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Review: 『ヨコハマトリエンナーレ2011 世界はどこまで知ることができるか?』 @ 横浜美術館 / 日本郵船海岸通倉庫 / ヨコハマ創造都市センター 他 (美術展); 『BankART Life III 新・港村〜小さな未来都市』 @ 新港ピア (美術展); 『黄金町バザール2011』 @ 黄金町エリア (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2011/11/07
『ヨコハマトリエンナーレ2011 世界はどこまで知ることができるか?』
Yokohama Triennale 2011: Our Magic Hour: How Much of the World Can We Know?
横浜美術館 / 日本郵船海岸通倉庫 / ヨコハマ創造都市センター 他
2011/08/06-2011/11/06 (休館日: 8,9月木曜日, 10月13,27日), 11:00-18:00.

今年で4回目となるヨコハマトリエンナーレ。 ほぼ2会場のうえに会場の一つが美術館ということで、 インスタレーションというより普通の平面 (絵画等) / 立体 (彫刻等) の作品が多く、 会場外に出たインスタレーションも少なめ。 全体的な印象としては、 前回のトリエンナーレに比べるとこぢんまりと大人しめの現代美術展だった。 20世紀前半のモダニズムの美術なども交えていたが、 『世界はどれだけ知ることができるか?』というテーマも少々広過ぎたのか、 自分の問題意識とズレていたのか、ピンと来ず。 混雑した会場を駆け足て観たこともあると思うが、雑然とした印象を受けてしまった。 といっても、興味を引かれる作品にはいくつか出会えることができた。

最も印象に残った作品は Christian Marclay: The Clock (2010)。 古今東西の映画の中から、 画面中に時計を捉えたシーン、もしくは、時刻に言及したシーンを集めて編集した 24時間の長さの映像作品だ。 映画内の時刻は実際の上映時の時刻と同期するように編集され上映されている。 そのため、観客が観ているその時刻が映画ではどういう出来事が描かれているのか —— 例えば、15時頃というのは食事のシーンというのはほぼ全くなく、 大人が仕事したりオフィスを訪れたり子供が他の家を訪問したりするのが多い時間帯だ —— ということが浮かびあがってくる。 それだけではなく、映画中において何らかの形で時刻を明示する演出 —— 腕時計をクロースアップしたり判り易いところにかけた壁掛け時計を移し込む —— の類型も見えてくる。 しかし、この作品の面白さは、そういった類型がうかびあがってくるだけではない。 その類型を利用して、異なる時代やジャンルの映画を繋ぐ編集もシュールで面白い。 そもそも、映画の中で時刻を示す場面というのは、物語の展開上の鍵となる場面となるものが多いのか、 サスペンス的な緊張感のある場面の連続になっていて、次はどうなるんだろうとつい見続けてしまうところがあった。 この作品は今年の La Biennale di Venezia で Leone d'oro (金獅子賞) を受賞した話題作で、 そのコンセプトについては観る前から知っていたけれども、 正直、映像としては退屈なコンセプト先行の作品ではないかと観る前まで予想していた。 しかし、それを良い意味で裏切ってくれた作品だった。 時間に余裕があれば数時間は観ていたかったが、30分余しか観れなかったのは少々残念。 素材が映画なので映画館のような会場で上映することに意味があるとも思うが、 美術館で常設してギャラリーの一角で時計代わりにモニター上映し続けるというのも良いように思う。 デジタルフォトフレームに仕込んで置き時計にしたり、 スマートフォンの時計アプリケーションにするというのも面白いのではないかと思うが、 素材となった映画の版権処理を考えると上映形式はかなり限定的になるのかもしれない。

The Clock が上映されていた 日本郵船海岸通倉庫会場は、他にも映像作品やインスタレーション作品が多く集められていた。 The Clock の印象が強過ぎて、 他の作品が霞んでしまったけれども。

横浜美術館会場は、この手の現代美術のフェスティバルでは疎外されがちな平面や立体の作品も集めていた。 そういう企画のあり方に若干興味を引かれたけれども、 個々の作品として印象に残ったのはそれから外れる作品だった。 James Lee Byars: Five Points Make A Man (2001/2008) の黒いドレスの女性のパフォーマンスは、 少々思わせぶりに過ぎるかなとは思ったけれども、静かで落ち着いた感じは悪くなかった。 (もう少しざわつきの無い空間で観たかったけれども。) パイプオルガンのパイプを工事現場足場の鉄骨のようにして組んだ Massimo Bartolini: Organ も その意外な形状と音の組み合わせが面白かった。 Damien Hirst: The Tree of Knowledge (2008) の「モザイク」と合わせて教会のような空間を作り、 オルゴール的なメカニズムによる自動演奏で静的なインスタレーションを成していたけれども、 ミュージシャンを入れてのライブな音というのもありなのではないかと感じた。

海外の国際美術展にメインに対抗する フリンジ/オフ/インデペンデントと呼ばれるような企画があるように、 『ヨコハマトリエンナーレ』にも2つの特別連携プログラムがある。 企画における対抗性や独立性からするとフリンジとは言い難いものだけれども。 それらについても軽く。

『BankART Life III 新・港村〜小さな未来都市』
BankART Life III: Shin Minatomura: A Small City for the Future
新港ピア
2011/08/06-2011/11/06 (休館日: 8,9月木曜日, 10月13,27日), 11:30-19:00.

『ヨコハマトリエンナーレ』の連携企画として開催されている『BankART Life』も今年で3回目。 今回の会場は新港ピアのみ。 美術作品の展示もあったけれども、建築やアートイニシアチヴの展示が中心で、 作品を展示するというより建築オフィスやアートイニシアチヴのための「見本市」会場のよう。 コマーシャルな見本市のように奇麗にブースが作り込まれているわけでなく、 手作り感たっぷりの雑然としたブースが並んでいたけれども。 イベントが開催されているときに訪れたらまた違ったのかもしれないけれども、 メインの『ヨコハマトリエンナーレ』を食ってやろうという勢いが感じられるわけでもなく、 2009年の『CREAM ヨコハマ国際映像祭 2009』 [レビュー] の新港ピア会場の残念な雰囲気を繰り返ししているよう。 前回の BankART Life は複数会場にわたり見応えのある作品展示をしていただけに、少々残念。

『黄金町バザール2011』
黄金町エリア (日ノ出スタジオ、黄金スタジオ、高架下新スタジオ、等)
Vol.1 2011/08/06-08/31, Vol.2 09/02-11/06 (休館日: 8,9月木曜日, 10月13,27日), 11:30-19:00 (夜の会場 日没-00:00).

『黄金町バザール』は前回の『ヨコハマトリエンナーレ』開催時の2008年に始まった アニュアルのアートイベントで、今年で4回目。 2008年続いて今回も連携イベントとなっている。 こちらは「ヨコハマトリエンナーレ』とは関係なく毎年の積み重ねがあるためか、 地に足がついたイベントという印象。 新港ピアのような埋立地の見本市会場ではなく雑然とした街中という地の利もあると思うが、 昔ながら (といっても1990年代くらいから自分が観て来ている) の 少々手作りっぽい街中アートイベントの雰囲気が感じられて、悪くなかった。 といっても、30分程しか滞在できず、個々の作品を鑑賞するというというより、 会場の雰囲気を楽しむにとどまってしまったのだけれど。

連携プログラムの中で気になっていたのは、 オープニングに合わせて8/5と8/9に開催された北仲スクール企画のイベント、 Krszysztof Wodiczko のパブリック・プロジェクション Survival Projection 2011。 しかし、ロシア旅行中で日本におらず、観ることができなかった。少々残念。

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