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Review: 畠山 直哉 (Naoya Hatakeyama), Slow Glass @ 高橋コレクション
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2007/10/28
畠山 直哉 (Naoya Hatakeyama)
高橋コレクション
2007/10/13-11/24 (金土のみ,祝休), 11:00-19:00

畠山 の写真は、 くっきり線を描くような幾何的な画面を構成するという面と 爆破で飛び散る岩や水蒸気や雲のような不定型で瞬間的偶然的要素の多い物を捉えるという面という二面を持っている。 そして、 Atmos (レビュー) における鉄工場と水蒸気、 Two Mountains (レビュー) における稜線と雲のように、画面の中でその二者を混在させる所も面白い。 今回の展示の2001年の連作 Slow Glass も 二面を併せ持つ作品だが、 画面内に混在させているのではなく二層のレイヤーを重ねている作品だ。

レイヤーの一つは水滴のついたガラスであり、 もう一つのレイヤーはガラス (最初のレイヤー) ごしに捉えられた風景だ。 静止した状態でその風景は画面を上下に水平二等分するように水平線を置いて撮られたものと、 おそらく走る自動車のフロントガラス越しに撮影したと思われる 水平線の位置も不安定な画面の中を光の筋が震え流れたものと、二種類がある。

前者の場合、幾何的な画面構成と、 それを大きくぼやかせて曖昧にさせる水滴のレイヤーの拮抗が面白い。 また、水滴が油彩のマチエールのようで光の点で描く印象画を思わせ、 幾何的な構成は甘くなるにも関わらず抽象度の高い画面に仕上がっているのも面白い。

一方、後者の場合、幾何的な要素は薄く、瞬間=不定型な物のみを捉えた写真だ。 いや、雲や水蒸気のような物を捉えているのではなく、 水滴ごしに流し撮ることにより光そのものを不定型にして画面の中に描き込んでいる。

ぱっと見は後者の方がカッコいいが、 前者の方が二層が互いを裏切っているように感じられる所があり、 観ていて面白いようにも思う。

ちなみに、過去のレビュー: BLAST & camera obscura drowing (1998)、 Underground (1999)、 Atmos (2003)、 Two Mountains (2006)、 Draftsman's Pencil (2007)、 Naoya Hatakeyama (2002, 写真集)。

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