Claire Diterzi こと Claire Touzi Dit Terzi は、 1980年代に folk punk のグループ Forgette Mi Noite で活動を始めた女性歌手。 2003〜4年に Philippe Decouflé のダンス作品 Iris [レビュー] の 音楽を担当し公演ツアーにも同行その音楽を元にしたソロ名義での1stアルバム Boucle (Naïve, NV808011, 2006, CD) [レビュー] で Académie Charles-Cros の Les Grands Prix du disque de la Chanson Française を受賞している。 Boucle 所収の曲 “Infidèle” の videp clip [YouTube] には Iris から抜粋されたダンスが用いられている。
その後の活動をちゃんとフォローしていなかったのだが、 2007年には映画 Requiem For Billy The Kid のサウンドトラックを担当。 その後、2枚のアルバムをリリースしている。最近になって入手して聴いたので、軽くコメント。
このアルバムは10の美術作品 (絵画もしくは彫刻、 作家は Jean-Claude Lardrot, Jean-Honoré Fragonard, Auguste Rodin, J. M. R. Turner, Allen Jones, Camille Claudel, Michal Batory, Doris Salcedo, Henri de Toulouse-Lautrec, Lucian Freud) を取り上げて、それに音楽を付けたもの。 その音楽は Boucle の延長で、 シンプルな打ち込みのリズムとそこに軽く切り込む electric guitar のフレーズに、 Diterzi のファニーな歌声が乗るもの。 Boucle でも聴かれたものだが、 オープニングの “L'Odalisque” をはじめ、この作品ではオーバーダブのコーラスが特によい。
このアルバムがリリースされてから半年余後に、 アルバムに合わせてのライヴの映像を収録した bonus DVD を付けたバージョンがリリースされた。 アルバムは多重録音で制作されているが、ライヴではバックバンドを付けている。 アルバムで特徴的だったコーラスも Diterzi も含めた4人の女性コーラスとしている。 Diterzi のコーラス使いはもともと Le Mystère des voix Bulgares にインスパイアされたものだったというが、 このライブの様子 (bonus DVDに収録されたものではないが 同ツアー中の映像 [YouTube] を見ると、 手拍子や tambourine 等のパーカッションの使い方も合わせ、むしろ南仏の女性コーラスグループ (Bombes 2 Bal [レビュー] や La Mal Coiffée) との共通するところも多く感じられた。 ちなみに、このバックの女性3人はツアー終了後もグループ Les Colettes [MySpace] として活動している。 余談だが、bass の Delphine Ciampi は 岸 恵子 の娘だ。
続くアルバムは自身が主演した舞台作品のための音楽を集めたもの。 演出はアルゼンチンの演出家 Marcial di Fonzo Bo で、 戦間期のドイツで共産党を組織した革命家 Rosa Luxemburg を主人公としている。 Diterzi 演じる Rosa の衣装は Jean-Paul Gaultier が手掛けている。
その音楽は、少々エキセントリックは歌声やコーラスに Boucle や Tableau De Chasse の雰囲気も残しているが、音楽性はより多様。 表題曲 “Rosa La Rouge” [Dailymotion] は重めの音作りだし、もっとソフトでポップな曲もあるし、rap / R&B 的な曲もある。 音だけ聴いていると少々散漫に感じるが、舞台を紹介するプロモーション映像 [Dailymotion] を観ていると、舞台作りに合わせて様々な要素を取入れたのかもしれない。