Dejan Terzic はドイツを拠点に jazz の文脈で活動する drums 奏者。 名前から伺えるようボスニア生まれのセルビア人だが、3歳の時に親と共にドイツへ移住したという。 Chris Speed や Brad Shepik らとの Balkan folk の要素を取り入れた jazz バンド Underground など そのバックグラウンドを意識した活動をする一方、Balkan folk とは関係なく Nils Wogram's Nostalgia のような contemporary jazz での活動もしている。 この Melanoia は後者での活動に連なるもの。
しかし、jazz 色濃い Nostalgia に比べてこの Melanoia は抽象度が高い。 ”SC158” や “Albtraum” のような複合拍子ながら jazz のイデオム強めな中に 四分音ズレていくような音が混じる Root 70 [レビュー] を思わせるような曲も良いが、 オープニングの “Traum Im Traum” など、まるで minimal music だ。 アップテンポの複雑なリズムに負けじと、Hayden Chisholm の sax が複雑なフレーズを繰り出し、 piano と guitar が時にユニゾンでそれに合わせ時にカウンターとなるようなフレーズを出していく “Fuge”、“Melaton”、“Parallel4” のような曲が特に良い。 全体としてひょうひょうとした軽い音色だが、そんな中、ヘビーにディストーションがかった hard rock 的な guitar と drums の “Hot Dream” が異物のように放り込まれている。
リーダーの Dejan Terzic はもちろん、Root 70 の Hayden Chisholm や Michael Moore との 4tet も良い Achim Kaufmann も2000年前後からそれなりにフォローしたミュージシャン。 そんな中では Ronny Graupe はノーマークに近かったのだが、 Henning Sieverts: Symmethree (Pirouet, PIT3061, 2012, CD) [レビュー] など、最近になって気になっている guitar 奏者だ。