Bombes 2 Bal は南仏オクシタニア (Occitania) はミディ=ピレネー地域圏の首都トゥールーズ (Toulouse, Haute-Garonne, Midi-Pyrénées, France) で Lise Arbiol と Aurélie Neuville が結成した 女性4人男性1人 (このアルバム制作時) からなるグループだ。 前作にあたる1stアルバム Danse Avec Ta Grand-Mere (Tôt Ou Tard, 8345 10520 2, 2004, CD) では、オクシタニアの伝統的な音楽とブラジルのノルデスチ (Nordeste, Brasil) の音楽 forro を併せたような音楽を演奏していた。 2007年半ばにリリースされた3年ぶりの2ndアルバムは forro 色や rap/raggae 的な音処理は後退させつつ 多様な folk/roots 的要素を消化した作品に仕上っている。 ノリの良さや勢いは減ったが、音楽性の広がりがそれを充分に補っている楽しい作品だ。
同郷トゥールーズで Bombes 2 Bal 結成をバックアップした Fabulous Trobadors の Claude Sicre が "direction musicale" にクレジットされている (前作も co-réalization にクレジットされていた)。 しかし、このアルバムでは、Bumcello の Vincent Segal (関連レビュー) が réalization artistique にクレジットされており、演奏にも参加している。 この Segal の参加が、新作の音楽性の幅の広がりに寄与したように思われる。
前作の違いで最も印象に残るのは、 Jérémy Couraut の弾く esclòp (voilon-sabot) や réalization artistique もしている Segal の cello の鈍い弦の響きだ。 軽快に弾く "L'Amour, Toujour L'Amour" も良いし、 弦楽器に加えベアルン (Béarn) 地方の伝統的な flute もフィーチャーして tarantella のようなトランス音楽に近い展開にもなる "A L'Ostal" や "Vau Al Horn" も良い。 Bombes 2 Bal のメンバー自身の演奏ではないが、 オーヴェルニュ (Auvergne) 地方やリムーザン (Limousin) 地方の伝統音楽とも似た cabret と accordéon のデュオを挟んだりもする ("Regret Pour L'Enterrement Du Papet")。 ragga/rap 的な音処理が後退しったことも合わさって、 FAMDT (Fédération des Associations de Musiques et Danses Traditionnelles) のレーベル Modal / Plein Jeu がリリースしているコンテンポラリな folk/roots の音楽に近くなっている。
forro 的な要素は後退したが、他のブラジル音楽の要素も聴かれるようになっている。 ゆったりしたリズムに cello か esclòp で berimbau な音でアクセントを加えた "Bienevue À Toulouse" は、guitar のフレーズもブラジル風だ。 "Je Fais La Sieste" の guitar でゆったり刻まれるちょっとreggae 風の後ノリのリズムの曲もある。 こういうゆったりした曲も、女性の歌声もあって可愛らしく、気に入っている。
2nd アルバムに先だって、 Fabulous Trobadors と Bombes 2 Bal が音楽を付けた 音楽絵本がリリースされている。 Fabulous Trobadors と Bombes 2 Bal が合体し、 Bal Indigène に参加していた Jérémy Couraut と Vincent Segal、 さらに子供たち (la Chorale Civique D'Arnaud Bernard) の歌声も加わって、 ちょっと可愛らしくノリ良く賑やかに仕上がっている。 ただ、音楽的には企画物っぽさが強い上に30分余りと短い収録時間なので、 絵本を目当てとするのではないとすると、ファン向けの内容かもしれない。
絵本は44ページで、5歳程度の子供向けとのこと。 物語は Fabulous Trobadors の Claude Sicre が書いている。 言葉はオック語ではなくフランス語だ。 フランスの街に住むアフリカ系と思われる少女 Zaza を主人公として、 その街を舞台とした日常をベースとした御伽話、という感じの内容のようだ (自分のフランス語力は拙いので誤解があるかもしれない)。
この音楽絵本は、Fabulous Trobadors や Bombes 2 Bal が在籍している レーベル Tôt Ou Tard と フランス語翻訳物の文芸書や美術書で知られる出版社 Actes Sud が 2006年に共同で始めた音楽絵本のレーベル Toto Ou Tartare からリリースされている。 現在、Le Quartier Enchantant を含めて全5タイトル出ている。 他のタイトルでは、Françoiz Breut (2タイトル)、Dick Annegarn、Franck Monnet (いずれも Tôt Ou Tard レーベルのミュージシャン) が音楽を付けている。 CDケース大のCDブックの他に、大判の絵本も出版されているようだ。 このような子供向け音楽というと、FAMDT も Modal Pouce というレーベルから Alain Gibert や Patrick Vaillant など folk/roots シーンで活躍する ミュージシャンによる子供向け音楽をリリースしてきている。 Toto Au Tartare はその Tôt Ou Tard 版という感じだ。 フランスではそういう需要が根強いのだろうか。