共産政権下の1970年代から現在に至るポーランドにおける美術の文脈における映像表現を、特に女性作家という観点から見た展覧会です。 形式的な面白さや美しさを狙った作品というより、フェミニズム的な視点の強いドキュメンタリ色濃い作品がメインの展覧会でした。 さすがに1970年代となると、共産圏においても西欧と同時代的なビデオアートが試みられていたのかという時代的な興味以上のものを見出すことは難しいものがありました。 しかし、21世紀のものとなると、興味深く感じる作品もありました。 Karol Radziszewski: America Is Not Ready For This (2012) は この展覧会でも取り上げられている1970sに活動を始めた Natalia LL が1977年の New York でどのように受容されたか当時の関係者の証言を集めたビデオ作品ですが、 1990年代のアイデンティティ・ポリティクスの主題とした注目される以前の現代美術がいかに西側欧米中心主義的だったか浮かび上がらせるよう。 「ミス・ポーランド」への挑戦を記録して作品化した Jana Shostak: Miss Polonii には、 アートと「ミスコン」の類似性に気付かされるというより、 ベラルーシからポーランドへの移民という彼女のバックグラウンドにEU圏であるかどうかの壁の高さを意識させられました。
東京都写真美術館の今年のコレクション展『イメージを読む』の第二期です。 畠山 直哉 の Slow Glass シリーズ [鑑賞メモ] や 佐藤 時啓 のライトペンのシリーズ [鑑賞メモ]、 杉本 博司 の「劇場」シリーズ [鑑賞メモ]、 田口 和奈 の ほとんど真黒の画面にうっすらと顔が浮かびあがるポートレイト 「あなたを待っている細長い私」[鑑賞メモ]、 Edward Ruscha: Every Building on the Sunset Strip など、好きな作品を久々に観て楽しんだのですが、 全体としてはテーマにピンとくるものが無く、ぼんやりとした印象となってしまいました。 といってもコレクション展ですし、個別に作品が楽しめるだけでも十分なのですが。