世話になった人が「一番好きなミュージシャンの一人だ」と言っていたとか。 現地でも人気があるようです。
Tatyana Svakha - Vyacheslav Guyvoronsky - Alexei Levin (3/23)
Tatyana Svakha という女性歌手は知らないのですが、 Vyacheslav Guyvoronsky と、 Vershki Da Koreshki の Alexei Levin ということで気になります。 Levin は electronics ってクレジットされているし。
Andrei Kondakov - Vyacheslav Guyvoronsky - Vladimir Volkov (3/28)
St. Petersburg duo (Guyvoronsky - Volkov) に、 Volkov の acoustic な trio/4tet での piano 奏者 Kondakov を加えてのセッションです。
Boo / Tara Fuki / Csaba Hajnoczy - Istvan Grencso (4/24)
の Brno, Czech rep.勢の BooTara Fuki も登場。 対する Hungary 勢は、 Kampec Dolores の Hajnoczy と Grencso Kollektiva の Grencso の duo (このセンテンスのみ 2003/07/17 追記)。 Чаба Хайноци - Иштван Грензо (Chaba Khainotsy - Ishtvan Grenzo) は Hungary からの2人のようなのですが、 ラテン文字での正しい綴りが不明で、どういう人なのか追えていません。
Ruins / Zeni Geva / Гитардуо (Gitarduo) (4/25)
Brno 勢の翌日は日本勢。それも、 RuinsZeni Geva。 Гитардуо (Gitarduo) というのは、日本ではなく Switzerland 出身です。 単なる guitar のデュオというのではなく、 おそらくバンドの名前のようなのですが、よくわかりません。
Charles Gayle (4/26)
さらに、その翌日は、の New York の free jazz 動態保存男じゃないですか。すげー。

DOM Cultural Center の運営者 Nick Dmitriev2年前に来日したことがあったのですが。 僕がその時に話を聞きたかったのは、こういう話だったんですけどね…。 ま、今は、Dmitriev に直接話を聞かなくったって、 ウェブサイトで簡単にフォローできるようになったわけで、 よい時代になったものです。 Dmitriev が2年前に来日したときにも愚痴ったことではありますが、 そのとき、free / improv. 寄りの文脈で日本では迎えられたわけですが、 その界隈の Russia の (というか東欧) alternative music への認識って、 多分に Sergey Kuryokhin とか Soviet 時代とか その辺で止まってしまってる感もあって、 今の jazz / electronica / folk 混交の状況なんて ほとんど理解できてない感もあるしなぁ…。 その一方、とても残念だと思っていましたが、 日本の world music の文脈では全く無視されていましたし。 この手のシーンの日本への紹介のされ方って、全くお寒い限りというか…。 ま、日本のメディアで日本語で紹介されなくたって、 今はインターネットでそれなりに情報収集できるので、 僕はあんまり困らないんですけどね…。

- 弦巻, 東京, Tue Mar 25 23:34:55 2003

Turkey (トルコ) とか Greece (ギリシャ) とか、 そっち方面に注力しているつもりはないんですが、 今回、音盤雑記帖で取りあげるのも、 中東欧物というか、バルカン半島の Albania (アルバニア) の音楽の紹介です。 ちなみに、Albania は、Greece (ギリシャ) の北、アドリア海に面したところにある国です。 旧共産圏の国ですが、東欧革命後の状況もあまり良くないよう。 Albania 系住民が多い隣の Serbia の Kosovo (コソヴォ) 自治州では、 数年前、酷い内戦をしていましたしね。 Albania 国内に面白い音楽シーンがあるとかそういうわけではないですし、 今回紹介した2枚のCDも Albania でリリースされたものではありません。

Eda Zari は Germany を拠点に活動している女性歌手で、今回紹介した Statement (Intuition, INT3347-2, 2002, CD) も Germany の jazz / world music のレーベル Intuition からのリリースです。 しかし、Intuition も、相変わらず面白いリリースをしてくれますね。 このレーベルも、いかにも post-ECM ってテイストを持っているように思います。 というわけで、今までの Intuiton がらみのレヴュー 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8

ちなみに、Statement のバックで演奏している Family Lela De Parmet も、 Polyphonies Vocales Et Instrumentales d'Albanie (Label Bleu / Indigo, LBLC2503, 1992, CD) というCDを、 France の jazz レーベル Label Bleu の傘下の world music のレーベル Indigo からリリースしています。 Zari のバイオグラフィによると、 6歳のときに Dynasty Lela De Permet と一緒に歌うとこから音楽活動を始めたということ。 実は、Zari の活動の原点という感じなのですね。

ところで、Albania の音楽でちょっと思い出したのですが。Greece の女性歌手 Eleftheria Arvanitaki って、やっぱり Albania 系なんでしょうか? というのは、Greece の Albania 系住民 (と彼らの喋る言葉) のことを Arvanitika って言うので。 バイオグラフィでそう言っているのを読んだことがあるわけでもないし、 歌で Arvanitika / Albania アイデンティティを出しているわけでもないのですが。 名前からして Arvanitika だと、現地では当然のごとく思われていたりするのかなぁ、と思って。 ちなみに、Eleftheria Arvanitaki といえば、 Ta Kormia Kai Ta Maxairia (a.k.a. The Bodies And The Knives) (Polydor (Greece), 527 059-2, 1994, CD) 。 Ara Dinkjian が全曲作曲を手がけ、Dinkjian と Arto Tuncboyaciyan が全面的に参加しています。 Arvanitaki のハイトーンな歌唱も合っていますし、 Night Ark とか Armenian Navy Band とか好きな人にお勧めです。 ちなみに、Dinkjian と Tuncboyaciyan に関係する 過去の発言レヴュー

- 弦巻, 東京, Sun Mar 23 23:01:16 2003

1年ほど前に紹介した Greece のレーベル Libra Music は、1990年代後半から post-ECM 的な jazz 〜 world music をリリースしてきたわけですが。 ついにというか、やはりというか、出るべくして出たというか、なんというか…、 レーベルの音源を使ったリミックス盤 Blend / Various Artists, Thema 1: Blend Meets Libra (Libra Music, LM023-2, 2002, CD) をリリースしました。リミックスを手掛けている Blend も、 DJ Spooky (レヴュー) と縁があるようで、いかにも、って感じですね。 凄いことになっているわけじゃないですが、それなりに楽しめますし、まさに "Combining an eclectic mix of current British Greek music including jazz, electronica and roots, ..." の典型という感じなので。 こんなのも出てますよ、と、軽く紹介

Libra Music といえば、1年ほど前に欲しいと言っていた 1980年代の Greek new jazz を支えた Praxis の Costas Yiannoulopoulos の追悼盤 Various Artists, In Free Fall: A Tribute To Costas Yiannoulopoulos (Libra Music, LM017-2, 1999, 3CD+book)、 無事に入手できました。うれし〜。 ブックレットに Praxis レーベルのLPジャケットが載っています。 20枚分載っているのですが、これで全てなのでしょうか。 ジャケットだけでも嬉しいのですが、 ディスコグラフィ的な情報が全然載っていないというのは…。 テキストは、ギリシャ語半分英語半分なので、まったく読めないわけではありません。 しかし、最近の録音からなる追悼盤もいいけど、 Leo / Golden Years や Libra Music が、Praxis の音源をどんどんリイシューしてくれないかなぁ、と、 つくづく思ってしまいます。 ちなみに、参加しているのは Praxis に縁があった / Libra Music に縁がある バンド / ミュージシャンということで、以下のとおりです。

John Tchicai, Lito Voyatzoglou, Haig Yazdjian, Vangelis Katsoulis, Thomas Sliomis, Giorgos Maglaras, Arto Tuncboyaciyan, Andreas Georgiou, Kyriakos Sfetsas, Kora Michaelian / Nor Dar, Jemeel Moondoc, Sun Ra Arkestra, Famoudou Don Moye, Salah Ragab Trio, Hartmut Geerken, Minas Alexiadis, Ross Daly / Labyrinth, Vassilis Soukas, Omar Faruk Tekbilek, , Michalis Nikoloudis

この box set も余裕があるときにでも、ちゃんと紹介したいですね…。


昨日の話のフォローアップですが、 Im Osten - Neue Musik Territorien in Europe: Reportagen aus Laendern im Umbruch (PFAU Verlag, 2002) という本を書いたり、 雑誌 Leonardo 第12号 の 付録CD From Gdansk till Dawn: Contemporary Experimental Music from Eastern Europe を選曲したりしている Susanna Niedermayr and Christian Scheib ですが。 Club Transmediale 2003 で、 "Go East" と題した特別プログラムを企画したようですね。 Slovenia, Poland, Ukraine, Russia, Yugoslavia, Croatia といったところのDJが参加したようですが。 例えば、Russia から参加しているのは、 Klutch, Solar X, EU, Lazyfish といった Ru.electric (関連発言) 界隈でお馴染みのDJたち。Yugoslavia からの参加しているのは、 Belgradeyard Sound System (関連発言)。 というわけで、他の参加 DJ も気になります。ふむふむ。

- 弦巻, 東京, Sun Mar 23 2:29:13 2003

ところで、Istanbul, Turkey というより 中東欧に関してですが、 Susanna Niedermayr and Christian Scheib, Im Osten - Neue Musik Territorien in Europe: Reportagen aus Laendern im Umbruch (PFAU Verlag, 2002) という本が出ているようですね。 ドイツ語の本なので、入手すべきかどうか悩んでいるんですが。 MIT Press の マルチメディア・アートなどの科学技術を積極的に使う現代美術に関するジャーナル Leonardo の最新号第12号に、 この著者2人が選曲した From Gdansk till Dawn: Contemporary Experimental Music from Eastern Europe というCDが付いています。うーん、この号だけ買おうかしらん。 このCDの紹介文がまた、とても興味深いです。例えば、 "Participants in Slovenia's techno scene see themselves on the same lines that run from Rome to Berlin, from Istanbul to London." と言っているわけですが。 Beyoglu beat などの Istanbul の音楽シーンや Istanbul での "Adventure in British Music" とかを見ると、 techno に限らず 「London から Istanbul まで同一線上にある」って思います。

2000年くらいから、中東欧をはじめ、 欧州の この手の音楽シーンを積極的にフォローしてきたわけですが。 半年前にこの談話室で話をした 「実験的・前衛的な指向を持つ free jazz / improv. や avant rock、electronica といった音楽と 多文化的な folk / roots な音楽の併存と混交」 という指摘も的外れじゃなかったんだなぁ、というか、やっぱりそうだよね、と確信に変わりつつあります。 ふと、今から10年前に「インディーズ」「ギタポ」の終焉と「脱ロック」を リアルタイムでした ときのことを思い出してしまいました。

- 弦巻, 東京, Sun Feb 16 23:11:10 2003

中東欧というか、ロシアネタといえば、 The Wire の 最新号 (Issue 228, February 2003) に、 Jon Tye, "Global Ear: St. Petersbrug" という記事が載っていたのですが、既にインターネットで読めるようになっているので、軽く紹介。 以前に紹介した Russia の electronica というか、 特に、St. Petersburg の Cheburec 界隈の紹介記事です。 ま、Lo Recording の Jon Tye が St. Petersburg を訪れた際の日記みたいな感じで、さほど深い記事ではないのですが。 話に出てくる中では、 Drugaya Kultura という Russia のアンダーグラウンド音楽を扱っているレコードショップと そのレーベル Svobodny Poliot というのが気になりますね…。 うーん、サイトはロシア語のみですか…。 しかし、Various Artists, Ru.electronic (Lo Recordings, LCD22, 2001, CD) がらみのレーベル CheburecArt-Tek も、 結局ちゃんとフォローできなくて、CD未入手だもんなぁ。 オンラインショップで見かけない、ってこともあるんですが。 直接コンタクト取ればいい、って話しもあるんですが、つい後回しに…。 最近、直接メールでレーベルに問い合わせても返事をもらえないことが続いて、 ちょっと腰がひけているところがあるかも…。ふむ。

- 弦巻, 東京, Sat Feb 15 23:24:08 2003

今週末は、ちゃんとレヴューするような余裕も無いので、 久々に、中東欧というか 旧共産圏諸国の音楽の話題を。 実は、前から少しずつ書き貯めていたものの棚卸だったりしますが。

比較的実験的な指向を持つ音楽をリリースしてきた Russia の独立系レーベル Long Arms ですが。 2000年代に入って、リリースを聞かないなあ、と思ったりしていました。 Long Arms を運営している Nick Dmitriev は、 Moscow の DOM Cultural Centre という 文化施設も運営しているわけですが。 いつのまにか、そこでレーベルを立ち上げていたようです。 入手してみたものは、いずれも、DOM Cultural Center でのライヴ録音なので、 DOM での活動のドキュメントという色合いが強いのかしらん。 スタジオ録音は Long Arms からリリースする、とか、使い分けるのかしらん。 ライヴ録音ということで、 確かに興味深い面子のセッションが含まれてはいるのだけど、 音的にはもちょっと良く制作されていたら楽しめそうと期待させる程度でした。 入手したのは、いろんなバンドのライヴを集めたものばかりで、 顔見せ的な面も強いように感じます。 そんなわけで、詳しいレヴューはしないですが、 あまり情報が流れていないので、入手したものについて、軽く紹介。

Various Artists, Orion Cup Capital 2000 (DOM, CDDOMA0102, 2001, CD) は、「旧ソ連の world music」のフェスティヴァルの記録。ラインナップは、 Baku, Azerbaijan の Alim Qasimov Ensemble、 Tashkent, Uzbekistan の Munadjat Yulchieva & Shavkat Mukhamedov Ensemble、 Ashkhabad, Turkmenistan の Ashkhabad、 Yerevan, Armenia の Djivan Gasparyan Ensemble。 Gasparyan は CDも持っているし 去年にライヴも観ているし、 Ashkhabad も Gasparyan と同じく Real World からもリリースがあるし、 僕ですら名前くらいは知っている有名所が並んでいます。 けど、やっぱり、コーカサス〜中央アジアの音楽って聴く機会は少ないので、 新鮮に聴かれます。 しかし、バルカン〜小アジアの音楽と連続するものを感じますねー。やっぱり。

Various Artists, On The Carpet: Oriental Culture Festival (DOM, CDDOME0104, 2001, CD) も、Orion Cup Capital 2000 に近いコンセプトなんだけど、 もちょっと free improv. / jazz 〜 electronica 色が強いかしらん。 Yakutia (Sakha) の Aital はヴォイス・アンサンブル。 続く Klezmer な Frank London Ensemble (関連発言) には Vladimir Volkov (関連発言) も参加。 で、Tuva のヴォイス・パフォーマー Sainkho Namtchylak (レヴュー) の ensemble では欧州のミュージシャンがバックアップ。 続いて、Algeria / Italy / France という地中海編成な Ekova。 〆は、Orion Cup Capital 2000 にも参加していた Turkmenistan の Ashkhabad、という感じです。

しかし、 Various Artists, Deep Throat Or Dangerous Strings Voice Festival (DOM, CDDOMA0105, 2001, CD) となると、保守的な world music ファンにはついていけなさそうな気もします。 歌というよりヴォイスを使った演奏をするミュージシャンを集めています。 まず、日本から 巻上 公一 & 宝示戸 亮二。 続いて、Chelyabinsk の New Art Ensemble。 Tuva 〜 Moscow の Nikolay Oorzhak & Primitive Music OrchestraVershki Da Koreshki というかそのサブユニット Molly Sylla & Vladimir Volkov、 Yakutia の Stepanida Borisova と Russia の Alexander EmelianovTo... のセッション、 Ukraine の Natalka Polovinka & Tri Ya、 St. Petersburg の Evelin Petrova & Vyacheslav Guyvoronsky (レヴュー) と続いて、最後は、 Petrova-Gyvoronsky duo に 巻上 公一 と Sergey Zagny が加わったセッションでおしまい。

しかし、この3枚を聴いていると、去年、 ここで話した 実験的・前衛的な指向を持つ free jazz / improv. や avant rock、electronica といった音楽と多文化的な folk / roots な音楽の併存と混交という状況を、思い出します。 最初の Orion Cup Capital 2000 に収録されているのは 従来の world music の典型のような音楽ですし、 最後の Deep Throat Or Dangerous Strings Voice Festival は、 むしろ実験的な指向を持つ free jazz / improv. 〜 electronica の範疇ですし。 で、2番目の On The Carpet: Oriental Culture Festival は、 ちょうどその中間くらいの位置にある音楽といえるんじゃないでしょうか。 こういったものが、一様にというより緩やかなグラデーションを持ちながら、 DOM Cultural Center という場で併置混交されているって感じが、 「今」というかとても2000年代っぽいように思います。

中東欧の話題といえば、 以前にもちょっと言及しましたが、 e-zine Central Europe Review が、 e-zine Transitions Online文化欄として再出発していますね。 以前は、中欧の話題がメインでしたが、 Transitions Online 傘下となって、 "culture and diversity in the post-communist world" (旧共産圏の文化と多様性) についての話題を扱うようになったようです。 最新の音楽関係の記事も、 Michael Church, "A Musical Road Trip" ということで、シルクロード沿いの音楽の紹介記事です。あまり濃い内容じゃないですが…。 しかし、DOM からリリースされたCDに 興味を刺激されつつあるので、 今後、中東欧だけでなくコーカサスや中央アジアの音楽がもっと紹介されることを、 楽しみにしています。

それから、先日の中欧 accordion 特集な発言も、 中東欧な音楽に収録しておきました。 Attwenger は Austria 出身とはいえ Serbia の Boban Markovic Orchestra がらみですし。 Accordion Tribe にも Slovenia の Bratko Bibic が参加してますし。 って言っているとキリがない気もしますが…。

- 弦巻, 東京, Sun Jan 12 23:47:20 2003

音盤雑記帖を更新しました。 accordion ものを2件、といった感じでしょうか。

去年、Boban Markovic Orkestar, Live In Belgrade (Piranha, CD-PIR1685, 2002, CD) をレヴューしたわけですが。 そのライナーノーツで この brass band が共演したことがあるバンドとして挙げられていたのが、 Austria 出身の accordion + drums のデュオ Attwenger でした。 以前から名前をみかけたことはあったバンドだったので、 Boban Markovic Orkestar が参加した最新のアルバム Sun (Trikont, US-0297, 2002, CD) を入手してみたんですが、とても面白かったので、 レヴューしておきます。 他のゲストが Fred FrithCouch だったり、 techno / breakbeats 系レーベルの Disko B からも リリースしてたり、というのも、 最近の "avant-roots" と言いたくなるような動向 とも並行しているようで、とても興味深いです。 Piranha と契約したことですし、Boban Markovic Orkestar にも こういう活動をもっと期待したいです。 実は、去年末にはとりあえず入手してはいたんですが、 年明けまでちゃんと聴けてなかったのでした…。 聴いていたら、Top Ten に選んでいたかも…。

