Savina Yannatou (Σαβίνα Γιαννάτου) & Primavera En Salonica は 1994年にギリシャのテッサロニキ (Θεσσαλονίκη, Ελλάς / Thessaloniki, Greece) で結成された jazz/improv 色濃い folk/roots のグループだ。 Songs Of An Other は ECM レーベルからの3作目にあたる。 セファルディ (Sephardi; スペイン系ユダヤ人) の音楽を再現するグループとして始まったが、 その後、発展的に汎地中海的に folk/roots な音楽を取り上げるようになっている。 今回はアラブやベルベルの曲が無い一方、 アルメニア (Armenia) やカザフスタン (Kazakhstan) の音楽を取り上げるなど、 中央ユーラシアに少々重心をずらした選曲だ。 といっても、音楽性は大きく変わっていない。 抽象的な voicing も聴かせる Yannatou の歌唱、 伴奏を越えて jazz/improv 的展開を聴かせる Primavera En Salonico と 相変わらずの演奏が楽しめる作品に仕上がっている。
ECMからの3作の中では、この作品が最もリズムが控え目だ。 旋律を弾くというよりほとんど抽象的に感じる断片的な楽器の響きが音空間の枠組を作り、 そこに Yannatou のハイトーンの歌が浮遊するような曲が耳を捉える。 "Sareri Hovin Mernem"、"Smilj Smiljana" や "Albanian Lallabye" などは メロディアスで ECM らしい澄んだ音が楽しめる。 しかし、"Dunie-au"、"O Yannis Kai O Drakos" から "Albanian Lullabye" にかけての 音数少なめながらも抽象的な展開にもなる所など、 その緊張感も jazz/improv のバックグラウンドを持つ Primavera En Salonico ならではだろう。
このようなアルバムももちろん良いのだが、 サルデーニャ (Sardegna, IT) の Elena Ledda & Mauro Palmas を共演した Tutti Baci (Lyra, CD1095, 2006, CD) も良かったので [レビュー]、 ゲストを迎えて変化を付けた作品にもまた挑戦して欲しい。
他に、スペイン (Español / Spain) の男性歌手 Michel Gil との共演ライブ盤 En Concert (Galileo, GMCD020, 2006, CD+DVD) というリリースがあるが、これは Michel Gil のライブに客演したという感じのもので、 Savina Yannatou & Primavera En Salonico を期待すると少々残念な仕上がりだ。