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Review: Sylvie Bélanger, Entre Le Son Et L'Image @ ヨコハマポートサイドギャラリー; 『ボルタンスキープレゼンツ: La Chaîne —— 日仏現代美術交流展』 @ BankART 1929 Yokohama / BankART Studio NYK
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/07/08

土曜は、昼過ぎに家を出て、 横浜フランス月間2007 関連展覧会めぐり。まずは、横浜駅で降りて東口へ。

Sylvie Bélanger
Entre Le Son Et L'Image
ヨコハマポートサイドギャラリー
2007/5/31-7/7 (日月祝休, 11:00-18:00)

カナダ・ケベック州 (Quebec, CA) 出身のアーティストによる Astor Piazzolla のタンゴの5tetによる演奏を捉えた映像と音を使った 5面マルチスクリーン・ビデオインスタレーション。 画面静止や画面分割、クロースアップも多用しスタイリッシュに。 音と映像を微妙に食い違えることにより、歌と映像を拮抗させて提示されていた。 確かにカッコいいとは思うが、それ以上の何かを感じられなかったのが残念。

会場に行って気付いたのですが、この展覧会で ヨコハマポートサイドギャラリー閉廊です。 1994年のオープン以来、それなりの頻度で足を運んでいただけに、感慨深いです。 よりによって、最後の展覧会の最終日に足を運ぶことになるとは。 1995年の James Turrell (関連レビュー) とか、 1997年の Muntadas (ギャラリー) とか、懐かしい……。 レビューが見当たらないけど Shirin Neshat を初めて観たのもここでだったような。 その一方で、最近、新しい現代美術ギャラリーのオープンが続いています。 TSCA Kashiwa とか arataniurano とか Megumi Ogita とか。 ちょっとしたバブルを感じさせる程です。 ヨコハマポートサイドギャラリーの1994-2007というポストバブル時代を思うと、 世代交代というか、「失われた十年」から新たなバブル (?) への時代転換というか、 時代を感じてしまいます。

続いて、ヨコハマポートサイドギャラリーから新高島駅経由で馬車道へ。

『ボルタンスキープレゼンツ: La Chaîne —— 日仏現代美術交流展』
BankART 1929 Yokohama / BankART Studio NYK
2007/7/6-8/26 (8/13-17休), 11:30-19:00
Christian Boltanski, Benoît Broisat, Gabriela Fridriksdottir, Laurent Tixador & Abraham Poincheval, Angelika Markul, 松本 春崇 (Harutaka Matsumoto), 田中 功起 (Koki Tanaka), 伊藤 存 (Zon Ito), 小林 耕平 (Kohei Kobayashi), さわひらき (Hiraki Sawa).

フランス (France) のアーティスト Christian Boltanski の発案による 映像インスタレーション作品の日本とフランスのアーティストによるグループ展。 フランス側は Boltanski が、 日本側は Boltanski に師事したことがある 松本 によるセレクションだ。 もちろん、Boltanski 自身によるインスタレーションがメインと言っていいだろう。

最近の Boltanski といえば、 越後妻有トリエンナーレ 2006 での 旧東川小学校を使ったインスタレーション『最後の教室』の印象が強烈だ (レビュー)。 この展覧会でも、どのくらい作り込んだインスタレーションするのかと、期待していた。 しかし、逆に、非常にアイデアを絞ったシンプルな作りで、それが良かった。 Boltanski のインスタレーション (ビデオインスタレーション "Entre Temps" (2005) と サウンドインスタレーション "L'Horologe Parlante" を併せたもの) は 旧第一銀行横浜支店 (1929年竣工) の建物を生かした BankART 1929 Yokohama のホール全体を使ったもの。 照明を落したホール中央に大きな半透明のスクリーンを下げ、 少しぼけてモノクロの所に歴史を感じる人の顔の写真を モーフィングするかのように次々と投影していく。 そして、空間には日本語の時報が残響が感じられるくらいの音で響きわたっている。 特に大量の物を持ち込んだりせずに、 むしろ歴史主義建築の意匠がそのまま残ったホールの空間をそのまま生かして、 そこに、歴史を感じるポートレイトと鳴り響く時報といったものを重ねて、 歴史とか時間の経過を強く想起させる作品を作り出してくるあたり、さすがだ。

BankART 1929 Yokohama の地階ギャラリーにもう一つ、 Boltanski の作品、"6 Septembre" (2005) が展示されている。 こちらは、Boltanski の誕生日のニュース映像を1944年から2004年まで 早送り繋ぎ合わせた映像を上映したもの。 観客はボタンを押すことにより、数秒映像をポーズすることができる。 ノイジーな映像と音の流れだが、 画面の色合いの変化などから意外と歴史の経過を感じられるのが面白い。 ニュースということで流して見ていても戦争や政治に関する映像が多そうなのだが、 和み系のニュース映像も紛れているようで、 ボタンを押したら可愛い犬の映像で止まって、その意外さにウケてしまった。

Boltanski の作品の印象が強く、他の作家の印象があまり残らなかったのは、少々残念。 違う文脈でみたら、少しは面白く見られたかもしれないのだが。

BankART Studio NYK 3F の 牛島 達治 のインスタレーション (レビュー) は、 常設になったようで、そのまま展示されていた。 ただ、まともに動いていたのは『記憶-原動-場』 (2005) だけだったが。 3Fの常設には、丸山 純子 の ビニールのレジ袋を使った花畑の作品が増えていた。 荒廃した感じの倉庫空間に白いものがいっぱい生えている様子は、 花というより巨大なカビの胞子嚢という感じもあって、 幻想的というより殺伐さも感じさせるような気もしたが、 牛島 の作品と良いコントラストを為していて、良かったと思う。