Bratko Bibic, Lars Hollmer, Maria Kalaniemi, Guy Klusevsek, Otto Lechner の5人の accordion 奏者によるプロジェクト Accordion Tribe の 待望の新作 Sea Of Reeds (Intuition, INT3327-2, 2002, CD) も レヴューしてあります。 ウェブサイトを通してけっこう早い時期から活動再開を知っていて、 新作も去年末に入手してはいたんですが、最初はピンとこなかったのでした。 前作 Accordion Tribe (Intuition, INT3220-2, 1998, CD) が とても良かったので、期待過大だったんでしょう。 年末年始とかに聴いているうちに、次第に、やっぱり良いなあ、と思ったり。

- 弦巻, 東京, Sun Nov 10 21:15:17 2002

Leo レーベルのサイトにはまだ載っておらず、 いつもエアメールで送られてくる October 2002 の newsletter / press release で僕は知ったのですが。 Golden Years Of The Soviet New JazzVol.III (Leo Golden Years, GY409/412, 2002, 4CD) がリリースされてます。 Vol.IVol.IIに続いて、入手しました。 収録されているのは、9月の newsletter どおり。 CD1は、Novosibirsk 出身の Yuri Yukechev - Vladimir Tolkachev の duo Homo Libre。ライヴ録音中心で音質がちょっと辛いかも。 CD2は、Vilnius, Lithuania の Vladimir Chekasin Bigband。 Chekasin は、The Ganelin Trio のメンバーとして有名です。 それなりに楽しめましたが、それは Chekasin が好きだからかも。 CD3は、Tuva 出身のヴォイス・パフォーマー Sainkho Namchylak と Moscow の Tri-O。 半分が2者の共演での録音で、様々な録音が含まれていますが。 冒頭の、Sainkho with Pop-Mechanics の1985年のライヴ録音での電子楽器と Sainkho の声が、 音が割れまくった最悪の録音もテンションの高さを伝えてくれているようで凄いです。 低音寄り3管変則 trio の Tri-O も好きですし、このCD3が一番楽しめました。 CD4は、Moscow の Andrew Solovyev & Igor Grigoriev と、 Smolensk 出身で Moscow で活動する cello 奏者の Vladislav Makarov。 trumpet (Solovyev) + electric guiter (Grigoriev) + drum な The Roof と Moscow Improvising Trio はかなり気に入ったかも。

Leo からは、同時に、Austria のバンド Metamorphosis の新作 DIP (Leo, CDLR357, 2002, CD) というのもリリースされています。 自称 "Contaminated Chamber Music" を演っている electric guitar x 2, violin, cello という編成の4人組。 メンバーの一人が Turk 系 Czech 人ということもあってか、1st アルバム Contaminated Chamber Music (Rachot / Behemot, R-0018, 1999, CD) は、Praha, Czech rep. のレーベル Rachot からリリースされています。 electric guitar が使われていることから想像付くように rock 寄りの音です。 Leo のプレスリリースによると "Forget Kronos Quartet, The EX and The Pixies" ってことで、そこらへんどを狙っているというのもわからないではないんですが。 ドラムレス編成というせいもあるのがリズムのキレがいまいち、というか。 うーん、惜しいかな。

Metamorphosis は、Brno, Moravia, Czech rep. の alternative シーンと交流が深く、 メンバーの一人 Christoph Pajer が参加した Brno のバンドに Boo があります。 その 2nd アルバム Listen (Indies, MAM164. 2002, CD) がリリースされていますね。 こちらも聴いてみましたが、drums が入る分だけ、シャキってしてますね。 しかし、歌詞が英語なのですが歌唱がちょっと弛むような気がします…。 1st アルバム Boo (Indies, MAM104-2, 1999, CD) は未聴です。

Boo は Brno 界隈で活動するスペシャルユニット的な面もあるんですが。 Boo の cello 奏者 Andrea Konstankiewicz のバンドが、 Tara Fuki。 女性2人による歌付きの cello の duo と、ちょっと変則的な編成です。 Konstankiewicz が Poland 系ということで、歌詞に Poland 語が採用されています。 少し前にリリースされた唯一のアルバム Tara Fuki (Indies, MAM153-2, 2000, CD) を聴いていると、テンション高めでけっこうカッコイイです。

で、Christoph Pajer や Andrea Konstankiewicz もゲストで参加したりしている Brno のバンドに Slede, Zive Slede があります。 guitar / contrabass / bassoon という低音に重なった変則的な編成で、 抑え気味の歌声も、淡々、というか飄々とした感じで、良いです。 今のところ、Brno 界隈の alternative のバンドで、一番気になっているバンドです。 って、2nd アルバム Rostliny! Rostliny! (Indies, MAM133-2, 2000, CD) しか聴いておらず、 1st アルバム Milacek Vytvari Krajinu (Indies, MAM, 1998, CD) は未聴ですが。 新譜が良かったらちゃんとレヴューしたいなぁ。

しかし、この Brno の alternative のバンドの音楽を聴いていると、 Brno を拠点に1980年代から活動していた Iva Bittova の影響って大きいなぁ、と、思ってしまいます。ふむ。 そう、半年ほど前に、 Cikori (Indies, MAN150-2, 2001, CD) をレヴューしたときに、 その後に新譜が出ていると書きましたが、誤りでした。 Ples Upiru (Indies, MAN184-2, 2002, CD) は、 Iva Bittova & Nederlands Blazers Ensemble, Dance Of The Vampires (NBE Live, NBECD003, 2000, CD) の Czech 盤だったんですね。少し classical な仕上り。ま、こんなものでしょうか。

と、Metamophosis や Boo などの Brno 界隈の alternative のバンドの新譜の レヴューを書こうかと思っていたのですが、 結局、聴き返していていてそれほど気合が入らなかったので、 とりあえず軽く紹介ということで。

- 弦巻, 東京, Fri Nov 8 23:54:23 2002

さて、実はほとんど昨日書き終わっていたんですが、 音盤雑記帖の更新しました。 先日の Boban Markovic Orkestar に続いて Gypsy brass band 物。 Macedonia の Gypsy brass band Kocani Orkestar の新作 Alone At My Wedding (CramWorld, CRAW25, 2002, CD) のレヴューです。 関連して、Kocani Orkestar が参加した Harmonia Ensenble & Kocani Orkestar, Ulixes (Materiali Sonori, 2002, CD) と、 Various Artists, Gypsies - I Nostri Zingari (Materiali Sonori, 2002, CD) についても併せて簡単にレヴューしてます。

Ulixes で Kocani Orkestar が共演しているのが Italy の banda と呼ばれる伝統的な brass band。 といっても、La Banda Improvissa (即興のバンダ、という意味でしょうか) は、 同時代的な再解釈での演奏をしているリバイバルのバンドのようです。 このバンドは初耳ですが、Materiali Sonori からの小包には、Italy でのライヴのフライヤも入っていて、 今後、Materiali Sonori から単独のCDとかリリースされるんじゃないかなぁ、と。

この、最近の Italy の banda のリバイバルを巡る状況について "The Italian 'Banda' Phenomenon" なんていうテキストを見つけてしまいました。 やっぱり、映画 Underground (Emir Kusturica (dir.), 1995) で フィーチャーされた Gypsy brass band の影響が大きかったのかなぁ、と思ったり。 「地元にもああいう brass band があるじゃないか」 みたいな形で再び注目された、というのもあるような気がしますね。 Underground に出演した brass band である Boban Markovic OrkestarLive In Belgrade (Piranha, CD-PIR1685, 2002, CD) のライナーノーツに、 "It was the Gypsies, after all, who kept the country's tradition of brass music alive, ..." って一節があるんですが。ここでの the country は Yugoslavia なんですが、 実は欧州全体に対しても、似たようなことが言えるのかなぁ、と思ったり。

"The Italian 'Banda' Phenomenon" で挙げられている3タイトルのCDは聴いたことは無いのですが。最初に挙がっている Banda Ionica については、今年リリースされた Matri Mia (Dunya, FY8050, 2002, CD) は持っていたりします。post-punk 〜 avant-rock な Italy のバンド Mau Mau がらみなんですが。 Arthur H. をフィーチャーした "Raissa" での歌声やさりげない音処理とか、 その界隈を通過した音だなぁ、とは思いますが。 音的にはそれからの流れはあまり意識させられないように思います。 もっと吹っ切れた試みをして欲しいような…。

2番目に挙がっている La Banda: Traditional Italian Banda / Banda and Jazz (ENJA (MW), ENJ-9326-22, 1998?, 2CD) でフィーチャーされているのは、 Banda Citta Ruvo Di Puglia なんですが、 の Italy の free jazz big band Italian Instabile Orchestra を組織する Pino Minafra がらみですね。 Banda Ionica にしてもそうですが、banda のリバイバルをどういうミュージシャンが担っているか推測される、というか。 そういえば、最近入手した Popular Mechanics 対 Italian Instabile Orchestra な Sergey Kuryokhin, Italy (Solyd, SLR0277, 2001/1990(rec), 2CD) にも banda が参加していたんですが、クレジットによると The Banda Musicale of Rutigliano という banda のようです。ふむ。 他にもいろいろいるんだなぁ、というか。

- 弦巻, 東京, Tue Oct 22 0:16:01 2002

というわけで、仕事帰りに、冷たい小雨のぱらつく中、東京池上本門寺 まで行ってきました。 満月の十三祭り 第七章観てきたわけですが…。 主な目当ては Armenia の duduk 奏者 Djivan Gasparyan (関連発言) と、 Boric Kovac & LaDaABa Orchest のメンバーでもある Olah Vince の率いる Yugoslavia のバンド Earth-Wheel-Sky Band (関連発言) だったわけですが。開演には間に合わなかったわけですが、目当てのステージに間に合って良かったです…。 しかし、正直言って、音楽を楽しむには厳しいコンディションでした。 ま、そうそう観る機会が無いので、これでも仕方ないか…。 けど、もっとこぢんまりしたハコで観たかったなぁ。

- 弦巻, 東京, Sun Oct 20 23:47:27 2002

今週末の音盤雑記帖の更新は brass band 物の特集です。

Balkan Gypsy brass band ブームのきっかけとなった映画 『アンダーグラウンド』 (Emir Kustrica (dir.), Underground, 1995) に出演しながら、 Milosevic 時代は Serbia のバンドということで 他の Balkan Gypsy brass band (Kocani OrkestarFanfare Ciocarlia。関連) に比べて割を食っていた感もある Boban Markovic Orkestar (関連発言) ですが。 post-Milosevic になって、フェスティヴァル等で、EU方面への進出を進めているように思います。 で、今までも Yugoslavia 盤のリリースはあったといえ、遂に world music の大手独立系レーベル Piranha から Live In Belgrade (Piranha, CD-PIR1685, 2002, CD) をリリースしました。ライヴ盤ですが、迫力のある録音で充分に楽しめます。これで、もっと欧米で活躍するようになるかしらん。 しかし、Piranha のようなレーベルを拠点に活動するようになって期待するのは、 単に配給が良くなって入手しやすくなることも無いわけじゃないですが、むしろ、他の音楽との交流だったりします。 そういう意味で、Boban Markovic Orkestar が参加した Frank London's Klezmer Brass Allstars, Brotherhood Of Brass (Piranha, CD-PIR1683, 2002, CD) は、コンセプトも興味深いですし、演奏もとても楽しめるものだと思います。お勧めです。

一方、Frank London やその界隈の klezmer の現代的な解釈や jazz / improv. や rock との混交がいと僕が思っていたのは1990年代前半。 その後、Knitting Factory Works は JAM (Jewish Alternative Music) としてこの手のCDをシリーズ化して、 John Zorn も Tzadik レーベルで Radical Jewish Culture シリーズを始めたわけです。 しかし、そうなると一種のスタイルという感じで、1990年代前半頃にはまだあった「怪しさ」というのも、どんどん薄れてしまったように思います。 で、1990年代後半にもなると、その手のCDをたまに中古盤で安く買って聴いてみる、という程度になっていたわけです。 1年余り前に Di Shikere Kapelye (Piranha, CD-PIR1467, 2000, CD) を入手して聴いてみたときも、それほど印象に残らなかったんですが。 しかし、続く Brotherhood Of Brass (Piranha, CD-PIR1683, 2002, CD) は、 伝統的なスタイルに拘らないという点で Frank London らしいと思う一方、共演の相手が今までの JAM 界隈のアプローチでは無かったもので、新鮮さもあって楽しめました。 JAM のアプローチが1990年代っぽいとしたら、Brotherhood Of Brass のアプローチは2000年代っぽいという気もしないではないです。

と、Brotherhood Of Brass は、Boban Markovic Orkestar 側からの文脈から見ても、Frank London 側からの文脈から見ても、興味深い作品だと思います。

- 弦巻, 東京, Sun Sep 29 2:49:51 2002

しばらく音盤雑記帖の更新をお休みしてましたが、 久しぶりのレヴューは、中東欧物。 Brno, Moravia, Czech rep. を拠点に活動するバンドTeagrass特集です。 一年くらい前に、Iren Lovasz & Teagrass, Wide Is The Danube (CCn'C, 00902, 2000, CD) を聴いて、けっこう気にいっていたのですが。 最近出た Vecirek (Indies, MAM176-2, 2002, CD) も良かったので、併せて紹介します。 Gnosis からリリースされた 1st Eastbound (Gnosis, G-MUSIC005, 1995, CD) と、 2nd Moravian Love Songs (Gnosis, G-MUSIC009, 1999, CD) も、 インターネットで試聴する限り良さげなのですが、扱っている良さげなオンラインショップを見つけられてないため、未入手だったりします。ふむ。 CCn'C は Germany のレーベルですし、Indies は Tamizdat が扱っていますし、入手しやすいです。 ところで、Teagrass は、名前からも伺えるように、もともと bluegrass (アコースティックな country music の形式) をやるバンドとして活動を始めたわけですが。 どうして、Czech rep. で country music を?、と思っていたのですが。 Czech rep. では country music が盛んだ、ということを、最近になって別文脈で北中さんに教わって、なるほど〜と思っていたりしたのでした。 で、Czechoslovakia における country music の歴史についてのテキストを発見。ふむふむ。

さて、Wide Is The Danube でフィーチャーされている Hungary の女性歌手 Iren Lovasz も気になるんですが。 正直言って、歌声だけなら、Marta Sebestyen より好みです。 最近は、Hungary の folk / roots 系のバンド Makam活動を共にしていて、2枚のリリースがあります。 Makam / Iren Lovasz / Szilvia Bognar, Skanzen (Fono, FA073-2, 1999, CD) は Wide Is The Danube を聴いた直後に入手して聴いたんですが、悪くないんですが、ちょっと folk 的過ぎるかなぁ、と。 というわけで、最近リリースされた、Makam / Iren Lovasz, 9 Colinda (Fono, FA095-2, 2001, CD) は未聴だったりします。ふむ。

Lovasz は folk をバックグラウンドに持つ歌手ですが、けっこう活動範囲が広いんですよね。 1980年代から活動している Hungary の電子音楽のミュージシャン Laszlo Hortobagyi ともけっこう共演してます。 Iren Lovasz / Laszlo Hortobagyi, Vilagfa (Fono, FA063-2, 1999, CD) という、1995年に制作された展覧会のための音楽のCDを持っていますが。ちょっとB.G.M.的に過ぎるかしらん。 しかし、Hortobagyi も、最近は UK の ethnic dub ユニット Suns Of Arqa 界隈での活動が目立ちますね。ふむ。 どう繋がったのか、いまいち謎ですが。

Hortobagyi といえば、 Tibor Szemzo の1980年代の作品集 Snapshot From The Island (Leo, CDLR227 / Bahia, CDB057, 1999, CD) にも参加していたりするんですよね。ここらの Hungary のシーンって、どう繋がっているのか、いまいちよくわかってません。 Szemzo は、1980年代から UK の jazz / improv. 系のレーベル Leo から主にリリースしている Hungary のミュージシャンなわけですが。 Hungary でのレーベルは alternative rock 系のレーベルの Bahia だったりしますし。 jazz / improv. というわけじゃなくて、映画や劇の付随音楽みたいな音楽をやっている人です。 Hector Zazou というか Made To Measure っぽいような気がします。 最新作にあたる Invisible Story (Leo, CDLR312, 2001, CD) でもDJをフィーチャーしたりして頑張っていますが、聴いていても、いまいち掴み所ないんですよね…。ふむ。

と、今のところはレヴューを書くほどでもないかなぁ、という Hungary のミュージシャンも Iren Lovasz からの繋がりで、軽く紹介してしまいました。 ま、Mihaly Dresch 界隈とか、Kampec Dolores 界隈とか以外にも、いろいろあるということで。

- 弦巻, 東京, Sat Sep 28 2:33:07 2002

Sat Sep 21 0:29:50 2002 の発言で触れた Djivan Gasparyan (関連発言) と Earth-Wheel-Sky Band (関連発言) の来日の件ですが。消息筋によりますと、結局、東京近辺での公演は、 満月の十三祭り 第七章 (10月21日(月) 18:30〜) @ 池上本門寺 のみということでした。他に、新潟で公演があるそうです。仕方ない、池上本門寺に行きますか…。

って、これだけなので…。この公演に関連する音盤ということで、 Djivan Gasparyan, I Will Not Be Sad In The World (Melodiya, 1983 / Opal, 9-25885-2, 1989, CD) を発掘してみました。 Gasparyan の吹く管楽器 duduk は篳篥のような楽器なんですが、音はぐっと低め。ゆったり落ち付いた吹きまわしで、尺八なんかも連想させられます。 Vachagan Avakian が背景で吹く dam (drone duduk) の通奏低音 (didgeridoo みたいな) もあって、瞑想的な雰囲気たっぷり。 ちなみに、1983年に Soviet の Melodiya からリリースされた音源を欧米向にリリースし直した欧米デビュー盤です。 リリースをしたのは、Brian Eno のレーベル Opal。 (ちなみに、Opal は Warner Bros. 傘下で1983〜1991年の間活動したわけですが、 現在、その音源の多くは、All Saints から再発されています。) ジャケットデザインは、Russell Mills (レヴュー)。なんか、時代を感じますねぇ〜。 Le Mystere De Voix Bulgares, Le Mystere De Voix Bulgares (4AD, CAD603, 1986, LP) なんかに近いノリの売られ方ですね。Russell Mills と 23 Envelope ってデザインのセンスが近いし。 エスノ・アンビエントというか、今でいうとヒーリング・ミュージックというか、そういう文脈に受容されたんだろうなぁ、というか。 ちなみに、このリリースは、1988年のアルメニア大地震の犠牲者に捧げられる形でリリースされたもので、売上の一部は援助団体 Life Aide Armenia に寄付された、というものでもあったのでした。 そういうこともあって、買ったんだっけ (遠い目)。

- 弦巻, 東京, Sat Sep 21 0:29:50 2002

昨晩ティモシー・ライバック 『自由・平等・ロック』 (晶文社, ISBN4-7949-6129-4, 1993, book; Timothy W. Ryback, Rock Around The Bloc: A History of Rock Music in Eastern Europe and the Soviet Union, 1990) へのコメントの補足ですが。中東欧の独立系レーベルのネットワーク TamizdatAdvisory Board には、 本の著者である Ryback や The Plastic People Of Universe の Milan Hlavsa (去年に亡くなっていますが…) の名前も見えます。 他の顔ぶれからすると名誉職的な面が強そうに思われ、どのくらい寄与してるのかわかりませんが。いちおう、こういう繋がりもある、ということで。


梅津 和時 のライヴ予定をチェックしてたら、偶然、 満月の十三祭り @ 池上本門寺第七章 (10月21日(月)) に、 Djivan Gasparyan (from Armenia) と Earth-Wheel-Sky Band (from Yugoslavia) が出演することに気付きました。Djivan Gasparyan については、 Libra Music レーベルの をしたときに、ちょっと言及したことありますね。 Earth-Wheel-Sky Band は、 Boric Kovac & LaDaABa Orchest のメンバーでもある Olah Vince のバンドで、 一年ほど前にレヴューした Various Artists, Srbija: Sounds Global (Free B92, CD008, 2000, CD) にも参加していましたね。 ライヴを観てみたいところですが、 平日18時30分に池上本門寺、というのは大変に厳しいんですけど…。 都内もしくはその近辺で他に公演予定は無いんでしょうか。 WABISABILANDGigs in Tokyo にも載ってないしー。 何か情報を知っている方がいたら、教えて下さい。よろしくお願いします。

そういえば、某MLとかには流しましたが、 Taraf De Haidouks去年の来日ライヴで 若い女の子たちに「おじいちゃん、かわいい〜」っていう声をかけられていた Neacsu Neculae が亡くなりましたね…。 あれが見納めでしたか…。R.I.P.

