2000年代以降、音や映像を使ったインスタレーション作品を発表してきている 八木 良太 の個展。 グループ展に出展された作品を観て気になっていた作家だが [関連レビュー 1, 2, 3]、 個展を観るのは初めて。作風の全体像を知る良い機会かと、足を運んだ。
やはり良いと思ったのは、今までも観たことがある音響を伴うインスタレーション作品。 覆うように磁気テープを巻き付けた球をヘッド付きの台座に置いて再生する「Sound Sphere」 (2011) も、 白いギャラリーに黒い球が浮かび上がるようなインスタレーションとなり、よりスタイリッシュに。 ヘッドホンをして机下にしゃがむと波音が水中音に変わる「机の下の海」 (2010) も 波立つ水面を机の上に投影したインスタレーション「Wave Form」 (2014) や、 それぞれの音をレコードの両面に収録して水に浮かべた「Sky / Sea」 (2007/2014) と併せて展示されることにより、 視覚的要素もよく考慮された総合的なインスタレーションとなっていた。 こういう所も、個展だからこそ作り込めた所かもしれない。
この個展で初めて観た作品では、 音楽を早回しもしくは遅回しで再生したスピーカーと、通路に置かれたスピーカーの脇を通る人々を捉えたビデオ作品「Lento-Presto」 (2008-2014)。 映像をスローモーション再生もしくは早回し再生することにより、ノイズ状の音が音楽に戻る一方。人の動きが不自然になるという、不自然さの逆転が面白かった。
確かに音響を伴うインスタレーションの方が良いとは思ったが、 まとめて観ることで、音響を使わない作品もあり、視覚的要素もよく考えられていることに気付かされた。 異なる場所に焦点位置が設定された3台のプロジェクタの前で透過スクリーンを持って映像を探り当てる「Foci」 (2013) は、 映像の奥行き・レイヤを体感させるような面白さがあった。 様々な色を取り混ぜ空間にグリッド状に配置されたカラーボールをクロマデプスメガネで観ることにより狂った奥行き感を楽しむ「Chroma Depth」 (2013) も、 視覚の奥行き感で狂わせて遊ぶような作品だ。 それに、宙に球が浮かぶイメージは「Sound Sphere」 (2011) にも繋がるところがあり、見た目へのこだわりも感じられた。
レコードを切って波状につなげた壁面へのインスタレーションや、CDの反射層を使った同様の形状を作り出した絵画、 ソノシートをスライド化してプロジェクタ投影しあインスタレーションなど、単独で観たらピンとこなかったかもしれないが、 個展会場全体のトータルな視覚的な雰囲気作りとしてうまく機能していたと思う。 音響や映像を使ったインスタレーションからなる展覧会としてうまくまとめられた展覧会だった。
ところで、大判のスケッチブック様のもの紙面の肩に刷られたバーコードをリーダーで読み取りそれに対応した映像を紙面に投影する 「Book of Light」 (2003-2014) では、このコンテンツの一つとして、 Tocha に ペンライトを使った実写アニメーションのプロジェクト「PiKAPiKA」が使われていた。 この作家もグループ展で断片的に観ているだけなので [関連レビュー]、一度、まとめて観てみたい。