ジャグリングの舞台作品を作るカンパニーとして活動を始めた ジャグラー 目黒 陽介 の主宰するながめくらしつ。 うつしおみ (目黒 陽介, 長谷川 愛実) を大道芸で観ることはあったが、舞台公演は2年ぶり。 観るのはこれで3作目だが、 『おいていったもの』 (2014) [鑑賞メモ] 『終わりをみながら』 (2014) [鑑賞メモ] に比べて アイデアに富んでいて、空間も広く使うようになっていた。 ナラティヴではないものの作品としてまとまりもあって、抒情的ですら感じられた作品だった。 ジャグリングだけでなく、ダンス、アクロバット的な動きやエアリアルの見所もあり、 コンテンポラリー・サーカスの作品として十分に楽しめた。
特に気に入ったのは、邪魔されながらのボールのジャグリング。 はいつくばっての口まで駆使してジャグリングなど Compagnie Defracto: Flaque [鑑賞メモ] の影響もあるかなと思いつつ、 身体が十分にコントロールできない状態でジャグリングなど真似しなくても簡単に真似できるものでもなく。 邪魔するの者と邪魔されつつジャグリングする者のデュオとしてでなく4組を舞台に配することで ミクロにコントロールされていないもののマクロではきっちり配置されているような見せ方になっているところも気に入った。
エアリアルは、最初にあったリングよりも、天井に半ば網のように張り巡らせたティッシュ。 それだけでも造形的にも綺麗で良いアイデアだと思ったが、 階段状に並べたシガーボックスを使っての登っていき方や、 2人のエアリアル・パフォーマーがティッシュの網をひとしきり巡った後、 再び降りるのではなく、そのまま舞台後方の天井に消えていくエンディングも良かった。 エアリアルをジャグリングを同時に組み合わせるような構成が無かったのは残念だったし、 シガーボックスを使って将棋を打つのを真似たような動きをする場面で 動きのコントロールが甘く感じられたりしたのも確かだが、全体の雰囲気を損なうほどでは無かった。
音楽は piano / drums / cello の生演奏。 パフォーマンスの展開に合わせてきっちりメリハリは付けるものの、 フリーな展開にはさほどならずに、メロディも生かして抒情的な雰囲気を作りだしていた。 鍵となる形や物が明示的にあったわけでもかわらず、作品を通して統一感があったのは、 この生演奏の音楽があったからのようにも思われた。
今まで観た三作の中で最も良く、 11月頭に観た 頭と口 『WHITEST』 [レビュー] と合わせ、 日本のコンテンポラリーサーカスのカンパニーの成熟を実感することのできた舞台だった。