- 弦巻, 東京, Thu Sep 19 23:25:02 2002

一応、中東欧の音楽を追いかけてますし、 ティモシー・ライバック 『自由・平等・ロック』 (晶文社, ISBN4-7949-6129-4, 1993, book; Timothy W. Ryback, Rock Around The Bloc: A History of Rock Music in Eastern Europe and the Soviet Union, 1990) を読んでみました。10年近く前に出た本ですが、読んだのは初めて。 東欧・ロシアのロックを中心としたポピュラー音楽に関するドキュメンタリーです。 扱っている期間は、第二次大戦後から東欧革命までの共産主義政権時代です。ある意味で、 アルテミー・トロイツキー 『ゴルバチョフはロックが好き?: ロシアのロック』 (菅野 彰子=訳, 晶文社, ISBN4-7949-5080-2, 1991, book; Artemy Troitsky, Back In The USSR, 1987) の全東欧版とも言えるものかと思います。 トロイツキーのように現場に居たわけでなく、文献ベースなので現場感は薄いです。

ある意味で興味深く読めたのですが、どうも物足りないというかそんな点もありました。 表現形式の記述が薄いというか、読んでいて音が感じられないというか。 結局のところ、音楽の歴史というより、共産主義政権下の東欧・ロシアにおけるロックに関わる文化政策・政治の歴史の本なんですよね。 ま、共産主義政権下のロックの場合、重要なライヴの録音や映像が残っていなかったり、録音も地下出版で散逸していたり、で、資料的に実際の音に接するのが困難でしょうし。 文献に基づく制度的な面に重点を置いた記述になりがちなのも、わからないではないですが。

この本を手に取った理由として、Tamizdat が紹介しているような東欧のインデペンデントな音楽シーンのルーツへの興味があるわけですが。 正直に言って、あまり接点が読み取れなかったのは、少々残念でした。 それから、jazz シーンとの関係もこれといった記述が無かったのも、残念でした。 Russia のシーンの場合、 『ゴルバチョフはロックが好き?: ロシアのロック』に登場する1980年代の Leningrad や Moscow のアンダーグラウンドシーンは rock と jazz が入り乱れていた感もありますし、今の Tamizdat 界隈のシーンとそれなりに連続性を見出せるんですけれどね。 誰か、このギャップを埋めるドキュメンタリーでも書いてくれないかしらん。

といっても、それなりに知っているバンドとかも出てきてはいるんですが。 Czech の伝説的なアンダーグラウンドバンド The Plastic People Of The Universe とか、さすがに僕でも知っていましたが。Tamizdat でもプッシュしてましたし。 このバンドにまつわる様々なエピソードについては、 e-zine Furious Sound Forever での記事インタヴューである程度知っていたこともあり、大きな発見があったわけじゃないですが。 しかし、現在の Czech のシーンにおけるこのバンド、もしくは元メンバーの位置って、よくわからないんですよね。 Furious Sound Forever には、Czech の avant rock バンド Uz Jsme Doma (拠点のレーベルは Indies) のインタヴューも載っているのですが。そこでの The Plastic People Of The Universe についてのコメントを読んでも、世代が違うというか若干の距離を感じますし。 Iva Bittova や Dunaj との位置関係も気になったりしますし。

- 弦巻, 東京, Mon Sep 9 23:18:03 2002

中東欧のインデペンデントな音楽シーンのネットワークといえば、主要なものの一つに、 ここで度々紹介している非営利組織 Tamizdat があります。 以前に名前の由来についてここで軽く振ったこともありましたが、ついに名前の由来が判りました。 Valerie Stivers, "An Indie Iron Curtain Falls" (Arts International, Spring 2002) という、Tamizdat を紹介する記事で触れられてました。をを、なるほど。 海外で制作してロシア国内に持ち込まれた出版物を指していたんですね。 この記事で、いまさらながら、 Tamizdat の核となるスタッフが、 Knitting Factory 関係者だということに気付きましたよ。 また、レーベルの配給やミュージシャンのプロモーションだけでなく、 ソヴィエト時代の自主制作音源の収集保存手がけているんですね。ふむふむ。

- 弦巻, 東京, Sun Sep 8 23:41:58 2002

音盤雑記帖にレヴューを書く気合が入るような盤がないので、更新はお休みして、 久々に、中東欧の音楽の話を徒然なるままに。

さて、中東欧の情報源として使っている e-zine Central European Review ですが、最近、更新の頻度が下がって読みに行く頻度も下がっていたんですが、 久しぶりに読みに行ったら、どうやら、 Transitions Online と一緒になるようですね。ふむふむ。そんな Central European ReviewRobert Young (一瞬、The Wire 誌編集長 Rob Young かと思いましたが、どうやら別人。 音楽 e-zine junkmedia の編集長。) による "Making the Scene" というレヴューが。 Belgradeyard Sound System という Belgrade, Yugoslavia の DJ ユニットの紹介です。Milosevic 時代は 番組を持っている Free B92 と心中するつもりだった、みたいな話も興味深いですが、 Ljubljana, Slovenia や Zagreb, Croatia とのアーティストやオーガナイザとの交流の話が興味深いです。 こうやってシーンが広がっていくと面白くなりそうですねぇ。 バンドのサイトにあるインタヴュー記事一覧を見ると、 このバンドの交流範囲が判って、また興味深くあります。

ま、以前レヴューした Free B92Belgrade Cofee Shop シリーズに参加してなかったこともあり Belgradeyard Sound System はノーチェックだったのですが。 どうやら、拠点のレーベルは、London, UK のレーベル Cosmic Sounds で、まだ、アルバムは出していないようですね。 このレーベル、Tamizdat で扱っているので知ってましたが、 1960s〜70s の中東欧の jazz / fusion とか、 Yugoslavia の trumpet 奏者 Dusko GojkovicYugoslavia 音源のリイシューとか、 リイシューレーベルという印象が強くて、新録はノーチェックでした。 Various Artists, Belgrade's Burning (Cosmic Sounds, CS11, 2000, CD) や、 その Vol. 2 (Cosmic Sounds, CS22, 2002, CD) を見ると、 Belgrade Coffee Shop シリーズで最も気に入ってた Teget が参加しているじゃないですが。 というか、Teget というのは、Coxless Pair の Dusan Petrovic や Boris Mladenovic が結成したバンドだったんですね。をを。 実は、けっこうベテランだったんだなぁ。アルバムのリリースをきぼんぬ。

というわけで、カタログを見ていると Nina Miranda (Smoky City) をフィーチャーした Arkestra One, Arkestra One (Cosmic Sounds, CS-21, 2002, CD) とかも気になるわけですが。なんと言っても気になるのは、Russia のミュージシャンですが、 Alex Rostotsky / Yuri Parfenov, One Upon A Time In The City Of Kazan (Cosmic Sounds, CS-17, 2001, CD)。 Yuri Parfenov って、以前紹介した Volkov Trio 界隈のセッションにも参加している trumpet 奏者ですね (翻字の都合でラテン文字での綴りが違いますが)。 ラインナップを見ると、Alexander Alexandrov や Sergei Letov も参加してるしー。 というか、Letov / Alexandrov / Parfenov といったら、 Soviet 時代から活躍している Tri-O ですね。 と、Soviet / Russian free jazz / improv. な面子も参加してて、それでかつ、 Gilles Peterson が誉めている (It's got that kind of milestone..)、ってことになると、 どんなことになっているのか、とても気になるじゃあないです。

Sergei Letov の名前を見てふと思い出したんですが、もう半年くらい前になってしまうのですが、 彼の自主制作CD-Rレーベル Pentagramma の作品を RBCmp3.com で入手してみました。 ジャケットもライナーノーツも無く、焼いた CD-R に油性ペンでタイトルを手書きしただけのものが届いて、 どうしたものか、という感じではありましたが。ま、サイトに情報があるから、いいか…。 Letov から直接取り寄せればジャケットとかついているのかもしれないですが。 で、トラックも分割されてなくてひとまとまり、2トラック一発取りのような感じで録音も良くなく、 あまり他人に薦められるものでなかったので、ここで紹介してなかったのですが。 ちなみに、買ったのは2枚。 Anton Nikkila / Alexei Borisov / Serguei Letov, Live At Moscow (Pentagramma, 003CD, 1999, CD-R) は、 ノンビート〜ダウンテンポな電子音を背景に Setov の sax が唸るという感じのもの。 ま、これは普通かしらん。 Novaya Russiaya Alternativa, Uverennosti v Nevidimom (Pentagramma, 009, 1999?, CD-R) は、folk/roots 的な歌唱や楽器音と、Letov の sax と、その加工を含む Borisov の電子音、という感じので、 ちゃんと制作すれば楽しめる音になるんじゃないなかぁ、と思うところもあったり。

どんどん話が飛びますが、Nikkila の名前で思い出したので。 The Wire, Issue 213 (Nov. 2001) に、Soviet / Russia の noise / industrial シーンを紹介する Anton Nikkila, "Soviet Noise Network" (pp.42--47) という記事が載っていたのですが、文字数制限のために編集される前の原稿 "Russian industrial noise: Pioneers, youth league and party members"Tamizdat に半年くらい前に掲載されました。 誌面で読んだときは、この記事で新たに得たような情報もそんなになくて、 わざわざコメントするほどの記事でもないと思ったのですが、 インターネット上で読めるようになってることですし、軽くコメント。 The Wire 誌では "Russian Noise Network" とあったわけですが、 ミュージシャンたちの間の関係ではなく、それぞれのミュージシャンについて 個別に点描している、という内容で、少々物足りなかったです。 Avia を紹介しているのに、その前身の Strannie Igri や ex-Avia / Strannie Igri な Deadushki に全く言及していないし (ちなみに、関係する過去の発言)。 Alexey Borisov (Notchnoi Prospekt) を紹介しているのに、 Borisov のレーベル ExoticaSergey Letov との活動とか 全然紹介していないし。広がりのある紹介になっていないような気がしました。 というか、そっちの動きの方が、noise / industrian 云々より、今後、面白くなりそうな気がするんですが。 ま、Sergey Kuryokhin が死ぬ直前に極右政党に入っていた、とか、 そういうエピソードはそれなりに興味深く読めましたが。 ま、Avanto Festival, Helsinki, FI との タイアップ記事のようなので、出演するミュージシャンに焦点を当てた、ってところなんでしょう。

Soviet 時代の1980年代から Notchnoi Prospekt などで活動し続けてきている Alexey Borisov の活動で、今一番に注目すべきは Exotica レーベルだと思いますが、 活動開始5周年を記念して、Various Artists, Exotique (Exotica, EXO02120, 2002, CD0 をリリースしています。 もちろんリリースされてすぐ入手済みですが、ラウンジーな electronica の好編集盤である Tell Tschaikowsky The News シリーズと違って、ちょっと重めな曲もあって、興味深かったです。 しかし、Tell Tschaikowsky The Newsここここで軽く言及してますが、ちゃんとレヴューしていないしなぁ。 旧譜だったりサンプラー盤だったりすると、なかなかレヴューを書こうというきっかけが無くて、よほど良いと思わない限り、流しがちという…。

と、話もあちこちに飛びまくってしまったことだし、今晩はこのくらいで。

- 弦巻, 東京, Mon Jun 24 0:42:57 2002

2週間前にも軽く触れたの Czech の Iva BittovaCikori (Indies, MAN150-2, 2001, CD) のレヴュー です。 Iva Bittova / Vladimir Vaclavek, Bile Inferno (Indies, MAN055-2, 1997, 2CD) を聴いたときは今一歩と感じて、躊躇してたんですが、なかなか良いです。 Bittova の新譜、と紹介するつもりだったんですが、もう、次作 Ples Upiru (Indies, MAN184-2, 2002, CD) が出ているようです…。

ちなみに、リリースしている Brno のレーベル Indies は、 Prague の Rachot と並んで、 Czech の alternative な音楽シーンを支える興味深いレーベルのように思います。 いずれも、Tamizdat から ほとんどのタイトルを入手することができます。 他に聴いた中で気になるのは、Indies から2枚のリリースがある Slede, Zive Slede。 guitar, contrabass, fagot / clarinet という drum-less のちょっと変則的な編成が 生きてます。新譜が良かったらそれに合わせて紹介したいです。 この界隈の人脈のバンドというと、 Boo や、Czech / Austria 混成の Metamorphosis といったバンドもとても気になります。 もちろん、Indies や Rachot からは、この人脈以外に面白そうなバンドがありますが、 なかなか聴き進めていません…。

- 弦巻, 東京, Thu Jun 6 23:08:17 2002

世間的にもベストセラーにもなっているようで、 わざわざここで紹介するまでもないように思いますが、自分への読書メモも兼ねて軽く紹介。 ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 (徳間書店, ISBN4-19-861519-5, 2002) は、かなり面白かったし、いろいろ勉強にもなりました。 去年の911テロ以降、泥縄な問題意識の下、 それなりにグローバライゼーションに関する本を読んで、 時々ここで紹介してきてますが、今のところ一番のお勧め。 ま、経済的な面にある程度限られたものとはいえ、 現在のグローバライゼーションのどこが問題なのかを、 イデオロギー的な面からというよりも (それが全く無いわけじゃないですが)、 経済的な発展・安定という実際的な面から示しているのも良いです。 といっても、そんなに固い文章ではなく、その内容はもちろん、 元世界銀行主任エコノミストならではの 半ばドキュメンタリー的な語り口が、読んでいてとても面白かったです。 しかし、現在の日本における小泉政権下の「構造改革」と この本で指摘されているグローバライゼーションの問題点というか 国際通貨基金 (IMF) の失敗した政策との 類似点のあまりの多さに、読んでいて暗澹たる気分になる、って面もありますが…。 (これについては、黒木のなんでも掲示板での議論が参考になるかと。)

この談話室のいつもの話題に近いところでは、本の議論の本筋ではないのですが、 第七章「「中国の成功」と「ロシアの失敗」」の中の節 「ジョージ・ソロスの示したこと」 (pp.272--274) で、Stiglitz が中東欧 (旧共産圏) の George Soros基金の活動を肯定的に取りあげていることに、 興味を引かれました。確かに、音楽に限らず 中東欧の文化についてフォローしていると Soros の基金のことは嫌でも目に入ってきます。 例えば、Milosevic 独裁政権下の Serbia での独立系ラジオ局 Free B92 の支援 (関連する発言) に関して、 支援の連帯のために集めた金が Soros に流れている、とか、 B92 は Soros の古典的な自由主義をプロモートする "Voice of Soros" になった、とか、 言われてましたし。 僕が中東欧の音盤購入にさんざんお世話になっている独立系レーベルのネットワーク Tamizdat のディレクター Mathew Covey は、 Tamizdat の活動を始めた理由として、 「Solos 財団は自主出版文学については多くの仕事をしてるけど、あからさまに音楽を扱かおうとしなかった」 って言ってますし。 そんなこともあって、僕は Soros の活動をいささか胡散臭く感じています。 ま、完全な中立はありえないし、全面的にダメだとは思いませんが。 ま、IMF が中東欧諸国にやったことに比べたら遥かにマシ、ってことはありますね。

- 弦巻, 東京, Mon May 20 23:51:40 2002

5月に入って、特に中東欧の音楽のネタを 振っていなかったので、久しぶりに。といっても新しいネタではなくて、 去年の夏に存在に気付いて、 今年の頭に直接コンタクト取ったときに入手した、 Popular Mechanics, Insect Culture (Solyd, SLR0108, 1998, CD) のレヴューを。 期待が大き過ぎたせいか肩透かしの感もあって、なかなか筆が進まなかったのですが、 そのまま没にしてしまうのもなんですし…。そろそろ棚卸、ということで。 ちなみに、参加している New Composers については、 今年の二月の発言も参考になるかと。

同時に入手した関連盤としては、 Sergey Kuryokhin / Boris Grebenshchikov, Mad Nightingales In The Russian Forest (Leo, LR167, 1985, LP / Solyd, SLR0087, 1997, CD) というのもあったりしましたが。 こちらも、ambient な電子音楽という感じで Insect Culture 以上に印象が薄かったり…。 ちなみに、ほぼ同時期の Kuryokhin 、Grebenshchikov に Igor Butman を加えた3人による Subway Culture (a.k.a. Subterranean Culture) (Leo, LR402/403, 1985, 2LP) の方は、 Divine Madness (Leo, CDLR813/816, 1997, 4CD) に収録されてます。 しかし、このCDで気付いたんですが、正確に翻字すると、 Grebenshikov ではなく Grebenshchikov (キリル文字でшではなくщ) なんですね。 Radio Silence (CBS, 1989) で英米デビューしたとき Grebenshikov と綴られていたので、шだとばかり思っていました…。 今はラテン文字綴りは Grebenshikov が定着しているようですし、 このレヴューは Grebenshikov のままにしますが。

Kuryokhin 関連盤ではないですが、一緒に入手した音盤に Various Artists, Mrs. Lenin: Electro-Acoustic Music From The Theremin Center (Solyd, SLR0044, 1995, CD) があります。 の Theremin をフィーチャーした曲が沢山収録されてるのでは、 と、題名から期待したところもあったのですが、収録されているのは普通に電子音楽な現代音楽でした…。がっくし。 ま、ポピュラー音楽的な要素を入れてみたり、とかしてますね。 Theremin Center は1992年に設立された Moscow State Conservatory (モスクワ国立音楽院) の電子音楽スタジオですが、 特に Theremin に特化しているわけではないようですね。ふむ。 Theremin Center のディレクター Andrei Smirnov の "Music and Gesture" と題した ワークショップのシラバスをみつけたのですが、 MAX/MSP とモーション・センサーを使ってるみたいですね。デジタルだなぁ〜。 ちなみに、の映画 Theremin - A Electronic Odyssey (1995) に出てきた Leon Theremin の姪 Lydia Kavina も、Theremin Center で教えているようです。 (あ、Kavina がらみの曲とかも、Mrs. Lenin には収録されていません。)

