ギリシャ・クレタ島 (Crete, Greece) の lyra 奏者 Stelios Petrakis (Γιώργης Ξυλούρης) のライブ音源からなるアルバム。 Bijan Chemirani や Efren Lopez などとの汎地中海的なプロジェクトでCDをリリースしてきた Petrakis だが、 このライブはクレタの若手ミュージシャンからなる Cretan Quartet でのもの。 使う楽器もクレタの伝統的なもので、 打楽器抜きだが、2本の λαούτο [lute] のストロークがリズムを刻み、 lyra や甲高い音の single reed の管楽器 μαντούρα [mandoura] が細かく刻むように旋律を乗せる。 演奏している曲は伝統的なものが多いが、 “Βόρεια Μονοπάτια”、“Πάρε με Νύχτα” (いずれも Orion (Buda Musique, 2008) 所収 [レビュー]) や “Σίβρυτος” (Μαύρα Φρούδια (Μελωδικό Καράβι, 2011) 所収 [>レビュー]) など、 自作曲も演奏している。 Συρτός (Syrtos) や Πεντοζάλη (Pentozali) と呼ばれる伝統的なダンス曲を演奏しており、 ライブということもあるかもしれないが、ノリの良い勢いを感じる演奏だ。

ライブ・アルバムということで、ライブ映像を収録したボーナスDVDが付いている。 μαντούρα と λυρούλα を演奏する Θανάσσης Μαυροκώστας [Thanassis Mavrokostas] は ダンサーでもあって (むしろミュージシャンでもあるダンサーで)、 演奏しつつも、途中で楽器を置いて前に出て踊り出す。 よく聴くとCDにもダンスの際のステップの音も収録されている。 Syrtos、Pentozali などのステップに基づいているようだが、 民族衣装ではなくシンプルな黒い服装で、集団で輪になったりラインになって踊らずソロで踊ることにより、現代的に抽象化されているよう。 そんなダンスのあり方も、このグループの音楽性と合致している。 ライブでのダンスの織り込み方が判って興味深く観ることができたが、 3つのライブからの4曲抜粋で合わせて30分程度という短さは残念。 ライブを通して収録して欲しかった。 (ちなみに、収録された映像は全て YouTube で公式に公開している。)

ダンサーでありながらミュージシャンとしても本格的で、 伝統的な舞踊と音楽をバックグラウンドに持ちつつ現代的なアプローチという点で、 先日ライヴで観たノルウェーの Ulf-Arne Johannessen [レビュー] を思い出した。 Johannessen にしても Μαυροκώστας にしても、 ダンサーはミュージシャン専業より華やかなオーラを感じる。 folk/roots の文脈ではダンサー兼ミュージシャンはやはり多いのだろうか。