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フランス (France) の音楽について

2005年11月頃のフランスの音楽に関する一連の発言の抜粋です。 古い発言ほど上になっています。 リンク先のURLの維持更新は行っていませんので、 リンク先が失われている場合もありますが、ご了承ください。 コメントは談話室へお願いします。

[1434] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Nov 1 0:32:02 2005

フランス (France) に FAMDT (Fédération des Associations de Musiques & Danses Traditionnelles。 伝統音楽舞踊協会連合) という フランス各地の伝統音楽や伝統舞踊の協会の連合組織があります。 FAMDT は Modal という出版部門を持っていて、1990年代末からCDもリリースしています。 レーベル主宰 (label dirigé) は 1990年代に Silex レーベルを手がけていた André Ricros です。 そんなわけで、伝統音楽 (musiques traditionnnelles) といっても、 同時代の jazz や rock、electronica の影響も消化した意欲的なリリースも多く、 Silex の後を継ぐレーベルと言えるでしょう。

3年前にも、 Patrick Bouffard, Transept (Modal / Plein Jeu, MPJ111017, 2001, CD) と、 Gilles Chabenat / Edouard Papazian, Le Traité Des Songes (Modal / Plein Jeu, MPJ111025, 2002, CD) を 紹介したこともありますし (関連発言)、 Modal は以前から気になっているレーベルです。 しかし、流通がイマイチ悪いのが難でしょうか。 気になるけど未入手のリリースが溜まってきたので、 いくつかまとめてオーダーしました。

一番の期待は、3年前に1stをレビューした Patrick Bouffard Transept の新作 Second Prélude (Modal / Plein Jeu, MPJ111038, 2005, CD)。 もちろん入手。良いんですが、1stほどハマりません……。期待が大きすぎたでしょうか。 もう少し聴き込みたいところです。

フランス南東部ローヌ=アルプス (Rhône Alpes) 地域圏の南西部 アルデシュ (Ardèche) 県を拠点に活動するバンド Le Syndrome De L'Ardèche は、自称 "Jazz et Traditions Nouvelles du Vivarais et des Cévennes" (ヴィヴァレ地方とゼヴェンヌ地方の新しい伝統音楽とジャズ) を演奏するバンド。以前から ネットで試聴して気になっていたので、 2ndアルバム Mastic Central (Modal / Plein Jeu, MPJ111033, 2003, CD) を入手しました。CDを通して folk な brass band なノリも歌物も楽しめたので、 少し前のリリースですが、レビューを書いておきました。 自主制作の1st Le Syndrome De L'Ardèche (self-published, 2000, CD) も聴いてみたいものですが、直接コンタクト取らないと無理かなぁ……。うーむ。

フランスの地域圏 (région) やその首邑ぐらいだとどの辺りにあるか直に頭に浮かびますが、 さすがに、アルデシュ県やヴィヴァレ地方、セヴェンヌ地方と言われても、いったい何処? という感じです。 ま、県の方は簡単に調べが付くとはいえ、ヴィヴァレやセヴェンヌについては フランス語版 Wikipedia の御世話になりました。いやー、こういう時、Wikipedia は便利です。 ちなみに、Wikipedia での VivaraisCévennes

[1436] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Nov 3 1:51:50 2005

先日のフランス (France) の FAMDT (Fédération des Associations de Musiques & Danses Traditionnelles。伝統音楽舞踊協会連合) のレーベル Modalのフォローアップ。

FAMDT は「新しい伝統音楽」 (nouvelles musiques traditionnelles) の普及を目的とした Planètes Musiques というアーティスト支援プログラムを持っています (来年2006年の支援プログラムに選ばれたアーティストがウェブで発表されています)。 また、2月に Festival Planètes Musiques というフェスティバルを開催しています。 第5回にあたる2005年から開催方法を大きく変えたそうで、今年から、 その出演アーティストを中心に12組の音源を収録したコンピレーション Various Artists, Planètes Musiques: Les Nouvelles Musiques Traditionnelles (Modal / Plein Jeu, MPJ111034, 2005, CD) がリリースされています (2006年もリリース予定はあるようです)。