- 弦巻, 東京, Thu Apr 25 23:51:06 2002

Wed Mar 13 23:42:29 2002 の発言 で言及して書き捨てするのもアレなので、The Black Sea Orchestra The Black Sea Project (Lyra, ML0660, 1998, CD) のレヴューをまとめておきました。 しかし、このCDのミュージシャンのラテン文字表記、ちょっと変なんですけど。 ギリシャ文字からの翻字とかして変になってしまったのかしらん。 で、以前の発言の時はろくに検索もしなかったので、 レヴューを書くにあたって検索してみました。 Nariman Umerov は、 Enver Izmailov と同じく Uzbekistan 生まれで現在は Crimea, Ukraine で活動するミュージシャンなんですね。 特にCDとかはリリースしてないようです。 Zurab Gagnidze は Georgia の AdioThe Shin といったバンドで活動しているようですね。 The Shin, "Horprobe" を mp3 で聴いてみましたが、結構繊細な感じですね。 CDのリリースもあるみたいだし、ちゃんと聴いてみたい気もする…。

- 弦巻, 東京, Sun Apr 14 22:57:34 2002

今週末の音盤雑記帖の更新は、 中欧Hungary の jazz / improv. の紹介です。 以前から、この談話室で、Mihaly Dresch や Zoltan Lantos の名前を 挙げたりしていて、いずれ紹介しなくては、と思っていましたし。 で、思わず、一挙5枚の紹介になってしまいました。 (おかけで、少々、更新の間が空いてしまいました…。)

Zoltan Lantos, Mirrorworld (Fono, FA047-2, 1998, CD) は、この界隈の録音で最も気にってます。 1990年代後半の中東欧の folk-influenced jazz / improv. の好盤でしょう。 Mirrorworld の活動から彼らのネットワークの広さも見えてくるように思います。 現在の bass-less 4tet での録音も聴いてみたいですねー。くー。同じ頃の録音では、 Gyorgy Szabados - Roscoe Mitchell, Jelenes (Revelation) (Fono, FA038-2, 1998, CD) は folk 色が少ないストレートな free jazz で、 これはこれでカッコイイんですが。 今まで僕が追いかけてきた限りでは、Lantos、Szabados と、この2枚のCDに参加している Mihaly Dresch が、この界隈のシーンの核になっている、という感じです。 そして、彼らの拠点になっている Hungary の独立系レーベルが、 Fono です。 Fono は、jazz ではなく、むしろ folk 〜 world music 系のレーベルなんですが。 去年紹介した、 Besh O Drom, Macso Himzes (Fono, FA-082-2, 2000, CD) も面白かったですし、注目に値するレーベルですね。 ちなみに、Fono のCDは、Tamizdat で買うことができます。

しかし、最近、この Hungary の同時代的な jazz / improv. を積極的に紹介し始めているのが、 台湾人 Shu-Fang Wang の運営する UK のレーベル November Music です。 で、そのレーベルの Hungary 物で一番気に入ってるのは、 Dresch Quartet, Riding The Wind (November Music, NVR2003-2, 2000, CD)。 こういうアルバムから振りかえって、John Coltrane の節回しって 実はけっこうエキゾチックなんだよなー、とか、思ったり。 この春に新作のリリースも予定しているようで、楽しみです。あ、もちろん、 Azopa, Makahia (November Music, NVR2009-2, 2000, CD) も良いんですが。けど、Lantos をまず1枚聴くなら Mirrorworld、とは思います。 November Music は、Hungary 物以外でも、 Rob Schwimmer / Uri Caine / Mark Feldman, Theremin Noir (November Music, NVR2005-2, 2000, CD) を以前に紹介したことがありますが、 他にも、Max Nagl とかリリースしていて、 post-ECM というか JMT 〜 Winter & Winter なんかにも 近い雰囲気のあるレーベルです。ここも注目に値するレーベルですね。

で、jazz / improv. から離れるんですが、関連盤ということで、 Marta Sebestyen, Kismet (Hannibal, HNCD192, 1996, CD) も紹介しています。 Sebestyen の作品の中では最も world music 的な作品として言及されることの多い作品ですが、 それをバックの演奏で支えたミュージシャンがちゃんと紹介されていないように常々感じていたので。 というか、少なくとも日本では、world music ファンと jazz / improv. ファンって、しっかり住み分けているからな…。 というか、jazz / improv. ファンは world music をアート的ではないからダメと思っている感があるし、 world music ファンは folk-influenced jazz / improv. を非大衆的でダメと思っている感があるし…。

図らずしも、Egy Kiss Erzsi Zene の 紹介に続いて、Hungary 物が続きましたが。 いずれも、Hungary 物ということ抜きに、充分に楽しめると思います。 しかし、Egy Kiss Erzsi Zene や Kampec Dolores と、 Mihaly Dresch、 Gyorgy Szabados、Zoltan Lantos 界隈って、あまり関係無さそうな感じもありますが、実際はどうなんでしょうね。 Dresch や Lantos の演奏に Erzsi Kiss をフィーチャーしたら面白いと思うんですけどねー。

- 弦巻, 東京, Thu Apr 4 1:16:20 2002

先週末にできなかった音盤雑記帖の更新は、 Hungary のバンド Egy Kiss Erzsi Zene紹介です。 一昨年に Egy Kiss Erzsi Zene (Bahia, CDB044, 1998, CD) を聴いたときは、それほど強い印象を受けなかったのですが。 Deladela (Bahia, CDB076, 2001, CD) は、とても気に入ってます。 ちなみに、参考に、 Central Europe Review での 紹介記事を。

Egy Kiss Erzsi Zene を聴いてみようと思ったのは、 Kampec Dolores がらみだったからなのですが。 The Ex () 近傍のバンドということで、1990年代半ば中古で Kampec Dolores (Konkurrel, K036/108, 1988, LP) を買っていた、ということもあって、少しは予備知識もありましたし。 最近は、どうなっているんだろう、と、 Kampec Dolores, Sitting On The Buffalo (Bahia, CDB054, 2000, CD) も聴いてみたんですが。確かに良く出来たアルバムなんですが、 勢いというか掴みが、どうも足りないような気がしてしまうんですよね。

ところで、Kampec Dolores のインタヴューの3, 4a のあたりは、RIO (いわゆる「レコメン」ですね)、 もしくは、"progressive rock" と自分たちの音楽が関係付けられることへの違和感を語っているという感じですね。くくく。 こういうことになるのも、彼らのCDの英米でのリリースが ReR Megacorp だということが大きいとは思います。 The Ex なんかも、そうだよなー。 ReR Megacorp や (今はなき) RecRec からリリースされているというだけで 「レコメン!」「プログレ!」ってなってしまう人がいるのは、 日本だけじゃないんだなぁ、と思ってしまいました。

- 弦巻, 東京, Thu Mar 21 0:22:40 2002

Poland の "alternative" な音楽の情報、といえば、 terra.pl。 Wed Mar 20 0:05:05 2002 の発言に関係して、 オンライン・ショップでいろいろチェックしてみました。 まず、Atman 関係のバンド Magic Carpathiansも、 聴けますね。 初期の作品はいまいちかな、とも思いますが、 最新作 Ethnocore 2: Nytu (Drunken Fish, 2001) になると、なかなか良い感じです。ふむふむ。 Milo Kurtis (Osjan) の Milo レーベルの音も聴かれます。へー、Osjan って かなり folk っぽい音なんですね。 Ya-sou の方もそうですが、recorder の音が印象的です。 それから、Elektra Kurtis (Ensemble Elektra) は Milo Kurtis の 妹 (もしくは姉) だそうです

久々に terra.pl をチェックしていて気になったのが、 Koka レーベル。 Warsaw, Poland を拠点に活動する Ukraine の音楽を扱うレーベルで、 在英 Ukraine 系の Pete Solowka (ex-The Wedding Present) のルーツ指向なバンド The Ukrainians のライセンス盤もリリースしているようです。で、 Svitlana Nianio, Kytytsi (Koka, 1999) がとても良い感じですね。ジャケットを含めて。く〜。 The Wedding Present は大好きだった (音楽趣味履歴話の Fri Aug 18 0:47:49 2000 の発言とか) ので、 The Ukrainians も1990年代前半はそれなりに追いかけてたりしたわけですが。 そっかー、こういう展開になっていましたかー。 思わず、ウクライナ語での The Smiths のカヴァー集 The Ukrainians, Pisni Iz The Smiths (Cooling Vinyl, FRYCD023, 1992, CDS) とか発掘して聴いてしまったり。

- 弦巻, 東京, Wed Mar 20 0:05:05 2002

Lollipop Shop は、 Ole Lukkoye (from St. Petersburg, Russia) や Korai Orom (from Hungary)、 Atman (from Poland) といった、 東欧のバンドを紹介している Germany のレーベル / ショップです。 (メールによると、最近、Warsaw, Poland へ転居して拠点を移しているようです。) Ole Lukkoye を コンピレーション・シリーズ Tell Tschaikowsky The News (Exotica) で聴いたことがあるくらいだったので、 Korai Orom のサイトで 新作アルバムの抜粋 MP3 を聴いてみたのですが、リズムとかくっきり良い感じですね。 Atmanここで を聴いてみたんですが、けっこう面白いかも。folklore な楽器使いもいいんですが、 Anna Nacher の歌唱が psychedelic というより gothic な感じで。 Magic Carpathians も気になるなー。ふむふむ。 しかし、Ole Lukkoye にしても、Korai Orom、Atman にしても、 Lollipop Shop は "psychedelic" と言っているけど、 そんなに「サイケ」な音じゃないような気がします。

Lollipop Shop の カタログを観ていて気になったのは、 Cracow, Poland の folk-influenced jazz のバンド Osjan。 Ya-sou feat. Tomasz Stanko and Osjan, Tribute To Don Cherry (Gowi, GCD40, 1996, CD) というリリースもあるようですが。percussion 奏者の Milo Kurtis が自身のレーベル Milo を立ち上げているようで、このレーベルが気になります。 って、4タイトルしかリリースが無いわけですが、 Ensemble Elektra がかなり良さげです。ちなみに、 ここ でMP3が聴けます。 メンバーに、 Brad JonesReggie Nicholson が参加してるしー。 新作CDの 準備もしているようです。 新作が出たら、旧作も合わせてCDを取り寄せてみようかしらん。 ところで、Osjan の Milo Kurtis と Ensemble Elektra の Elektra Kurtis って、 親戚とかそういう関係なのでしょーか。 参考までに、Osjan を紹介する記事 Anna Kosowska, "Osjan: (Musical) Notes From the Underground" (The Warsaw Voice, 1998/8/23)。 この記事を書いている Kosowska って、 Yass の紹介記事 "Nice Yass" (The Warsaw Voice, 1999/1/31) を書いていた人です。 ちなみに、関連するレヴュー

- 弦巻, 東京, Sun Mar 17 23:07:10 2002

Libra Music がらみで、 Wed Mar 13 23:42:29 2002 には Greece の、 Thu Mar 14 23:20:16 2002 には Macedonia の音楽の話をしたわけですが、 続いて、今度は、Armenia。といっても、Armenia を拠点に活動しているわけでなく、 欧米で活動する Armenia 系のミュージシャンによる音楽ですが。 Night Ark, Petals On Your Path (EmArcy (Greece), 546 616-2, 1999, CD) と、 Arto Tuncboyaciyan / Ara Dinkjian, Onno (Libra Music, LM011-2, 1998, CD) の紹介音盤雑記帖へ。

Arto Tuncboyaciyan は実はけっこう好きなミュージシャンで、Night Ark にも参加している Marc Johnson との Right Brain Patrol での Right Brain Patrol (JMT, 849 153-2, 1992, CD) と Magic Labyrinth (JMT, 514 018-2, 1995, CD)、 それに、Hank Roberts, Little Moter People (JMT, 514 005-2, 1993, CD) と、 JMT に彼が参加した良い録音がけっこうあります。 もっと最近の録音だと、 Maria Pia De Vito / Arto Tuncboyaciyan / Rita Marcotulli, Triboh (Polosud, PS026, 1998, CD) が大好きなんですが。これもいずれ紹介したいなぁ、と思いつつ、 紹介するタイミングを逸し続けてます…。

- 弦巻, 東京, Thu Mar 14 23:20:16 2002

Wed Mar 13 23:42:29 2002 の発言で、 Greece の Libra Music レーベルが、 Macedonia のミュージシャンも紹介している、と書いたわけですが。 そんなわけで、気になる Macedonia の音楽について。 Kocani Orkestarが、 それだけが Macedonia じゃない、というか。といっても、 Macedonia は Tamizdat のエリア外、 という感もあって、なかなか情報も無く、音盤入手も難しいんですが。

で、Macedonia といえば、まず思い浮かぶのが、 来日したこともある (知ってましたが行きませんでした…) Dragan Dautovski (Libra Music の録音にもいくつか参加してますね。) 率いる DD Synthesis です。 彼らが拠点にしているのが、 SJF Records です。 このレーベルは、Skopje Jazz Festival がらみのレーベルですが、 フェスティヴァルの方のラインナップも、かなり興味深いです。

Libra Music から2枚のアルバムをリリースしている Anastasia は、 映画 Before The Rain (Milcho Mancheviski (dir.), 1994) のサウンドトラック (PolyGram, 1994) で知られるわけですが、 これには、DD Synthesis の Dragan Dautovski も 参加してます。 Anastasia の拠点の Macedonia のレーベル Third Ear は、 Greece の Libra Music とパートナー的な関係にあるようですが、 CMP や MA Recordings からリリースのある Miroslav Tadic もリリースしていたりして。このレーベルも気になりますね。

Anastasia で検索していて、 Macedonian Underground Music Archive なんてサイトをみつけてしまったり。 ま、こんな感じで Anastasia は jazz というより rock 的なバックグラウンドを持っています。 Anastasia のリーダー Goran Trajkoski のインタヴュー記事 (in Central Europe Review) も興味深い (影響受けたのが、Joy Division、Killing Joke、Future Sound Of London、Biosphere ですが…) のですが、 "Global Music, Local Trends" という記事も、 この手の音楽が出てくる背景として "Balkan conservatism" を指摘していて興味深いです。 この記事では、 Anastasia と並んで、Bulgaria の Isihia というバンドが出てきますが、 2001年の8月には、Anastasia、Isihia、そして、Greece のバンド Avatonジョイントコンサートを開催したり。 Avaton は、Goran Trajkoski のインタヴュー記事の中で、 中東欧の地域でのフェバリットなバンドとしても挙げられてますが、 その時は解散したような口調だったり…。 並んで挙げられている Stereonova というバンド (from Athens, Greece) も含めて、 こういう gothic-Byzantine ethnic rock (笑) なバンドのネットワークも気になります。

しかし、検索していて、 Bulgarian Music Guide ってページをみつけたんですが。 一部、Macedonia のミュージシャンも混ざっている、というのも興味深いわけですが。 Isihia も Anastasia も、contemporary pop でも rock でも modern world music でもなくて、 の Fairy Tale Trio と一緒くたに other だし…。ま、そんなもんか…。 他の国のリストを見ると、 取り上げられているだけまし、のような気もします。

- 弦巻, 東京, Wed Mar 13 23:42:29 2002

さて、週末に仕込んでいたものですが。 音盤雑記帖の更新は、 Greece の jazz (tzaz) 特集、ってほどでも無いですが、 Vangelis Katsoulis, Silent Voyage (Libra Music, LM021-2, 2001, CD) と、それに合わせて入手した少し前のリリース Andreas Georgiou, Vananda (Libra Music, LM016, 1998, CD) のレヴューです。 Arild AndersenEberhard Weber のような参加ミュージシャンからして、「Greece の」を強調するようなものでもないんですが。

これらのCDをリリースしているのは、 Libra Music という1995年から活動している Greece のレーベルですが。 post-ECM と言いたくなるような folk-influenced jazz というか jazz-influenced world music をリリースしていて、興味深いレーベルです。 それも、Greece のミュージシャンだけでなく、 Arto Tuncboyaciyan & Ara Dinkjian (Night Ark) や Djivan GasparyanHaig YazdjianNor-Dar のような Armenia (もしくは Armenia 系) のミュージシャンや、 Dragan Dautovski (DD Synthesis) や Anastasia のような Macedonia のミュージシャンも紹介しているし。

Greece の jazz といえば、 Sakis Papadimitriou と Floros Floridis が昔 (といっても1970s末頃から) 有名なわけですが。Papadimitriou や、今回紹介した、 Vagelis KatsoulisAndreas Georgiou の1980年代の拠点だった レーベル Praxis を運営し、 Praxis Festival を組織していた Costas Yiannoulopoulos は死んでしまったようで、 Various Artists, In Free Fall: A Tribute To Costas Yiannoulopoulos (Libra Music, LM017-2, 1999, 3CD+book) という追悼盤が出ていたようですね…。 紙の2001年カタログには載っているのですが、 限定盤だったようで、既にオンラインのカタログから消えてますが…。 リリース当時に知っていれば、買ったのに…。 ちなみに、このリリースについて、Libra Music は こう言ってます

A CD will be released in the memory of colleague and friend, Costas Yiannoulopoulos. All musicians that performed in th PRAXIS FESTIVALS will participate in the recording to pay tribute to the man that opened the way for alternative and non-popular music in Greece. It will be released on the 17th of November 1999.

