音楽と視覚芸術との関係をテーマとした展覧会。 Florian Hecker のようなほぼ音だけでイメージを想起させるようなサウンドインスタレーションもあったけれども、 全体としては視覚芸術に軸足を置いたもの。 映像や空間インスタレーションなどの視覚芸術的要素も重視した、 もしくは、音楽や振動を視覚化した視覚芸術作品が多かった。 また、音楽に関係した絵画や、図形楽譜や音楽用の装置も展示されていた。 見慣れたような作品も少なくなかったが、 コンセプチャルというより体感できるような作品が多かったせいか、楽しめた展覧会だった。
最も印象に残ったのは、Céleste Boursier-Mougenot: “Clinamen” (2012)。 直径5m程の円形のプールの上に様々な大きさの磁器の器を浮かべたものなのだが、 直径方向に横断する水流が作られているため、 その周辺で器がぶつかり合い、そのたびに高く澄んだ音が響き渡る。 その不規則に様々な高さで鳴る音も、 明るい水色のプールの大円の中を不規則に動き回る様々な大きさの小円 (の器) という見た目も、飽きない。 Boursier-Mourgenout というと小鳥を使ったインスタレーションで有名だが (これも一度生で観てみたい) [レビュー]、 そうでないタイプの作品もセンスが良い。
大友 良英 Limited Ensemble の作品は、最近よく手掛けている ポータブル・レコード・プレイヤーを使ったインスタレーション [レビュー] の変奏。 明るくこぎれいな吹き抜けの空間での展示は即物的な面が強調されて、少々虚ろな感じ。 結局、少々感傷的とはいえ感情を雨後がされた VACANT で初めてみた時 [レビュー] が 最も良かったかもしれない、と思ってしまった。
『MOTアニュアル2011––世界の深さのはかり方』 [レビュー] での磁器テープ球「Sound Sphere」も印象的だった 八木 良太 は、 氷のレコード「Vinyl」 (2006) を出していた。 といっても、実物ではなくビデオでの展示だったのは少々残念。 高谷 史郎 や 池田 亮司 のインスタレーションはスタイリッシュだけれども、 いかにも Dumb Type という見慣れた感もあった。
新進作家を紹介するアニュアルの展覧会。 今年は、コンセプチャルで、状況を作りだして体験させるようなプロジェクト的な作品を集めたもの。 短いテキストを元にハプニング的なイベントを仕掛ける 森田 浩彰 など 最近の代替現実ゲーム (ARG, Alternate Reality Game) に比べて素朴に感じられて しまうような時もあったけれども、そんな中で、 コンセプチャルの展覧会内展覧会に地下駐車場に作り出した戦後昭和の雰囲気の小部屋を接続した 奥村 雄樹 「深い沼」 が印象に残った。