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Review: Ballaké Sissoko - Vincent Segal: Chamber Music; Nathalie Natiembé: Karma
2010/03/16
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Ballaké Sissoko - Vincent Segal
Chamber Music
(No Format, NOF 14 / 532 144-2, 2009, CD)
1)Chamber Music 2)Oscarine 3)Houdesti 4)Wo Yé N'Gnougobine 5)Histoire De Molly 6)"Ma-Ma" FC 7)Regret - À Kader Barry 8)Halinkata Djoubé 9)Future 10)Mako Mady
Recorded at Studio Moffou, Bamako, 2009/5/5,8,10.
Ballaké Sissoko (kora), Vincent Segal (cello); guest: Awa Sangho (lead vocal) on 7; Mahamadou Kamissoko (ngoni) on 3; Fassery Diabate (balafon) on 3; Demba Camara (bolon,karignan) on 2,6,7,8,10.

Toumani Diabaté、Ross Daly など様々なジャンルのミュージシャンと共演している マリ (Mali) の kora 奏者 Ballaké Sissoko と、 Cyril Atef との duo Bumcello で知られる cello 奏者 Vincent Segal による バマコ (Bamako, Mali) 録音の共演作がリリースされている。 ゲストも参加しており、”Regret - À Kader Barry” では griot 風の 歌もフィーチャーされるが、全体としては控えめ。 アコースティックな kora と cello の響きを生かした、ゆったり落ち着く作品だ。

Bumcello でも T-Bone Guarnerius (Label Bleu, 2002) でも electric cello を駆使してきた Segal だが、 この作品ではアコースティックな cello のみ。 それも、たまにプリペアドな音を使うけれども、飛躍のあるフレーズや、強い音を使うことはない。 アルコ弾きとピチカートを交えつつ、少し濁った優しい音で、 細かく刻みながら揺らめくように反復する kora のフレーズに歩みを合わせるように弾いている。 Bumcello での演奏からは意外だったが、この演奏も良い。

“Chamber Music” で聴かれる旋律など Sissoko 作曲の曲に西アフリカのグリオの音楽を思わせる所はあるが、 それほどその色は濃くない。 Segal 作曲の “Oscarine” や “"Ma-Ma" FC” など、 kora の響きは harp か cembalo のように聴こえるときもある。 そんな kora や cello の可愛らしく反復するフレーズは、 ふと Penguin Cafe Orchestra を連想させられたりもした。 Chamber Music という題もさほど外してはいない。 そして、そんな所も、この作品が気に入った所だ。

Chamber Music をリリースしたレーベル No Format は、 Salif Keita のマネージャ Laurent Bizot が Universal Music Jazz France 傘下に2004年に設立。 ノンジャンルとはしているが、やはり西アフリカのミュージシャンのリリースが目立つ。 しかし、この Chamber Music や、 アカペラをベースとした Gérald Toto / Richard Bona / Lokua Kanza: Toto Bona Kanza (No Format, NOF 3 / 981 784 5, 2004, CD) など、 ストレートにポップな world music ではない一癖あるリリースを続けているレーベルだ。

Vincent Segal が参加した作品をもう一つ、併せて簡単に紹介。

Nathalie Natiembé
Karma
(Sakifo Records, 3209732, 2009, CD)
1)Kamasoutra 2)Hkdododansing 3)Margoz 4)Larozwar 5)Mové Lèspri 6)Kafnat 7)Karma 8)Transpapaye
Enregistré, Mixé et Réalisé par Yann Costa.
Nathalie Natiembé (voix, kalbas, guitare), Vincent Ségal (violoncelles électrique et acoustique), Cyril Atef (batterie, percussions, voix fx).

インド洋上のフランス海外県/地域圏のレユニオン (Réunion) の女性歌手 Nathalie Natiembé の3作目は Bumcello の2人 Segal と Atef の3人によるもの。 レユニオンの音楽というと Granmoun Lélé などによる maloya が知られるが、 この新作ではほとんど感じられない。 2人を伴奏に Natiembé が歌うというような音作りでもない。 vocals / cello / drums のトリオという対等な関係で、 reggae や funk のビートを取り入れた electric な jazz vocal の作品に近い。 音数は抑えているが緊張感の高い歌と演奏が楽しめる作品だ。

このリリースに合わせて RFI Musique のサイトに掲載された インタビュー記事は、 このアルバムの背景が伺われて興味深い。 この記事によると、レユニオンの Sakifo Music Festival (Karma をリリースしたレーベルの 母体となる2004年に始まる音楽祭) で2007年に共演して以来の関係とのこと。 Natiembé は1970年代育ちで、 好きな音楽として Pink Floyd、Frank Zappa、Led Zeppelin を挙げている。 また、Marvin Gaye や Curtis Mayfield のように歌いたかったとも言っている。