しかし、そんな Praxis レーベルの再発を LeoGolden Years が始めてますね。 (Papadimitriou 繋がりかしらん。) Sun Ra や Art Ensemble Of Chicago、 Famoudou Don Moye / John Tchicai / Hartmut Geerken の音源が出てますが。 Greece のミュージシャンの音源の再発、というか、 Golden Years of Greek Jazz という企画もやって欲しいなぁ、と思ったり。

今は Praxis は活動していないようですが、 Floros Floridis や Sakis Papadimitriou の音源は、 Ano Kato が主にリリースしてますね。Floridis 、Papadimitriou や Okay Temiz (Don Cherry との共演で知られる Turkey の打楽器奏者) の関連の Ano Kato のリリースは、Germany の jazz / improv レーベル FMP が配給してます。 Ano Kato のリリースする音源については、Greece の jazz 雑誌 Jazz & Tzaz特集を組んだことがあったようで、 Floridis 、Papadimitriou 、Temiz 以外のミュージシャンも気になります…。 そう、Jazz & Tzaz の "Tzaz" というのは、 ギリシャ語で jazz ことのようですが、 Greece のある種の jazz を指す言葉のようで、その違いも気になります。

folk / Byzantine / Rebetica のリリースが多い Greece の比較的規模の大きいレーベル Lyra も、folk-influenced jazz / improv. の音源をけっこうリリースしてます。 Arild Andersen や Marcus Stockhausen が参加した Vangelis Katsoulis, Through The Dark (Lyra, ML0624, 1997, CD) なんかも、とても気になるわけですが。これは未聴。 Greece からは Floridis しか参加していないですが、 The Black Sea Project, The Black Sea Project (Lyra, ML0660, 1998, CD) という興味深いCDが出ています。 黒海沿岸諸国のその筋では有名ミュージシャンが一同に会した感のある顔ぶれです。 上で触れた Floridis や Temiz の他、world music ブーム最初期の1990年前後に Hannibal から紹介された Bulgaria の Ivo Papasov、 Turkey の Okay Temiz Magnetic Band のメンバーだった故 Ergun Senlendirici、 Russia の Tri-O の Alexander Alexandrov、 の Moldova の Trigon の Anatol Stefanet、 の Crimea Tatar / Ukraine の Enver Izmailov、 1980年代から Leo が紹介してきた Romania の Harry Tavitian、 って錚々たる面子です。こんだけ揃っていると、知らない Nariman Umerov (Ukraine) と Zurab Gagnidze (Georgia) が どういうミュージシャンなのかが気になります…。 このプロジェクトのプロモーターは Creative Music of Eastern Europe ですが、 過去の記録を見ていると、 の Bulgaria の Fairy Tale TrioAnatoly Vapirov / Theodosii Spassov / Stoyan Yankoulovの Russia の VolkovTrio の Vladimir Volkov が参加していたときもあったようですし。 で、現在は、Black Sea Trio というか。

と、汎黒海ネタにもなったし、話題にそれなりに連続性もあるので (とか言ってると、収拾付かなくなる気もしますが…。)、 Greece は中東欧ではないですが、 一緒に抜粋しておきましょうか。

- 弦巻, 東京, Sun Mar 10 21:30:27 2002

ネタはそれなりにあるのですが、仕込みの時間がなかなか取れないこの頃。 今週末の音盤雑記帖の更新は、 Russia の folk influenced な rock / pop バンドというか world music バンドの Farlanders特集です。 Sergey Kalachev の bass もカッコいいんだけど、 なんといっても、Inna Zhelannaya の歌声。素敵〜。く〜(萌)。かなり好みです。 これは、いちど、ライヴを観て見たいですね。く〜。 どこかが日本に呼んでくれないなしらん。 Farlanders は、以前から、 MP3 で 聴いてとても気になっていたバンドだったのですが、 なんとなく、どうせ買うなら Russia 盤と思っていたところもあって、 JARO 盤に手を出さずにいたのでした。 で、同じく GreenWave レーベルを拠点に活動する VolkovTrio のCD (レヴュー) を注文するときに、一緒に注文したのでした。 CDで通して聴いたら他の曲も良くて、ますます気に入ってしまいましたよ。く〜。 今回の注文した中では、VolkovTrio よりも Farlanders の方がハマりました。

Farlanders をまず一枚、というなら、やはり、 Inozemets (Farlanders) (GreenWave, GRCD-99-1, 1999, CD) です。"A Song Without Words" と "Easter Song" を ここ で是非聴いてみて下さい。気に入ったら、 Moments: Live In Germany (GreenWave, GRCD-2000-2, 2000, CD) に聴き進むのがよろしいかと。 JARO 盤であれば、入手は容易だと思います。 今は、Germany をツアー中のようですが、早く次ぎのアルバムが出ないかなぁ〜。 Mari Boine / Inna Zhelannaya / Sergey Starostin, Winter In Moscow (JARO, JARO4235-2, 2001, CD) も、"Das Aiguun Cuozzut" とかかっこいいんだけどなー。全体としてはとりとめない感じも…。 Vodorosl' (General, GR95056CD, 1995, CD) は、そんなに出まわることのない Russia 盤ですし、 Zhelannaya に萌えてしまった人が頑張って手に入れる、というCDだと思います。

ところで、The Rough Guide: World Music Volume 1; Africa, Europe and the Middle East (Rough Guides, ISBN1-85828-635-2, 2000, book) の Russia の章 (執筆は、Simon Broughton と Tatiana Didenko) は、 伝統的意味での folk の紹介が主で、僕にはあまり参考にならないのですが。 GreenWave レーベル界隈について、"New Russian" という節の後半一コラム分 (半頁) くらい使って紹介しています。 この界隈の音楽が英米でどう紹介され、評価されているのか垣間見れるので、 翻訳して引用してみます。 (引用に出てくる Sasha Cheparukhin は、GreenWave レーベルの人です。) 人物名の綴りがちょっと変 (標準的な翻字でも、 CDなどで用いられている Latin 文字での表記でも無い) のが気になりますが、 引用内では本の表記に従います。

フォーク・ロック・シーンで名前が知られているもう一人は、Inna Zhelaniya だ。 彼女も、海外で録音し、ツアーをしてきている。 彼女は古典的なロシアの歌唱法と Joan Baez の精神の間に道を切り開いた。 彼女のバンドのエスニックな美しさは、 特に、様々なフルートやパイプを使った Sergei Starostin による ロシア民族楽器のアレンジによって強調されている。

ロシアでもトップクラスの民族楽器奏者の一人である Starostin は、(ピアノ奏者 Mikhail Alperin とフレンチ・ホルン奏者 Arkady Shilkloper との) Moscow Art Trio のメンバーで歌手、アレンジャーでもある。 彼は、他にも様々な民族混交音楽のプロジェクトに加わっている。 彼が参加したプロジェクトには、Tuva のグループ Huun-Huur-Tu と Bulgaria の女声コーラス Angelite との共演や、多民族グループ Vershki Da Koreshki などがある。

Moscow のワールド・ミュージックのプロモーターである Sasha Cheparukhin はこの新しいシーンに対して楽観的な見方をして、これらの音楽における姿勢の変化と開放性について指摘している。 「かつては、モスクワ的な傲慢さと愛国主義があった。 彼らは John Zorn、Michael Nyman や Nick Cave などに興味を持っていたかもしれないが、ロシアの離れた未開発地域の事には興味が無かった。 実際、私が考えているよりもはるかに、モスクワでは民族音楽に人気がある。 我々は、これらの民族混交音楽のイヴェントで、チャイコフスキー・ホールを満員にしてきた。 音楽の多様性への興味が復活してきていると言えるだろう。

ところで、 The Rough Guide: World Music Volume 1; Africa, Europe and the Middle East は、去年の夏休みの読書ネタに、と、 The Rough Guide: World Music Volume 2, Latin and North America, Caribbean, India, Asia and Pacific (Rough Guides, ISBN1-85828-636-0, 2000, book) と併せて買ったのですが、内容的には今の僕の興味とはかなりズレてました。 想像以上に folk-oriented で、保守的な印象も受けてしまいました。 以前に買った Steve Barrow and Peter Dalton, The Rough Guide: Reggae (Rough Guides, ISBN1-85828-247-0, 1997, book) は、この本につられて買ってしまったレコードも多かったのですが。 World Music の方は、開拓してみたいって程気になる内容でもなくて、少々残念。 (いや、それでいいんですね。あまり、いろいろハマってるわけにいかないですし。) ま、world music 界隈はあまり詳しくないですし、 自分のバイアスを補正するのには使えるかしらん、とは思ってます。

- 弦巻, 東京, Sat Mar 2 23:35:18 2002

今日は、Belgrade, Serbia, YU の electronica 〜 breakbeats の好編集盤 Various Artists, Radio Utopia 4 - Belgrade Coffe Shop (Free B92, CD004, 2000, CD) と、 Various Artists, Belgrade Coffee Shop 2 (Stereo Freeze / Free B92, CD302, 2001, CD) のレヴューを。 Sun Sep 30 23:59:17 2001 の発言で 第1弾の方に軽く触れましたが、去年末にリリースされた第2弾も良かったので、 まとめて紹介してしまいます。「Belgrade の」ということ抜きで楽しめています。 中東欧だから取り上げた、というわけでもありません。

ちなみに、Belgrade Coffee Shop シリーズの先駆である Radio Utopia シリーズを含む Milosevic 時代の Radio B92 の音楽制作に関する話を読むことができます。 参加アーティストで Web サイトを持っているのは、 Vukan (a.k.a. Wolfgang S.) だけでしょうか。 Darkwood Dub も参加した去年の Ring Ring Festivalレポート記事 (in Tamizdat) を。 去年の夏に Darkwood Dub が Kosovo で行ったライヴの レポート (in NIN) というのも発見。

この Belgrade Coffee Shop を聴いていて感じるのは、やっぱり、 Crammed / SSR の名編集盤シリーズ Freezone からの影響。いや、Freezone が直接的に影響を与えたというより、 影響力のある動きを、うまくすくい上げていた、という感じでしょうか。 Freezone シリーズでレヴューしたのは 第3弾だけですが、もちろん、それ以降もずっとフォローしてます。 1990年代に僕が最も影響を受けた編集盤シリーズかもしれません…。 2000年にリリースが無かったので第6弾で終えるのかと思ったら、 去年、パッケージデザインを変えて第7弾がリリースされて、ちょっと複雑な気分も。 シリーズ名も変えて再出発しても良かったのでは、と。 1998年の第5弾くらいから house 色が濃くなったように思うのですが。 Moving House シリーズと合わせて、 Versatile (レヴュー) や Playhouse (レヴュー) に典型的に聴かれるような house の動きをうまくまとめていたのかしらん、と思うところも。 Underground Sound Of Lisbon, Etnocity (Emarcy (Portugal), 159 617-2, 2000, CD) にしても同じ傾向な音だと思うし。 Russia の Alexey Borisov (ex-Notchnoi Prospekt) の レーベル Exotica の編集盤シリーズ Tell Tschaikowsky The News も、同じ傾向だと思うし。 かなり流行っているのかなぁ、と思うところも。

- 弦巻, 東京, Mon Feb 25 0:01:09 2002

「あー、なんか、無性に Volkovtrio が聴きたくなってしまったんですけど。」と、 Thu Jan 10 23:20:20 2002 に発言したわけですが。そのときに、思い立って、 Solyd レーベルの Andrej Gavrilov に直接、メールでコンタクトを取ってしまいました。 当初は Solyd のCDのみを注文するつもりだったのですが、 結局、GreenWave レーベルとの仲介の労まで取ってくれました。 今まで、決済は郵便小為替かクレジットカードかだったのですが、 今回初めて海外銀行口座への送金を使いました。 うーん、手数料的にも手間的にも一番コストがかかりました。 やっぱ、よっぽどでない限り、この方法は使いたくないですね。うむ。 ま、これを機会に、以前から気になっていたCDをいろいろまとめて注文したんですが、 入手したCDについては少しずつ紹介するということで、まず、 今週末の音盤雑記帖の更新は、 VolkovTrio 関連の音盤を一気に紹介してしまいます

最初の録音は、VolkovTrio & Arkady Shilkloper, Fragment (Solyd, SLR0131, 1998, CD) は最も jazz 的。 Shilkloper も好きですし、 VolkovTrio 名義の3枚の中では、最も気にいった作品だったり。 続く VolkovTrio, Much Better (GreenWave, GRCD-99-1, 1999, CD) は、 ゲストは幅広いけど、過渡期的だったのかなぁと感じるところも。3枚目は、 Sergey Starostin & VolkovTrio, Once There Was Sun (GreenWave, GRCD-2000-1, 2000, CD) は、programming / sampling がもっと洗練されていればとても良いのに、という感じです。 VolkovTrio 名義ではないですが、 Leonid Fedorov / Vladimir Volkov / Slava Kurashov, Zimy Ne Budet (No Winter To Come) (Manchester File, CDMAN049, 2000, CD) のテンションの高さ、かなり好きです。 今回紹介した中では、Fragment に続いてお勧めです。 Auktyon / Vladimir Volkov / Slava Kurashov Zimy Ne Budet (No Winter To Come) (O.G.I., no cat. no., 1999, CDS) は、シングルだしマニア向けしょうか。 Auktyon & Leonid Soybelman, Nebo Napopolam (Sky In Halves) (Proforma, 1999) の音源とかと併せて、 Leonid Fedorov, Anabena (Ulitka, U0001, 2001, CD) というCDになっているようなのですが、これは入手できていません。く〜。 Kolibri, Trio!. (Tri Kita, no cat. no., 2001, CDS) も、先日紹介した Kolibri, Remiksy (Remixes) (Gala, GL10074, 1998, CD) よりは気にいってますが。アルバムに発展させて欲しいなぁ、と思ってます。

- 弦巻, 東京, Wed Feb 13 22:45:39 2002

Mon Feb 11 22:27:39 2002 の発言で、 Brian Eno について、「Russia 方面に何らしかのコネがあったりするんでしょうか。」と 書いたわけですが、それに関する The St. Petersburg Times の記事を発見。Sergey Chernov, "London Calling" (1998/3/2-8) です。 どうやら、Brian Eno 夫人の Anthea Norman-Taylor が、キーマンのようですね。

- 弦巻, 東京, Tue Feb 12 23:39:55 2002

レスポンスが付いた勢いで、rock に限らず、 Russia の同時代的な音楽に関するリソースをリストアップしてみました。 ま、それほど積極的ではないものの、前から少しずつは情報収集はしていたので、 自分が主に参考にしているものをまとめてみた、って感じです。 といっても、僕の聴いている音楽全体からすると、Russia の物はほんの一部ですし、 特に力を入れて情報をフォローしたり網羅的に聴いたりしているわけではありません。 僕が聴いたことのある数少ないCDや、ウェブサイトなどで参照できる情報など、 限られた情報に基づいて書いているので、勘違いがあるかもしれません。 追加情報や訂正のコメント、大歓迎です。

まず、音楽に関する情報収集の基本は、レーベルに関する情報、というわけで、 ちょっと気になる Russia のレーベルのリストを作ってみました。 rock / pop / electronica / folk / jazz / improv. / contemporary classical など、スタイルや出てきた文脈は様々ですが、西欧の同時代的な音楽に負けない 興味深い同時代的な音楽をリリースしているレーベルを取り上げてみたつもりです。 リストの順は、書いているときに思いついた順で、深い意味はありません。

Boheme
Andrey Foefanov の運営する Moscow の jazz のレーベルです。 主流のミュージシャンや Army Brass Band から folk-influenced な jazz / improv. まで。 rock や variety singer 物もあって、Soviet 時代の再発も多いです。 タイトル数も多いです。 新録に関していえば、Russia のレーベルにしては録音が良いです。 個人的には、 Mikhail AlperinArkady Shilkloper、 (Russia 外になりますが) Enver Izmailov (Crimea Tatar / Ukraina)、 Trigon (Moldova) といった post-ECM を感じさせる folk-influenced jazz / improv. が、お勧めです。
Long Arms
Moscow の Cultural Center DOM のディレクターでもある Nikolai Dmitriev が設立したレーベルで、 Russia で最も free jazz / improv. 色が濃いレーベルの一つだと思います。 Leo レーベルがリリースしていた 1980年代の jazz / improv. の音に比べて、 electronica や folk の影響も大きくなっているように思います。 Vershki Da Koreshki, Real Life Of Plants (Long Arms, CDLA9602, 1996, CD) や Ensemble 4:33 & Nete & DJ Kubikov, Falls (Long Arms, CDLA9706, 1997, CD) のようなリリースは、 1990年代ならではだと思います。
GreenWave
Alexander Cheparukhin の運営する Moscow のレーベルです。 VolkovTrioThe Farlanders のような、 folk influenced な jazz というより、もう少し rock / pop 寄りの音、 という意味で、西欧で言うところの world music に近い音を リリースしているレーベルです。 world music のプロモーションもやっているようです。
Exotica
Alexey Borisov (Notchnoi Prospekt, F.R.U.I.T.S., Volga, Sergey Letov とのプロジェクト, etc) の運営する Moscow の electronica 〜 breakbeats のレーベルです。 Tell Tschaikowsky The News シリーズは、 Freezone の Russia 版という感もある好コンピレーションです。 Faust と交流のある Ole Lukkoye がリリース第一弾だったり、 Muslimgauze と交流のある Species Of Fish のリリースや、 Sa-Zna (Leo Lab からリリースがある) と F.R.U.I.T.S. の共演盤があったりと、ちょっと一癖あるように思います。
Art-Tek
IDM (intelligent dance music) の傾向が強い Moscow の techno レーベルです。 主催している Solar X (Worm Interface からもリリースがある) をはじめ、 Fizzarum (Domino からリリースがある)、 SCSI-9 (Force Tracks からリリースがある)、 EU (Various Artists, Ru.Electronic (Lo Recordings, LCD22, 2001, CD) の選曲) など、Russia 外のレーベルでも活躍するアーティストが多いです。
Cheburec
DJ Klutch が運営する St. Petersberg の新興 techno レーベルです。 IDM 系で、Moscow の Art-Tek に近いように思います。 PCP、EU、Tenzor といった St. Petersburg のアーティストの 最近の拠点になっています。
Fono / ElektRus
St. Petersburg の electronica のレーベルです。 Russia 外でのリリースが多い New Composers (Novi Kompositori) の Russia 盤のリリースの他、 EU、Species Of Fish、Parks、Messer Chups あたりのリリースがあるようです。
Feelee
Tequilajazzz や 初期の Kolibri とかを リリースしている Moscow の indie rock / pop レーベルです。 dance 物もそれなりにあるように思います。 比較的大手のレーベル、という感じで、 カタログを見ていると、英米の indie rock / pop band の Russia 盤を、 それなりにライセンスリリースしていたりもするようです。
Triarios
ラテン文字表示では、Triarii、Triarij というのもよく見かけます。 主に Boris Grebenshikov & Aquarium 関係の音源をリリースしている St. Petersburg のレーベルです。 他にも、Kolibri とか Nastya Poleva とか Atas とか、女性のミュージシャンに強いという印象もあります。
Solyd
Andrej Gavrilov の運営する Moscow のレーベルです。 rock / pop から jazz や classic まで、幅広く扱っているようです。 しかし、dance 物は少ないように思います。 Soviet 時代のもののリイシューも多いです。
Manchester Files
Bomba-Piter というレコードショップが運営している St. Peterberg のレーベルです。 rock / pop や dance 物から classic まで、幅広く扱っているようです。 しかし、jazz / improv. は少ないように思います。 PCP の主催していた techno 〜 breakbeats のレーベル Perforated は このサブレーベルです。 Soviet 時代のもののリイシューも多いです。
Leo
Russia ではなく England の jazz / improv. のレーベルですし、 Russia 音源専門のレーベルではないですが、 1980年代 Soviet 時代から Russia の "New Music" を紹介しているので、外せません。 The Ganelin Trio や Sergey Kuryokhin などの録音を多く残しています。 最近の Russia ものについては、ちょっとリリースは低調な気もしますが、 自身でリリースする代わりに Long Arms レーベルの配給を始めたようです。

他にも、アルテミー・トロイツキー 『ゴルバチョフはロックが好き? ― ロシアのロック』 (菅野 彰子=訳, 晶文社, ISBN4-7949-5080-2, 1991, book; Artemy Troitsky, Back In The USSR, 1987) に出てくるような、1980年代から活動している比較的名の知れた rock のバンドについて調べていると、 SNC、Moroz / General といったレーベルが目に付きます。 どうやら、rock のリイシューやアンソロジーのリリースが多そうですが、 最近の面白そうな音を紹介しているわけでも無さそうな感じもします。 SNC は Moscow の Stas Namin Center の運営する レーベルです。 (ちなみに、Stas Namin は、Russia で最も成功した pop / rock のミュージシャン / プロデューサと言われているらしいです。 Stas Namin Group として1980年代に来日したこともあります。)

もちろん、情報源はレーベルに関するものだけでないわけで、 インターネット上にある Russia の音楽関係のリソースの中から、 お勧めのものを、ここで一緒に紹介しておきます。 (ロシア語が読めないので、主に英語もしくは日本語で書かれているものです…。) やはり、リストの順は、書いているときに思いついた順で、深い意味はありません。 これについても、他にお勧めのオンラインショップや情報サイトがあったら、 是非教えて下さい。 もちろん、内容の誤りなどの訂正のコメントも歓迎です。

Tamizdat
Prague, Czech と New York, USA を拠点に活動している 中東欧の独立系レーベル、ミュージシャンをネットワークする非営利組織のサイトです。 扱っている音楽は、国もジャンルは様々です。 もちろん、Russia はもちろん、旧ソ連・東欧の国々の音楽を扱っています。 オンラインショップもあります。 ただし、Russia 物に関していえば、品揃えが薄いようにも思います。 コンテンツ等は全て英語、USD でクレジット決済できます。 価格設定が低めなのが嬉しいです。
RBC
US にある Russia の音楽を専門に扱っているショップです。 品揃えは幅広く広く、かなり良いように思います。USD でクレジット決済ができます。 Tamizdat よりCD単価も送料も高めですが、 対応も早いですし、注文の状態の確認もできますし、 Tamizdat よりサービスは良いように思います。 オーダーでのやりとりは英語ですが、紹介記事などのコンテンツはロシア語です。 CDのミュージシャンやタイトルもラテン文字に翻字せずに キリル文字のまま扱っているものが多いので、 検索の際にカットアンドペーストで入力する、とか工夫が必要なのが難です。
Sergey Kuryokhin International Festival (SKIF)
Sergey Kuryokhin を追悼して、1997年に始ったアニュアルのフェスティヴァルです。 最初の2回は New York で開催されましたが (第1回は Knitting Factory で)、 現在は、St. Petersburg で開催されています。 扱っている音楽については、サイトの言葉を引用しておきます。

"Music performed defies stylistic and aesthetic boundaries. It both draws upon and challenges accepted notions of jazz, rock, classical, ethnic, world etc."

