TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Royal Ballet, Frederick Ashton (choreo.): The Dream / Symphonic Variations / Marguerite and Armand @ Royal Opera House (バレエ / event cinema)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/09/10
Royal Opera House, 11 September 2017.
Emmanuel Plasson (conductor), Orchestra of the Royal Opera House.
上映: TOHOシネマズ日本橋, 2017-09-02.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: Felix Mendelssohn. Musical arrangement: John Lanchbery. Designer: David Walker.
Performers: Akane Takada [高田 茜] (Titania), Steven McRae (Oberon), et al.
Premiere in 1964.
Choreography: Frederick Ashton.
Music: César Franck. Designer: Sophie Fedorovitch.
Performers: Marianela Nuñez, Vadim Muntagirov, Yasmine Naghdi, James Hay, Yuhui Choe, Tristan Dyer
Paul Stobart (piano).
First performed on 24 April 1946.
Choreography: Frederick Ashton
Music: Franz Liszt. Orchestration: Dudley Simpson. Designer: Cecil Beaton.
Dancners: Zenaida Yanowsky (Marguerite), Roberto Bolle (Armand), etc
Robert Clark (piano)
Created for Rudolf Nureyev and Margot Fonteyn in 1963.

Royal Opera House Cinema Season 2016/17 の最後のバレエプログラムは、 1963-1970年に Royal Ballet の芸術監督を務めた Frederick Ashton 振付のトリプルビル。 といっても、Ashton の作品は観たことありません。 Zenaida Yanowsky の引退公演ということもあり、半ば勉強気分で、観てきました。

最初の作品は William Shakespeare の喜劇 A Midsummer Night's Dream 『真夏の夜の夢』に基づく、 Felix Mendelssohn が付けた劇音楽を使った、クラシカルな物語バレエ。 Steven McRae の身体能力を堪能するなら、 Woolf Works [レビュー] のような抽象的な現代バレエだな、と、つくづく。日本人プリンシパルの 高田 茜 をじっくり観ることが収穫だったでしょうか。

続く、Symphonic Variations は第二次大戦終戦直後に作られた クラシカルなテクニックに基づく抽象バレエ。 George Balanchine の Le Palais de Cristal [レビュー] が1947年で、 Harald Lander の Études [レビュー] も初演は1948年。 第二次世界大戦終戦直後は、クラシカルな抽象バレエが流行だったのかな、と思いつつ観ました。 イベントシネマならではの幕間のインタビュー映像での、終戦直後で食べることにも事欠く中練習したとういう当時の出演者の話も印象に残りました。

最後に、今回の一番の目当てだった Zenaida Yanowsky の Royal ballet のプリンシパルとして最後の舞台。 オペラ La Traviata 『椿姫』の原作 Alexandre Dumas fils: La Dame aux camélias に基づく物語バレエです。 タイトルも原作での登場人物名から採っているくらいなので、オペラとはかなり異なる構成かなと予想していたのですが、 オペラのバレエ化といっても違和感がないくらいの場面構成でした。 クラシカルなテクニックで踊りまくるような場面がほとんどなく、 Yanowsky らの演技の上手さもあって、バレエというよりメロドラマティックなダンスシアターを観ているよう。 Willy Decker 演出 [レビュー] ほど現代的ではないものの、すっきり抽象化された舞台美術も良かったです。

Yanowsky というと、 Alice's Adventures in Wonderland [レビュー] での The Queen of Hearts (ハートの女王) や、 Winter's Tale [レビュー] での Paulina のような、 コミカルだったり男前だったりする個性的な難役を演じきる演技力が印象的だったのですが、 『椿姫』の Marguerite (Violetta) のようなメロドラマ・ヒロインも全然いけるということに気付かされました。 相手役は、Aurélie Dupont 引退公演の L'Histoire de Manon [レビュー] でも相手役を務めていた Roberto Bolle。 (他にも多くの引退公演で相手役を務めているようで、バレエ・ファンの間で「引退公演請負人」などと 呼ばれているのを知って、笑ってしまいました。) バレエダンサーというより体操選手のようなシャープな雰囲気すらある Steven McRae などと違い、華のある優男な雰囲気のあるバレエダンサー。 自分の好みは別として、このような優男はメロドラマ・ヒロイン相手役としてバレエ団には不可欠だなあ、と。