2008年に始まった JAZZ ART せんがわ ですが、 せんがわ劇場が指定管理者制度の下に移行する2018年をもって最後とという話もあったのですが [鑑賞メモ]、 なんとか実行委員会形式で開催を続けています。(実行委員会の運営も大変そうですが。) 2018年以降足を運んでいなかったので、久々に土曜一日、せんがわ劇場で過ごすことにしました。
まずは、初顔合わせというこのセッション。 上野と菊地のデュオに始まり、上野、菊池のソロと続き、最後は3人で。 菊地のタブルベースにしても特殊奏法で出した音をエフェクトで弄ったりアンプスピーカー前でハウリングさせたりという演奏がメイン。 上野のソロの際にはQRコードで観客にSoundCloudの音鳴らさせたり、 菊地のソロでもダブルベースをもって客席側に行ったり、と、ハプニング的な色もあるセッションでした。
続いては、ダブルベースの伴奏でのソロダンスです。 清水のダブルベースは、ピチカートや弓弾きはもちろん手で弦を柔らかく払うような弾き方も使った繊細なものでしたが、 こちらに展開の主導があって、おの音に反応するように躍っているように見えました。 ダンサーの 伊藤 千枝子 (aka 伊藤 千枝) は、元 珍しいキノコ舞踊団 の演出/振付です。 このカンパニーの作品は祝祭的な印象を受けることが多かったのですが [2002年の鑑賞メモ]、 ミュージシャンとの共演というのもあると思いますが、小道具を少し使う程度で衣装もミニマリスティック。 手の動きや途中で客席に降りて観客に踊りを促すような動きに 珍しいキノコ舞踊団 を少し思い出したりもしましたが、 演奏に合った落ち着いた展開てラストは祈りのよう。 ダブルベースの 清水 も、踊るようなアクションはしないものの少しずつ位置を変えて演奏しており、その微妙な位置どりの変化も良かったです。
3セット目は、カナダ太平洋岸バンクーバーの guitar/oud 奏者 Gordon Grdina と道場 (八木 + 本田) ゲスト 巻上 を加えての4tet。 2018年に Gordon Grdina + 道場 を観ていますが [鑑賞メモ]、 その時と同じく重い Grdina の guitar、 その上に撒かれるような箏やテレミンなどの音が印象的なパワフルな演奏で、 ステージのある会場でトリとして登場したのを聴くと盛り上がります。 しかし、前半、箏が低音を支えつつ、Grdina が oud 弾いて、本田がリムショットで細かく刻む、軽めの疾走感のある展開が好みでした。
とっ散らかしたような遊び心のある坂本のステージ、洗練の清水のステージ、バンドで盛り上がる巻紙のステージと、 この3人の音楽監督の方向性が JAZZ ART せんがわ の幅というかバランスの良い多様性を産んでいると実感するプログラムでした。
ライブの後は、音楽ドキュメンタリー映画の上映。 フランスの映画俳優・監督 Matthieu Amalric が2010年から撮り続けている ニューヨーク・ダウンタウンシーンを背景とするミュージシャン John Zorn のドキュメンタリー三部作 Zorn I (2010-2016)、Zorn II (2016-2018)、Zorn III (2018-2022) の2作目を観ました。 インタビュー形式は取らずにリハーサルやバックステージの様子を捉えてそこでの会話を切り取るような形で編集されています。 Tzadik レーベルの音源を摘み聴きしていますが、多作で音楽性の幅も広く全容を追いきれていないので、 特に近年の現代音楽に近い作曲に基づく作品やダンスカンパニーとのコラボレーションなどが垣間見られて、興味深く観ました。 しかし、John Zorn が楽譜を読める連中とつるむようになって大変になったと Marc Ribot がぼやく場面など確かに興味深い場面もありましたが、 やはり本番ステージの様子をもっとじっくり観たいものです。