参加ミュージシャンのリストは、 新たに聴いてみようというミュージシャンを選ぶ際の参考になります。 ちなみに、2001年の SKIF-5 に関しては、 一部がMP3で聴かれます。 あと、Tamizdatレヴューも。
Creative Music of Eastern Europe
中東欧の folk-influenced な jazz / improv. の文脈から出てきた ミュージシャンをメインにネットワークする Germany の音楽プロモーターのサイトです。 もちろん、Russia のミュージシャンに関する情報もあります。 このサイトや TamizdatSKIF のサイトなどを見ていると、 この手の音楽のシーンは一つの国に閉じたものではないことを実感します。
mU project
Russia の techno / electronica のレーベルである Art-Tek レーベルや、 その界隈のアーティストの拠点となっているプロジェクトのサイトです。 Russia の techno / electronica シーンの情報を集める起点の一つです。
Av@ntart / Music
Germany の Russia 文化情報サイト Av@ntart の音楽コーナーです。 ドイツ語のものもありますが、英語で書かれたコンテンツも多いです。 classical / jazz / world music 寄りでしょうか。 Long ArmsSolyd といったレーベルを紹介するコーナーもあります。
Russian Indie Music
1995--1998 の間に運営されていた、Russia の indie rock / pop に関する 英語による情報サイトです。 運営していた Slava Borisov が New York に引っ越してしまったため、 現在は更新が止まっていますが、当時の記録として公開されています。 今から見ると若干情報は古くなっていますが、 インターネット上に音楽情報がまだまだ少なかった頃に 同時代的に発信された情報が載っているので、とても興味深いです。
Jazz in Russia
Boheme が運営する Russian jazz の情報サイトです。 ほとんどのコンテンツがロシア語なのが難点ですが、 英語のコーナー もあって、そちらも参考になります。
The St. Petersburg Times
St. Petersberg で発行されている英語の新聞です。 一般紙ですが、Art + Features 欄に、音楽に関する情報がよく載っています。 Sergey Chernov による記事、特に、音楽コラム Chernov's Choice がお勧めです。
Russian Ultimate Band List
UBL (今は Artist Direct) の Russia 版なのでしょう。 コンテンツが全てロシア語で、固有名詞くらいしか判らないので、 ミュージシャンへのリンク集程度にしか使えていません…。
Bliss Records
NY, USA における Russia の "independent" な音楽に関する情報を 提供しているサイトです。 名前に反して、レコードはリリースしていないようです。 SKIF のコーディネートとかしているようです。
Most Records
Hamburg, Germany で Russia の "independent" なミュージシャンの プロモーションやCDの企画・配給をしている会社のサイトです。 (自身のレーベルからのリリースは無いように思われます。) ミュージシャンの紹介などのコンテンツは全てドイツ語です。
Prospect Mira
日本発の日本語による Russia の音楽に関する情報のサイトです。 pop / rock が中心ですが、それなりに充実していると思います。 日本盤のリリースや Russia 盤の通販もしているようです。 (ここから買ったことは無いので、どんな感じかはわかりません…。)
ロシア・ソ連の音楽 - 情報リソース
スラブ・ユーラシア研究 ウェブ・ディレクトリの中の、Russia の音楽に関するディレクトリです。 classical music や、ある程度評価の定まった popular 音楽が中心で、 最近の音楽動向については弱い気もします。基本、ということで。
鈴木 正美 Homepage
和光大学のロシア文化研究者によるサイトです。 音楽のコーナーがあります。 1980年代の Leo や 今の Long Arms が扱うような free jazz / improv. に偏ってますし、 1990年代に入ってからの動きはほとんど扱っていませんが、 1990年前後頃までの状況については参考になるように思います。

やっぱり、Russia をはじめ中東欧の音楽については、日本語での情報は少ないです。 しかし、英語であればそれなりに情報があるので、 英語のコンテンツを厭わず追いかけていくことを、お勧めします。 あと、ロシア語 (もしくは他の東欧の言語) がちゃんと理解できなくても、 キリル文字の音価を知っていれば、固有名詞や西欧からの外来語は理解できるので、 簡単な情報収集程度であればなんとかなることも多いです。 ちょっと音楽を聴いてみるという程度の目的であれば、 ロシア語等を本格的に勉強する必要は無いと思いますが、 キリル文字の音価とラテン文字への翻字法 (例えば、LC翻字表) くらいは覚えておくと、何かと便利でしょう。

- 弦巻, 東京, Mon Feb 11 22:27:39 2002

Russia の音楽って言っても、 jazz / improv. 関係のものばかり聴いてるわけじゃありません。 というわけで、今週末の音盤雑記帖の更新は、 去年の夏に紹介した Various Artists, ElektRus (What's So Funny About, SF163, 1999, CD) のフォローアップ、ということで、これに参加していた Deadushki取り上げてみました。 ま、electronica 〜 breakbeats 物、というより、rock / pops 物ではありますが。

ペレストロイカ期に、Dave Stewart (Eurythmics) の制作の Radio Silence (CBS, 1989) で英米デビューしたこともある AquariumBoris Grebenshikov の共演盤 Boris Grebenshikov & Deadushki (Feelee, FL3142-2, 1998, CD) は、ま、ベテランなりに頑張っているのかなぁ、とは思います。 1980年代にやっていたスタイルの延長でやっているよりは、ずっと良いと思います。 って、Aquarium も Strannye Igry も1980年代の音源は手元に無かったりしますが…。 1980年代の彼らの関連音源を持ってるかなぁ、と、手持ちのレコードをいろいろ見てみたら、 Sergey Kuryokhin & Boris Grebenshikov, Subway Culture (Leo, LR402/403, 1985, 2LP) と、 Victor Sologub (Strannye Igry 〜 Deadushki) が参加した Sergey Kuryokhin, Introduction In Pop Mechanics (Leo, LR146, 1986, LP) というのが。もちろん、オリジナルのLPは持ってなくて、それらを収録した Sergey Kuryokhin, Divine Madness (Leo, CDLR813/816, 1997, 4CD) を持っているわけですが。

で、Deadushki が Grebenshikov の remix を手掛けていることを伝えた当時の 記事 で、最後に軽く取り上げられているのが、 KolibriRemiksy (Gala, GL10074, 1998, CD)。 ま、Deadushki 以外にも remix を手掛けてますが。 Kolibri は、去年の夏から気になっているバンドで、 他にも少しずつCDを入手して聴いてみているんですが。 このアルバムはいまいちですねー。荒削りなオリジナルの方がかっこいいかも…。 VolkovTrio をバックに従えた、 Trio! (Tri Kita, no cat.no., 2001, CDS) の方が、trip hop 的にずっと良い仕上りかなぁ、とも思いますし (これは、また別の機会に紹介するつもりですが)。

Deadushki 関連の2枚は、お勧め、って程じゃないんですが。 ElektRus 関連で聴いた中では、良かった方かなぁと感じているので、 軽く紹介しておこうかなぁ、と取り上げてみました。 ElektRus の中では、Novi Kompository 名義ですが、 やはり1980年代から活動している (Kolibri, Remiksy にも参加してますね)、 New ComposersSmart (FAX+49-69/450464, PS08/95, 1999, CD) も聴いてみたんですが。ambient techno の類じゃなくて。 どうも keyboards の演奏が野暮ったく感じられてしまいました。うみゅー。

ElektRus 所収の "Hypnotized Snowman" を収録した Messer Fuer Frau Mueller, Allo, Superman! (What's So Funny About, SF164, 1999, CD) は、日本盤もリリースされているようで。 モンドな感じで愛でられているのかなぁ、とも思いますが。 特にノリが良いわけでもないので、瞬間芸っぽさも感じてしまいます。 ところで、このCD、クレジットに Special Thanks to Brian Eno for the provision of Makintosh あったりします。New Composers, Smart にも、 Special Guest: Brian Eno (実際は、共演というほどのものでなく、 サンプル提供と技術サポート、ということのようです。) ってありますしね。 Brian Eno は、かって、Moscow の rock バンド Zvuki Mu のアルバム Zvuki Mu (Land, LAND07, 1989, LP) を制作してたこともありましたし (聴いたことはないですが)、 Russia 方面に何らしかのコネがあったりするんでしょうか。ふむ。

ところで、ElektRus をリリースしている What's So Funny About からの Russia 関係の音源というと、 Popularnja Mehanika feat. Westbam, Live In Riga (What's So Funny About, SF57, 1987, LP) ていうのもあるんですよね。LP はまだカタログに載ってます。 1987年と Soviet 時代の録音ですし、Kuryokhin と Westbum 以外の面子も気になります。 CD化されていれば、聴いてみるんだけどなぁ。 あと、カタログを見ていると、Russia じゃなくて Ukraine ですが、 Various Artists, Novaya Scena: Underground From Ukraine (What's So Funny About, SF133, 1993, CD) という編集盤もあるようなんですよね。アンダーグラウンドってどっち方面? 検索していても、レヴューとか見当たらないので内容が全く不明ですが。 ちょっと気になります。

- 弦巻, 東京, Fri Feb 8 23:42:27 2002

Thu Jan 10 23:20:20 2002 の発言で、 Golden Years of Soviet New Jazz, Volume I (Leo Golden Years, GY401/404, 2001, 4CD) について言及したわけですが。結局、 Volume II (Leo Golden Years, GY405/408, 2001, 4CD) も買ってしまいました。 750セット限定 (そのうち販売されるのは500セット) というのに負けてしまいましたよ。 ま、4枚組で GBP25.00 (5000円弱) って廉価だったってこともあるんですが…。 全4〜5巻になる予定 ってあるけど、多分全部揃えてしまうような気がします…(弱)。うむ。 ところで、なんと、 Document: New Music From Russia; The '80s (Leo, CDLR801/808, 1989, 8CD) って、800セット限定だったのかー。 やっぱり、再リリースの予定ないんですね。ふむ。 Golden Years of Soviet New Jazz シリーズにも、 Document からの音源は一切収録しないようです。

Volume II は、Volume I に比べてマニアック、というか、 知名度が低いミュージシャンが並んでいますね。ふむふむ。 まだ、ざっと飛ばし聴きくらいしかしてませんが。 CD1 の Vladimir Rezitsky & Jazz Group Arkhangelsk や CD2 の Orkestrion よりも、 electric / electronic 度の高い CD3 の Mikhail Chekalin や CD4 の Petras Vysniauskas の方が好みでしょうか。ふむふむ。 ところで、CD3 の Mikhail Chekalin だけ、 Document: New Music From Russia; The '80s box set に収録されていない 初耳のミュージシャンだったのですが、1980年代から1990年代半ばまで ほとんど他のミュージシャンと交流を持たずに活動していた人なんですね。 へー。最近注目されるようになったのでしょうか。 他にも、Concerto Grosso #1 (Boheme, CDBMR009169, 2001, 1CD) という1989-92の録音のアンソロジーがリリースされているようです。うむ。

そういえば、サイト Jazz in RussiaGolden Years of Soviet New Jazz, Volume I のライナーノーツ Alex Kan, "Golden Years Of Soviet Jazz: A Brief History Of New Improvised Music in Russia" が掲載されています。それなりに興味深いですし、 買わなくてもインターネットで読むことができる、ってことで、参考までに。

で、その文中に "samizdat"、"magizdat" という言葉が出てきます (以下に引用)。

The "second culture", as we proudly called ourselves in those days, functioned along its own rules and norms and managed even to create a infrastructure of its own, complete with festivals, concerts, theater performances, film screenings, literary, art, film and music journals, samizdat and magizdat. If samizdat stood mostly for banned books, painstakingly multiplied on carbon copies paper with the help of a regular typewriter, magizdat - from magnitofon, a tape recorder, meant tape copies of subversive protest songs and later rock.

なるほど、旧ソ連・東欧 (旧共産圏) において、"samizdat" というのは非合法の地下出版物、 "magizdat" というのは非公式・非合法の音楽テープのことを指す言葉だったのですね。 気になったので、ちょっと調べてみたのですが、 Jonathan Coopersmith, "Information Technology and the Fall of the Soviet Union" (IREX Alumni Symposium, 1999) によると、 他にも "Roentgenizdat"、"videoizdat" なんていうのもあるんですね。 ("Roentgenizdat" って「ろっ骨レコード」のことですね。) ふむふむ。 中東欧の独立系レーベル、ミュージシャンをネットワークしている Tamizdat という非営利組織があって、 さんざん、情報収集や音盤購入のお世話になってるわけですが。 その名前の由来はわかってませんでした。 しかし、"tamizdat" というのは、地下出版物やそれに類するものを意味する言葉なのでしょうね。 確かに、活動内容からして、そんな感じがします。 しかし、"-izdat" というのはどういう意味で、 "sam-" や "mag-"、"Roentgen-"、"video-" ではなく "tam-" だと、 どういう意味になるんでしょう? もし判る人がいたら、教えて下さい。

- 弦巻, 東京, Sat Feb 2 0:55:42 2002

最近、Russia の音楽をよく聴いていることもあって、Soviet Russia の rock に関するドキュメンタリー本 アルテミー・トロイツキー 『ゴルバチョフはロックが好き?: ロシアのロック』 (菅野 彰子=訳, 晶文社, ISBN4-7949-5080-2, 1991, book; Artemy Troitsky, Back In The USSR, 1987) を読んでみました。 というか、出たばかりの頃に一度目を通したような気もするんですが、 その当時はレコードで音を追いかけたりしなかった (できなかった) せいか、 内容は全く頭に残ってませんでした…。 1987年に書き上げられた本だけあって、 同時代的な動きを追うには全く参考にはなりません。 しかし、インターネットとかで最近の動きなどに興味を持った今読むと、 名前くらいは知っているアーティストも多く、 なるほど当時はこういう活動していたのか、という感じで、 Soviet 時代の rock や jazz の様子を垣間見るには興味深く読めました。

ちなみに、この本に出てくるバンドで、現在の同時代的な音楽シーンと関係してくるのは、 1970年代末から1980年代にかけて出てきた「ニュー・ウェーブ」 (と、トロイツキは呼んでいる) のバンドあたりからでしょうか。名前を挙げると、 Aquarium (Bois Grebenshikov)、 Strannie Igri (a.k.a. Strange Games) 〜 Avia、 New Composers (a.k.a. Novi Kompositori)、 Auktyon (Leonid Fedorov) といった、Leningrad (現 St. Petersburg) から出てきたバンドや、 Moscow の Notchnoi Prospekt (Alexey Borisov)、 UfaDDT などがそうです。 Kino (Victor Tsoy)、 Zoopark (Maik Naumenko) (共に Leningrad のバンド) なんかも、Tsoy や Naumenko が死んでなかったら、 今でもそれなりに活躍してそう、って感じもします。

ところで、この本、アーティスト名はカタカナ表記だけだし、 レコードや曲のタイトルも日本語訳された題だけで原題は無し。 ロシア語/キリル文字表記を併記していないので、 ここからさらに先に進む資料としてはほとんど使えないように思います。 ま、この本だけでなく、日本盤がたいしてリリースされていない 海外の音楽を紹介する日本語の本や雑誌でも、 こういうことはありがちなわけですが、どうしてこういうことするんでしょうね。 固有名詞をカナ表記だけにするなんて、情報を失うだけのことだと思うですが…。

- 弦巻, 東京, Mon Jan 21 23:49:48 2002

Thu Jan 10 23:20:20 2002 の発言で、「まだ入手できてません…。」って書いたら、 その週末には小包が届いたりして。というわけで、 東欧というか Bulgaria の folk-influenced jazz / improv. の新しい動きを 垣間見ることができる2枚、 The Fairy Tale Trio feat. Enver Izmailov, Ultramarin (Kuker Music / Creative, KM C05, 2001, CD) と Zig Zag Trio, When The Bees Are Gathering Honey (Kuker Music / Creative, KM C04, 2000, CD) を紹介します。 Kuker Music は最近活動し始めたばかりの Sofia, Bulgaria のレーベルですが、 ジャケットのセンスもなかなか良くって、今後の展開が楽しみですね。 ちなみに、Tamizdat で買うことができます。

しかし、録音の良し悪しに関していえば、 Kuker Music が悪い、というよりも、 Boheme がとても良いようにも思います。 Arkady ShilkloperHornology (Boheme, CDBMR809016, 1998, CD) や Pilatus (Boheme, CDBMR906063, 2000, CD) にしても、 いい機材があっての作品だと思いますし。 Enver Izmailov Trio, Minaret (Boheme, BMR902037, 1999, CD) がとても気にいったので、 Burhan Ocal & Enver Izmailov, Black Sea - Kara Deniz (Unit, UTR5001, 1992, CD) とかも入手してみたんですが。演奏というより音作りがどうもいまいち、 って感じでしたし。

