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Review: 2562: Unbalance; A Made Up Sound: Shortcuts; Martyn: Great Lengths
2009/12/13
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2562
Unbalance
(Tectonic, TECCD006, 2009, CD)
1)Intro 2)Flashback 3)Lost 4)Like A Dream 5)Dinosaur 6)Unbalance 7)Superflight 8)Yes/No 9)Who Are You Fooling? 10)Narita 11)Love In Outer Space 12)Escape Velocity
All tracks written and produced by Dave Huismans.

オランダのハーグ (Den Haag, NL) を拠点に活動する dubstep のDJ/producer Dave Huismans (aka 2562) が去年の Aerial [レビュー] に続いてCDをリリースした。 レーベルも同じくイギリス・ブリストル (Bristol, England, UK) の dubstep のレーベル Tectonic だ。 硬質な音使いは相変わらずだが、だが鈍く濁った音も耳を捉えるようになり、 前作よりもさらに techno に接近した音作り。 時に minimal に、時に複雑なビートもIDM的に感じる音を聴かせる。 その dubstep に留まらない音世界が良い秀作だ。

最も耳を捉えたのは ”Dinosaur“。 その繊細な高音部のフレーズに淡々と刻むビートは、 1990年半ばの techno - drum'n'bass の最良の部分 (Freezone 3: Horizontal Dancing (SSR, 1996) [レビュー] を思い起こさせられもした。 2562 らしいつっかかるようなリズムの “You/No”、 細かい高音フレーズが走る “Love In Outer Space” も良い。

A Made Up Sound
Shortcuts
(A Made Up Sound, AMS-SHORTCUTS, 2008, CD)
All shortcuts written and produced by a mede up sound in 2004.

その Dave Huismans は別名義 A Made Up Sound のCDも去年リリースしている。 2004年の雨がちな6月の一ヶ月、仕事から帰った晩に毎日1曲作る、というコンセプトで 録音されたものだ。 タイトル無しの20トラックで40分余り。2分程度の短い曲ばかりだ。 すぐにフェイドアウトして終わってしまう曲ばかり。 様々なアイデアでビートを繋いで展開していくような所がなく、 ワンアイデアによるビートによる素描集もしくは断章という趣きだ。 ビートは dubstep 風あり techno 風あり。 そして、その Huismans の硬質で淡白な音使いが断章的な展開に合っている。

Martyn
Great Lengths
(3024, 3204005CD, 2009, CD)
1)The Only Choice 2)Krdl-T-Grv 3)Right?Star! 4)Seventy Four 5)Little Things 6)Vancouver 7)These Words 8)Bridge 9)Elden Street 10)Far Away 11)Hear Me 12)Is This Insanity? 13)Brilliant Orange 14)Natural Selection
All tracks written and produced by Martijn Deykers.

2562 は Tectonic レーベル以外に オランダ・ロッテルダム (Rotterdam, NL) のレーベル 3024 からもリリースがある。 その 3024 を主宰する dubstep の DJ/producer Martyn (Martijn Deykers) も CDをリリースしている。 Martyn も Tectonic からのリリースもあるが、CDのリリースは自身のレーベル 3024 から。 ちなみに、Martyn はロッテルダムからアメリカ・ワシントンDC (Washington DC, USA) に 居を移しているようだ。

~scape レーベルのコンピレーション Round Black Ghosts (2008) に収録されるなど、 2562 に近い作風の dubstep ではあるが、 CDを通して聴いていると 2562 に比べて遥かに温かみを感じる音だ。 ハスキーでソフトな歌声をフィーチャーした “These Words” や、 “Elden St.” など、 ソフトな音作りも micro house 的に聴こえるときもある。 そういう所も悪くはないのだが、 dubstep を期待して聴くと少々滑らか過ぎ、物足りなく感じるときもある。