このコンピレーションも入手してみたのですが、とても面白かったです。 伝統的な楽器を使ったり、伝統的な曲をベースとした演奏をしたりしているのですが、 アレンジが面白いというか。 electronics を用いているものもあれば、improv 色濃いものもあります。 ライヴでは video projection を使っているグループもあるようです。 同時代の音楽の影響も消化した意欲的なフランスの folk の 良いショーケースになっていると思います。 収録されていたグループについて軽く調べたりしたので、 備忘録とリンク集代わりに軽くコメント。

Duo Bertrand en Cie
ブルターニュ (Bretagne/Brittany) の フランス大西洋岸中部ポワトー (Poitou) のマレー (Marais) 地方の、 Thierry Bertrand (cornemuse) - Sébastien Bertrand (accordion) を 中心とする、その地に残るブルターニュ系 (Breton) の音楽を演奏するバンドです。 収録曲 "Suite De Maraichines" は、 saxophone と drums を加えた編成でインストゥルメンタルというとこもあって、 jazz っぽく感じられます。
La Charmeuse De Serpents
フランス中南部リムーザン (Limousin) の cornemuse 奏者 Eric Montbel のプロジェクトの一つ。 収録曲 "Glassery Part 1 / Part 2" (La Charmeuse De Serpents, Ulysse Production, 2005) は、cornemuse / accordion / vielle の甲高い音が奏でる フランス中南部風っぽい waltz 曲です。
Hamon Martin Quintet
ブルターニュの Ewan Hamon (bombarde,etc) と Janick Martin (accordion) を 中心とするバンドです。 収録曲 "La Fontaine Des Amants" (L'Habit De Plume, Coop Breizh, 2004) バックの演奏はリズムの取り方など jazz 風に感じる所もありますが、 歌物で歌い方が全く folk 的です。
Gadalzen
フランス南西部トゥールーズ (Toulouse) (ミディ=ピレネー (Midi-Pyrénées) 地域圏の主邑) を拠点に活動する、オクシタン (Occitan) の音楽をベースとした音楽を演るバンド。 収録曲 "Toulouse - Hecho : 4 Heurs" (Chromatophonies, Discoïdale, 2002) は、インストゥルメンタルですが、 前のめりのアップテンポな曲な所が少々 rock の影響を感じる所でしょうか。
Corou De Berra
コート・ダジュール (Côte d'Azur) というかアルプス (Alpes) 南部の アルプ=マリティーム (Alpes-Maritimes) 県 (県庁ニース (Nice)) の町 Berre de Alpes の混声ポリフォニーのグループ。 収録しているのは楽器を加えた拡大プロジェクト Miédjou によるものです。 コルシカ (Corse) やサルディーニャ (Sardinia) の地声ポリフォニーに比べ、 メリスマも軽めで軽やかなコーラスです。 主に Buda Musique から リリースしてきましたが、 新作はイタリアのレーベル Forrest Hills から出ているようです。
Ténarèze
フランス南西部アルマニャック (Armagnac) 地方 (現ジェール (Gers)、ランド (Landes)、ロット=エ=ガロンヌ (Lot-et-Garonne) の3県の辺り) の伝統音楽をベースした音楽を演奏するバンドです。 収録曲 "Buelta. Dans Le Gaz. Rondeau" は、 いかにも folk 的な演奏に、物音を電子的に弄ったようなチャカポコした音がさりげなくく混じるような曲です。 Auséths (Modal / Plein Jeu, 1999) というリリースがあります。
Kaloomé
カタルーニャ (Catalogne/Catalonia) 語圏であるルシヨン (Roussillon) 地方 (現ピレネー=オリアンタル (Pyrénées-Orientales) 県) の主邑ペルピニャン (Perpignan) のジプシーというかジタン (gitans) のバンドです。 収録曲 "Caravana" (Sin Fronteras, Long Distance, 2004) は、 歌物 ですが、nuevo flamenco に近い印象を受けます。
Jean-François Vrod
1990年代は Silex レーベルを拠点に活動していた violon (violin に似た伝統楽器) 奏者。 より実験色濃くしているようで、最近は主にCDRでリリースしているレーベル Boxpock を拠点にしているようです。 収録されている "Etirement 2, Du Mol À Dormir" (Faire L'Idiome Pour Avoir Du Son, Boxpock, 2000) は、voilon の立てる音を electronics で弄ったような演奏です。
Khaled Ben Yahia & Dorsaf Hamdani
チュニジア (Tunisia) 出身で現在はリヨン (Lyon) を拠点とする oud 奏者 Khaled Ben Yahia と、 同じくチュニジア出身で現在はパリ (Paris) を拠点とする女性歌手 Dorsaf Hamdani の duo。 Magharebia というマグレブ (Maghreb) のニュースサイトに、 Interview with Dorsaf Hamdani, a Rising Star on the Arab Music Scene (2005/6/10) というインタビュー記事 (英語) が載っています。
YomguiH & Denis Cuniot
Bratsch のミュージシャンらとも共演しているフランスの Klezmer の clarinet-piano duo。 収録曲 "Suite Bulgare" (The Golem On The Moon, Buda Musique, 2004) は piano の響きも少々 classical (impressionistic) な感じです。
Mixel Etxekopar & François Rossé
フランス領バスク地方 (Pays Basque、現ビレネー=アトランティック (Pyrénées Atlantiques) 県の一部) から出てきた伝統的な flute/percussion と piano の duo です。 ほとんど現代音楽といっていい内容です。
Compagnie Léon Larchet
フランス中南部オーヴェルニュ (Auvergne) のバンドです。 収録曲 "L'Anfardeuse" (Entremodes, Cie Léon Larchet, 2003) は、 vielle や cornemuse が弾く旋律はフランス中南部風のように思いますが、 hand drum / frame drum 風の打楽器の使い方がちょっと地中海風に感じられます。