あと、Zig Zag Trio の Peter Ralchev の バイオグラフィーに、 "Stiyan Karstensen" って人名が出てくるわけですが、これは、もちろん、 Farmers Market の Stian Carstensen ですね。 おそらく、オリジナルのバイオグラフィのテキストがブルガリア語で ラテン文字からキリル文字に翻字して表記していたものを、 英語に翻訳した際にラテン語に再び翻字したため、こうなったんでしょうね。くくく。

- 弦巻, 東京, Thu Jan 10 23:20:20 2002

先週金曜晩の頭痛+嘔吐が風邪のピークだと思ったら、まだまだでしたね。 今度は、火曜の晩、水曜と38度以上の熱で寝込んでしまいましたよ…。うー。

で、本や雑誌を読んだり、テレビやパソコンに向かう気力も無くて、 布団にくるまって静かに音楽を聴いてたんですが。 去年末に買ったはいいけど、たいして聴かないままになっていた、 Golden Years of the Soviet New Jazz, Volume 1 (Golden Years / Leo, GY401/404, 2001, 4CD) を通して聴いてたんですが。 ちなみに、収録されているのは、ほぼ1980年代の録音です。 CD1の Vyacheslav Guyvoronsky / Vladimir Volkov が、なかなか良いじゃあないですか。Guyvoronsky は として。 Volkov が参加したCDを他にも持ってますが、こんなに良いと感じるとわ。へー。 あー、なんか、無性に Volkovtrio が聴きたくなってしまったんですけど。 以前、CDをちょっと探してみたことがあるけど、入手できなかったんですよねー。 ちなみに、CD2は、 Sergey Kuryokhin。 1996年に若くして死んだこともあり、伝説的になっているミュージシャンですが。 他にも Leo のコンピレーション盤とかでいくらか聴いてますが、その限りでも、 悪くないんだけど、凄く良いって感じでもないんですよね…。 CD3は、Sergey Kuryokhin や John Zorn との共演でも知られる女性歌手 Valentina Ponomareva。 意外と普通の jazz vocal が聴けて、おおっ、って感じ。 去年、息子の Oleg Ponomarev のやってる Gypsy folk-influenced なバンド LoykoIn Russia (Boheme, CDBMR008151, 2000, CD) とかに客演してて、Gypsy 女性歌手らしい面も見せたり。ちょっと気になります。 CD4は、最近は Bulgaria に移住して、 Fairy Tale Trio で活躍する Anatoly Vapirov。 orchestral piece なんだけど、ちょっと録音が悪くて辛い気もしました…。 Enver Izmailov との共演盤 Ultramarin (Kuker, KM/C05, 2001, CD) っていうのが出ているんですが、まだ入手できてません…。 うむ、この Golden Years of the Soviet New Jazz シリーズ、 限定だし、廉価 (CD4枚で25GBP=5000円弱) だし、買い揃えてしまいそうな気がする…。 今や絶版になっているらしい、1980年代 Soviet jazz / new music の名アンソロジー Document - New Music From Russia, The '80s (Leo, CDLR801/808, 1989, 8CD) を持っているくらいで、それなりにこの界隈の音は好きなんですが。 この箱も、ほとんど聴くことないしなー。 最近は、インターネットでディスコグラフィや試聴音源を入手できることが多いし、 ほとんど聴きもしない音盤を資料目的だけで買ったりしないように、 とか思ってはいるんだけど…。みゅー。

- 弦巻, 東京, Sun Nov 18 22:18:26 2001

今、Moldova のカンパニー、 Teatrul "Eugene Ionesco"来日してます。 1996年の来日の際の Samuel Beckett, En Attendant Godot の上演の評判が良かったし、 Eugene Ionesco の作品の上演ってなかなか観る機会無いし、ちょっと気になっていたのですが、 都合が合わずに見合わせていたんですが。金曜の晩の都合が付いたので、 一緒に来日していた Moldova の folk-influenced な jazz バンド Trigon のライヴを観てきましたFree Gone (Boheme, CDBMR912115, 2000, CD) もそれなりに気にいってましたし。ライヴ、楽しかったです。 民族衣装を着た小柄な金髪碧眼な女性が片言の英語や日本語を使って司会をしていたのですが、 それがとても可愛かった〜(萌)。

会場で Trigon のCD 3タイトルが売られていたんですが、前から探していたデビュー作 The Moldovan Wedding In Jazz (Silex, Y225046, 1994, CD) だけは無し。うみゅー。最新作、 Glasul Pamantului (The Voice Of My Earth) (Green, 005, 2001, CD) が売っていたので買ってしまいました。しかし、Romania 盤なんて買ったの初めて。 "The Alternative Music Label" とか謳ってますし、 リリースしているレーベルが気になったので、ちょっと調べてみたのですが。 Bucarest にある Green Hours という jazz cafe/club のレーベルで、他に、 Jazz Unit とかリリースしているようですね。うむー。 で、3rd の Free Gone をリリースしている Russia のレーベル Boheme は、それなりに面白いリリースがあるわけですが。 Enver IzmailovArkady Shilkloper くらいしかできていませんね…。うむー。

ところで、Teatrul "Eugene Ionesco" と Trigon は、東京の公演の前は、 前橋芸術週間 に参加していたんですよね。他の海外招聘アーティストは、Macedonia の Kocani Orkestar () ですし。そういうのが好きなスタッフがいるのでしょうか。

- 弦巻, 東京, Sun Nov 11 0:33:12 2001

さて、暫く音盤雑記帖の更新をサボっていたので、 それなりにネタがあったりします。というわけで、少しずつ棚卸。 Besh O Drom, Macso Himzes (Fono (Hungary), FA-082-2, 2000, CD) のレヴューです。 Kocani Orkestar, L'Orient Est Rouge (Cramworld, CRAW19, 1997, CD) が出たとき、 「この "L'Orient Est Rouge" の remix というのも、ぜひやってみて欲しい。」 のようなことを言っていたわけですが。ついに出たというか、やっぱこんなもんかというか。 というか、もっと本格的に挑戦してみて欲しかったです。ま、 Emir Kustrica & No Smoking Orchestra, Unza Unza Time (Rosebud / Barclay, 543 804-2, 2000, CD) (レヴュー) よりは好みかも。 ま、ヨーロッパ各地をツアーしているみたいだし、Fono レーベルでも売上トップだし、 今後の展開に期待したいところです。

ところで、バンドのインフォメーションを読んでいて、 リーダー格の Adam Pettik が Lajko Felix Band や Boban Markovic Orchestra (レヴュー) のメンバーだったというのは、 まあ、納得なのですが。France の alt. rock Noir Desir に (ゲストで?) 参加していたことがあるようですね。へ〜。 Lajko Felix も 666.667 Club (Barclay, 1996) (レヴュー) にゲスト参加してたし、 Akosh S. のような準メンバーもいるわけですが (レヴュー)。 Noir Desir って Hungary 方面に何か強力なコネがあったりするんでしょうか。 それとも、Noir Desir って big in Hungary なバンドだったりして。 ちょっと気になります。

- 弦巻, 東京, Wed Oct 24 0:02:31 2001

昨晩、Yass のような Poland の音楽に関する情報源として、Poland の The Warsaw Voice 誌を、けっこう頼りにしている、と書いたわけですが。 Poland に限らず、中東欧諸国に関するものとしては、 Central Europe Review っていうのもあります。ここには、 Music コーナーもありますし。

昨晩は Yass に限った話をしたわけですが、 Central Europe Review には Yass も含む 1990年代の Poland の独立系の音楽シーンに関する "Rebellion at the Fringes: Poland's independent music scene" という記事もあります。 (この記事の中では、jass と書かれていますが。) この記事の中に出てくる Antena Krzyku は、昨晩紹介した、 Robotobibok, Jogging をリリースしている Vytvorina Om を配給していたり、と、 Poland の独立系レーベルの配給も手掛けている大手独立系レーベルです。 (Tamizdat が、最近、 プッシュしてますね。) Antena Krzyku のサイトがあるのは、 Yass に限らず、folk から electronica まで Poland のアンダーグラウンドな音楽の拠点となっているサイト terra.pl。このサイトも、重要かと。

Sun Sep 30 23:59:17 2001 の発言で Boris Kovac に関する音盤を紹介したときに、 "turbo-folk" という言葉に言及したわけですが。 Central Europe Review には、 この "turbo-folk" についても、Alexei Monroe, "Balkan Hardcore: Pop culture and paramilitarism" という記事があります。 1990年代に入って、Serbia に限らず、旧ソ連・東欧圏からは、 Folk-influenced jazz / improv. や world music 的な pop / rock が どっと出てきているわけですが。その背景を考えさせられるような記事です。

Sat Aug 25 3:05:13 2001 の発言で Russia の electronica について紹介したときも、 The St. Petersburg Times 紙の記事に触れたりしたわけですが。 The St. Petersburg Times にしても、 The Warsaw Voice にしても、 Central Europe Review にしても、 音楽を専門に扱っている新聞・雑誌ではないわけですが。 もともとの得られる情報量が少ないだけに、この手の英語の新聞・雑誌のサイトは、 僕にとっては音楽についての貴重な情報源になっています。 むしろ、音楽専門のメディアでない分だけ、音楽的な内容よりも、 社会的背景などに触れられていることが多く、それが興味深かったり。 ま、こういう英語の新聞・雑誌のサイトは、 音楽をチェックするためだけに読んでいるわけじゃないんですが。というか、特に Central Europe Review なんかは、中東欧やバルカンの社会情勢についてチェックするために 読んでいることの方が多いような…。

- 弦巻, 東京, Mon Oct 22 23:45:51 2001

毎年、アンケートに何か書くとその企画が実現するような気もする (あくまで気のせい) ので、 希望するミュージシャンの所に、東欧の jazz 、 特に Poland の Yass シーンのバンド (Milosc とか) や、 Hungary の Mihaly Dresch や Zoltan Lantos あたり、 とか書いてみました。はたして、来年はいかに。

と、横濱ジャズプロムナードを観た後の Sun Oct 7 1:50:39 2001 に発言したわけですが。 その片方へのフォローアップということで、 この週末の音盤雑記帖の更新は、 Poland の Yass の特集でした。 (って、昨晩は遅くなってしまったので、言及しませんでしたが…。)

僕が Yass について知ったのは、けっこう最近のことで、 The Wire, Issue 190, Dec. 1999 の付録 New Music From Central And Eastern Europe: Tamizdat Compilation Vol.1 (The Wire / Tamizdat, no cat. no., 1999, CD) を聴いたときでした。 このCDに Mazzoll & Arhythmic Perfection や Kury といったバンドの曲が 収録されていたわけですが。 それから暫くして、いきつけのジャズ喫茶で、 Milosc & Lester Bowie, Talkin' About Life And Death (Biodro, BRCD005, 2000, CD) を聴かせてもらったり (今回紹介した中の一枚です)。 で、こういったバンドについてウェブで検索とかするうちに、 Yass と呼ばれるようなシーンが存在するらしい、ということに気付いたのですが。 しかし、正直に言えば、関連するCDを時々買って聴いてみるものも、 とても面白いという程の音でもなく、 音盤雑記帖で紹介することなく 今に至ったわけでした。 ま、最近は、他の音楽もたいして面白いわけでもなし、 談話室でちょっと言及したことだし、 これを機会にある程度まとめて紹介しようかしらん、と。 ま、最近入手した、 Robotobibok, Jogging (Vytvornia Om, CD001, 2001, CD) が、それなりに良い出来だったということもありますが (今回紹介した中の一枚です)。

『ジャズ批評』だと Yass もそれなりに紹介しているかもしれないですし、 日本の紙媒体の音楽雑誌はチェックしてないので見落としもあると思いますが。 ウェブを検索したり、たまに音盤店の店頭をチェックしたりすると、 日本で紹介されている Poland の jazz というと Polonia レーベル界隈 が中心 (というかほとんど全て) という印象を受けます (例えばガッツプロダクション)。 ま、そういう jazz もある、というか、そういうのが主流なのかもしれないですが、 僕の趣味・興味とはちょっと違う、って感じです。 (というか、jazz に関するこういうノリにはどうも違和感が…。) ま、ウェブに情報はあるし、通販で簡単に音盤は手に入るし、 日本語での情報や日本での配給はほとんど期待していないのですが。

というわけで、僕の Yass に関する主な情報源は、現地 Poland のウェブサイトです。 基本は、なんといっても、Yass のミュージシャンの拠点となっているウェブサイト yass.art.pl。 それから、Yass の拠点ともいえるクラブ Mozg のサイト。 しかし、国内向けがメインなのか、ほとんどポーランド語で書かれていて、 固有名詞以外がほとんどお手上げに近い、という難点もあります。 英語での情報としては、現地 Poland の英字紙 The Warsaw Voice のサイトの記事を、けっこう頼りにしています。 Yass の歴史については、31 Jan. 1999 号の、Anna Kosowska-Czubaj, "Nice Yass" という記事が、とてもよくまとまっていて、お勧めです。 今年に入ってからも、4 Mar. 2001 号に、Anna Kosowska-Czubaj, "The Yass Age" という記事があります。 Yass に限らない Poland の jazz の歴史を概欄したいのであれば、 Poland 文化のポータルサイト Culture.plPolish Jazz というエッセーが、よくまとまっているように思います。 こういう記事やエッセーを読んでいると、Poland では、Yass は既にアングラ以上の、 ある程度評価の固まった音楽になっているのかしらん、と思ったり。

Yass の音盤は、主に旧ソ連・東欧圏の独立系レーベルをネットワークしている Tamizdat から買うことが多いわけですが。 Tamizdat は、当初、New York を拠点にしていたんですが、 いつのまに Prague, Czech に拠点を移したようですね。 最後に届いた小包は Prague からで、何だろう? とか思ってしまいました。 ま、扱っているレーベルからして、 New York より Prague で活動する方が何かと良いように思いますが。 Russia の jazz レーベル Boheme も international sales 部門は Prague にあるし。 って、そんな数は多くないですけど、 Prague は旧ソ連・東欧圏の音楽シーンのハブのようになりつつあるのかな、 と、思うところもあります。ふむふむ。

- 弦巻, 東京, Sun Sep 30 23:59:17 2001

10/8の来日公演をどうしよう (って、まだ決めてませんが)、と、 Boris Kovac がらみのCDを聴いていたので、レヴューを書いてしまいました。 それも2枚とも、Yugoslavia 盤。 1999年のNATO空爆。Milosevic 体制が崩壊したのは約一年前の10/6。 入手困難そうに感じますが。けど、既に Amazon 風のオンライン・ショップ Yu4You もあって、CDの入手は容易です。 クレジットカードでUSD決済、CD一枚が10USD以下だったりして、かなりお買い得感が。 小包は Belgrad, YU から送られてきますが、対応は早かったですよ。

紹介した一枚は、Various Artists, Srbija: Sounds Global (Free B92, CD008, 2000, CD)。 こちらは、Boris Kovac よりも、Boban Markovic Orkestar (映画 Underground に出ていた Gypsy band) と、Lajko Felix が聴き物でしょう。 Boban Markovic Orkestar は、今年の Moers Festival にも出演していますし、これからもっと本格的に海外でも活動して欲しいですね。

Free B29 といえば、 1999年のNATOによるユーゴスラビア空爆の際に、閉鎖されて インターネット上に支援の輪が出来たこともあって 一躍有名になった Serbia / Yugoslavia の首都 Belgrade のラジオ局ですが。 実は、CD もリリースしてるのです。 他にもいくつか聴いてみてますが、techno 〜 breakbeats 系の編集盤、 Various Artist, Radio Utopia 4 - Belgrade Coffe Shop (Free B92, CD004, 2000, CD) もなかなか良かったですよ。 SSRFreezone シリーズ みたいな、ambient がかった trip hop 〜 house というか。 The Durutti Columnな guitar をフィーチャーした エンディングの Teget, "Slow Motion Helicopter" がとても気にいったのですが、 アルバムとかリリースしてなさそうだしなぁ…。そのまま消えていってしまうアーティストも多そうですね…。

Boris Kovac, Mirror Of The Voice (Radio 021, 0008, 2000, CD) をリリースしている Radio 021 は、 Yugoslavia 内では、Hungary 系の住民が多い Vojvodina 自治州 の首都 Novi Sad のラジオ局。 CDのリリースといい、 I Live Here のようなプロジェクトといい、 Free B92似たようなこと をしているラジオ局なのですが。やっぱり、いまいち知名度が低いですね…。うむ。 ま、Yugoslavia からのオルタナティヴな新しいor面白い音をチェックするのであれば、 Free B92Radio 021 の2つのラジオ局、 あと、Ring Ring Festival が基本でしょうか。

- 弦巻, 東京, Mon Sep 3 23:52:12 2001

昨日の Taraf De Haidouks + Kocani Orkestarライヴの、 ゲストは、梅津 和時 と、 東京中低域 でしたね。大変失礼しました。 (って、誰に誤りを指摘されたわけでもないのですが…。 ここが関係者の目に触れることはないと思いますが、 それならいいってわけでもないので。) レヴューの方は修正してあります。 初めて名を聞いたバンドだということもあって、 11月の Kocani Orkestar のライヴのゲストと混乱していました…。 へー、こういう編成だったのかー。 なんか、Howard Johnson & Gravity (こちらは tuba ですが) を思わせるコンセプトですね。

- 弦巻, 東京, Mon Sep 3 0:15:36 2001

、 Rumania の Gypsy band Taraf De Haidouks と、 Macedonia の Gypsy brass band Kocani Orkestar対決 共演 @ Shibuya AX を観てきました。 いやー、予想以上の客の入りで、フロアがぎっしりでびっくり。 けっこう若い女性客が多くて、Taraf De Haidouks の年寄りメンバーに 「おじいちゃん、かわいい〜」って客席から声が上がっていたりしました。 Taraf De Haidouks 目当ての客が多かったせいか、 Kocani Orkestar の演奏は良いのに、客の盛り上がりにいまいち欠けたような…。 しかし、狭いフロアなりに三時間踊り続け、手拍子したりや掛け声をかけたりしてたら、 かなりへとへとになってしまいました。うむー。

しかし、この手のバンドの、日本の対バンって、やっぱり、まずは 梅津 和時 なんですかね。ま、妥当な選択だとは思うのですが。もっと若い世代が…。 ブラック・ボトム・ブラス・バンド は、若手となるんでしょうが、初耳だったし、今回のライヴでは どんな演奏するんだか判らなかったんですが…。関西のバンドなのかー。 ま、ステージ上の共演、というのもアリだったとは思うんですが、 もうちょっとやり方があったような気がする…。

Kocani Orkestar は11月にさっそく再来日を果たすようです。 青山CAY (11/6) というハコはなぁ…。 前橋芸術週間 (11/3,4) の方が気になるけど、 この時期は、大道芸等で忙しい時期だし、今回観ているからパスかなぁ…。 なかなか良い gypsy brass band なので、この夏のライヴを見逃した〜、という人は是非。

