『BankART Life』は 『横浜トリエンナーレ』 の連動プログラムとして横浜で開催されている一連の展覧会/プロジェクトだ。 3年前の2005年 (副題は『24時間のホスピタリティ』) に引き続き、 今年もIIとして開催された (副題は『TRUE PARADISE』)。 その位置付けは、海外のフェスティバルにおける fringe/off/independents/alternatives に近い。
『Landmark Project』は3年前の『BankART Life』の際に始まった アニュアルの展覧会/プロジェクトだ。 『心ある機械たち』は、今年の『Landmark Project IV』のメインの展覧会に相当する。 今回のテーマは、「無用」ながら「心ある機械たち」だ。
最も印象に残ったのは 牛島 達治 の一連の作品だ。 特に、BankART 1929 Yokohama 3Fに展示された「地の風車 コンセプトモデル」。 回転する腕につけられた耕耘機のロータリーが、ひたすら円形の土を耕し続けている。 腕の長さは2〜3m はあり、ガタガタと不規則に揺れながら回る様子はかなりの迫力だ。 迫力もあるし、ユーモアも感じられるのが良い。 1F にも小品が5点展示されている。 ハンドルを回すと不規則な形の石が回転して、 その表面をなぞる梃子が小さな動きや音を作り出す作品などだ。 その中では、円形の鉄板のステージの上を50cmはあろう大きさ石を ガリガリと回し転がす「キオクノタメニ II」が面白かった。 以前から、牛島 達治 の作品は好きだけれども、 この手の無用の機械を作るセンスが良いと、と改めて思った。
BF では 木村 崇人 の「百ボルト電撃調理方法」に笑った。 日本の家庭用の100ボルト電源を通電することにより、 肉や魚を焼いたりスープを加熱するパフォーマンスを収録したビデオ作品だ。 「電撃」というほど火花が散ったりするわけでもないのだが、 時に派手に煙や音をたてながら、時に地味に、加熱される様子が面白かった。 ただ、ビデオの字幕のフォントは勘亭流風というか笑いを意識したものだったのが残念。 そこに照れ隠しのようなものを感じて、若干興醒めしてしまった。 こういうのは、ひたすらシリアスなふりをした方が良いのかもしれない。 しかし、木村 崇人 の展覧会は7月に観たばかり (レビュー) なのだが、作風が分裂している。
日本のダンスカンパニー Nibroll の 映像ディレクター 高橋 啓祐 によるビデオインスタレーション 「a part of the world」も良かった。 地下のビル機械室という場所のおかげもあると思うが。 白く強い光りの中に黒い小人か何のような形のものの行列がうねうね動き続ける映像を 照明を落した暗い機械室に投影するというものだが、 映像のテクスチャと機械室の機器が作り出すテクスチャの微妙なズレが良かった。
川瀬 浩介 の「ベアリング・グロッケン」も、 鉄琴の上でベアリング・ボールを跳ねさせて音楽を奏でるというものだが、 その微妙にミニマルで単調な音楽も、 ベアリングボールが跳ねる様子を観ながら聴くと飽きないし、 ボールを供給する機械機構もあえて見せるようにしている所も面白かった。
他にも、ジャイロ的な要素のブレが生む微妙な振動がオブジェを揺する 今村 満 「ゆらすコト」や「あるコマ キノコ」、「ふれるコト」などの作品、 間欠的に紙袋の頭部が吹き上がる 磯崎 道佳 「SHU-PO-PO」など、 ユーモラスな作品が多く、楽しめる展覧会だ。
今回は時間がなく、ぴおシティB2ギャラリー 会場の方は未見。 また別の機会に観に行くつもりだ。
(2008-11-09: 具体的なタイトルで作品に言及するよう修正)
以下は、関連する談話室への発言の抜粋です。
『AOBA+ART』 (写真集) の後は、 横浜市営地下鉄ブルーラインに乗って、日暮れの桜木町へ。
まずは、ぴおシティB2ギャラリー 『BankART Life II: Landmark Project IV: 心ある機械たち』 (レビュー) の落ち穂拾い。以前に studio NYK に常設展示されていた 牛島 達治 の作品の一つ 「イトナミ、オクからテマエを越えて スウット スウット 改」 (2001) (レビュー) がこちらに。 この前に見たときは調整中で止まっていたのだが、今回は元気に動いていてなにより。 Anneke Pettican & Spencer Roberts のスプレーで詩を描く インタラクティブなビデオ・インスタレーションは、 隔離されたスペースではなく、 普通に人通りのある所に設置したら面白いんだろうなあ、と。
続いて、旧東横線桜木町駅駅舎を使ったスペース 創造空間9001で 『三田村 光土里 @ ヨコハマ』 (11/30まで)。 5〜7月に谷中の HIGRE 17-15 cas で行った Art & Breakfast (レビュー) と素材に重なりが多かったせいか、むしろ、谷中の場所の良さを痛感してしまった。
さらに『BankART Life II』と同じく『横浜トリエンナーレ』応援企画の 『黄金町バザール』 (11/30まで)。 小さな二階建住宅を丸ごと作り込んだ 北川 貴好 や ゴルフ練習場のタイポグラフィカルな写真の 中尾 宏嗣 が印象に残ったとはいえ、 全体的には緩過ぎ……。 会場となった日ノ出町から黄金町にかけては、 かつては、ニューカマーなセックスワーカーが集まっていた所。 その痕跡はわずかながら残ってはいたけれども、 こういうイベントが開催できるほどまでジェントリフィケーションが進んだんだなあ、と、 感慨深かった。
せっかく平日に行ったので、平日の昼にしか観られない 『BankART Life II: Open! バプリックスペース』 を観て来ました。 関内駅前の横浜市庁舎一階ホールに 松本 秋則、丸山 純子 らがインスタレーションを施したものです。 工事中で窓からの光も少く照明も暗い、ということもあるかと思いますし、 もともとそういう場なのかもしれませんが、緩くて少々雑然とした感じ。ううむ……。
土曜の昼は仕事だったのですが、その帰りに馬車道へ。 BankART studio NYK で 『横浜トリエンナーレ 2008』の off/fringe 的イベント 『BankART Life II: Landmark Project IV』 内の展覧会、 『ルーフトップパラダイス』 を観てきました。 studio NYK こと日本郵船海岸通倉庫の屋上が会場で、完全予約制、人数限定で公開。 時間や人数を限定するからこそ可能な パフォーマンスやハプニングといったものも期待したのですが……。 しかし、そういう要素はほとんど感じられず。少々緩い展覧会でした。 建築ユニット みかんぐみのディレクションということで、 建築的というか空間デザイン的な作品が目だったような印象を受けました。 木を積み上げた 中央アーキ 「Wood bank」や archi-depot 「そらりウム 2008BHA」 のような作品は、この詰め込まれた屋上ではなく、 ギャラリー内に一点とか広い野外に置かれたら、 post-もの派な作品のような何かになったかもしれない、と思ったりもしました。
日本郵船海岸通倉庫1階の BankART Mini では 『パーク展 アジアの現代美術作家2008』 (the park: Contemporary in Asia 2008; 2008/11/11-19) をやっていたのですが、 出展作家 Andree Weschler によるパフォーマンス "Honey" を観ることができました。 シンガポール (Singapore) で活動しているけどフランス系のよう。 薄い白布のワンピース姿で、はちみつを2瓶分口で受け、 そこから溢れるはちみつにまみれる、という10分程度のものでした。 凄いという程ではなかったけれども、 ポップやキッチュな要素は無く、質感と身体性のみのミニマルな所は、 悪くなかったです。