どれも興味深かったですが、特にもっと聴き進めたいと感じたのは、 Duo Bertrand en Cie, La Charmeuse De Serpents (Eric Montbel), Gadalzen, Corou De Berra, Ténarèze, Jean-François Vrod といったところでしょうか。

Modal のコンピレーションといえば、 Various Artists, Musiques À Danser D'En France / Traditional Dance Music (Modal / Thema, MTE114001, 2002, 2CD+book) も入手してみました。 フランス各地だけではなく、ヨーロッパ各地、アフリカや中南米までカバーしています。 収録している曲は本当に伝統的なものから最近のものまでいろいろで、 Planètes Musiques のように焦点が絞れていないという印象も。 ブックレットには各地のダンス音楽の歴史や特徴が写真付きで載っているのですが、 収録されているミュージシャンの解説等は載っていません……。 あと、ジャケットやブックレットは綺麗なのですが、 縦長2枚組デジパック仕様は収納に困るんですよね……。

[1469] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Nov 25 15:23:11 2005

1ヶ月ほど前、フランス (France) の FAMDT (Fédération des Associations de Musiques & Danses Traditionnelles。 伝統音楽舞踊協会連合) のレーベル Modalをしたわけですが、その話のフォローアップ。 (既に消えているので、その発言アーカイヴに載せました。)

フランス中南部オーヴェルニュ (Auvergne) の Patrick Bouffard Transept の新作 Second Prélude (Modal / Plein Jeu, MPJ111038, 2005, CD) に続いて、Transept の女性 vielle 奏者 Anne-Lise Foy 率いる 4tet Tend'M の初CD Tend'M (Modal / Plein Jeu, MPJ111036, 2005, CD) も入手しました。女性3人男性1人という編成で、 いかにもフェミニンなジャケット・デサインだったので、 そういう感じの作品なのかと予想していたのですが、 以外と地味というか硬派な jazz の影響を受けた folk/roots でした。うーむ。 地味とはいえ Transept の新譜も Tend'M の新譜も フランスの新しい folk/roots の佳作でしょう。 併せてレビューを書いておきました。 ちなみに、Tend'M は FAMDT の助成プログラム Planètes Musiques の 2006年助成アーティストに選ばれています。