そういえば、Novi Sad, Voivodina, YU の Boris Kovac & LaDaABa Orchest が来日しますね。って、実は、 前から気付いていたんですが、 10/8 という日付からして、 横濱ジャズプロムナード かなぁ、と思っていたら、違って、 極楽クラブ の企画ですかー。ゲストはやっぱり 梅津 和時 ですか…。 うむー。行くかどうかは、横浜の方のスケジュール次第ですねぇ。 最近、"Tango Apocalipso" を含むベスト盤 Boris Kovac, Mirror Of The Voice (Radio 021, 0008, 2000?, CD) や "The Last Balkan Tango" を含むコンピレーション Various Artists, Srbija: Sounds Global (Free B92, CD008, 2000, CD) を入手してはいたんですが、紹介しそびれていたんですが、そろそろ…。 けど、最新作、Boris Kovac & LaDaABa Orchest, The Last Balkan Tango (Piranha, CD-PIR1573, 2001, CD) は、保留中だもんなぁ…。うむ。

- 弦巻, 東京, Sat Sep 1 0:41:31 2001

Sat Aug 25 3:05:13 2001 の発言で触れた St. Petersburg の女性バンド Kolibri の公式サイトを発見。 一年近く更新が止まって、リンクとかボロボロですが…。 1992年には、Theater festival in Avignon, France (多分 off の方でしょう) にも出てるんですねー。ま、パフォーマンス的要素大きそうですし。 実際、音を聴きたいというより、パフォーマンスを観たい、という気がします。 The St. Petersburg Times 紙の Natasha Pivovarova の Kolibri 脱退に関する記事 (2000/3/24) を紹介したわけですが、 New York 公演を終えて帰ってきたときのインタヴュー記事 (1998/6/26) なんていうのもあったんですねー。 "Kolibri may sing to pre-recorded music, perform in elaborate costumes and star in movies, but these are no Spice Girls." って、紹介の仕方に1998年を感じます。

- 弦巻, 東京, Sat Aug 25 3:05:13 2001

談話室で触れないまま週末になってしまいましたが…。 音盤雑記帖Russian electronica の特集を載せてます。

Lo Recordings といえば、 第一弾の Various Artists, Extreme Possibilities - Lo Recordings Vol.1 (Lo Recordings, LCD01, 1995, CD) やそれから1〜2年の企画は、 1990年代半ばの London 界隈の electronica / post-rock の試みを掬い上げた優れた企画だったと思っています。 確かに、その試みがひと段落した1998年くらいからぱっとしなくなりましたが、 それでも、Thurston Moore, Root (Lo Recordings, LCD11X, 1998, CD) は 好企画だったと思ってますし。 そんな Lo Recordings がリリースした Russian electronica の編集盤が、 Various Artists, Ru.electronic (Lo Recordings, LCD22, 2001, CD)。 いやー、こんなことになっていたとわ。 ちなみに、このCDの主な音源提供元レーベルは CheburecArt-Tek。 で、サイトを巡っていて気付いたのですが、 mU project も拠点の一つで、 Art-Tek のようなレーベルや Solar XEUFizzarum というアーティストのサイトも、ここに作られています。 ここらを基点にドキュメント (ロシア語が多いのが難ですが) を 読んだり試聴したりしていると、いろいろ判って面白いです。

Russian electronica はそれまで全く聴いたことが無かったわけではなくて、 Ru.electronic で選曲をしている EU も収録された Various Artists, ElektRus (What's So Funny About, CDSF163, 1999, CD) というのを聴いてはいました。出てすぐの頃に、 メーリングリスト友達に聴かせてもらい、 それからしばらくして自分でも入手してはいたんですが。 その当時は手がかりもあまりなく、一発企画物かなぁと思っていたところもあって、 それより先に進んでいなかったのでした。もっと早くから探りを入れておけば…。

Ru.electronic をきっかけにウェブでいろいろ調べて気付いたのが、 Anton Kubikov のその後。 Ensemble 4:33 & Nete & DJ Kubikov, Falls (Long Arms, CDLA9706, 1997, CD) に、DJで参加していた Anton Kubikov が今は SCSI-9 で活動していて、 ちょうど Ru.electronic とほぼ同時に入手して 聴いていた Various Artists / Andrew Weatherall, Hypercity (Force Tracks, FT30, 2001, CD) にも収録されていたり。 Falls は Russian free jazz / improv. 寄りの文脈で知った音盤だったですし、 Kubikov は electronica なDJとしては傍流なのかなぁ、と思っていたこともあり、 そこで知ったアーティストの音をこういう形で再び聴くことになるとは、 因果なものを感じてしまいます…。

レヴューの中で、 「St. Petersburg の方が層が厚いのだろうか。」ということをちょっと書きましたが、 Sergey Kuryokhin International Festival のような音楽フェスティヴァルの存在も大きいのかなぁと思ってしまいます。 electronica に限らないもっと幅広い音楽に関するフェスティヴァルですが、 Cheburec や Art-Tek のアーティストの名前もラインナップの中に見えますし。 (むしろ、そういう界隈でみかけなかった electronica のアーティストの名前も 沢山あるのが気になります。) しかし、フェスティヴァルの名前にも冠せられてますが、 ElektRus紹介 にも、Sergey Kuryokhin / Popular Mechanics への言及がありますし、 St. Petersburg の「一部の」音楽シーンではジャンルに依らず伝説的な存在って感じですねえ。うむ。 Popular Mechanics, Insect Culture (ARK, 1985, LP / SoLyd, SLR0108, 1998, CD) なんとか手に入れたいなぁ。

って、「一部の」って括弧で括ったのは、こういった音楽がかの地でもメジャーではなくて 比較的アンダーグラウンドな音楽だろう、ってことが想像されるからなのですが。 もちろん、Ru.electronic に収録されているようなアーティストにしてもそう。 それは Russia に限った話じゃなくて、 Aphex Twin や Squarepusher、Autechre とかその筋では名が通っていると思いますが、 UK のメジャーな音楽かといえば、やっぱりそれは違うと思いますし…。

ところで、SKIF のラインナップに出てくる St. Petersburg の女性 rock バンド Kolibri というのがとっても気になるんですけど…。 1992年には、 Joined concert with S. Kurekhin's "Pop-Mekhanika", Leningrad Film "Two Captains-2" ということですし。どんなことをやったんだろー。 ファンサイトの 扉の写真もけっこう凄いです。 メンバーの一人 Natasha Pivovarova が抜けたようで、新しいバンドでの活動は、 Coutney Love と比較されてたりしますね…。ふうむ。 SKIF での Pivovarova は女性コーラスを従えたりしているようですが。そっちも気になる〜。

- 弦巻, 東京, Mon Jul 30 0:38:46 2001

さて、この週末の音盤雑記帖の更新は、 Sat Jun 30 1:15:34 2001 の発言 (って、もう消えてしまいましたね) で軽く触れた Arkady Shilkloper紹介です。 紹介しそびれていた1stソロアルバム Hornology (Boheme, CDBMR809016, 1998, CD) に続いて、やっと、2ndソロアルバム Pilatus (Boheme, CDBMR906063, 2000, CD) も入手したので。どちらもお薦めです。

ところで、先週末に観に行った、 Vyacheslav Guyvoronsky / Evelin Petrova の duo のライヴレヴューでも、ちょっと言及したのですが。 Shilkloper にしても Guyvoronsky にしても horn を吹いているわけで、 Russian folk で horn って楽器ってポピュラーなんでしょうか。 他の現代的な (rock / dance / jazz / improv の影響を受けた) 試みをしている European folk のアーティストで horn がメインというミュージシャンやバンドって珍しいような気がして。 他にどんなミュージシャンがいますかね。

- 弦巻, 東京, Sat Jul 21 1:30:17 2001

木曜の夜は、新横浜のスペース・オルタVyacheslav Guyvoronsky / Evelin Petrova の duo のライヴ観てきましたChonyi Together (Mouse / Leo, CDLR268, 1999, CD) が 良かったので楽しみにしてましたし。 ちょうど、folk の影響を受けた European jazz / improv. がマイブームだったので、 良いタイミングでの来日でしたね。

しかし、連休前日の晩とか、都心から離れている、とか負要因があるとはいえ、 客の少なさにびっくり。会場関係者と出演者関係者ばかりで、 一般客は僕くらいしかいなかったよう。かなり居心地が悪かったです…。 Sergey Kuryokhin 文脈で入ってきているせいか、 かなり free improv. 方面に偏った告知がされていたように感じていたのだけど。 むしろ、world music や European folk での 現代的な (特に jazz / improv. 寄りの) アプローチに共通する点が多かったし、 そういう音に興味ある人たちにも聴いて欲しかったようにも思ってしまいました。 ま、日本で Kuryokhin 文脈で Russia の音楽を受容している人たちは、 world music 界隈とか眼中に無さそう、というのはありがちのように思いますが…。

一連の日本公演の中で、この日を選んだ理由の一つとして、 Long Arms レーベルを主催する Nikolay Dmitriev の講演があったということもあったのですが。こちらは期待外れ。 日本にあまり伝わってこない Russia の音楽やそれに関連する芸術について、 具体的なミュージシャンやアーティストの名前を挙げたり、 音源や図版などを挙げての話を期待したのですが、 実際は、芸術 (音楽) の分野で散々繰り返されてきたような (つまりクリシェな) 理念的な話に終始したのが大変に残念。 具体的な運動やミュージシャンの名前を挙げて下さい、 と質問しても、はぐらかされてしまったし。 ま、理念とか持ってないと、ポピュラーではない音楽はやってられないだろうから、 そういうのを持っていること自体は構わないのですが…。 やっぱり、イデオロギーと実践は別の話だと思うし。 具体例抜きに「○○の本質とは何か」みたいな話するのは不毛だと思うのです…。

リリースされたばかりの Vyacheslav Guyvoronsky / Evelin Petrova の2nd アルバム Homeless Songs (SoLyd, SLR0288, 2001, CD) が会場で売られていたので、 買ってしまいました。というとこで、 ライヴと併せて紹介。 このCDをリリースしている Russia のレーベル SoLyd って、ちゃんとチェックしてなかったんですが、面白そうなレーベルですね。 Vladimir TarasovSonore レーベルの音源 (関連するレヴュー 1, 2) も、 今は SoLyd からリリースされているんですね。なるほど。なんと、伝説的な Russian New Wave 作品 Popular Mechanics, Insect Culture (ARK, 1985, LP / SoLyd, SLR0108, 1998, CD) が、再発CD化されていたとわ。これ、欲しい〜。ぬおおお。 CompactDisc.Ru英語版が 早く出来ないかなー。見落としがちな旧USSR 〜 Russia の音源の入手も楽になるだろーに。

- 弦巻, 東京, Wed Jun 27 0:04:22 2001

Thu Jun 21 0:31:09 2001 に続いて「今頃、気付きました…。」第二弾。 先日紹介した Taraf De Haidouks, Band Of Gypsies (CramWorld, CRAW24, 2001, CD) に、ゲストで参加している、Bulgaria の clarinet 奏者 Filip Simeonov って、 Norway / Bulgaria 混成バンド Farmers MarketFarmers Market (Winter & Winter, 910 056-2, 2000, CD) にもゲストで参加してますね。(というわけで、補足しておきました。) うむー、どうも、欧州でも、北欧、東欧、バルカン界隈出身の人の名前って、 馴染みがないせいかなかなか覚えられないです。 おかげで、どういうレコードに参加しているミュージシャンか、とか、 その手のチェックが甘くなってしいまいます。いけません。

- 弦巻, 東京, Tue Jun 5 23:45:51 2001

全くノーチェックだったのですが、 彩の国さいたま芸術劇場で フライヤを拾って気付いたのが、6月16日の Farmers Market @ Tribute To The Love Generation。 Winter & Winter からの3rd アルバム Farmers Market (Winter & Winter, 910 056-2, 2000, CD) を レヴューで紹介したこともある Norway folk jazz vs Bulgarian Gypsy music なバンドですね。 ライヴが楽しそうなバンドなので、ちょっと楽しみです。そう、最近、偶然、 Henry Kaiser の北欧企画物 The Sweet Sunny North Vol.1 & Vol.2 (Shanachie, 64057 & 64061) に参加してたことに気付きました。をを。

Farmers Market の 1st、2nd をリリースしていた Kirkelig Kulturverksted からは、 Age Aleksandersen & Taraf De Haidouks, Fredlos - Bob Dylan Pa Norsk (Kirkelig Kurverksted, FXCD183, 1998, CD) なんていう Norway folk vs Romanian Gypsy music なんていう作品も 出ていたりするわけですが (それも Bob Dylan の Norway 語カヴァーという…)。 そんな Taraf De Haidouks が Emir Kusturica 監督の映画 Time Of The Gypsies に出演していた Macedonian Gypsy brass band Kocani Orkestar対決共演ライヴ してしまいます (9/2 @ Shibuya AX)。 Bucarest, Romania での共演ライヴを収録した Taraf De Haidouks, Band Of Gypsies (CramWorld, CRAW24, 2001, CD) が大変素晴らしい内容でしたし。 特に Kocani Orkestar は、今までの2枚のアルバム L'Orient Est Rouge (CramWorld, CRAW19, 1997, CD) と Gypsy Mambo (Materiali Soniri, MASOCD90114, 1999, CD) がきで、 生で観たいと以前から思っていただけに、とっても楽しみです。

嶋田 TFJ 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 馬込, 東京, Wed Dec 1 22:21:42 1999

The Wire 誌の 最新号 Issue 190, Dec. 1999 が届きました。毎年12月号の特集はその年の "Rewind"。 挙げられているレコードのタイトルをざっと眺めたのですが、 今年は不作だったなぁ、と、痛感することしきり…。

さて、今号もおまけのCDがついていました。 New Music From Central And Eastern Europe: Tamizdat Compilation Vol.1 というサンプラー盤です。 Tamizdat というのは中東欧の独立系のミュージシャンやレーベルのネットワーク、 とでもいうべき非営利組織のようです。その Tamizdat が運営している サイトが RPM (Revolution Per Minute) ということのようです。(The Wire 誌の広告で、 10月半ばにサイトがオープンしているのには気付いてはいたのですが。) で、その Tamizdat に参加しているミュージシャンのサンプラーなのでした。 最近、中東欧の音楽がちょっとしたマイブームではあるので、 (たとえば、1, 2, 3, 4) こういう企画はうれしいですね。 Iva Bittova や Sergey Kuryokhin といった知ったミュージシャンの名も見えますが、 ほとんど全く知らないミュージシャンばかりです。 今日の通勤途上にざっと聴いてみたのですが、かなり雑多な音楽が詰まっていました。 ま、西欧の、というか従来の独立系のミュージシャン/レーベルの類型から 大きく外れるものはなかったです。 avant-rock、indie-pop、techno / breakbeats、free jazz / improv.、folk、…。 それはそれでいいのですが、これだという曲が無かったのは、ちょっと残念。 ま、今後に期待しましょう。

嶋田 TFJ 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 馬込, 東京, Wed Sep 15 23:55:44 1999

今年の4月に、Russia の Boheme という jazz レーベルについてちょっと言及したと思いますが、そのレーベルの新譜 Enver Izmailov Trio, Minaret (Boheme, CDBMR902037, 1999, CD) が、大変に良いです。 Mikhail (Misha) Alperin 率いる Moscow Art Trio の作品や、 Arkady Shilkloper のリーダー作とかも悪くはないので、 新譜のリリースに合わせて紹介したいとは思っているのですが。
Russia の free jazz / improv. というと、かつては UK の Leo くらいからしかリリースが無かったわけですが。 Various Artists, Document: The 80's: New Music From Russia (Leo, CDLR801/808, 1989, 8CD box set) という素晴らしいアンソロジーの box set も リリースされていました (現在は廃盤)。この Document に収録されている Sergey Kuryokhin や The Ganelin Trio の音源と、 Boheme からリリースされている音源を 聴き比べてみたのですが、同じ Russia の jazz / improv. ということよりも (A. Shilkloper のように、いずれにも参加しているミュージシャンはいる。)、 やっぱり10年経ったんだなぁ、という感慨の方が…。

それから、やはり、4月にここ談話室で速報したきりになっていた、 Muzsikas featuring Marta Sebestyen and Alexander Balanescu, The Bartok Album (Hannibal, HNCD1439, 1999, CD) についてのレヴューを 書いておきました。今更ながらですが…。 けっこう気にいっているし、今、ちょっと、東欧ものがマイブームなので。

嶋田 TFJ 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 馬込, 東京, Fri Aug 6 1:33:20 1999

Le Mystere De Voix Bulgares (4AD, CAD603, 1986, LP) ですが、4ADの制作ではなく、もともとスイスの Disques Cellier (制作は Marcel Cellier。) からリリースされていたレコードの ライセンスによるリリースです。原題はフランス語なのです。 独立系の場合特に原題を訳さずにそのままリリースすることも多いと思いますし、 23 Envelope のジャケットにしてもイメージ作りには大きく貢献したと思いますが、 単にそれまでの 4AD のセンスでリリースしただけのように思います。 ちなみに、Peter Murphy (ex-Bauhaus) から貰った曾孫コピーテープを Ivo Watts-Russell (4ADのオーナー) が聴いて、 気に入ってリリースしようと思い立った、 という経緯が4AD盤のライナーノーツに書かれていますね。 最初にリリースされたものの録音時期については、 Ivo Watts-Russell によるライナーノーツに 「15年にわたって録音されてきている」とあります。 Volume 2 (4AD, CAD801, 1988, LP) の方は クレジットによると1970s, 80sの録音ですし、 Volume 1 の1986年というリリース年からしても、 同様に 1970s, 80s の録音と考えて良いと思います (確証なし)。 1955年のパリでの公演での録音で西欧でも知られるようになった、 と、言われていますが、Le Mystere Des Voix Bulgares に収録されているのは、その録音ではないと思います。 Bulgaria の web site Etcetra BGArt / Music に、 Le Mystere Des Voix Bulgares に関する 記述があるのですが、

In 1951, the father of Bulgarian concert folk music, Philip Koutev, established the Ensemble of the Bulgarian Republic. His goals was to join the rich heritage of his country's solo folk songs with haromanies and arrangements that highlighted their beautiful timbres and irregular rhythms.

とあり、それまでソロだったフォークソングに 1950年代 Philip Kutev らによってポリフォニーが付けられるようになった、 ということのようです。 Bulgarian song developed his own polyphony which encountered Western harmony in the 20th century. とも言っていますし。

嶋田 TFJ 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 馬込, 東京, Tue Apr 20 23:59:35 1999

ECM からのリリースでお馴染みの Misha Alperin 率いる Moscow Art Trio, Live In Karlsruhe (Boheme, CDBMR809010, 1998, CD) は、 East-European folk meets jazz といった感じですが、 その合わせ方がいかにも ECM 風 というのは偏見でしょうか。 Russia のレーベルからのリリースということで試しに買ってみたこともあるのですが、 他のリリースもちょっと気になります。うむ。
やはり、Macedonia (今、NATOが空爆中の Serbia の隣国。) のレーベルというだけで 試し買いしてしまった DD Synthesis, DD Synthesis (Skopje Jazz Festival, SJF107, 1996, CD) も、folk meets jazz なのですが、 なんかフュージョンぽいのがいまいちに感じます。