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Review: Lerner Moguilevsky: Alef Bet
2010/07/20
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
(Los Años Luz, LAL090, 2009, CD)
1)Cohen 2)Beth 3)La Serena 4)Zhok 5)Gipsy Hora 6)Khosidl 7)Libe 8)Slow Hora 9)Una Luz 10)Popurri 11)Aleph 12)Part Of Me
Producción artística: César Lerner, Marcelo Moguilevsky y Javier Tenenbaum. Grabado: 2009/10/13-16.
Céser Lerner (acordeón, piano, percusiones), Marcelo Moguilevsky (clarinete, clarón, flautas dulces, armónica, silbido, voz, piano).

ブエノスアイレス (Buenos Aires) の jazz/improv シーン近傍で活動する multi reed 奏者 Marcelo Moguilevsky と acordeón / piano 奏者 Céser Lerner が1996年以来続けているデュオの7年ぶりの新作 (5作目) だ。 久々のリリースながら音楽性は大きく変わらず。 Klezmer En Buenos Aires とは名乗らなくなっているが、 アルバムタイトルはヘブライ文字の最初の二文字から採られている。 東欧系ユダヤ人 (Ashkenagim) の音楽 Klezmer やバルカン (Balkan) のロマの音楽を思わせる旋律を、 音数少なめながら端正な響きの落ち着いた演奏で聴かせる。スタジオ録音ということで、3作目 Shtil (Los Años Luz, LALD008, 2001, CD) にとても近い雰囲気を持つ作品だ。

この作品では、Lerner が piano を弾いている曲よりも acordeón を弾いている曲の方が耳を捉えた。 太い bass clarinet のベースラインに軽く acordeón のメロディが乗るオープニングの “Cohen”、 acordeón を伴奏に口笛やハーモニカで哀愁を感じるメロディを吹く “Gypsy Hora” や “Slow Hora” のような曲が気に入った。 (Hora はダンス曲という意だが、それほどノリよいわけではない。)

Lerner が piano を使った曲では、Moguilevsky が clarinet を吹いている “Khosidl”、“Popurri“ や “Aleph“ での klezmer 的なフレーズから少々アブストラクトになるような展開が気に行っている。 “Part Of Me”の piano を伴奏で感傷的なメロディを口笛を淡々と吹く所も、 エンディングにふさわしい。 clarinet ではなく recorder (flautas dulces) を吹いている曲 (“La Serena” や “Zhok”) では、 klezmer というより folklore を思わせる所もある。そしてそれも悪くない。

ところで、“Beth” では複数の clarinet によるアンサンブルが聴かれるのだが、 これは、多重録音なのだろうか。