Toumani Diabaté、Ross Daly など様々なジャンルのミュージシャンと共演している マリ (Mali) の kora 奏者 Ballaké Sissoko と、 Cyril Atef との duo Bumcello で知られる cello 奏者 Vincent Segal による バマコ (Bamako, Mali) 録音の共演作がリリースされている。 ゲストも参加しており、”Regret - À Kader Barry” では griot 風の 歌もフィーチャーされるが、全体としては控えめ。 アコースティックな kora と cello の響きを生かした、ゆったり落ち着く作品だ。
Bumcello でも T-Bone Guarnerius (Label Bleu, 2002) でも electric cello を駆使してきた Segal だが、 この作品ではアコースティックな cello のみ。 それも、たまにプリペアドな音を使うけれども、飛躍のあるフレーズや、強い音を使うことはない。 アルコ弾きとピチカートを交えつつ、少し濁った優しい音で、 細かく刻みながら揺らめくように反復する kora のフレーズに歩みを合わせるように弾いている。 Bumcello での演奏からは意外だったが、この演奏も良い。
“Chamber Music” で聴かれる旋律など Sissoko 作曲の曲に西アフリカのグリオの音楽を思わせる所はあるが、 それほどその色は濃くない。 Segal 作曲の “Oscarine” や “"Ma-Ma" FC” など、 kora の響きは harp か cembalo のように聴こえるときもある。 そんな kora や cello の可愛らしく反復するフレーズは、 ふと Penguin Cafe Orchestra を連想させられたりもした。 Chamber Music という題もさほど外してはいない。 そして、そんな所も、この作品が気に入った所だ。
Chamber Music をリリースしたレーベル No Format は、 Salif Keita のマネージャ Laurent Bizot が Universal Music Jazz France 傘下に2004年に設立。 ノンジャンルとはしているが、やはり西アフリカのミュージシャンのリリースが目立つ。 しかし、この Chamber Music や、 アカペラをベースとした Gérald Toto / Richard Bona / Lokua Kanza: Toto Bona Kanza (No Format, NOF 3 / 981 784 5, 2004, CD) など、 ストレートにポップな world music ではない一癖あるリリースを続けているレーベルだ。
Vincent Segal が参加した作品をもう一つ、併せて簡単に紹介。
インド洋上のフランス海外県/地域圏のレユニオン (Réunion) の女性歌手 Nathalie Natiembé の3作目は Bumcello の2人 Segal と Atef の3人によるもの。 レユニオンの音楽というと Granmoun Lélé などによる maloya が知られるが、 この新作ではほとんど感じられない。 2人を伴奏に Natiembé が歌うというような音作りでもない。 vocals / cello / drums のトリオという対等な関係で、 reggae や funk のビートを取り入れた electric な jazz vocal の作品に近い。 音数は抑えているが緊張感の高い歌と演奏が楽しめる作品だ。
このリリースに合わせて RFI Musique のサイトに掲載された インタビュー記事は、 このアルバムの背景が伺われて興味深い。 この記事によると、レユニオンの Sakifo Music Festival (Karma をリリースしたレーベルの 母体となる2004年に始まる音楽祭) で2007年に共演して以来の関係とのこと。 Natiembé は1970年代育ちで、 好きな音楽として Pink Floyd、Frank Zappa、Led Zeppelin を挙げている。 また、Marvin Gaye や Curtis Mayfield のように歌いたかったとも言っている。