オランダのハーグ (Den Haag, NL) を拠点に活動する dubstep のDJ/producer Dave Huismans (aka 2562) が去年の Aerial [レビュー] に続いてCDをリリースした。 レーベルも同じくイギリス・ブリストル (Bristol, England, UK) の dubstep のレーベル Tectonic だ。 硬質な音使いは相変わらずだが、だが鈍く濁った音も耳を捉えるようになり、 前作よりもさらに techno に接近した音作り。 時に minimal に、時に複雑なビートもIDM的に感じる音を聴かせる。 その dubstep に留まらない音世界が良い秀作だ。
最も耳を捉えたのは ”Dinosaur“。 その繊細な高音部のフレーズに淡々と刻むビートは、 1990年半ばの techno - drum'n'bass の最良の部分 (Freezone 3: Horizontal Dancing (SSR, 1996) [レビュー] を思い起こさせられもした。 2562 らしいつっかかるようなリズムの “You/No”、 細かい高音フレーズが走る “Love In Outer Space” も良い。
その Dave Huismans は別名義 A Made Up Sound のCDも去年リリースしている。 2004年の雨がちな6月の一ヶ月、仕事から帰った晩に毎日1曲作る、というコンセプトで 録音されたものだ。 タイトル無しの20トラックで40分余り。2分程度の短い曲ばかりだ。 すぐにフェイドアウトして終わってしまう曲ばかり。 様々なアイデアでビートを繋いで展開していくような所がなく、 ワンアイデアによるビートによる素描集もしくは断章という趣きだ。 ビートは dubstep 風あり techno 風あり。 そして、その Huismans の硬質で淡白な音使いが断章的な展開に合っている。
2562 は Tectonic レーベル以外に オランダ・ロッテルダム (Rotterdam, NL) のレーベル 3024 からもリリースがある。 その 3024 を主宰する dubstep の DJ/producer Martyn (Martijn Deykers) も CDをリリースしている。 Martyn も Tectonic からのリリースもあるが、CDのリリースは自身のレーベル 3024 から。 ちなみに、Martyn はロッテルダムからアメリカ・ワシントンDC (Washington DC, USA) に 居を移しているようだ。
~scape レーベルのコンピレーション Round Black Ghosts (2008) に収録されるなど、 2562 に近い作風の dubstep ではあるが、 CDを通して聴いていると 2562 に比べて遥かに温かみを感じる音だ。 ハスキーでソフトな歌声をフィーチャーした “These Words” や、 “Elden St.” など、 ソフトな音作りも micro house 的に聴こえるときもある。 そういう所も悪くはないのだが、 dubstep を期待して聴くと少々滑らか過ぎ、物足りなく感じるときもある。