Various Artists, Planètes Musiques: Les Nouvelles Musiques Traditionnelles (Modal / Plein Jeu, MPJ111034, 2005, CD) がとても面白かったので、 関連盤もいろいろ入手しはじめています。 その1曲目に収録されていた Duo Bertrand en Cie の新作 Couleurs Racines (Duo Bertrand, DBC6168, 2005, CD) も入手しました。 Transept, Tend'M の Lise-Anne Foy もゲスト参加してますし。 しかーし、CD一枚通して聴くとやはり地味かしらん。 Planètes Musiques にも収録された "Suite De Maraichines" が一番よい曲かも……。うーむ。 ところで、1ヶ月にブルターニュ (Bretagne/Brittany) のバンドと紹介しましたが、 間違っていました。訂正します。 自称 "Musiques Traditionalles et de Composition du Marais Breton Vendéen" (ヴァンデ県のブルターュ系のマレー地方の伝統音楽と混成音楽) ということで、 フランス大西洋岸中部、ポワトー (Poitou) のマレー (Marais) 地方 (マレー・ポワトヴァン地方 (Marais Poitevin) とも。 現在のペイ・ド・ラ・ロワール地域圏ヴァンデ県 (Vandée, Pay de la Loire) 界隈) のバンドで、 そこに残るブルターュ系の音楽を演奏するバンドだったのですね。へ〜。 こういう微妙なローカル色が興味深いです。

[1472] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sun Nov 27 21:44:17 2005

フランス (France) 地中海岸プロヴァンス (Provence) の主邑の港町 マルセイユ (Marseilles) の La Plana 地区から出てきたバンド Dupain の待望の新作 Les Vivants (Corida / Bleu Electric / Label Bleu, LBL4012, 2005, CD) をリリースしました。期待以上の充実の出来なので、さっそく レビューを書いておきました。 ちなみに、Dupain については、デビュー作 L'Usina (Virgin (France), 7243 849317-2 8, 2000, CD) のレビューと、2作め Camina (Virgin (France), 7243 812498 2, 2002, CD) のレビューもあります。

新作の特徴の一つはゲストの多さでしょう。 Dupain のフロントマン Samuel Karpienia は1990年代 Gacha Empega というポリフォニーのグループをやっていた (Polyphonies Marseillaises (L'Empreinte Digitale, ED13080, 1998, CD) のレビュー) わけですが、 その盟友 Manu Théron が現在やってるポリフォニーのグループ Lo Còr De La Plana (Es Lo Titre (Nord Sud, NSCD1121, 2003, CD) のレビュー) が参加してます。 Théron が手掛けている Lo Còr De La Plana の妹分的女性ポリフォニー Original'Occitana が参加しているのも、気になります。 彼女らのCDはまだ出ていないようですが、こちらもちゃんと聴いてみたいものです。

Manu Théron コネクションといえば、 イラン (Iran) の zarb 奏者 Bijan Chemirani や クレタ (Crete) の lyra 奏者 Stelios Petrakis の参加は、 Bijan Chemirani, Eos (L'Empreinte Digitale, ED13147, 2002, CD) (レビュー) 繋がりですね。 Chemirani / Petrakis は Dupain のように reggae / rap の影響を受けた音楽をやってきている人達ではないですが、 Eos や Stelios Petrakis / Bijan Chemirani, Kismet (Buda Musique, 860110, 2005, CD) (レビュー) などギリシャ (Greece) を中心に地中海〜中近東に広がる音楽性を持つ 興味深いリリースを続けて来ている人たちですし、 彼らと Dupain がこうして繋がりがあるいうというのも、面白いです。

Dupain の拠点マルセイユは、紀元前600年頃にギリシャ系ポカイア (Phocaea。 現在のトルコのイズミル (Izmir, Turkey) の近く。現トルコ名 Foça) 人の植民市として生まれた街です。旧称 Massilia (マッサリア)、 Cité Phocéenne (ポカイア人の街) という別称もあったりします。 Gacha Empega や Dupain、Lo Còr De La Plana、同郷の Massilia Sound System 等の (re)mixing を手がけてきている La Phocéenne de Dub も 「ダブのポカイア女」という感じの意味です。 マルセイユのシーンには、ルーツの一つとしてギリシャを意識しているのかも、 と思わせる所もあったりします。

