free jazz 色濃い folk/roots 4tet Niou Bardophones (レビュー) での活動でも知られる フランス (France) 北西部ブルターニュ (Bretagne) の cornemuse (bagpipe, gaida) 奏者 Erwan Keravec のソロ演奏による作品だ。 自作曲が中心だが、 リヨン (Lyon) の ARFI (Associetion à la Recherche d'un Folklore Imaginaire) の創設メンバーでもあり オーヴェルニュ (Auvergne) の folk/jazz 文脈で活動する Alain Gibert の曲を 3曲取り上げている。 folk/roots 的な旋律を聴かせるというよりも、 その旋法から抽象的なフレーズを展開したり、 フレーズよりもその響きで聴かせるような曲が中心だ。 そして少々耳障りな程の cornemuses の響きが楽しめる作品だ。
冒頭の "Nina" や表題曲の1つ "Urban Pipes Part 1" は、 Evan Parker の multiphonic な soprano saxophone のソロを cornemuses で演奏しているかのような曲だ。 けたたましく強く鳴る "Nina" に対し、 "Urban Pipes Part 1" ではむしろ少しかすれたような響きも使っている。 "Urban Pipes Part 2" では弱く淡い響きの中で時々強い音を鳴らし 強烈なコントラストを作り出している。 このような cornemuses の響きそのものを使って音空間を作り出していくような所が、 このCDの面白さだ。
もちろん、Alain Gilbert 作曲曲を中心に、その folk/roots 的な節回しも楽しめる。 といっても、綺麗にメロディを聴かせるという曲ではなく、 trombone 奏者である Gilbert らしいポルタメント (連続的な音程の変化) を 駆使する展開もあるような曲だが。 cornemuses でポルタメントをどう実現しているのか、聴いていて少々気になった。
Niou Bardophones, Air De Rien (Buda, 860115, 2005, CD) のオープニング曲だった "Dansed Breman" (Erwan Keravac 作曲) も、 このCDではいきなりつっ走ることはない。 少々平板さも感じる響きの中から、少しずつ細かいフレーズが増え、 最後に複雑なリズムを持った曲が沸き上がってくるかのような面白さがある。 響きと節回しの両面から楽しめる、このCDで最も良いトラックだろう。
ところで、タイトルの Urban Pipes だが、 その演奏からしても、 jazz/improv 文脈で活動するフランスの contrabass 奏者 Joël Léandre のソロ Urban Bass (L'Empreinte Digitale, ED13041, 1994, CD) を連想させられる。 その pipes (cornemuses) 版という所を意識したCDのようにも思われるのだ。