ちなみに、ヘロドトス 『歴史 (上)』 (岩波文庫, 青405-2, ISBN4-00-334051-5, 1971; Herodotus, Historiae) には、 「このポカイア人はギリシャ人の中では遠洋航海の先駆者であり、アドリア海、チュルセニア、イベリア、タルテッソスなどを発見したのもこのポカイア人である。 彼らは航海には丸形の船を用いず、五十橈船を用いた」 とあります (巻一:一六三, p.124)。

[1551] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Thu Feb 16 0:30:53 2006

去年10月に続いて、フランス (France) の FAMDT (Fédération des Associations de Musiques & Danses Traditionnelles) でまとめ買いしたのですが、1月末に小包が届きました。 注文の主目的は、2006年版の Various Artists, Planètes Musiques: Les Nouvelles Musiques Traditionnelles (Modal / Plein Jeu, MPJ111037, 2006) を入手するためでしたが、ついでの勢いでいろいろ注文したところ、 カタログとかオマケのCDとかいろいろ付けてくれました。ありがたいことです。 今度の週末 2/17〜19 にパリ (Paris) で開催される Festival Planètes Musique 2006 と 5/11〜6/30 にフランス各地で開催される関連ライヴの フライヤも入っていたのですが、これはフランスまで観に来いということでしょーか。 というか、2/17〜19なんて無理過ぎです……。 もし、観に行くという方がいらしたら、 後でどんな感じだったか教えて頂ければ、嬉しく思います。 さて、2005年版のときと同様に、 2006年版 Planètes Musiques に収録されたグループについて 軽く調べたりしたので、備忘録とリンク集の代わりのコメントを。

Négoce & Signature
Signature は、 カリブ (Caribean) の海外県グアドループ (Guadeloupe) を拠点に活動するバンドです。 リーダーは、accordion 奏者の Négoce こと Reynoir Casimir。 "Voici Reynoir" (Kadri Gwadloup, Buda Musique, 2004) は、アフリカっぽいリズムと accordion の音色の取り合わせが新鮮です。
Joan Francés Tisnèr
Tisnèr は、フランス南西部ベアルン地方 (Béarn。 現在のアキテーヌ (Aquitaine) 地域圏 ピレネー=アトランティック (Pyrénées-Atlantiques) 県東部。 主邑ポー (Pau)) を拠点に1970年代から活動する SSW / diatonic accordion 奏者です。 現在はバンド Verd E Blu を率いる他、プロダクション/レーベル Menestrèrs Gascons を主宰しています。 (ちなみに、ベアルンは広義のガスコーニュ (Gascogne) の一部とみなすこともできるのでしょうが、 別地方とされることも多いです。革命前は独立した州でしたし。) "Ústrias" (12 Recèptas De J. A. Lespatlut, Menestrèrs Gascons, 2004) は、 音数少なめの伝統的な楽器の音を背景に節付きの朗読のような歌です。
Duo Lefeuvre & Diaz
Pascal Lefeuvre は、 フランス北東部シャンパーニュ地方の主邑エペルネー (Epernay, Champagne) の出身で、 1980年前後から活動する vielle à roue (hurdy gurdy) 奏者です。 1992年に vielle によるオーケストラ Viellistic Orchestra を結成したことで有名です。 1990年代前半頃から南西部アキテーヌ地域圏ジロンド県 (主邑はボルドー (Bordeaux)) の カスイユ (Casseuil。ワインで有名な所ですね……) を拠点としているようです。 一方、German Diaz はスペイン (España/Spain) 出身の vielle 奏者で、 Viellistic Orchestra にも参加しています。 "Leo Estante Num Instante" (Duo De Fuego, OpenFolk, 2004) は folk 的でノリの良い vielle の掛け合いです。
Termajik
Termajik は、フランス北西部ブルターニュ (Bretagne/Brittany) を拠点に活動する accordion、clarinet、frame drums に女性歌手の4人組です。 "Deus An Dro Nevez-Amzer" (Termajik, Ciré Jaune, 2001) は落ち着いた感じの曲です。弦楽器や bagpipe / bombarde の類が入らないせいか、 類型的なブルターニュ風の印象は受けません。
Duo Tras
Duo Tras は、フランス中南部リムザン (Limousin) を拠点に活動する Bernard Combi (chant, accordion, guitar, etc) と Dominique Nenete (contrabass) の duo です。 "Los Sinhes" (demo) はメロディというよりこまかく反復する音の織りなす空間に 少々演劇がかった歌唱が乗るという感じです。
Ilyès
Ilyès こと Ahmed Chetiba は、アルジェリア (Algeria) の ベルベル (Berber) 系のサブグループシャウィ (Chaoui) をルーツに持つ歌手です。 "Boy'd" (Voyageur, self-published, 2004) は、舞台作品用の曲のようで、アクを抑えた上品な感じで オケにのってマグレブ (Maghreb) 歌謡風の曲を歌ったものです。
Duo Hiriart - Ithursarry
フランス南西端バスク地方 (Pays Basque。現在のアキテーヌ (Aquitaine) 地域圏 ピレネー=アトランティック (Pyrénées-Atlantiques) 県西部。 主邑バイヨンヌ (Bayonne)) 出身の Kristof Hiriart (voice, percussion) と Didier Ithursarry (accordion) の duo。 "Berterretxen Kantoria" (demo) では、 うねるようなゆったりした accordion に乗って詠唱を聴かせます。
Melonious Quartet
Melonious Quartet は、フランス南東端ニース地方 (Nice。 現在のプロヴァンス・アルプ・コート=ダジュール地域圏 アルプ=マリティーム県 (Alpes-Maritimes, Provence-Alpes-Côte d'Azur)) を拠点に活動する Patrick Vaillant も参加した mandoline のみの4tetです。 Au Sud De La Mondoline (L'Empreinte Digitale, 1998) や En Forme De Poire (Oriente, 2004) といったリリースがあり、 Erik Satie から Frank Zappa まで mandoline だけで聴かせてしまうバンドです。 "Habanera Casalinga" (demo) も調子っ外れた habanera という感じの楽しい一曲。
Laurent Cavalié
Cavalié は、Cyril Roche らとバンド La Fabrique (レビュー) として活動するオーヴェルニュ (Auvergne) の accordion 奏者です。 "A La Bastida" (demo) も、La Frabrique と雰囲気は変りません。
Tend'M
Tend'M はオーヴェルニュの女性 vielle 奏者 Anne-Lise Foy 率いる 4tet です。 収録曲 "Comptinette - Les Vergers" は去年リリースされた Une Musique Trad-Urbaine En Centre France (Modal / Plein Jeu, 2005) からです (レビュー)。
Montanha Negra
Montanha Negra は、フランス南部ラングドック・ルシヨン地域圏オード県 (Aude, Langquedoc Roussillon) を拠点に活動するオクシタン (Occitanie) の音楽を演るバンドです。 cornemuse や hautbois (oboe) と tuba の取り合わせは、 Une Passe Anche や Le Syndrome De L'Ardèche (関連発言) も連想させられますが、 "Polca Magali" (demo) を聴く限り、 男のちょっとがなるような歌もあってもっと泥臭い雰囲気です。

Planètes Musiques はショーケース的なコンピレーションにしては 収録曲にハズレが少いように思うのですが、 残念ながら、2006年版は2005年版よりも新たな発見が無かったように感じました。 Duo Lefeuvre & Diaz, Melonious Quartet, Laurent Cavalié, Tend'M は既に関連盤をそれなりに持っているミュージシャンでしたし。 それ以外でもう少し聴き進めてみたいと思ったのは、 Joan Francés Tisnèr の Menestrèrs Gascons くらいでしょうか。